消化管疾患

 日本人に多い主な消化管(口から肛門にいたる食事の通過経路)の疾患について簡単に記載しました.

 症状は代表的なものを挙げているに過ぎません.気になる症状があれば,かかりつけ医にご相談下さい.

 食道癌,胃癌,大腸癌は””のページに記載しました.

逆流性食道炎   

 胃液が食道に逆流することによって起こる病気です.背中の曲がった高齢者と,肥満のある方に多く見られます.主な症状は胸やけ,げっぷです.時に慢性の咳を認めます.これらの症状の続く方は,,内視鏡検査を受けられることをお薦めします.薬物治療が有効ですが,長期に継続することが必要です.(→症例写真)

胃潰瘍・十二指腸潰瘍   

 胃壁や十二指腸壁に深い傷の出来る病気で,主な症状はみぞおちの痛みです.痛みの続く方は,癌との鑑別のためにも,一度内視鏡検査を受けられることをお薦めします.強力な制酸剤の登場で,治癒させることは容易となりましたが,再発が多いことが問題でした.

 マスコミなどでしきりに紹介されたので,ご存知の方も多いと思いますが,ヘリコバクター・ピロリ(いわゆるピロリ菌)の胃への感染が病因の一つであることが比較的最近分かり,治療が変化しました.すなわち,従来の治療に加え,この菌の除菌治療を行うのです.除菌治療に成功すると再発はかなり少なくなります.(→症例写真)  

 蛇足ですが,潰瘍=ピロリ菌感染症であるかのように書いているマスコミが多いですが,これは間違いです.ピロリ菌感染者のごく一部しか潰瘍を発症しておらず,逆にピロリ菌陰性の潰瘍もあります(→院長プロフィールの項の小生の論文参照).

ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎(いわゆるピロリ菌感染)   

 平成25年2月より潰瘍の有無にかかわらず,胃にピロリ菌の感染が確認されたら保険で除菌治療ができるようになりました.(ただし,胃内視鏡が行われていることが必須です.)その際に医師が診療報酬明細書に書く病名です.いわゆる保険病名ということになります.日本人の約半数がピロリ菌に感染しているので,日本人全員をもし調べれば何千万人の人がこの病名になるわけです.

 ほとんどの人は無症状です.しかし,ピロリ菌は胃粘膜の慢性活動性胃炎をおこし,長年の感染の結果一部の人の胃粘膜に胃癌を発生させます.したがって,無症状でも一度は胃内視鏡検査とピロリ菌の有無の検査を受け,感染が確認されたら除菌治療を受けることが望まれます.一部の人は症状を伴います.除菌治療で症状が改善する場合としない場合があります.後述の機能性胃腸症(NUD)とのオーバーラップがあると考えられます.   

機能性胃腸症(NUD) (慢性胃炎を含めて)  

 機能性胃腸症(NUD)は聞きなれない言葉かと思います.胃痛,もたれ感,吐き気など胃症状があるのに潰瘍などの器質的疾患ががない場合をNUD(non-ulcer dyspepsia: 機能性胃腸症)と言います.機能性胃腸症についてはまだ分からないことが多いのですが,おそらく単独の疾患ではなく,様々な病態が含まれていると筆者は考えています.従って患者さん一人一人に応じた治療が必要です.   

 一方,慢性胃炎は聞いたことのある病名ではないでしょうか.しかしこの病名はあいまいな病名で,かつて機能性胃腸症の病名がなかったときにその代わりに使われていたし,今でも機能性胃腸症の代わりに使われることもしばしばあります.また,内視鏡を行ってピロリ菌感染による慢性活動性胃炎や萎縮性胃炎を認めた場合に使うこともあります.   

 ピロリ菌の除菌治療が保険適応となったので,NUDのうちピロリ菌に感染している患者さんにはまずピロリ菌の除菌治療を行うことが多くなりました.しかし,除菌に成功し炎症が消失してもかならずしも症状は改善しません.一方,除菌治療後に逆流性食道炎が発症する場合がときにあります.   

 しかし,ピロリ菌の除菌治療は胃癌の予防には有効と考えられますので,医師に十分な説明をしてもらったうえで,納得できれば受けた方がいいと考えます.

胃ポリープ  

 普通は自覚症状はなく,内視鏡検査時に偶然発見されます.ほとんどは癌化しないので,経過観察のみとすることが多いです.

大腸ポリープ  

 血便を伴うこともありますが,多くは内視鏡検査時に偶然発見されます.

 大腸ポリープの多くを占める腺腫は癌化する可能性があるので.一定以上の大きさのポリープは内視鏡的に切除することが薦められます.多くのポリープは,入院なしで切除できるようになりました.(→症例写真)

潰瘍性大腸炎

 原因不明の大腸に炎症を起こす,難治性の病気です.最近増加しています.若年者で発症する場合と,高齢者で発症する場合があります.下痢や血便などが主な症状です.内視鏡検査で診断します.(→症例写真)

クローン病

 原因不明で,口から肛門までの消化管のどこにでも炎症を起こし得る,難治性の病気です.下痢・発熱・腹痛などの症状が持続します.上部消化管検内視鏡査および大腸内視鏡検査を行い診断します.