俳句絵解き草子(9) | |||
磯 野 香 澄 | |||
西行の桜の下と屯する 香 澄 | |||
通称花の寺と云われる大原野の勝持寺は、はじめは花が一杯咲いているので花の寺と言うのだと思っていました。最初行った時は背の高い裸木があってその下に池があり、その池は水面に硫黄色とも青とも言えない油絵の具を流し込んだ様な不思議な池があって、次に行った時も花は無く、この三回は秋とか冬にいったのだろうと思えるのですが、それにしても何故ここが花の寺なのだろう。四回目にいきました。桜が咲いていました。入口で貰ったた由緒書きに西行が住んでおられて桜を愛され庭の沢山の桜に村人が西行の元へとよってきたとありました。桜の花は一番最初に見た背の高い裸木に花が咲いて居ました。その木は庭より一段下に咲いていて庭からの眺めもよいけれど道順に従って下り、その桜の木の下へ行きました。木の背丈が高いのでみんな上を見ていました。普通お花見は大体同じ方を向いて見ていると思うのですが、向かい合ってる者、背中合わせになっている者桜の木の下で思い思いにかたまっているのです。みんな無口でそれでも満足そうに上の満開の花を見ているのです。「この桜西行上人が植えやはってんて」「まあそう思といたらよいけれどこの木どう見ても高々五十年やで」「次々に植え変わって来てるのやからこの木が西行さんの桜でよいやんか」黙って上をみている人達も納得と言った雰囲気で幸せそうな表情で誰も動こうとしないのです。今迄上ばかり見ていたのですが足元を見ると小さな池があります。そして縦長の石が立ててあり横に西行の鏡石と立て札があるのです。「西行さんここで顔洗ろてはったや。この岩の鏡で髭剃ったり頭も剃ったはったかも知れひん」「??」「この石こさげたら写る」と言いながら私はテッシュをだして池の水をつけて磨きだしました。「彼も磨きました。磨いている指が写りました。「やっぱりこの岩の鏡で身ずくろいしてはったんや」この石は西行さんを写していたのだと思うとお顔が見えるきがして、この桜を愛でてはったんやと慕わしく思いました。 |