ヤベツの祈り・今に留まっていることを許さない



人は都市に集まり、地方は静けさを増した。
少子高齢化社会が深刻となった日本、
15歳から65歳の労働人口は右肩下がりに減少している。
一億総活躍時代だと時の首相は言うが、
定年は、65・68・70歳と、引き伸ばされ、
正規、非正規を問わず、年齢を問わず、性別を問わず、
すべての人が働かなければ、
日本の社会は機能しなくなるのは目に見えている。
趣味悠々などと言ってはいられない時代が来てしまったのかもしれない。

組織人間であることから抜け出そうとする脱サラは遠い昔の話になったのかもしれない。
今や、団塊の世代の多くが・・、
人生の第二の出発という意味か、新たな分野に転じ始めている。

人生の転機とでも言える時、
進学であったり新就職であったり、結婚もそうかもしれません。
もっと大げさに言えば、
それ以前の自分から新しく生まれ変わろうと欲するときとでも言えなくもない。
「人生何をなすべきか・・・・」、
「残された人生、何をなすべきか・・」などと考え始めるときなのかもしれません。

自分の進むべき道を判断し選び取ろうとするときと言えます。
しかし、その判断さえ、正しいという保証など何ひとつとしてないわけです。

自分の考え方ややり方の正しさなど、
だれが確かで間違いないなどと保証してくれると言うのでしょうか。
考えれば不安なものです。

新約聖書のピリピの信徒への手紙の中でパウロは次のように言っています。
「恐れおののきつつ自分の救いを達成するように努めなさい。
あなたがたの内に働いて、
御心のままに望ませ、行わせておられるのは神であるからです。」

(新約聖書・ピリピの信徒へのパウロの手紙・2章12〜13節・新共同訳聖書)

私たちの心に働いて志しを立てさせ、
事を行わせるのは神ご自身だと言っているのです。
つまり、神の声を聞こうとさえしていれば、
自分を使って事をなされるは神ご自身なのだということでしょうか。

日本人の感覚からは、大きくかけ離れているようです。
自分の可能性を信じて、自分が正しいと思った道を、
自分の思う通りに、たゆまず歩み続けることが、
素晴らしいことだとされる日本です。
しかし、自分の思う通りに事が運ばない・・・・・多くの場合がそうでしょう。

さて、ここで”ヤベツの祈り ”を思い出してください。
ヤベツが神に祈ると、
神はヤベツの願いを、求めを聞き入れられたという旧約聖書の記述です。

「どうかわたしを祝福して、わたしの領土を広げ、
御手がわたしと共にあって災いからわたしを守り、
苦しみを遠ざけてください。」

(旧約聖書・第1歴代誌・4章10節・新共同訳聖書)

ヤベツは、自分の存在が小さな存在であることに望みを捨てず、
大胆に神に求めることによって、大きく一歩を踏み出したのです。
とても謙虚でポジィティブな祈りなのです。

この祈りは、
自分の枠や殻に閉じ込もっているのではなく、
目的を、ビジョンを明確にして、
自らの持っている才能や能力を増やすべきことを教えているのです。

決して、逆風のときの祈りではありません。
大きく帆に風を受けとめて進もうとする祈りなのです。

自分の持てる領域や範囲を広げようと、前向きに考え始めるとき・・・。
そして祈り求める・・、
その祈りは応えられて、
領域が広がり、その結果まわりからの期待も責任も増加します。
領域が拡大するということは、
領域が広がったのと同時に責任も増し加わることを意味しています。
そのような時こそ、後半の祈りの意味が実感として分かります。

「・・・御手がわたしと共にあって災いからわたしを守り、
苦しみを遠ざけてください。」

新しい職場で新しい仕事に就いたとき、
新たな分野に挑戦し始めたとき・・・、
自分の持っている、
今までに習得してきた技術や知識では対応できないことも起きてきます。

だからこそ神と共にあることの重要性が増してくるのです。
それが神への信頼なのです。
自分への信頼ではなく、自分の考えややり方に頼るのではなく、
神に聞くということなのです。
神に聞き従ってさえいれば、災いも苦しみも遠いものになるのです。
神に聞くとは、自分の判断を疑ってみることですから、
自己判断の危険性を教えているとでも言えそうです。

その場に留まっていることを許さないのが、ヤベツの祈りです。
決して、今に留まることを願うような後ろ向きな祈りがヤベツの祈りではないのです。
自分の思う通りになるように祈ることがヤベツの祈りではない。

何が前方にくるのか・・・、
ワクワクして待つことのできる何かがあること・・・。
だから挑戦しがいがあるのではないでしょうか。
決して、災いや苦しみから逃れるためだけの祈りではない。


北白川 スー

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Wrote up on January 15, 2016.