長距離射撃の装備と実際

 
MIDWEST PALMA CHAMPIONSHIPS への参加

作成 日本マスターズライフル射撃連合

 
小澤常雄 03th September 2002
Web版作成、注釈 榊原嘉仁(櫛風沐雨) 14th September 2002,
last modified 29th Sep. '02

目 次

A 装備編

1. 銃
a. 銃身
b. サイト
c. トリガー
d. 撃針
e. ストック
f. 重量
g. 陽炎ベルト
h. 使用できる機関部
(アクション)

2. 実包
a. 実包の仕様
b. ハンドロード機材

3. 射線で必要な機材
a. スポッティングスコープ
b. 椅子
c. 風速計
d. マット
e. コート類
f 帽子
g. 安全小物

B 実射編

1. 出国
2. 米国入国
3. 射撃場
4.スコアシート
5. 開会
6. PIT(監的壕)
7. スコアキーパー
(Scorekeeper、Scorer, 記点手)

8.射撃線の号令

9. 射撃
a. 6月27日(練習日)
1200ヤード射撃
b. 2日目(6月28日)の結果
閑話休題 (Pig Roast Party!)
c. 3日目(6月29日)の結果
d. 4日目(6月30日)の結果
e. フロントインサートの選択
10. 風の変化への対応

11. 健康管理
a. 熱中症対策
(1) 水と塩分の補給
(2) 服装
b. 食事
c. トイレ

C 帰国

1. 移動
2. ミルウォーキーの銃砲店
3. 出国手続き
D 費用
E 最後に

おまけ
機材調達先
輸出許可証の英訳文


諸資料リンク

射表, パルママッチ 射撃諸元表

英語,
1000ヤード参加者への情報,
示点方法,
英語圏長距離射撃のルール

今回参加した
Mid West Palma,
Wisconsin Long Range Championship
の結果

2002 Lodi でのパルママッチ写真集




2002年6月26日9時、Palma Match に参加する為成田に向け出発。
 

試合が開催されるのはウィスコンシン州 LODI、ブルズアイの櫛風沐雨氏からメールで参加の打診が有った時、Lodi? どこだ? ウィスコンシン、マジソンの北、マジソン?あ、あの橋の有る所かとんでもない勘違い(マジソン郡の橋の所在地は隣のアイオワ州だそうです)をしつつ参加を了承しました。
 

思えば銃のPalma仕様への改造から始まり試合に参加まで1年半、ずいぶんと時間が掛かりました。

2000年の秋、20年使い込んだ愛銃の銃身交換、どうしようかなと考えていた時に偶然見つけた櫛風沐雨氏のHPで見かけたPalma Matchの記事。

何気なく銃の規格を問い合わせたのが始まりで、銃の改造に取りかかりましたが判らない事だらけで意外と大変でした。
 

このレポートは前半が銃等の装備、後半が現地での射撃で構成されています。

これから大口径射撃を始める人、長距離射撃にトライしてみたい人の為に装備の調達先、費用等も出来るだけ入れるようにしています。

これからの人は参考にして下さい。
 
 

このレポートは私の主観と印象に基づいて作成されています。

記憶違い、引用の間違い等が有るかもしれませんがご容赦願います。


A. 装備編
 


1. 銃
 
今回持って行った銃はウインチェスターM70(POST64、Cal.308WIN)
改造後の仕様は下記の通り。
    a. 銃身
  • メーカー Krieger
  • 銃身長 30インチ
  • 山径    0.2980
  • 谷径    0.3065
  • 転度    1-13         (櫛風沐雨注:単位はインチ、「転度」はツイストのこと)
  • 太さ #16(Light Palma)
  • (この他にシーレンの予備銃身が2本有ります)
    Palmaには薬室寸法に規制が有ります(Bisley-150 Rule)
  • 薬室のネック径    0.3440インチ以上(リーマの図 E,F)
  • スロート径           0.3085インチ以上(リーマの図 G )
  • スロート長           0.015インチ以上、0.020インチ以上が望ましい。(図のN?)
  • スロート長は実包全長 2.800インチのとき弾頭のジャンプの寸法がこれだけ有れば良いと解釈しました。
     
    私の銃の薬室は標準の308WINで切られています。
    特注でリーマを作ろうかと思いましたが、製造誤差を考えると寸法を指定してもその通りに出来るかどうか、とのアドバイスがあり既製の308のリーマを使いました。
           タイトボアバレルと腔圧
    “ドライビングバンドエリアの狭い155grの弾頭とタイトボアバレルの組み合わせは腔圧を上昇させない”、と聞いていましたが実際は異なるようです。
     
    Kriegerのバレルで撃った薬莢は直後に薬室に装填しようとしても入らない物が出ます。同じリーマで薬室を切ったシーレンのバレルでは起きませんので、明らかに銃身が原因と思われます。
     
    銃身内径は製造公差により通常より小さめの物もあるはずですので、もしかしたら内径が小さめで圧が上がり易いのかもしれません(Kriegerのバレルは内径のバラツキが大きいと言うウワサが有ります)
    この為、薬莢はすべてフルレングスを掛けて使用しています。
    米国のクレイマーツールのHPで検索したところ308には4種類のリーマが有りました。7.62NATO,308WIN、308MATCH、308PALMAで各寸法は以下の通りです。
    部位
    7.62 NATO
    308 WIN
    308 Match
    308 Palma
    ルール
    A
    0.4370
    0.4370
    0.4370
    0.4370
     
    C
    0.4725
    0.4700
    0.4700
    0.4696
     
    D
    0.4560
    0.4550
    0.4550
    0.4550
     
    E
    0.3460
    0.3462
    0.3430
    0.3400
    0.3440<
    F
    0.3460
    0.3442
    0.3430
    0.3400
    0.3440<
    G
    0.3110
    0.3110
    0.3095
    0.3085
    0.3085<
    H
    0.2990
    0.2990
    0.2990
    0.2970
     
    K
    2.0250
    2.0250
    2.0200
    2.0200
     
    L
    1.3560
    1.3540
    1.3540
    1.3540
     
    M
    0.3200
    0.3210
    0.3120
    0.3090
     
    N
    0.1500
    0.0900
    0.0750
    0.0750
     
    O
    0.2000
    0.2000
    0.2000
    0.2000
     
    Q
    20deg
    20deg
    20deg
    20deg
     
    R
    2.5deg
    1.45deg
    1.5deg
    1.5deg
     
    308 Matchは、M1A等のナショナルマッチ用の銃に使います。
     
    308 Palmaは、US−Palmaです。
     
    JGS にも308US-Palma のリーマが有りますが寸法は不明です。
     
    クレイマ―の308 WINで薬室を切った場合の弾頭のジャンプは0・050インチです。
     
    特注にする場合は308 Palmaのネックとスロート寸法をルールに合致させればOKになると思います。
    銃身交換費用は HIROさんに問い合わせてください。
    (櫛風沐雨注:HIRO さんは、ガンスミスの滝田浩氏 http://www.gunsmith.jp/)
     

    b. サイト
    フロント
  • RPAのラダー(18mm、$125.00)
  • 水準器(18mm、$30.00)
  • インサートはセントラのハイエンド(国内で調達)
  • リア
    • RPA―トラッカー(サイドマウントで取り付け、$270.00)
    • ワルターゲーマン アイピース(視度補正-3.5to+3.5、$113.00)
    フロントサイトは必ずしもラダーが必要とは言えません(米国ではバレルバンドと着脱式のフロントサイトを使用している人もいました)が、ラダーでない場合にはチークピースは可動であることが必要です。
    ラダーの場合には予め計算した量だけ動かせば各距離の変更が簡単にできます。
    フロントサイトのインサートはセントラのハイエンドを選択しました。
    私の場合、老眼対策で視度補正レンズ付のアイピースを使用しています。
     
    (櫛風沐雨注:±1.5の制限がある世界マスターズ選手権と異なり、パルマではレンズによる視度補正に制限はありません。ただし、リアまたはフロントの一方にのみレンズ挿入が許されます)

    視度を補正すると、標的もアイピースも大きく見えますが、可変タイプですと条件によっては丸く見えません(中の羽根の枚数の多角形に見えることがあります)。

    その為、セントラの3.0〜4.0(リング幅1.3mm)を用意しました。
    通常使うのは3.5mmです。
    インサートのリング径に付いては標的の黒点が小さい(径44インチ≒110cm、計算上は大きいのですが距離が遠いので小さく見えます。300mに換算すると約37cm)ので3.0mm以下が必要かと思いましたが、実際はSBの感覚で大丈夫です。

     

    米国の長距離射撃のフォーラムで、同じ疑問(リング径)を持った人が書き込みを行い、その回答では3mm以下は不要、大体3.0〜4.0mmの範囲が多いようです。もちろん気象条件によって3.0以下、4.0以上もありえます。

    リアサイトはウインデージ調整が大きいものでないと使えません。

    少し風が吹けば30クリック以上(8MOA)も修正が必要に成ります(これでも風が有って調整量が大きいとは言えません)

