■ データと予測問題
「さや取り一発」を使って、為替相場を予測してみる。ここでは、為替レートを例にしたが、予測期間を限定すれば、商品先物や証券などの相場でも同じ方法によって予測できる。
為替のデータには、ここで説明したデータ(1971年1月から1999年9月まで)を使用した。以下が、グラフである。
データを以下の2つに分けて、「さや取り一発」を使って予測することにした。
このようにデータを分けた理由には、
予測問題は、上記2つのデータから、1999年7月から11月までの為替レート(月平均)を予測することである。
■ 「さや取り一発」が相場予測に応用できる理由
「さや取り一発」はさやの収れんを分析するソフトであるが、価格の「指数的減衰(exponential decay)」を数学モデルとしている。1971年1月から1999年9月までの為替レートの動きを見て、「指数的減衰」曲線を中心トレンドとして、為替レートが変動していると仮定する。
そこで、まず1971年1月から1999年6月までのデータを、「さや取り一発」を使って「指数的減衰」曲線にあてはめてみた。Dayであるが、
と、「月数」として定義すれば、為替レートの長期的な円高推移は「さや取り一発」によって簡単に解析できる。
結果を以下のグラフで示す。
「重みあり」「重みなし」の差異はそれほどないが、p値などによると「重みあり」の最小二乗法による最適化結果の方が、「あてはまり」がよいことがわかる。赤い線を長期的「中心トレンド」とすると、為替レートはこの曲線(指数的減衰曲線)のまわりをランダムに揺らいでいることがわかる。また、99年の6月以降は、このトレンドに回帰している様子もうかがえる。
したがって、「さや取り一発」の数学モデルを使って、このような市況なら予測可能と考えられる。
■ 予測結果(1999年10月21日実施)
1971年1月から1999年6月までのデータによって予測した結果をまとめた。上限と下限は95%信頼区間の上限値と下限値を表わしている。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
この結果を見ると、7月と8月のレートが95%信頼区間からはずれていることがわかる。また、10月には1ドルがかなり100円に近い水準(場合によっては100円を割込む)になっている可能性も出ている。これは実際の市場レートを見ると、あまりよい予測結果とはいえないだろう。
そこで、データを1987年8月から1999年6月までとして、もう一度、予測してみた。つまり、データをヒストグラムに見られる2つのピークのうち、1つのピークにしぼったわけである。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
これで、95%信頼区間の中に実際の為替レートがぴったりと入ることが確認された。したがって、1999年10月と11月の為替相場が1987年8月以降の円高推移の延長線にあるならば、ここで示したように11月末までに月平均でドルが100円(瞬間的なレートは無視。データは月平均である)を割り込むことはないはずである。が、トレンド曲線と実際のレートのランダムな変動をよく見ると、100円台を割り込むことは1年から2年のスパンで見ると、じゅうぶん起こりうる。また、仮に2000年からそのような為替レートが日常的になったとしたら、1971年1月からの円高推移を見ると、ドルが100円以下で推移する時代が本格的に到来したといえよう。
予測結果をグラフで見てみよう。
残差分析を見ると、為替レートが「指数的減衰」モデルによって予測できることがよくわかる。
■ 予測結果の検証(1999年12月6日実施)
99年10月の月平均レートは105.97円で、11月は104.65円であった。
10月のレートは予測範囲内であるが、11月は下限値を少し下回った。予想以上のスピードで、円高は進んでいるようだ。