インドの世界遺産
 
アジャンタ石窟群

インドのデカン高原には、「アジャンタ石窟群」「エローラ石窟群」という世界遺産に登録された2つの石窟寺院群がある。いずれも天然の巨大な岩盤を掘削して築かれた寺院が連なり、内部には精緻な壁画や彫刻が残されている。
アジャンタ石窟群が造られたのは紀元前2世紀から7世紀にかけてで、29ある石窟は造られた年代に応じ上座部仏教寺院と大乗仏教寺院に区別される。それを引き継ぐかのようにエローラ石窟群が開削され、34ある石窟は、5〜7世紀にできた仏教寺院、7〜9世紀にできたヒンズー寺院、9〜12世紀にできたジャイナ教寺院に分けられる。これら一連の石窟群はまさに「岩盤に刻まれた宗教史」。宗教の故郷インドにおける各宗教の興亡・変遷を示している。写真のアジャンタ第26窟は5世紀ごろ開かれた大乗仏教寺院。
タージ・マハル

大理石建築の最高峰といわれるタージ・マハル。マハルとは宮殿の意味だが、このタージ・マハルはムガール帝国の第5代皇帝シャージャハーンが早世した妃のために造った墓である。ムガール帝国とは、インド史上最大のイスラム王朝であるが、「ムガール」とは「モンゴル」が訛ったもの。アジアを駆けめぐった蒙古(モンゴル)軍の足跡は元寇として日本史にも記され、韓国ではその脅威を退けるため今や世界遺産ともなった海印寺・八萬大蔵経の版木を彫らせることとなるが、インドに流れついたモンゴルの血は、このムガール帝国を打ち立てる。モンゴルの王チンギスハーンとタージマハルを建てたシャージャハーン、王の名前からもそのつながりがうかがえる。世界遺産をたどっていくと、アジア各国の歴史を結ぶ横糸が見える。