     
    長距離射撃用のサイトのウインデージ調整は30MOA(120クリック)あります。
    1、000ヤードで3時方向の横風30mphの場合の調整は114クリックです。
    最大でこれだけ調整できる余裕が必要です。
     
    どのメーカーでも右利き、左利き、サイドマウント、ウィーバータイプトップマウント、ANSレール用を用意しているようです。
     
    (櫛風沐雨注:調整クリック方向がイギリスと、日米独で異なるので、NRA-US/ISU Directionと指定する)
     

    ラダーサイト                                                                水準器

     

    トラッカーサイト                                ADJアイピース(視度補正レンズ付き)

    c. トリガー
    トリガーはウインチェスターのマッチトリガーが付いていましたが、1.5kgまで上げると重さにバラツキがでて(100g位ばらつきます)使えないことが判り、ジュエル2ステージと交換しました(国内で調達、4万円くらい)
    ジュエルに取り替えるに当たり、そのままでは取り付けられない(マッチ用トリガーの為にアクションのシャーの入る溝が短く加工してあります)ので、トリガーハウジングの後端を削り落としてはめ込みました。
    トリガー内部は必要部分を研磨し直してあります。
    使用した砥石はアーカンサスのソフト、ハード、さらに京都産合砥石で鏡面仕上げして有ります。


     
     

    d. 撃針
     
    撃針は当初はロックタイムの短縮の為、スプリングだけ強化型に交換しましたが、コッキングノーズが破損(金属疲労)したため、コッキングピースの製作時にスピードロックシステムのチタン製と交換しました。
    既製の撃針(コッキングピースと一体)で合う物が無くコッキングピースは特注になりました(代理店に有った3種類の撃針のどれも合いませんでした)

    チタン撃針とスプリング  破損したコッキングノーズ

    一番下のスプリングがオリジナル、上がスピードロックのスプリング(張力不明)
    上から2番目が30ポンドのスプリング(このスプリングの時にコッキングノーズが破損)

    e. ストック
     
    クルミ、オイル仕上げ。20年前に特注で作った物(AFA製)
    バッドプレートはパックマイヤー製のハンティング用を使い、規則に合わせて0.5インチ以下の窪みに成るように直しました。下の写真が大体の仕上がりです(最終的に細部が異なります)
    マクミランのファイバーストックはなぜかシックリしません。
    セミインレッティングで作って貰うとグリップとトリガーとの距離等、微妙な差が出ます。日本でインレッティングしたほうが良いと思います。

    f. 重量
     
    銃身と機関部、ストックの組み合わせによる重量は下記の通り。
    (kg)
    バレル
    バレルドアクション
    クルミストック
    ファイバーストック
    Kriegr-30インチ
    3.10
    5.65
    6.25
    Shilen-30インチ
    3.20
    5.75
    6.35
    Shilen-29インチ
    3.15
    5.70
    6.30
    ファイバーストックはマクミランプロン(Adj.チーク、Adj.バットプレート付き)
    どの組み合わせでも制限の6.5kgをクリア出来ます。
    クルミストックとの組み合わせなら1段上の#15の太さの銃身まで使えます。


    (櫛風沐雨注:ファイバーストックもモデルやメーカーによって軽量化されたものも出てきています。Robertson H&H モデルのグラスファイバーストックは軽量でグリップサイズが小さく、長距離射撃射手の中で人気があります)
     


    g. 陽炎ベルト
     
    銃の付属品として陽炎ベルトが必要です。
    陽炎対策と言うよりは、銃身の直射日光反射の防止の意味合いが強いです。テープを銃身に張っている人もいました。
     
     
     

    h. 使用できる機関部(アクション)
     
    長距離射撃専用以外のアクションを使うにはいくつかの条件が有ります。
     
    (1) サイトが取り付けられる
    長距離用のマイクロサイトにはサイドマウント、ウィーバーマウント、ANSレールの3種類が有ります。このどれかのマウントが取り付け可能ならOKです。
    (2) 防水対策
    雨でも競技が行なわれます。その為、中に雨が流れ込まないよう対策が必要です。専用アクションはポートが横向きですが普通は上部が開いています。対策としてアクションスリーブや幅広のウィーバーマウントを取りつける必要が有ります。
    (3) 競技用トリガーの取りつけ
    1.5kg以上に調整できるトリガーが必要です。純正またはオプションで競技用トリガーが有るか確認して下さい(2ステージの方が良いと思います)

    (櫛風沐雨注:長距離射撃専用アクションには、RPA Quadlock、Millenium、Paramount、Swing があり、これらはほぼ同一設計により製作されています。外見では区別しにくいくらい似ています。推進薬を Over Charge 気味に詰め込み高弾速を狙う長距離射撃用に頑丈に作られています)



    長距離射撃専用以外の市販されている機関部(アクション)の得失
    a)レミントン
    タイトボアバレルとの組み合わせではエキストラクターの強度に不安が有ります。出来ればサコータイプにした方が良いと思います(要加工)
    雨対策にはアクションスリーブの取り付けが可能です。
    b)ストールパンダ
    ボルトハンドルの強度に不安が有ります。無理をすると簡単に剥れるそうです。
    ただし、発生するのはなぜか日本だけとの噂が有ります。米国では聞かないそうです。
    注文する場合は、エジェクターの有無、ボルトハンドル、ローディングポートの指定の必要が有ります。
    ビッグボアパンダならANSレール、サイドマウントネジ加工がされています。
    c)ウインチェスター
    現在のPOST64(プッシュフィードタイプ)とPre64タイプ(コントロールフィードタイプ)とも機関部にサイドマウント用のネジ穴が加工されていません。
    POST64タイプのエキストラクターはレミントンより強度は有りますが、条件によっては簡単に破損します(交換は簡単です。5分掛りません)
    トリガーはジュエルに交換の必要が有ります。
    オリジナルは1ステージの為、引き味は“割り箸ベキィ”と揶揄されるくらいで、そのまま使うには馴れが必要です。
    資金に余裕が有る人はオリジナルのPre64の使用をお薦めします(コンディションによりますが新品同様オリジナル箱付ならパンダが2丁買えます)
    d)その他のアクション
    ネシカ、バットと色々あり、資金と好みになります。
    要は充分な強度と長距離射撃用サイト、競技用トリガーが取り付けられれば使用可能ですが、ヨーロッパ製のアクションの一部には強度に疑問が有るものがあります。注意してください。
    また、マイクロサイトをアクション側面のレールに取り付けるタイプ(ヨーロッパ製に多い?)については長距離用のサイトが取り付けられない可能性があります。
    サイトのメーカーに問い合わせてください。
    できれば長距離射撃専用アクションの選択を薦めます。許可等の都合で既に所持している銃を改造する場合は、アクションの強度に充分な注意をはらって下さい。

     


     
    2. 実包
    a. 実包の仕様
     
    米国で使用した実包仕様は以下の通りです。
     
  • 薬莢    ラプア
  • 弾頭    シェラ 155grHPBT(櫛風沐雨注:Palma ルールで使用弾頭は規定されています)
  • 雷管    フェデラルマッチ
  • 火薬    ホジドン ベンチマーク(44gr)
  • 初速    2950フィート.
  • 薬量と初速                                                                                        単位 fps
                          4064:IMR4064, BM:Hodgdon Bench Mark
    火薬
    4064
    BM
    BM
    BM
    BM
    BM
    薬量
    47.0
    42.0
    42.5
    43.0
    43.5
    44.0
    最大値
    3018
    2866
    2874
    2902
    2923
    2970
    最小値
    2957
    2842
    2854
    2875
    2892
    2935
    61
    24
    20
    27
    31
    35
    平均値
    2996
    2849
    2866
    2878
    2909
    2953
    σ
    24
    9
    9
    14
    13
    15
     

    左から、IMR4064/47.0gr,
         Hodgdon Bench Mark/42.0, 42.5, 43.0, 43.5, 44.0 gr

     

    初速は日本で測定した時は2,950/Fpsでしたが、米国での実射ではサイトの移動量から見ると、2,800fpsしか出ていない可能性があり再測定の必要が有ります。

    (櫛風沐雨注:1000ヤードを撃つためには標的までに音速以下にならない初速で弾頭を撃ち出さなくてはいけません。諸説ありますが、指定弾頭のシエラ155grHPBTでは、2,950/Fpsといわれています)
     
     


    b. ハンドロード機材
     
    実包の航空機での輸送は梱包込みで5kg以下です。
     
    実際に持ち込めるのは何発に成るかと言えば308WIN(155グレイン弾頭)ならばMTMの50発用ケースに入れて、100発で2.75kgに成ります。
     
    150発までならOK、200発ではオーバーします。
     
    今回は使用する実包が全部で300発を超える計算でしたので、実包で100発、フルレングスを掛けた薬莢を300個持っていきました。
     
    持って行った機材
    弾頭(通販で現地受け取り)
    火薬、雷管はグラント氏に手配していただきました(感謝)

     

    現地での機材一式の写真

    宿泊したモーテルのテーブルを使ってハンドロードをしました。
    汎用のプレスではテーブルがもたないかもしれません?
    小型のハーレル、フード等のネックサイジング用のプレスなら問題ないはずです。
     

