ブル・スプレッドによるアービトラージ

2000年2月25日

2000年2月25日における日経平均オプション(2000年3月限)の終値から、スペースを使ってインプライド・ボラティリティー(IVと略す)を計算した。入力条件は以下のとおり。

考察

  1. IVの右にで示した値は、IVが小さすぎてブラック・ショールズ式では、オプションのプレミアムが計算できないケースである。これらは、明らかにミスプライス(価格の誤り)である。ミスプライスはコールの行使価格17000から18500において観測された。
  2. コールのIVとプットのIVを比較すると、明らかにプットの方が割高である。市場では、相場の下落感が強いようだ。

戦略

相場が下がっても、40円以上の利益は必ず確保できた。(問題は、実際にこのような価格での取引きを成立させることができるかである。オプションには、売買執行にともなうリスクがある。)

さらに、行使価格21000円のプットの出来高は少ないので(2枚)、アットザマネーに近い行使価格20500円のプットを945円(IVは34.1%)で売り(このプットの出来高も2枚と少ないが、安値で引けているので売ることができたと想定する)、行使価格20000円のプットを400円で買ったとしよう。以下がシミュレーション結果であるが、45円以上の利益が確定でき、相場が上昇すると545円まで収益が得られる。

とうぜん、このような取引きには売買執行リスクはあるが、このリスクもシミュレーションできる。例えば、行使価格20000円のプットを高値の550円で買い、行使価格20500円のプットを安値の945円で売ったとする。つまり、最悪のシナリオである。しかし、この場合でも、105円以上の損失は出ず、相場が上昇すれば395円までの利益が狙えるのである。105円の損失なら、プットのプレミアム代金よりも安いではないか。これが合成ポジションの効果なのである。

このような戦略をブル・スプレッドといい、相場がやや強気のときに使われる。が、ここでは、相場が下落するという思惑によるミスプライスを利用して、アービトラージによる利益を確定したのである。

また、他のプットやコールにつても合成ポジションをつくれば(例えばベア・スプレッド)、損失を市場でのプレミアム以下に限定しながら、相場変動による利益を追求することができる。

では、2月25日に行使価格20000円のプットを400円で売り、後で時間的価値の減少を狙って、このプットを買う(買い戻しではなく、新たな契約)という戦略のシミュレーションをしてみる。このプットなら出来高が79枚と比較的流動性があり、400円は安値なので売り方としては最悪のシナリオである。

2000年2月29日

2月29日、行使価格20000円のプットは、終値で255円であった。出来高は340枚。この価格でプットが買えれば、400円と255円の差額である145円(1枚あたり145000円)の利益が確定する。

2月29日、行使価格20000円のプットの高値が410円なので、もう少しSQに近くなれば、高値でも時間的価値の減少によって400円以下で行使価格20000円のプットを買うことができる可能性は高い(成り行き注文でも)。もちろん、相場が崩れると、プットの価値は高くなるので買い注文は不利になるが、400円をできるだけ超えない時点でプットを買えば、損失を抑えることはできる。

2000年3月9日

SQ直前日である。日経平均は19662円で引けた。行使価格20000円のプットであるが、終値が340円で、高値が380円であった。安値は200円と、相場の日内変動が大きいため、プットの価格もこのように大きく変動したのだ。が、今や3月限オプションの時間的価値はゼロである。2月25日の終値が19817円であったので、この日の終値である19662円とあまり変わらない水準である。また、終値のIVだが、17.7%と割安である。プットの出来高は559枚なので、340円で新規に行使価格20000円のプットを買い付けても、2月25日に同じ行使価格のプットを400円で売り建てていたなら、取引が成立した時点において、400円と340円の差額である60円の利益は確定する。仮に、この日の高値の380円で買い付けても、20円の利益は出る。2月25日には、売り方にとっては不利と思われた行使価格20000円のプットでも、このようにSQ直前には時間的価値が減少するので、新規に同じ行使価格のプットを売り値よりも安い価格で買うことができれば(「買い戻し」ではない)、利益を確実に得ることは可能である。

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