ところが、どっこい。
例のアジア通貨危機が勃発してからは
それまでコツコツ集め歩いた景気のいい話は、
まるでホラ話のように色あせてしまい、
その一方、筆者の中で、急にピカピカ輝きだしたのが
世界遺産だったのです。

経済も流行も、何と、はかないものでしょう。
だけど、今は途上国といわれるアジアの人々が
過去に生み出した文明の痕跡は
どんなに月日を経ようとも、
たとえ戦争で焼かれ破壊されたとしても
なおもメッセージを放ち続けています。

本書のテーマは

―物言わぬはずの文明の化石は
    いったい何を語りかけたか―


元来歴史が好きな人や世界遺産に興味がある人なら
「世界遺産は素晴らしい」と思うのは当然のこと。
だけどさすがは世界遺産、
筆者のような「歴史が嫌い」と自認する人間さえも
振り向かせ、釘付けにするようなパワーを内に秘めていたのです。