    3. 射線で必要な機材
     
    a. スポッティングスコープ

    全天候競技のためスコープは防水仕様でないと使えません。

    全天候と言っても雷の時はさすがに中止になるそうです。まあ原っぱで雷では危なくて出来ないでしょうね(今回は4日間とも晴天でした)
    用意したのはコーワのTSN−821(45度曲視、$700、27倍アイピース付き)
    アイピースは20−60倍ズーム($286)も用意しました。
    対物レンズカバー($65.00)と27倍アイピースカバー($35.00)は必要に成ります。(カバーは660シリーズ用も市販されています)
    スタンドはEwingで、ロッドは3本で全高164cm($240)
         TSN-821                                    接眼カバー          対物カバー   スコープスタンド

     

    米国ではフリーランドタイプの2脚も使われていました。元の部分を足で踏みつけて固定している、と思いきやロッドにスパイク(15センチ位、6インチか?)が取り付けられていました。踏みつけてスパイクを地面に押し込んでいたのです。

    フリーランドの2脚は、スコープを高い位置にすると平らな所でも安定性に不安が有り、スコープと一緒に交換しましたがスパイクを追加(特注で作れると思います)すれば問題なく使えます。

    シンクレアのスコープスタンドにはオプションでスパイクがあります。

                                スコープスタンドケース

    b. 椅子
     
    Scorekeeper(記点手)を勤める時に椅子が有ったほうが楽です。
     
      
    この椅子はコールマンのキャンプ用で、折りたたむとスコープスタンドのケースに入ります。重量制限が有りますので体重の重い方には進められません(人の事は言えない気もしますが)
     
    右の写真の左の方が座っているのは椅子代わりの七つ道具の入る箱です。
    右の写真の左は、はコールマンの椅子に座って記点手を務める櫛風沐雨氏、射手は静岡のI氏(Fクラス)。

    c. 風速計
     
    2機種持って行きました
     
    (1) Kestrel-4000($329)
     風速、気温、気圧、高度等、色々測れますが色々過ぎて操作が良く判りません。
    (2) Skywatch-3D-Elite ($125.98)
    全方向の風に対応しますが、“弱い風の時は風速が出ない”との噂があります。
            
        Kestrel-4000                Skywatch-3D-Elite
     

    Skywatch-3D-Eliteはスコープスタンドの頭に取り付けてみました。

    取付け状態
     


    d. マット
     
    マットは米国で売られている物を使えばOKだと思います。($73.00〜89.98)
     
    私の買ったのは、クリードモアスポーツの物でロールアップタイプ(要するに巻くことが出来るもの)です。折りたたむタイプも有りますが、運搬にはロールアップタイプの方が便利です。

     

       スコープスタンドに刺したマット

    射線の移動には巻いたマットをスコープスタンドのロッドに刺して担いで運びます。

    日本から持っていく場合はガンケースに巻きつけて紐で縛って固定すればOKです。

    私はシューティングバックに入れて持って行きました。
     


    e. コート類
     
    コート、ジャージー、スリング、スリング留め、グローブ類はISSFのルールに合致する物ならOKです。
     
    コートは、NRAルールの物(前面をストラップで締め付けるタイプ)も使用できます。
     
    このタイプは厚さがISSFタイプよりも厚く(特に背中)、締め付けることにより体にフィットします。

     

    NRAルールの射撃コート、ISSFルールのスリング、グローブ着用。
    コートとコートの下のジャージーはクリードモアスポーツ製。
     
    見るからに暑そうですが、メチャクチャ暑いです。
    (櫛風沐雨注:コートだけのせいではなく、緯度が高いのか湿度が低いせいなのか、直射日光が刺すように降ってくるためです。)
  • クリードモア レザーコート サイズ36 ($324.98)
  • シューティングジャージ   サイズ S ($42.96)
  • コートで注意すべき点は背中の色です。白系でないと蒸し焼きになります。
    これから買う人はその点に注意して背中の色は白、ベージュ、シルバー等にして下さい。
     
    クリードモアのコートのサイズ34より2インチ刻みの既製です。既製といっても在庫があるわけではないようです。納期はおおよそ3ヶ月、予約金の請求が有ります(カードの引き落としですが)。
     
    私は身長166cm、体重70kg(?)、腹周りが88cm(中年の腹ボテのオッサン体型)
    サイズ36でOKです。といっても腹はストラップで締め付けてですけど。
     
    口の悪いのは拘束衣と言います。

     


    f 帽子
     
    暑さ対策で必須のアイテムです。
    野天の射撃場の暑さは半端では有りません。熱中症対策からも必ず帽子は着用してください。写真の帽子は軍用のジャングルハットです。

     
     


    g. 安全小物
    (1) イヤープロテクター
    必須です。プロテクターだけでなくイヤープラグも持っていったほうが良いです。
     
    オープンの射撃場では音が拡散します。射線の直ぐ後ろでもプロテクターなしで大丈夫ですが、米国の射撃場では着用を義務づけられます。
    プロテクターの場合、長時間着用すると中で汗をかきます。暑さ対策からも撃つ時以外はイヤープラグの方が良いでしょう。
    (2) シューティンググラス
    これも必須のアイテムです。撃つ時だけでなく監的壕でも必要に成ります。
    バックストップが近い為、着弾時に土砂が飛んでくることがあります。
    出来れば予備も持っていった方が良いです。
    コート類(e項)の写真のシューティンググラスはレイバンシュータです。
    このタイプ(黄色)は大分前に廃盤になり現在入手は出来ません。
    (3) セイフティフラグ($1.50)
    銃の非装填状態の表示に使います。
    撃つ時意外は必ず薬室に差込み装填されていないことを表示します。
    入れていないと注意されます。
     
    フラグを入れた状態                    セイフティフラグ




    B 実射編
     


    1. 出国
     
    6月26日、先発の櫛風沐雨氏、静岡のI氏、石川のK氏の次の便でシカゴに向かうためUAに荷物を渡し、さて飯でもと注文をしたとたんに携帯で呼び出しが?
    (櫛風沐雨注: 円滑な搭乗のためには、前もっての航空会社への連絡が必要です。ユナイテッド航空(UA)は銃器関係の運送約款が1点を除いて完璧に整備されているので、安心して利用できます。UAの場合は自社の英語運送約款が読めない日本人社員と地上員しかいないので銃の持込み料金をいつもとろうとしますから、こちらから約款を前もって教えておかなくてはいけません。UAの約款の異常な点は、日本への銃の持ち帰りを禁止していることだけです)
    すでに搭乗していると思った櫛風沐雨さんからで“税関が銃のチェックをするから”と連絡をうけ、UAのブースに逆戻りする羽目に。
    櫛風沐雨さんたちの銃はすでに搭載されていた為、おろして検査しましたが時間的にはギリギリだったようです。

    税関の検査は輸出許可証と銃番号の照合、持ち出す実包の数のチェックだけです。

    輸出許可証はそのまま持っていって税関内で整備するので、出国直前に税関に申し出て受け取ります。

    4月にアリゾナに行ったベンチの射手からはこのようなチェックは聞いていませんでした。新たに基準が設けられたようです(我々の2週間前に北京の日中対抗戦に行ったマスターズのメンバーはもっと大変だったようです)

    出国時に銃を持ち出す人は、航空会社に通関を申し出て税関職員を呼んでもらって(又は税関に連絡してもらって指示を貰う)下さい。
    9.11テロ後に必要になった米国航空局の指示による書類はありませんでした(ほんとうは書くらしいが航空会社が忘れたのかも、米国で乗り継ぎが有る場合は必要です)
    (櫛風沐雨注:9.11テロ後に変更になったのは、米国ATFの輸入許可証です。1年間有効ですが、取得に1ヶ月以上かかります)

    さて、遅い昼食を済ませ時間が来て搭乗、ゲートで女性係員が荷物のチェックをします、靴も脱いでください、“おい、おい俺は長髪じゃないし、ヒゲも無いぞ、靴だって伝統芸能の宗家と違ってシークレットブーツじゃないぞ“とは思ったが、笑顔で検査に応じて(でもこの検査はポーズのような気が?)飛行機に乗り込み一路シカゴへ。

    米国を出るときの検査は日本とは異なり極めて厳重です。ポケットの中身は全部出させます。ガムさえX線検査をしましたし、観的スコープは覗いて不審物が隠されていないか確認します。
     

    飛行機の注意

    座席の予約は通路側にしましょう!
    トイレや足腰を伸ばす時に内側だと外の人にどいて貰わないと動けません。
    通路側だと運が良ければ、内側が予約なしで空席になり余裕ができます。
    往復とも内側2席が空で反対側の人と1席ずつ荷物置きに占領しました。
    旅のお供
    シカゴ直行便はフライト時間が極めて長く(13時間)、旅のお供が必要に成ります。
    熟睡すると言う手もありますが、私は移動中に眠れないタイプなのでお供が必要です。

