カナディアンロッキーへツアー(三)

上西 耕三

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 山旅も行程の半分を消化すると、メンバーの大体の個性や人柄もわかりかけてくる。今回、メンバーの中に3組のご夫婦がおられるとのことで、ちょっと心配していたのだが、皆さん気さくで話しやすいし、個人でツアーに参加の私達との違和感もなく、夕食のひとときはいつも和気あいあいの雰囲気であった。

 個人参加の女性で、異色のコンビとなったのがKさんとHさんだろう。
Kさんは言葉の語頭語尾が「あ、そォ〜」や「〜オホホ…」といったおっとりとした上品な口調で、後半になってから呼び名が「巫女(みこ)」さんになり、あげくは「姫」というニックネームをいただき、ツアーのムードを明るく和やかに盛り上げてくれた。
 私が特に気になったのがHさんである。一見どこかのお嬢さんかしらと思いきや、ヨーロッパのマッターホルン・モンブラン・アフリカのキリマンジャロ等の山頂をきわめた、山男ならぬ山女であったのだから驚きである。それにスキューバダイビングもやるそうで、まさにスーパーウーマンであった。
 私達のツアーメンバーは、ツアーメンバーを含め個性豊かな集団となり、カナディアンロッキーを満喫していたのである。

 5日目はトレッキングではなく、専用車に乗って、ジャスパーまでの観光スポットを巡る、ロッキー縦断観光日であった。このコースはアイスフィールドパークウェイとも呼ばれ、カナディアンロッキーの魅力的な眺めの良いドライブコースである。
 最初に訪れたのはボウ湖である。静かな水面に映る山々は、鏡に映したように湖面に対称となって観え、私達は簡単の声をあげながらシャッターを切った。
 季節によって素晴らしい湖面の色をかもし出すペイトー湖とミスタイヤ谷は、カナディアンロッキーの絶好の観光スポットである。アイスフィールドパークウェイの中での目玉は、やっぱりコロンビア大氷原の観光であろう。コロンビア氷原の一部であるアサバスカ氷河の上を節嬢バスで横切ると、その奥の稜線がコロンビア大氷原であった。私達は雪上バスから降り、氷河の上を足元に注意しながらの見物である。3000m級の山々が大氷原を取り囲む様にそびえており、私達は次から次へと息を呑むスペクタクルなロッキーの大自然を楽しんだ。
 夕方、ジャスパーのホテルにつくと、私達はまたまた町へ繰り出した。道路沿いに細長く並んだジャスパーの町は、自然に近い、人里離れた感じのする町であった。私が最初に感じたのは、町の大きさに比べ、おみやげ店が多いことである。多分観光客目当てだろうが、店内は生計が立つのだろうかと思える程、寛さんとしていた。

 翌日、私達はまたまたトレッキングスタイルでエディスキャベル山のハイキングである。エディスキャベル山の名前の由来は、世界大戦時に功績のあった看護婦さんの名前との古都で、珍しい命名だなぁと思っていたら、その名の通りエディスキャベル山の北壁の右手に天使が翼を広げたようなエンゼル氷河が姿を表わした。針葉樹林を抜け、展望台に立つと、巨大なエンゼル氷河がまさに碧色空に舞い上がらんとするかの様に観えるから、その迫力は壮観である。
 しばらく登ると、絶好の見晴らし場になっていて、ちょうどランチタイムとなった。ここからの眺望を楽しみながら食べる、ボリュームのあるサンドイッチは一段と美味しい。私達は各自のんびりとした屋までのぜいたくな時間を楽しむ。日本だと、すぐ次の目的地への移動だろうが、ここはカナダの国。皆んなが満足するまでゆっくりとした時間を費やす。Kさんがスケッチブックを取り出し、ここから観える山々のスケッチをしはじめた。ちょっと沢野ひとし風のタッチに絵の具ですばやく色をつける。そのてきぱきとした早さに感心していたら、アッという間に出来上がった。

・・・続く・・・


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