オプション取引の技

柔道や相撲には、技がある。オプション取引にも技がある。ここでは、いくつかの基本技を紹介する。

なお、ここで紹介した技は、すべてオプション取引支援ソフトTraderによって損益シミュレーションできる。

キーポイント：オプションは「合成できる」ため、他の投資方法では無理なペイオフでも可能になる。

• ロングとショート。オプションでは、買うことをロング(long)、売ることを(short)という。Long callは「コールを買う」、short callは「コールを売る」という意味である。例えば、強気相場では、原資産が上昇すると思われるので、ロング・コール（コールを買う）戦略が考えられる。
• オープン。オプションを売ると、リスクは「無限」といわれる。が、これはまったくの誤り。実際は、買い戻して決済でき、安値で買い戻せば儲かる。また、原資産のみを売買したときより損失は少ない（プレミアム収入のため）。したがって、オプションを売っても、損失が無限になることは、絶対にありえない。また、逆にオプションを買っても、プレミアムを払うので、利益は原資産のみの売買に比べて少なくなる。が、実際は転売して決済することもできるので、高値で転売すれば儲かる。オープンとは取引方法によって利益・損失が異なることである。このように、オプション取引では、リスクは「限定か無限」ではなく「限定かオープン(未確定）」なのである。ただし、初心者や個人投資家にとっては、オプションのショート・ポジションはリスクが大きいので、「無限のリスク」とみなした方がよいだろう。
• 原資産。日経平均、商品先物、通貨、個別株などのオプション取引の対象となっている資産。オプションはこのような原資産(unerlying asset, unerlying instrumentなどと呼ばれる）から派生(derive)してつくられた資産であるため、派生商品(derivatives)と呼ばれるわけである。
• 時間的価値の減少効果。オプションはある一定の期間しか権利として存在しない資産であるため、消耗資産(wasting asset)などとも呼ばれ、オプションの価値（プレミアム）は時間の経過とともに減少する。この効果を狙って仕掛ける方法もあり、これがプラスに作用する場合と、逆にマイナスになる場合とがある。時間的価値の減少はオプション取引支援ソフトSpaceで計算できる。
• 合成ポジション(synthetics)。オプション・原資産を組み合わせて作られたポジションのこと。例えば、ロング・コールは、原資産の買いとプットの買いを組み合わせたポジションに等しい。コール価格が高すぎたり、買えなかったりなどの状況において、原資産を買いさらにプットを買えば、結果的にはロング・コールとまったく同じペイオフを得ることができる。また、相場が下がると思いプットを買い建てたが、相場が上昇に転じたとき原資産を買えば、ペイオフはロング・コールと同じになる。下記の図で、例えば「コールＡの買い」とは、「行使価格Ａのコールを1枚買う」ことを意味する。

ペイオフ (Aは行使価格）	戦略名	相場感	利益	損失	時間的価値の減少効果	合成ポジションの作り方
	ロング・コール (Long Call)	強気	オープン	限定	マイナス	原資産の買い＋プットの買い
	ショート・コール (Short Call)	弱気	限定	オープン	プラス	原資産の売り＋プットの売り
	ロング・プット (Long Put)	弱気	オープン	限定	マイナス	原資産の売り＋コールの買い
	ショート・プット (Short Put)	強気	限定	オープン	プラス	原資産の買い＋コールの売り
	ブル・スプレッド (Bull Spread)	やや強気	限定	限定	Bにおいてプラス	コールＡの買い＋コールＢの売り プットＡの買い＋プットＢの売り コールＡの買い＋プットＢの売り＋原資産の売り プットＡの買い＋コールＢの売り＋原資産の買い
	ベア・スプレッド (Bear Spread)	やや弱気	限定	限定	Ａにおいてプラス	コールＡの売り＋コールＢの買い プットＡの売り＋プットＢの買い コールＡの売り＋プットＢの買い＋原資産の買い プットＡの売り＋コールＢの買い＋原資産の売り
	ロング・バタフライ (Long Butterfly)	あまり動かない	限定	限定	Ｂにおいてプラス	Ｂ−Ａ＝Ｃ−Ｂでなければならない コールＡの買い＋コールＢを2枚売る＋コールＣの買い プットＡの買い＋プットＢを2枚売る＋プットＣの買い プットＡの買い＋プットＢの売り＋コールＢの売り＋コールＣの買い コールＡの買い＋コールＢの売り＋プットＢの売り＋プットＣの買い Ｂ近辺において時間的価値の減少による利益を狙う
	ショート・バタフライ (Short Butterfly)	乱高下する	限定	限定	ＡまたはＣにおいてはプラスだが、Ｂにおいてはマイナス	Ｂ−Ａ＝Ｃ−Ｂでなければならない コールＡの売り＋コールＢを2枚買う＋コールＣの売り プットＡの売り＋プットＢを2枚買う＋プットＣの売り プットＡの売り＋プットＢの買い＋コールＢの買い＋コールＣの売り コールＡの売り＋コールＢの買い＋プットＢの買い＋プットＣの売り Ｂ近辺において相場が大きく動くと思われるときに利益を狙う

これから少しずつ内容を増やしていきます。ご期待ください。