    まず飲料水のボトル(500ml)は必須です。空港で買えば荷物になりません。

    フライト中に読む本は厚いものを持っていきましょう。

    持って行ったのはジャック・ヒギンス “鷲は舞い降りた”。名作です。行き帰りで2度も読みました。
    後はMDウォークマン、明菜をお供にシカゴ行きです。雲の上で聞く“難破船”(飛行機が遭難したら困りますが)中々の物です。

    なにしろ道中が長いですから読む物、聞く物を持っていくことです。
     


    2. 米国入国
     
    特に問題は有りませんでした。
     
    税関の受付でガンケースを指差し、“ファイヤーアームス”と言えばどこに行くか指示が有ります。指示といっても“レッドランプ”と言われただけです。
    指示されたところに行き、係官に同じ様に“ファイヤーアームス”といってATFの輸入許可証を渡しました。係官は書類に目を通してから“OK”の一言で荷物のチェックも無く、ひょうしぬけがしました。
     
    シカゴで先行組と合流、一路LODIへ。
     
    アメリカのフリーウェイは無料と思いきや料金所が出現。
    料金はなんと40セントです。面白いのは料金の支払い方法が3種類も有る事でしょうか。日本のETC相当の設備、マニュアル(人がいます)、自動(ネットの中に小銭を放り込むだけです)。自動は“あれ、前の車入れた?” と言う場面に遭遇しました。ゲートのない所での話です(元はゲートが有ったらしい)
    このような料金所が5箇所(だったかなぁ?)くらい有りました。

     


    3. 射撃場
     
    LODIの射撃場はWINNEQUAH GUN CLUB INC の所有でなだらかな丘陵地帯の森の中に有ります。森の周りは牧草地とトウモロコシ畑で、人家があちらに1軒、遥か彼方に1軒という恵まれた環境にあります。森の木はオークが多いようです。
    土は粒状でサラサラとした砂のような粘土のような土質です。


    (櫛風沐雨注:この長距離射場は、元々は沼だからこのような土質なのです。雨が降れば、膝近くまでくる泥沼になるところもあります。)


    最長の1200ヤード射線から標的方向の景観

    1200ヤードの射線は幅が狭くなっています。木の高さに注目してください。

    射撃場への道路はライフルレンジの中間を左から右に横切っています。その為レンジ使用時にはゲートが閉められ通行が出来なくなります。

    左手奥にピストルレンジ、右奥にライフルのシルエット標的レンジ(丸いプレートが下がっていましたからそうだと思います)

    射場の事務棟は1000ヤードラインの右奥になります。

    その奥の部分は広くなっていて参加者がキャンプしていました。

    全体として非常に広大な射撃場です。

    射撃場の入り口は簡単なゲートと警告が有るだけです。

    レンジの横に目立たない柵がありましたが、牧場の柵と一緒で杭に針金を張った簡単なものです。

     


    4. スコアシート
     

    受付を済ますとスコアシート1式が封筒に入れて渡されます。

    スコアシートの左上の記載です。

    私の名前の下に “T20”と ”R2“とあります。

    T20は標的番号、R2はリレー2(2射群)という意味です。

    封筒に 3 RELAY PIT CHANGE SCHEDULE PALMA COURSE と言うシートが同封されています。射手、記点手、監的手の順番が記載されています。
     
     
    Shoot(射手) Score(記点手) Pit(監的手)
    800y
    1
    2
    3
    (800ヤードの第1射群)
    ------------ ------------- ------------- ------------- ---Pit Cahnge (監的手の交代です)
     
    2
    3
    1
    (800ヤードの第2射群)
    3
    2
    1
    (800ヤードの第3射群)
    900y
    2
    3
    1
    ------------ ------------- ------------- ------------- ---Pit Cahnge (監的手の交代です)
    3
    1
    2
    1
    3
    2
    1000y
    3
    1
    2
    ------------ ------------- ------------- ------------- ---Pit Cahnge (監的手の交代です)
    1
    2
    3
    2
    1
    3
    1000y 20shots
    1
    2
    3
    ------------ ------------- ------------- ------------- ---Pit Cahnge (監的手の交代です)
    2
    3
    1
    3
    2
    1

    800ヤードで説明しますと、私は R2ですから1射群の20的の記点手を勤めます。

    この時、3射群が監的壕に入ります。私がPITに行くのは900ヤードを撃ち終えてからです。(実は1番PIT作業が少なかったのです)
     


    5. 開会
     

    開始時間になると、まず小さな大砲(おかしな表現ですが)を発射して合図をします。

    開会式及び国旗掲揚の号砲だと思います。続いてアメリカ国歌が流される中、星条旗が掲揚されます。

    3日目は女性が生で ゴッド ブレス アメリカ をアカペラで朗唱しました。

       
       号砲の発射と国旗掲揚は、主催者の Earl Liebetrau 氏

    米国人は脱帽して、帽子を胸に当てて敬意を表します(してない人もいます)

    帽子を胸に当てるのは敬礼と同じと聞いたことが有りますので、合衆国市民でない日本人は脱帽、直立不動でOKだと思います(もちろん同じでも構いません)

    この後、PITに行く人はトラックに乗ります。

    シューティンググラスとイヤプロテクター(又はプラグ)と水を持って行きます。

    水はPITに用意されていますが、射撃が始まると飲みにいけませんので持っていくべきです。

    PITとの往復用の赤いトラック(運転手は、Earl Liebetrau 氏)
     


    6. PIT(監的壕)

     

    PITの作業は次の通りです。

    射撃が開始されます。
     

    弾着を確認し(バックストップの着弾で判ります)標的を下げます。

    バックストップは標的の直後です。着弾により土砂が飛んでくることが有ります。
    その為シューティンググラスが必要に成ります。
     
    着弾を見逃した、又は着弾不明(隣の的を撃った、隣の的のバックストップの高い位置に着弾した)の時があります。
    そういう場合は何もしなければ射手から“Mark Target”(弾痕の確認)が掛かります。
    監的長(Pit Officer と言うのでしょうか?)が“Mark ○○”と標的番号を怒鳴りますので標的を下げて確認します。
    標的の呼び方 20的なら “Mark two zero” (マーク ツー ゼロ)と怒鳴ります。
     

    得点マーカーを指定位置に下げ、着弾位置にマーカーを差し標的を上げます。

    次弾の時に前回の弾痕に治痕紙を張ります。
    マーカーに着弾した場合はマーカーに直ちに治痕紙を張ります。
    張っておかないと次弾の着弾の判断に困る場合があります。
    マーカーには意外と着弾します(着弾マーカーの写真参照)。着弾して破損したマーカーが落ちてきました。

    (櫛風沐雨注:静岡のI氏は着弾マーカーの心棒を1回撃ち抜きました)

    治痕紙は予め左手人差し指の先(右利きの人)に張っておくと作業のスピードが上がります。治痕紙は日本で売られているロール状の専用品では有りません。文具店にあるシートに張られている物と同じのが使われていました。

    治痕紙の残りが少なくなったら壕の中央にいる Pit Officer の所に貰いに行きます。

    Please give some black sticker(スティッカー) で良いと思います。

    面倒ならシートを手に持って“Black (White) Please” と言えば通じます。
     

        

      PIT風景(中央に監的長の席と給水タンク有り)      バックストップ 標的の直ぐ後ろです
                                       (ここにたつ着弾の土煙を射撃中は集中して待つ)

    (櫛風沐雨注:着弾の土煙)

        

      着弾位置のマーカー(裏面は黒色)              得点表示マーカー
    着弾位置のマーカーは表裏が黒白になっています。黒点には白面を、白地には黒面を表にします。間違えると着弾位置が判りません。(うっすらとは見えますが)

     

                 

    私の身長は166cmです。左の写真の様に手を一杯伸ばしても9点の上部までしか届きません。

    右の写真は建築用ブロック2枚の上に乗った所です。どうにか標的の上部まで手が届きます。上の方を撃たれると作業に時間が掛かります(出来れば10点を撃って欲しい。楽だから)。ブロックは我々の為に用意していただきました。

      

    得点マーカーと着弾マーカー                PIT作業中のK氏
    得点マーカーの位置(標的上に掛ける穴が有り点数が書かれています)

     
     X 左上
    10点 下中央
     9点 右下
     8点 右中央
     7点 右上
     6点(白紙上) 左上
    弾痕不明 上中央

    的枠

    標的は軽く動きます。的紙の台は硬質ウレタン(だと思います)に糊付けで張られています。穴が多くなると上から標的を貼り付けます。

    長瀞の昇降装置の方が費用はかかっていると思いますが、動きの点ではLODIの簡単な設備の方が上です。

    設備はおおよそ3種類有り統一されていません。1的側の方が凝っている様に思えますから後から増設したのかもしれません。
     
     

    標的の上げ下げの速度が成績に影響します。

    迅速に標的が上がれば一定のリズムで射撃が出来ます。

    時間が掛かれば射手のリズムが崩れます。小柄な日本人には苦手な作業ですが、PIT作業を迅速に行なうことが今後の課題でしょう。
     


    7. スコアキーパー(Scorekeeper、Scorer, 記点手)

