|
【結成、別大殴り込み艦隊】 |
|
スタート時間が刻々と迫ってくる。
皆黙々とウォーミングアップでトラックを周回しているのを後目に、私はストレッチのみにとどめアップなしにしようかと真剣に考えていた。 |
|
というのも、自己ベストである長野マラソンでも、たまたまアップする時間がなかったのが幸いして、序盤オーバーペースになることもなく好結果に結びついた印象が強く残っていたからである。 |
|
ましてや今日のように暖かくなるのが確実であれば、いたずらなウォーミングアップは体力の消耗、オーバーヒートを招くのではないか。
ギリギリまで迷ったあげく、トラック2周、800mだけ走った。 |
|
いよいよ12時を回り、競技場に静寂の一瞬が訪れる。
心臓はやや鼓動が速かったが、気持ちはなぜか恐ろしいほどに落ち着いていた。
願いはただ一つ。30kmまで設定ペースで運んでくれる適当な集団に会えますように。 |
|
平成14年12月15日午後12時2分、ついに運命の号砲が鳴った。
歓声と花火の轟音に包まれながら、競技場を流れるように1周して行く。
1周1分30秒、いやちょっとそれより早いか。
ほぼ設定ペースであることを確認して、競技場を後にした。 |
|
程なく、1km地点を通過。
というよりも、手元の時計の残りタイムわずかとなることによって、間もなく距離ポイントということがわかる。
案外これは使えるかも知れない。 |
|
残り10秒、9、8、7、6、…いま。
ラップボタンを押すと、そこには「5秒」の表示がしばらくとどまっていた。
つまりこれは設定の3:48より5秒早い3:43がラップタイムであったことを示す。
いきなりドンピシャの巡航速度だ。 |
|
それにしても、まだランナーが大勢いて、集団も何もあったものではなく、ただ流れに合わせて走る状態が続く。
|
|
次の2km地点だ。何っ、もう来たのか。あわててラップボタンを押すと、「9秒」の表示。
しまった、3:39か。ちょっと速すぎる。慎重にスロットルを絞る。
あまり神経質に上げ下げすると、かえって疲れてしまうので一発で調整できることを願う。 |
|
3kmはどうか。9、8、7、6、いま。6秒。3:42だ。これでいい。
そうか、これは面白いゲームになるかも知れない。
1kmごとにやってくる距離表示を、ちょうど残りが「5秒」となるように叩いてやればいいのだ。
コントローラーは自分の体。操作は、加速か減速の2つのみ。
できればどちらの操作もせずに残り5秒でボタンを叩けるのが一番美しい、という訳だ。 |
|
当初は抜いていくランナーがやや多かったが、ほぼ等速に落ち着いた。
頼む、この集団が命綱だ。何とか30km地点まで楽に運んでいって欲しい。
それが「別大殴り込み艦隊」となるのだ。 |
|
5km地点通過。通過タイムは18分30秒。上出来だ。
中関門の19分を見事にクリアし、しかも早すぎることはない。 |
|
次は6km。表示は「3」。3:45か。まあいいだろう。そしてここは給水地点だ。
スペシャルは次の11kmからにしたので、ここはゼネラルドリンクの水を取っておこう、と思ったが…
|
|
「あ、ない!」 給水テーブルはあったのだが、需要に供給が追いつかないらしく、コップが無かった。 しまった。今日のような気温が上がるときは早めに給水が必要なのに…。次は絶対取らねば。 |
|
10km通過。37分09秒。これまた絶妙。この先、三田尻大橋でコース中数少ないアップダウンの一つ。
周囲のペースがやや鈍る。妙見山モードで前に出てしまいたいところだが、ここは自重して周囲に合わせた。
|
|
昨年、こういうところで前に飛び出してしまい、集団のいないスペースにぽっかりはまってしまった経験があるので、同じ失敗は繰り返すまい。
11km通過、おおやばい。残り0秒、つまり3:48だ。上りだったので仕方ないか。
あやうくアラームを鳴らしてしまうところだった。
|
|
コースはJR山陽本線の北側に回り、市内の繁華街をひた走る。沿道の応援が賑やかだ。
ペースは相変わらず絶妙のイーブンが続いている。やがてまたJRを渡る。
跨線橋のアップダウンがあり、ついつい前に出そうになるが踏みとどまる。
まだここでは集団を出てはならない。 |
|
18km付近。前方に見覚えのある姿。変衆長さんだ。
共に40分切りが目標だが、序盤にかなり前の方に抜けていったのを覚えている。
ようやく追いついたというわけだ。
しかし、イーブンのこの集団に追いつかれるようではまずいのではないか。
併走しながら、声を掛けた。 「この集団!この集団が別大です!」 |
|
19kmあたりでうずらさん、かのんさん、サケモットさんの応援を受ける。
余裕の敬礼で応える。さらに前方、また見覚えのあるランナー。
最近、勤務後の夜の練習でよく一緒に走っている神山氏。
彼もまた40分切り狙いで、スタート前も一緒に集団で走りましょうよと話をしていたのだった。 「お待たせしました、この集団です、行きましょう!」 |
|
自発的に声を出すことで、何か余裕が出てきた。気のせいか、ペースが上がったような気がする。
その頃、対向車線が慌ただしくなり、いよいよ先頭ランナーとのすれ違いが近づいてきた。
|
|
先頭に現れたのは、ゼッケン2番の外国人選手。やや小高くなった丘の下り際ですれ違った。
TVを意識し、センターラインに寄り、右の拳を高く掲げ、親指を上に立てた。
我ながら大それたパフォーマンスだ。それだけ余裕があったということだろうか。 それ以降、後続の選手と次々にとすれ違い始める。気合いが入るポイントだ。 やがて、中間点が近づいた。通過タイム、1時間18分33秒。 ううむ、何とも微妙なタイムだ。 後半のための余裕を考えれば1時間17分30秒ほどで通りたいところだが、定刻運行を重視したため、若干遅いような気がする。 残り後半を、1時間21分で走れるのだろうか。 ちなみに過去最も速かった後半は、まさに2年前のこの大会で、1時間22分53秒であった。 |
|
そして22km付近でついに折り返す。
昨年このあたりでしげおっちと激しいバトルを繰り広げていたところだ。
そのときは徐々に離されてしまったことが思い出された。
それにしても、今回はしげおっちをはじめ故障等で防府を欠場したランナーが多くて残念でならなかった。
|
|
見知ったランナーと次々にすれ違う。先程の神山氏、変衆長氏は後方となっていた。
知らぬ間にこちらのペースが上がっていたのか。そしてやや置いて我が弟、はやが現れた。
すごい!2時間50分を切る位置だ。すぐ後ろにブッちゃん。今日は背中を見せる気はさらさらない。
|
|
向かい側のランナーの密度が増してきて、まこてぃんさん、NAMIさんとすれ違う。
「関門突破!」と声を掛けた。しかし、その後にはもう収容バスが迫っていた。
何と、サブスリー級のランナーが最後尾集団として扱われるなんて。 |