俳句絵解き草子(12)    
磯 野 香 澄
竜巻で唸る竹薮比良八荒 香 澄

座禅草が咲いていると言うのでやっとその場所を探してこの竹薮の中だと分かり、自動車を降りました。いつもなら一緒に来てくれる彼が一人で行ってこいといいます。まあいいやこんな竹薮なら一人で行ける遊歩道もできれいると言う事だしと入口らしき処へいきました。少し雨が降って居たので傘をさしていったらビューンと持って行かれそうになって『何やこれ』とそばにあった小さい小屋に身を隠しました。この風どうなってるのと重いながら十メートルほど前の町並みを見ると今まで通り平穏です。そして若い親子三人がこっちへ来ます。そして私の前を通りかかるので、風も少し治まっているので「座禅草見にいかはるのでしたら一緒にお願いします」「どうぞ」と言われて後に続こうと歩き出すとその人達はささと小さい谷の土手を降りて行ってしまいました。私もその後を難儀して降りて着いていけなくて仕方ないと重いながらやっと遊歩道へ降り立ちました。今度は竹が倒れてグチャグチャになっていて前へいけません。ふと気が付くと先に行った男の子が待っていて竹を押さえて私が通れる様にサポートしてくれるのです。感激です。少年に助けられながらしばらく行くと。「ここに座禅草咲いていますよ」と先の夫婦が私達を待っていてくれて、私少年への感謝の言葉夫婦で操作し向けて暮れたことなど言葉が一杯です。「ほらあの竹の根に雪を押し上げて」と言われる侭に見るとあれだけ見たかった座禅草です。気が付くとゴーゴーと凄い風の音です。音だけで竹薮の中は無風状態です。「上みやはったら」と言われて繁茂した竹薮の上を見ました。その奥さんはうわ−目が回る」といって真顔です。見上げた私もじっと見ていたら目が回ります。竹薮をとりかこんで凄い風が回っているのです。私わこの前この当りに立ち昇っている薄い茶色の空気とより思えない柱を自動車の窓から不思議な現象だと見ていたのを思い出していました。寒冷地に咲く座禅草がこの狭い竹薮だけに咲いている。この竹林はここだけ気圧が違うのではないか。周囲は新興住宅になってしまっているがこの近辺は異常な事が沢山あるのでここの竜巻もここ特有の物かもしれないと思いました。竜巻きの目の中で座禅草が見られて、少年に手引きして貰い最高の比良八荒でした。

トップ  戻る  次へ