    スコアキーパーの役目はスポッティングスコープで標的を監視し、マークされた点数を読み取り射手に告げてからスコアカードに記載します。
    (櫛風沐雨注:スコアキーパーは、スコアラー scorer、スポッター spotter ともいいます)

    得点のコールは英語になります(射手が日本人でも)。英語で“X”,”TEN”と言う風にコールします。もしかしたら着弾方向も“Three O'clock”と言う風にコールするのかもしれません(聞かなかったような気がします)。
    (櫛風沐雨注:弾着、風の向きともに、日本と同様に時刻で呼びます。12時"twelve O'clock は、弾着では上方向、風向きは向かい風です)

    本射のコールが有ります。800ヤードと1000ヤードの単独競技(1000yards individual)は試射無制限です。

    試射から本射に移る時に、射手からレコード(正確には Record shot from now らしいですが皆 Record としか言いません)の声が掛かります。“All Right”または“OK”と言ってから得点の記入に入ります。900ヤードと1000ヤードは試射2発から記入します。

    下の写真が記入を終えたスコアシートです。

    スコアキーパーは射撃終了後に射手にスコアカードを提示してサインしてもらいます。

    射手のサインを貰ったら射場長(Range Officer)に提出します。
     

    私の練習日の800ヤードのスコアです。スコアキーパーのサインと私のサインがして有ります。

     

    コーチングは出来ません(団体戦はOKだそうですが)、注意して下さい。

    と言っても結構おおらかで、サイトをスコープに換えた後などスポッターが初弾を観測して、○ミニットと距離を上げるように指示していました。
     

         

      射手 櫛風沐雨氏                         射手 I氏

      スコアキーパー K氏                        スコアキーパー 櫛風沐雨氏

     

    写真を良く見てください(よく判らないかもしれませんが)。

    射座は幅のある土手です。上は必ずしも平らではありません(射線の右端の方は)。

    スコアキーパーは射手の後ろに位置しますので、射座より低くなり斜面の場合も有ります。

    スコープスタンドのロッドが短いと標的を見るのに不自然な姿勢になります。

    プロン射手はスコープスタンドのロッドが短い人が多いですが、Palmaでは少なくても2本は必要です。マットの運搬を考えれば3本の方が良いと思います。
    出来れば椅子も持参してください。

     
     

    スポッティングスコープの倍率
     

    スコープを覗いていて気が付いたのですが、低倍率(20×、27×)では弾丸が飛翔して行く軌跡が見えます。直接弾丸が見えるわけではなく、弾丸がミラージュを切り裂いて放物線を描いて飛んでいく時の過流が見えます。慣れれば着弾場所も判ります。

    スコープは標的面のマーカーが見えればOKなので高倍率は必要有りません

    27倍でOKです。(27倍はオプションで防水カバーがあります)



    8. 射撃線の号令

    Relay ○、move to the firing line 第○射群は射撃線に付け。
    自分の撃つ番に成ったら速やかに準備します。
    射座には番号の表示はありませんでした。替わりに射座の境界を示す杭があります。標的と同じ様に交互に白、黒になっています。

    日本チームに初日に割り当てられたのは20,21的で19的が空けられていました。

    誤射を恐れた為だと思います。こちらも誤射しても同じ日本人と思うと気楽に射撃が出来ましたが!

    (櫛風沐雨注:最終日に主催者の Karin Liebetrau さんに別れの挨拶に行くと、「あなたたちがちゃんと撃つということが分かったから、今度は、スクワッドの中に混ぜるからね」といっていただけました。ちなみに抱き合って再会を誓いました。抱き合う相手は、本当は、若くて美人射手の Robin がよかったんだけど....)

    準備はマット、スポッティングスコープ、スコアカード、射表、スコアブック、銃、弾。

    (櫛風沐雨注:弾着位置から調整クリック数を示す表は点数向上のためには必携です)

    スコアカードをスコアキーパーに渡してください。

    準備が出来ると射場長が射手の確認をします(射座番号をコールします)

    コールをしない射場長もいます(前の2日間は有りませんでした)

    (櫛風沐雨注: 小澤さん)
     

    準備完了してコールを待つ(1000ヤード、櫛風沐雨注:射手は、手前からI氏、小澤氏、ピスト射撃と銃砲店案内でお世話になった Billy Branson氏。Billy が使っていたアクションは Nesika。彼は自分でガンスミスもするので Nesika が優先的にアクションを供給してくれるから、2週間で入手できるという)

    背景に小屋のような物が写っていますが、射場長のお立ち台です。

    3分間のプレパレーションタイム(標的が半出しになります)が有ります。

    此処でセイフティフラグを抜きます。

    3分経過すると標的が下がります。

    標的が上がると射撃種目のコールがあります(正直言って良く聞き取れませんでした。4日目になって、やっとなんて言っているのか判りました)

    注) 号令の順番が違う可能性もあります。
     
     

    800ヤード


    900、1000ヤード


    1000ヤード単独競技


    one round, load ワン ラウンド ロード、弾込め、初弾を装填します。

    射撃線の準備完了と射撃初めの号令があります。

    Ready right, ready left, ready firing line 右用意良し、左用意良し、射撃線用意良し
    (櫛風沐雨注:ここで心地よい緊張感が味わえます!)

    Commence fire      コメンス ファイヤー 射撃はじめ
    Commence fire の号令の後に now とか begin now と言っている様に聞こえました?
    (櫛風沐雨注:確かに now という射場長もいます)

    撃ったのに標的が下がらない時は “Mark ○○、20的なら mark two zero” と大声で怒鳴ります(野天の射撃場ですので小さな声では届きません)

    射場長が監的に標的の確認を要請します。

     

    Cease Fire シース ファイヤー

    射撃終了の号令です。射撃をやめます。
    射撃中止も同じ号令だそうです。この号令の後で撃つとどうなるか?ベンチレスト射撃では失格になります。おそらく同じでしょう。
    撃ち終えたら Scorekeeper に終了を言い(Finish で通じると思います)スコアカードにサインします。念のため、記入された得点を確認します(面倒なのでしませんでした。それほどの点でもないしなぁ)

    (櫛風沐雨注:このとき、記点手にお礼をいうと、いろいろ教えてもらえます。私は、弾がおかしいか、姿勢か、エイミングがおかしいから、弾着が上下に散る、風のせいじゃない、といわれました。帰国後、フロントリング径があっていなかったことを縮小標的への撃ち込みで確認しました。)
     


    9. 射撃
     

    a. 6月27日(練習日)
     

    私は第2射群でしたのでまず第1射群の櫛風沐雨氏の記点手を務めました。

    撃ち終わった櫛風沐雨氏にサイトの修正量(ウインデージ)を確認すると“修正なし”、思わず風旗を見上げました。

    この時、風旗はおおよそ8mphのはためき、風速計は目線の高さで4〜5mph、フロントサイトのみ(距離)修正して射撃に臨みました。
     

    800ヤードの初弾は左下6点に命中(本音を言えば “的に入って良かった” )

    初弾が入れば後は射表に入っているセンターからのクリック数だけ修正を加えて、次弾はXへ、5発の試射後に本射に入り最初の800ヤードは146点の4Xでした。

    900ヤードは143点の3X、1,000ヤードは127点の4X(1発だけ弾着不明、手ごたえは有りましたから、隣の的に誤射の可能性があります)。

    合計で416点の13X、1Mです。
     

    この後、1,000ヤード単独競技20発があり、92−2X,82−0X,合計174−2Xに終わりました。(目が疲れたのか、インサートの選択が悪かったのか、段々当たらなくなりました)
     

    練習日の結果
     
     
    10 
    11 
    12 
    13 
    14 
    15 
    Total
     
    800y
    10
    10
    10
    10
    9
    X
    10
    10
    10
    10
    X
    X
    X
    9
    8
    146-4X
     
    900y
    10
    10
    X
    10
    9
    8
    9
    X
    X
    8
    10
    9
    10
    10
    10
    143-3X
     
    1000y
    8
    M
    8
    8
    X
    9
    9
    X
    10
    X
    8
    8
    9
    X
    10
    127-4X
    416-11X
    1000y
    10
    X
    X
    9
    9
    9
    8
    10
    9
    8
           
     
    92-2X
     
    20s
    9
    9
    8
    10
    8
    6
    9
    8
    8
    7
             
    82-0X
    174-2X

    Palma 416-11x

    1000y-20s 174-2X


    (櫛風沐雨注: 石川県のK氏の勇姿。Unique のアルミストックは米国のパルマ射手たちの注目の的。 )
     

    1200ヤード射撃
     

    正規の種目ではないようですが1200ヤードの射撃がありました。

    櫛風沐雨氏とI氏が参加しました。向うの人たちも全員が参加したわけでは有りません。

    私は弾が15発しか残っていませんでしたので参加せずに弾を櫛風沐雨氏に回しました。櫛風沐雨氏は試射を自分の弾で、本射を私の弾で行いました。

    私の弾は櫛風沐雨氏の弾よりも初速が低いものと思われ弾着が手前でした。
     

      

    1200ヤードラインの櫛風沐雨氏              I氏(右から2人目。

    (右から3人目)                      ちなみにこの人は銃は両利きで、左目の方がいいので左撃ちしています)
      
