センテナリオ
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質疑応答

 

マンションと地域の関係について

桐田

 歩いて暮らせるまちづくり推進会議の事務局を務めております桐田と申します。 本業が都市計画なものですから、 マンションと地域のつながりの観点から絹川さんと平家さんに質問をいたします。

 今回のプロジェクトは地主さんが土地に愛着を持っていて、 ずっと住み続けるためにこのマンションを作られたことが大きな特徴だと思います。 コミュニティにとっても大きな意味があると思います。 Uコートの場合は48世帯ですから1棟単位でコミュニティが出来上がっていると思いますが、 今回は町中でマンションが建ち上がったわけですからマンション単位のコミュニティの他に、 ご町内との関係も密になろうかと思われます。 マンションと町内の関係がどうなっているのかはとても興味のあることであり、 それはこれからのまちづくりを考える上でも大きなテーマになっていくだろうと思いますが、 そのあたりはいかがですか。

絹川

 痛いところをつかれた質問ですが、 二つの観点からお答えすることができます。

 ひとつは北側の人たちとの関係ですが、 このセンテナリオを決して好ましいものとは思ってられないはずです。 でも、 先ほど安原さんは上手な言い方をされました。 「他力」や「練れた」という言葉です。 何年か経てば、 安原さんが設計して下さったこの建物の良さが分かっていただけるだろうと期待しています。

 もうひとつは南側の住人との関係です。 南側の人々は、 我々と北側の人々がわあわあやっている様子を静かに見ていて下さいました。 それについては、 私はありがたかったと感謝しております。

 我々にとってもうひとつ嬉しい申し入れが、 西隣の虎屋さんからありました。 西隣は「虎屋茶寮」という虎屋さんの風流な喫茶室があるのですが、 そこに小さなお地蔵さんがまつってあります。 今日虎屋さんが通りすがりに「来年はセンテナリオのみなさんと一緒に地蔵盆をやりましょうよ」と言ってくださいました。 多分、 虎屋茶寮のアプローチとセンテナリオのアプローチに、 和風の緑のしつらえで連続性を持たせたことを評価して下さったのではないか。 私はそんな風に解釈しました。

 ですから、 北側と南側ではマンションへの温度差が随分違うんです。 北側との関係について、 今は安原流に言えば「他力で練れた」と考えるようにしています。 そのうち、 北側の人々とも丸くなるような関係性が持てるのではないかという予感もしています。

平家

 まちづくりセンターで仕事をしていると、 マンションと町内の関係性が大きな課題になっていることはすごく感じています。 いわゆるマンションをめぐるトラブルは町中のことであって郊外はそうでもないと当初思っていたのですが、 実はそうでもなくて、 郊外であるはずの山科区のマンションでも町内の人がマンションの人たちとどう付き合えばいいのかをテーマにされています。 よく聞いてみると、 実はマンションだけが問題ではなく、 地域に何か土地利用の変更が起きることによって地域の性格が変わってしまうことへの対応を求めていることが分かってきました。

 もちろん新しく何か出来ることで地域が悪くなった例ばかりではありません。 うまくいった例を紹介すると、 右京区に最近出来た建て売り住宅の開発の場合は、 町内会を作るときに入居者と地域の人が話し合いをした結果、 一緒の町内会を作ることになりました。 今は地蔵盆や運動会も活発に行われ、 町内全体が活性化したとのことです。

 いろいろ聞いてみると、 地域の人々は開発内容(土地利用)がどんなものかが早めに分かればそれに対応されているようです。 事前に分かった方がその後の開発がうまくいく事例は多いようです。 全然知らされなくて突然工事が始まると、 後々まで問題が尾を引くような気がします。

 マンションの場合は、 マンションのみで町内会を作る場合とその地域の町内会にそのまま入るケースがあり、 どちらがいいかはそれぞれ話し合って決めるのがいいと思います。 ただ、 マンションに反対するばかりでなく、 町内に積極的にマンション住人を迎えようというケースもあります。 例えば、 本能学区のまちづくり委員会では学区内のマンションとの交流を深めようと動いていますし、 あるいは委員会そのものにマンション住人が参加してまちづくりについての話し合いを続けているという例もあります。 また、 最近の話では下京区の有隣学区では、 マンションの子供達のための地蔵盆を地域の人々が催したところ、 マンションの方から町内会に入りたいという声が出てきて、 コミュニティ作りに役立ったという例もあります。

 また別の例では、 ある学区に出来たマンションで長いこと近隣から反対の声が上がっていたのですが、 そのマンション住人が「近所の目が気になってしょうがなかった」ということを近所の人に正直に打ち明けたのをきっかけに、 町内の交流が出来るようになったというケースもあります。 マンション反対があったことを知らずに入居している人も大勢いますから、 町内の方でも「彼らが悪いわけじゃない」と態度をやわらげ、 交流の芽が生まれてきたようです。

 そんな事例を見聞きしていますと、 やはり企画するディベロッパー側に、 地域やコミュニティのことを考える責任があるんじゃないかと思います。 今はマンションを建てたらそれで終わり、 後は管理会社が来て仕切り、 肝心のマンション住人は地域と何のつながりもないという例が多すぎます。 そうではなく、 ディベロッパー側が一定期間地域に対して責任を持つ仕組みがあればいいと思っている次第です。

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