     
    (櫛風沐雨注:1200ヤードは、私だけがスコープなしだった。撃ち始めるとアイアンサイトでは、標的は見えて狙えるのだが、標的番号がピープサイトでは読めない。見当をつけて撃ったが2発ほどとなりの射座に入れてしまった。ごめんなさい。試射は私の弾、本射の途中から小澤さんの弾を使ったら、弾痕不明となった。観的壕にきくと down だろうという。弾着の土煙がなかったか、猛烈な土くれの観的壕への飛び込みがあったのだと思う。修正しても弾着が極めて不安定になった。すくなくとも、小澤さんの弾は私の銃では弾速が遅くなってしまったのだ。この日、私は裸足でサンダルに半ズボンで撃っているが失敗だった。重いものを持って足場が悪い中を歩くので、サンダルで足が擦り剥けた。また、上から当たる直射日光で足の裏側が焼けて痛くなってしまった。)
     
     

     
    b. 2日目(6月28日)の結果

     
     
    10
    11
    12
    13
    14
    15
    Total
     
    800y
    X
    10
    9
    8
    8
    X
    9
    8
    10
    X
    X
    9
    X
    X
    X
    141-7X
     
    900y
    6
    9
    9
    10
    10
    9
    9
    7
    8
    X
    10
    9
    8
    X
    8
    132-2X
     
    1000y
    9
    10
    10
    9
    9
    9
    10
    9
    9
    9
    10
    8
    X
    10
    8
    139-1X
    412-10X
    1000y
    10
    10
    7
    8
    9
    8
    X
    10
    10
    8
             
    90-1X
     
    20s
    9
    10
    10
    8
    9
    10
    9
    9
    8
    X
             
    92-1X
    182-2X

    Palma 412-10X

    1000Y-20s 182-2X

    900ヤードの結果が思わしくありませんが、これはコートのスリングを掛けるフックが緩んだ為に弾着が3時方向に流れた為です。気が付いた時点で応急的に緩みを直しましたが、結果としてはコートを脱いで直すべきでした。
     

    閑話休題

    2日目の終了後に表彰とパーティがありました。
    (櫛風沐雨注:パーティーと Mid West Palma 表彰式の前の集合写真。宿で昼寝してから行ったら、ギリギリだった。左端の箱は簡易トイレ)

    メインデッシュは豚の丸焼きです。

         

    豚の丸焼きを解体中です。

    屠殺後、熟成に3日、焼くのに1日掛けているそうです。

    食べている写真や表彰式の写真がありませんが、前に座った美人に見とれて取り忘れたわけでは有りません!

    食事に夢中だっただけです。
    注 この美人を見たい人は来年の7月に英国のビーズリー射撃場に行きましょう。
    Palma−USAのU21チームの選手です。


    (櫛風沐雨注:小澤さん、勘違いしてます。若くて美人のRobinは、我々よりはるかに上手で入賞してたけど、Bisley に行くほどじゃないです。去年 Bisley に行ったのは、ずっと一緒ににいた Boy Friend のJeremy です。小澤さん、彼女にもう一度会いたければ、彼女が住んでいる Lodi にもう一度遠征しないと......。私が去年アリゾナであった The Tompkins のMichelle と Sherri は来年Bisley に行きます。米国のU25(25才以下)選手の予選出場資格は、195/200が800,900,1000ヤードで撃てることです。我々から見ると夢のような高得点です)
     

     

    パーティ終了後の記念写真

    アール氏、櫛風沐雨(京都), グラント氏、小澤(神奈川)

    I氏(静岡)、 カーリンさん、 K氏(石川)
    アール(Earl Liebetrau)さんとカリン(Karin Leibetrau)さんはご夫婦で主催者です。

    (櫛風沐雨注:今回の大会には、アールさん本人と息子さんとお孫さんで5人のLiebetrau 一族が射手で参加していました。お孫さんたちは高校生と中学生で、我々の記点手を一部務めて頂きました。アールさんは大会では総務係で、カリンさんは統計室で試合結果の集計と会計係。我々の入国用の書類なども送って頂きました。そのうえ、我々の射撃資材の一時預かり先にもなって頂きました)

    グラント(Grant Ubl)氏には火薬、雷管の手配をしていただきました。

    (櫛風沐雨注:今回の大会開催を知ったのは、彼が主宰する Long Range Target Forum です。そこから、Karin さんを紹介頂いて。予備ライフルや予備のリローディングキットまで用意して頂いています。彼は、2003年のBisley の世界選手権の全米代表選手です。私は全米のパルマの試合日程と連絡先をほぼ把握していると思います。日本ライフル射撃協会会員で行きたい方はご相談ください。)

    (櫛風沐雨注:このパーティの私の収穫は、小澤さんとK氏が英語でしっかりコミュニケーションが取れることを発見したことです。K氏は、60才を超えていますが、「楽しい。毎日パーティがないんかのぉ」とおっしゃって、ドキモを抜かれました。次回はブリッジモーテルの毎夜の宴会に合流しますか.....。ともかく、私はお二人は放っておいても大丈夫なことが分かって、肩の荷が下りて助かりました。受け入れ側も喜んでいました。)
     

    (櫛風沐雨注:1000ヤード総合優勝の
    Sandy Pagel さん。
    彼女は、来年の世界選手権米国代表です)
    (櫛風沐雨注:
    主催者 Liebetrau 夫婦の孫の
    左から Kyle 君と Scott 君
    中学生と高校生。
    学校をサボって一族3代で大会に参加。
    我々の監的や記点を手伝っていただきました
    持っている銃はボルト式連発口径223レミントン
    スリーブ付に注目
    これでサービスライフル部門で競技するそうです。
    得意げな顔を見てください
    左奥はおじいさんの Earl 氏)
    (櫛風沐雨注:この大会の表彰は、日、種目、クラス別、総合に細分化されています。それぞれに最高30ドルの賞金がつくので、一人で100ドル以上の賞金になることもあります。薄く広く賞をばらまくのですが、総合優勝もしっかり表彰します。日本も真似するといいと思います)

    パーティ終了後にピストルの体験射撃をさせていただきました。
    (櫛風沐雨注:I氏がピットで仲良くなった Billy Branson さんに感謝。)

    本当は暗くなったらダメらしいですが、ポリスオフィサーのOKをもらってくれてガバメントのショートバレルモデル(カスタムメイド?)を撃たせていただきました。


    撃ちやすい銃でした。(櫛風沐雨注:照門照星に3つの銀星が入っていました。トリガーもカスタムだそうです)

    注 夜間のピストル射撃は次の日に評判になっていたそうです。
     
     

    この後、私には地獄が待っていました!

    モーテルに帰ると隣の部屋のTVの音がやけに大きい?

    そのうち静かになるだろうと思っていると夜中まで大きいままです。

    そして聞こえてくる女性の声 “おぉ〜う”とか“あぅ〜”とか!

    女性の声はなんとも無い(いや〜外人さんは声が大きい)ですがTVの音の大きさには参りました。結局TVの音で寝不足です。
     
     

    ちなみの次の日は男の声で“I LOVE YOU”の連発でした。
     


    c. 3日目(6月30日)の結果
     
     
    10
    11
    12
    13
    14
    15
    Total
     
    800y
    9
    X
    9
    X
    10
    10
    X
    10
    8
    10
    X
    10
    X
    10
    9
    145-5X
     
    900y
    10
    9
    9
    9
    9
    8
    8
    10
    10
    X
    10
    10
    X
    9
    8
    139-2X
     
    1000y
    9
    8
    10
    10
    8
    10
    9
    10
    9
    9
    8
    10
    10
    9
    8
    137-0X
    421-7X
    1000y
    8
    9
    10
    8
    9
    10
    8
    9
    10
    8
             
    89-0X
     
    20s
    X
    9
    9
    10
    X
    9
    9
    9
    9
    10
             
    94-3X
    183-2X

    Palma 421-7X

    1000Y-20s 183-2x


    d. 4日目(6月30日)の結果
     
     
    10
    11
    12
    13
    14
    15
    Total
     
    1000y
    X
    9
    X
    9
    8
    10
    8
    10
    10
    10
             
    94-2X
     
    20s-1
    X
    8
    10
    9
    10
    9
    9
    10
    10
    10
             
    95-1X
    189-3X
    1000y
    7
    X
    X
    10
    X
    7
    7
    8
    10
    9
             
    88-3X
     
    20s-2
    10
    9
    8
    X
    X
    10
    9
    8
    9
    8
             
    91-2X
    179-5X

    368−8X

    1000ヤードの2回目は、点数無視で風の変化に対するサイトの修正の確認をしています。結果は“慣れないことはするな”です。風の変化は簡単には読めません!

    3日目と4日目はウィスコンシン州の試合です。


    e. フロントインサートの選択
     

    全距離で3.5mmを使いました

    800ヤードではOK、900ヤードもそのままの大きさで問題ありません。

    1000ヤードではリングが的枠でケラレます。

    点数を見た限りでは、インサート径は800ヤードで最適の径に合わせたら、900ヤード、1000ヤードでは、一回りずつ小さくした方が良かったのではと思います。

    黒点の直径 1117.6mmを各距離で1mの所で見た大きさに換算すると、
    (黒点径,
    1mでの大きさ)
    800ヤード 1.53mm インサートは 3.5mm
    900ヤード 1.36mm 同じ隙間なら 3.3〜3.4mm
    1000ヤード 1.22mm 同じく 3.2〜3.3mm

    位の選択が良かったのではと思われます。


    10. 風の変化への対応

    写真は1000ヤードラインからの展望です。風旗が200ヤードおきに立っています。

    (櫛風沐雨注:射手は櫛風沐雨、記点手はK氏。100発入りの弾薬箱で航空手荷物で預けたのだが、出てきたときは破損して数発使用不能になっていました。不整地の射撃なので、肘は左右均等の高さにならない。左肘が窪みに入るようにマットを左右に調整しました)

    写真の中の枠には風旗が2本並んで有ります(位置は400ヤードライン?です)

    この旗は両サイドの旗と異なり低い位置にあります。

    800ヤードラインの風旗です。
    写真の人物と比較して旗竿が高い事がわかります。

     

    308WIN(初速2,950fps)の1000ヤードでの最大弾道高は120インチ(3m)です。

       

    射線より600ヤードで最大弾道高です。つまり標的より400ヤードの位置です。

    レンジの中に、それも400ヤードの位置に風旗が低い位置に立っています。

    これは射撃場の両側が森で、標的に近いほうが開いていて風の影響を受け易い為の対策と考えられます。写真では標的側も木が多いように見えますが、実際には左にピストル射場、右にシルエットライフル射場があり結構隙間が有ります。

    800ヤードでは風旗の動きは8mphでも、風速計では目の高さで4〜5mph位しか有りませんでした(目の高さは150cm(60インチ)で最大弾道高の半分です)。

    1000ヤードラインの写真の800ヤードの風旗(一番手前の旗です)を見てください。

    左と右の旗では風の強さが違います。左からの風のため、左の旗は木により風が遮られて動きが小さくなっているのだと思います。

    更に600ヤードより向うの旗と、800ヤードの右の旗と比較すると、遠いほうが強くなびいています。

    練習日の1000ヤードのサイトの移動量は32クリック(8MOA)でした。
    横風で32クリックの移動は8mphの風になりますが風旗はもっと強い動きをしていました。

    LODIの射撃場は弾頭が通過する高さ、と風旗の位置では風の強さが違います。

    その辺りの見極めは場数を踏まないと難しいというのが結論です。
     


    11. 健康管理
     

     
    a. 熱中症対策
     
    (1) 水と塩分の補給
     
    日本を出たのが6月26日でまだ梅雨の最中でしたがLODIではすでに夏でした!
    4日間とも晴天で最後の日など華氏93度(34℃)、湿度57%でした。
     
    水は1ガロン(3.7L)のポリ容器入りを1日1個買いました。
    この量で朝から午後2時位で半分から2/3位が無くなります。
     
        
    1ガロンの容器            呑み口付きのPETボトル       丸塩(タブソルト)
     
    競技中は射線、PITとも直射日光に曝されます。
    随時水分補給を行い、体調を維持する必要が有ります。
    4日目は睡眠不足と直射日光で頭痛がしてきました。
     
    おそらくこの時点で塩分の補給の必要が有ったと思います。
     
    陸軍の炎天下での全装備(20kg)行軍では丸塩(がんえん)が支給されるそうです。
    支給に当たり教官から、“これは不味いのでダメな者は梅干を持参するよう”に注意があるそうで、弾帯に梅干を詰めて齧りながら行軍するそうです。
    丸塩は商品名“タブソルト”、400粒入りで2千円位です。
    薬局では扱っていませんでした。建設関係の機材を扱っている所に有るそうです。
    丸塩がダメな人は日本から梅干(減塩タイプは不可)を持参して下さい。

    食べ物は麻薬犬のチェックに引っ掛かる可能性が有ります。

    必ず機内持ち込みにして下さい。

    (櫛風沐雨注:パルマは露天ですから、晴天でも雨でも嵐でも霧が出ても開催されます。雷とトルネード(竜巻)がでたときは中止です。だから、雨具は必携。キャンバスコートは濡れても乾けば堅さも保持されて大丈夫だそうです。また、心臓病、動脈硬化症、脳血管疾患、服薬しても制御できない高血圧症、慢性腎臓病、血糖値コントロール不良の糖尿病の現症既往症がある方は参加しないで下さい)
     


    (2) 服装
     

    涼しい格好が良いかと言えばかならずしもそうでは有りません?

    もちろん向うの人にも半そで、半ズボンの人もいます。
    PITで聞いた話では、下に半そでのTシャツ、その上に長袖を重ね着したほうが涼しいそうです(やってみましたが同じでした、馴れが有るようです)
    頭は帽子で保護し、必要ならタオルで覆います。

    帝国陸軍の防暑スタイルですが効果が有ります。タオルに水を含ませれば気化熱で更に有効になります。

      

    帝国陸軍スタイル、写真を撮っている私も同じ格好をしています。
     
    帽子に水を含ませる方法も試して見ましたが効果は今一つでした。
    その他に防暑に日傘も有効ですが、まさか日傘を米国まで持って行くわけには行きませんのが折りたたみの雨傘で代用できます。櫛風沐雨さんが雨傘を使いましたが借りて試した所、非常に有効でした。

    靴は射撃用のシューズは不要です。

    雨の可能性を考えてゴアテックスのウォーキングシューズを持っていきました。

    かなり歩きますので履き慣らしておく必要が有ります。

    (櫛風沐雨注:暑いし雨でも平気だからといって裸足にサンダルは無謀でした。日焼けと靴擦れで足の甲がズル剥けになります)
     


    b. 食事
     

    朝食は6時から開いているところが2軒あります。

    もっとも初日は6時半、2日目は7時集合の為、買い置きの食べ物で済ませました。

    昼は向うの人はPITでサンドイッチやバナナを食べていましたが、我々は簡単な物で済ませました。2時くらいに終わりますので、昼食抜きでも大丈夫(不健康な気もしますが)です。

    (櫛風沐雨注:初日の早朝集合は、顔合わせとエントリー手続き、諸注意のため。それと、朝早くからこんな田舎で食堂が開いているとは思わなかったのです。小澤さん、向こうの食事をまともに毎日3食とっていると太りますよ!)

    買い物はスーパーが有ります。パン(種類豊富です)、水、果物(リンゴ、プラム等)、チーズ、ビーフジャーキー等です。

     
    果物は小さいのですが日本の物より旨いと思います。
    バナナもスーパーに置いてありましたが、青すぎて買う気になりませんでした。
    またモーテルには冷蔵庫が有りませんので傷む物を買い込むのは不可です。

    夜はLODIの町で取りました(1日だけマジソンへ出かけた時に途中で取りました)

    LODIは町といっても西部劇の町を近代化したような感じで、おそらく建物の裏側には何も無いのではという気がします。
     
    米国の食事はとにかく量が多いのが特徴です。あれだけの量を食べ続ければ太ります。向うの人の肥満(私程度では恥ずかしくて太っているなどと言えません)とにかく桁外れです。

    もう一つ、コーヒーは美味しく有りません。UAの機内で出るコーヒーもお世辞にも美味しいとは言えません。

    コーヒーの味は日本の方が上です(と言いつつ大分飲みました)
     
    食事中は必ず“旨いか”と聞きに来ます。
    食べ終わったら“Finished”と言えば下げてくれます。

     


    c. トイレ

    射撃場のトイレは工事現場用の簡易型トイレです。

    日本のものより大きい(見た目で倍以上)物ですが、便座の位置も外人さん用ですので日本よりも遥かに高いです。伸び上がらないと用を足せません。

    腰掛ける機会は有りませんでしたが、背の低い人には使い難い高さです。向うの人で背の低い人(私と変わらない人が意外といます)はどうすんでしょう?

    (櫛風沐雨注:このトイレは出したものがすべて間近で見えるので、気の弱い人は出るものが引っ込むかもしれません。強烈な消毒薬を撒いているのか、匂いはあまりしませんでした。水分はすべて汗になるので、小便は射場では出ませんでした。尿量不足で急性腎炎や膀胱尿道炎のリスクがありますので、水分は大目に取らなくてはいけません)

    それに米国の便座は日本のものに比べて丸っこくて小さめが多いようです。

    モーテル、射撃場、空港で確認しましたが全部同じでした。偶然の可能性もあります外人さんはお尻の形が違うのでしょうか?


    C 帰国
     

    4日目の終了後に成績発表と表彰式がありました。

     
    成績は後日E−メールで正式な物が送られてきました。
    櫛風沐雨さんの話では合計で400点が一つの目安だそうで、これを超えれば本番のパルママッチに出場可能だそうです。

    (櫛風沐雨注:400点をきらなければ、世界選手権では最下位になりません。ただし、上位進出には447点以上を撃たなくていけません。今回の日本チームは408点〜421点でした。F-class のI氏は433〜443点でした。我々は世界選手権に出ても恥はかかないと思います。I氏は我々と違うのはスコープサイトを使っていることと 口径 6.5X284 を使っていることだけです。口径や弾薬の精度のちょっとしたの違いは、風読み勝負の長距離射撃では大した違いではない。また、周囲ではパルマはアイアンサイト、1000ヤード単独競技のサイト自由の部はスコープサイトで撃っている人がいたがスコアに差はない。要は、I氏の方が射撃の技術と風読みが他の日本人選手より上手いのです。さすがはライフル射撃6段の快人ハンター。私の師匠の塚田三麿先生曰く、この人は普通のハンターさんではない、という言葉を実感しました)


    (櫛風沐雨注:ウィスコンシン州選手権表彰式集合写真
    2列目中央の麦藁帽子の長老 Robert Levine 氏は、1986年と1987年の全米選手権ピンバッジを帽子から外して、私たちにプレゼントしていただいた。一生の思い出の宝物だったはずだ)


    (櫛風沐雨注:ウィスコンシン州パルママッチ優勝の Mark Liebetrau 氏へ、祖父のEarl 氏から優勝盾の授与)


    (櫛風沐雨注:ポーズをとって! の声に可愛くこたえる 女子優勝の Robin Maly さん)


    (櫛風沐雨注:Robin と同じポーズをとって、爆笑をとったシニア(60歳以上)優勝の Barret Obermayer氏
    米国パルマで Krieger につぐシェアを持つバレルメーカー Obermayer 社のオーナー)


    (櫛風沐雨注:2年連続ウィスコンシン州選手権総合優勝の Grant Ubl 氏
    Mid West Palma では、10年ぶりのクロスファイヤ(標的間誤射)で振るわなかったので、気合いが入っていたそうだ )
     
     


    1. 移動

    表彰式終了後に荷物を纏めて移動です。

    お世話になった方たちに別れを惜しみつつミルウォーキーを目指します。

    実は2日目の夜にピストルを撃たせてくれた方(う〜、名前が思いだせん)が銃砲店に案内してくれる事に成ったからです。
    (櫛風沐雨注:I氏のお友達、Bill Branson 氏です)

    帰りは櫛風沐雨さんに代わり私が運転を行ないました。

    射撃場を出てフリーウェイに向かう道(櫛風沐雨氏 撮影)

    前の車はミルウォーキーへの先導です。

    車はクライスラーのミニバン、オートマで扱いやすい車です。

    ただクセと言う物は恐ろしい物で、無意識の内に左足はクラッチを、左手はシフトレバーを探して動きます(私の車はランサーエボ、マニュアルです)

    向うのフリーウェイは関越自動車道並みに混んでいますが運転は遥かに楽です。

    むりなく追い越し、割り込みが出来ます。あまりおかしな運転をすると指を立てて注意されるそうです(その時フリーウェイ上で一番荒い運転をしていたのは私でしょう!)

    (櫛風沐雨注:ミニバンは日本のものと大きさが変わらなくて、フル装備の人間だと4人積載が限界でした。)
     
     


    2. ミルウォーキーの銃砲店
     

    ここでもピストルを撃たせてもらいました。

    ピストルと言う物は近ければ意外と当たる物と実感しました。

    此処の銃砲店で、中々手に入らないステンの1本物の長い洗い矢を手に入れました。


    (櫛風沐雨注:ここは、銃砲店としては中規模だった。10mx15射座くらいの屋内射場がある。バックストップのところには水が流れる斜めの壁があった。どういう効果があるのか聞き忘れた。撃ったピストルはたぶん S&W の Chief Special)
     
     


    3. 出国手続き
     

     シカゴ オヘア空港内にてK氏と

    UAに荷物を渡す時に銃のチェックがあります。

     
    “ライフル?”と聞きますので“イエス”と言えば中をチェックします。
    銃は薬室が空か必ず確認します
    薬室を覗いて確認しますので、ボルトを抜いた状態でケースに格納して置いてください。
    実包の有無も確認します。日本に持ち帰る撃殻薬莢は必ず確認しますので、USEDと判るようにしておいてください。

    UAの担当(可愛い女性でした)は銃の確認は初めてのようでした。PCで確認していましたので、人によっては此処までやらないかもしれません。

    米国でも中西部では、以前に持ち帰りでトラブル(UAの約款上の問題)が有ったと聞いていましたがすんなりと通りました。輸出許可証の英訳文を持参して下さい

    この後、ゲートで機内持ち込みの荷物とポケットの中身のチェックがあります。

    日本と異なり徹底しています。
     
    ポケットの中身は全部出さないとダメです。ガムまでX線検査をしました。
    スポッティングスコープは必ず覗いて不審物が隠されていないか確認します。
    私の担当はスコープをじっくり見ていました。興味が有ったのか欲しかったのか、時間がやけに長く掛かりました。
     
    (櫛風沐雨注:高価なNikon を割られてはたまりませんから、持込み荷物にしました。重量物はなるべく持込み荷物にするのも手荷物預かりの重量制限をクリアする方法です。私のスコープを覗いていた(接眼部を外してあるから見えるわけない)係員は、K氏の方に対物レンズを向けました。すると、K氏はニコニコと手を振るじゃないですか。これには、係員も私も爆笑。検査終了)

     


    D 費用
     

    遠征の費用です。

    成田空港出発より帰国までです。

    成田までの交通費や駐車料金は含みません。

     

    (1) 航空運賃 100,000円(往復の概算です。早期購入なら10万以下になります)

    (2) レンタカー  15,810円(一人当たり負担額。総額は63,240円、燃料代を含む)

    (3) 宿泊費

    a) LODI    30,301円($248.98、4日間、食事なし)
    b) シカゴ   7,821円($ 59.93、1晩、朝食付き)
    (4) 食事代     30,000円(概算です。1日$60×4日で算出)
    (5) 保険        6,890円(AIU海外旅行保険、念のために加入しました)
    (6) 参加費     12,000円($100)

     

    合計で約20万円です。

    この他に成田までの往復の交通費、国内の通信費、現地での小遣い、弾薬代が加算されます。
     


    E 最後に

    今回の遠征は実り多き物になりました。

    野天の完全オープンの射撃場での射撃は日本では絶対に経験できません。

    米国の射撃場に対し日本の射撃場はあまりにも貧弱です。
    付帯設備は日本の射撃場のほうが立派ですが、射撃場は射撃をするものと言う観点からなら野外の完全オープンの射撃場には敵いません。
     
    長瀞の屋内300mよりも、LODIの1000ヤードの方が当てることは難しくても、射撃と言う点からははるかに楽しく撃てます。
    もし機会が有ればぜひ挑戦してみてください。

    以上

    2002年8月23日 小澤 常雄


    日本チームの4人
    Lodi 射場の1000ヤード射線にて、最終日に撮影


    おまけ

    機材調達先
     
     
    銃身
    クリェガー
    シーレン
    薬室リーマ
    クレイマ―

    銃身加工(輸入代行も)は HIROさんこと滝田浩氏 http://www.gunsmith.jp/ に問い合わせて下さい。
     
     
    サイト類
    OKウィーバー
    ワーナー
    監的スコープ
    OKウィーバー
    クリードモア
    コート
    クリードモア
    風速計
    ケストロール
    撃針
    ブラウネル
    ストック
    マクミラン
    その他
    シンクレア


    輸出許可証の英訳文(赤字の部分を入れ替えて下さい)
     
     

    APR, 19, 2002

    To whom it may concern:

    Mr. Tsuneo Ozawa is a competitive Palma shooter who will represent Japan in the MIDWEST PALMA CHAMPIONSHIP from 26th June through 30th June in Lodi WI.

    The accompanying document is a temporary permit issued by Minister of Economy Trade and Industry (METI) which allows Mr. Tsuneo Ozawa to take his firearm abroad and also to re-enter Japan after the competition.

    The following is a translation of original Japanese document.

    Applicant’s Name: Tsuneo Ozawa

    Applicant’s Address: XXXXXXXXX, Kanagawa, JAPAN

    Permit Approval Number: XXXXXXXXXXXX

    Permit Expiration Date: 19th, OCT, 2002

    Date of Application: 19th APR, 19, 2002

    Applicant’s Telephone Number: XXXX-XXXX-XXXX

    Owner: Applicant (Tsuneo Ozawa)

    Destination: United States of America

    Loading: XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX, Lodi WI, 53555

    Stopovers: direct flight
     

    Description of firearms

    Bolt-action rifle

    Winchester M70, serial number XXXXXX

    Length 123.6CM, Barrel length: 76.5CM

    Cal. 308WIN

    Price: \110,000  (approx. $850.00)

    Document approved by : TAKEO HIRANUMA of METI, on 19th APR,  2002


    諸資料リンク

    射表, パルママッチ 射撃諸元表


    英語,1000ヤード参加者への情報,示点方法,英語圏長距離射撃のルール


    今回参加した Mid West Palma,Wisconsin Long Range Championship の結果


    2002 Lodi でのパルママッチ写真集


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