e-mail 版 三月書房販売速報(仮題)
旧号合冊 第7B冊[66号〜70号]
通巻061号 2002.11.27発行 通巻066号 2003.06.29発行
通巻062号 2003.01.01発行 通巻067号 2003.08.03発行
通巻063号 2003.02.10発行  通巻068号 2003.09.17発行
通巻064号 2003.03.11発行 通巻069号 2003.11.17発行
通巻065号 2003.05.05発行 通巻070号  2003.12.31発行
※各号の最終版を一部修正して掲載しました
  ※非営利目的の転送は歓迎します
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三月書房販売速報[066]  
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2003/06/29[05-05-66]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 066号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「菅原克己全詩集」 西田書店
   分厚くて装丁もきれいなのに3800円は絶対に安い。近ごろまったく
   見かけなかった著者だが、知ってる人は知っていたようで、いまど
   きこんな立派な本が出たことに驚いて買ってくれる。もちろん購買
   客の平均年齢はかなり高い。

 ◆「うたかたの日々」岡崎京子 宝島社
 ◆「恋とはどういうものかしら?」岡崎京子 マガジンハウス
   前号掲載の「ヘルタースケルター」と併せて3冊も新刊が出てくれ
   てうれしい。長期品切れ中だった多くの作品も重版や新装版が出て
   かなり揃った。あと主な品切れは角川書店の5点。
   
 ◆「国家論大綱 第1部(上)」滝村隆一 勁草書房
   7年前の対談本を除くと実に16年振りの著書。8500円もするのに
   早くも10冊近い売れ行き。全部で何巻になるのかは不明。これも購
   買客の平均年齢は高いが「菅原」よりは低い。

 ◆「吉本隆明資料集30:『試行17』(復刻版)」 猫々堂
   29からの試行復刻は27までの座談集に比べると10冊程度売れ行きが
   落ちているが、それでも25冊程度は売れている。

 ◆「再会 女ともだち」山田稔 編集工房ノア
   2000年秋に出た「北園町九十三番地」がめちゃ売れ(累計100冊位)
   して以来、いまでは新刊が出るとどれもたいへんによく売れる。
   これはもちろんうちの店だけのことではないから、新刊や復刊が
   目立って増えていてまことにおめでたい。

 ◆「京の古本屋」京都モザイク編集部 青幻舎
   後述
 
 ◆「島尾敏雄」島尾敏雄の会・編 鼎書房
   刊行は2000年だが日販不扱いのため、4月に東下りした際に、八木
   書店の店売で見つけて仕入れたばかりだから、うちの店では新刊同
   様である。1200円は安いだろう。

 ◆「原型:齋藤史追悼号」原型の会
   遺歌集、未刊文集、追悼文、年譜等の資料その他で500頁超。2500
   円は絶対のお買い得。全歌集を100冊以上売ったことから考えても、
   在庫さえ切らさなければ最低50冊は固い。

 ◆「悲しい火だるま」片島紀男 NHK出版
   今年度の大宅壮一賞が受賞作も次点もNHKのディレクターだった
   ことについて、これではフリーのライターがやってられないという
   ような意味のことを立花隆さんがぼやいていたが、この本もその類
   である。吉本隆明さんの序文付き。
 
 ◆「円盤Z」杉浦茂 河出書房
   じつは、これは先に出た「少年児雷也」や「少年西遊記」に比べる
   とあまり出足がよくないのだが、もっともっと杉浦茂先生の本を出
   して欲しいのでよく売れていることにしておきたい。「ドロンちび
   丸」の完全版とか「拳闘ケン太」とか「岩見重太郎」とが出てくれ
   るとうれしいのだが、続きさえ出てくれるならぜいたくはいいませ
   ん。

 ◆「(2in1歌集)海量/東北」大口玲子 雁書館  
 ◆「(歌集)茉莉花のために」多田零 砂子屋書房
 ◆「東京スーベニール手帖」沼田元氣 白夜書房
 ◆「つげ義春初期傑作短編集(1)(2)」講談社
 

[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「桂東雑記(1)」白川静 平凡社※入荷済み
 ◆「あ・ぷろぽ」山田稔 平凡社 ※入荷済み
 ◆「原初生命体としての人間」野口三千三 岩波現代文庫 ※入荷済み
 ◆「こどものやまい」鈴木翁二 ふゅーじょんぷろだくと※入荷済み
 ◆「国家論大綱 第1部(下)」滝村隆一 勁草書房
 ◆「本秀康名作劇場」 小学館
 ◆「ユリイカ7月号:黒田硫黄特集」青土社
 ◆「樹が陣営25:特集・吉本隆明」飢餓陣営発行所


[#03] ペヨトル工房解散3周年
 
   ペヨトル工房解散3周年を記念して売上げを集計してみました。
   在庫を直接仕入れての委託販売は2000年5月末からでしたが、
   その年の6月から今年の5月までの3年間の売上げは2368冊。
   もっともよく売れたのが「夜想35:チェコの魔術的芸術」で121冊、
   2位「夜想02:ベルメール」114冊、3位「夜想33:鉱物」84冊、
   以下「夜想05:屍体」、「夜想34:パペット・アニメーション」、
   「若冲ポストカード」、「夜想20:花鳥風月」、「ラズール:透き
   とおる石」、「クラッシュ」、「路上日記」、「神々の不幸」、
   「おぼえていないときもある」と続きます。
   30冊以上売れたのが19タイトル、10冊以上売れたのが71タ
   イトルありました。「夜想35」とか「若冲」とか途中で在庫が切
   れたものも多く、途切れずに在庫があればもっと売れたはずですが、
   解散セールなのでどうしようもありません。しかし、最近別の委託
   店から過剰在庫が回って来くるようになったので、人気タイトルの
   在庫が20点ほど復活し、かなり下降気味だった売上げが、急速に
   回復しつつあります。
   結局この3年で、売上げと在庫を合わせて、約4500冊位保護し
   たことになりますが、解散時の在庫7万冊から考えても、これは当
   初の予想をはるかに上回る成果です。
   ステュデイオ・パラボリカからの「2マイナス」(現在3号まで)
   の売れ行きも好調で、計140冊以上売れていますが、今度はペヨ
   トルの今野元社長も「夜想」を復刊するそうです。この件について
   はペヨトル・ファンのサイトhttp://www.thought.ne.jp/peyotl/を
   ごらんください。   
 
 
[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その33)

  ○三省堂書店の京都駅ビル店が開店したと聞いたので、10日の火曜
   日にちょっと見てきました。駅ビル地下1階というのは、とにかく
   わかりにくく中途半端な場所でした。地下鉄の改札口やポルタ地下
   街は、駅ビル地下2階の深さにあるのですが、こちらには地下1階
   にあたるフロアーがなくて一つ上の階は地表です。ようするに、駅
   ビル地下1階と言われても、地下鉄やポルタの利用者としては、中
   2階のような隠しフロアーとしか思えないのです。また、駅の1階
   正面から入る人たちの大部分は、駅ビル2階にある自由通路を利用
   しますから、わざわざ地下1階に行く人はほとんどないでしょう。
   駅ビル専門店街キューブもポルタと地続きの地下2階にあります。
   三省堂書店と同時に地下1階にも数店が新規に開店したようですが、
   この階には人の流れがほとんどありません。列車の発車まで時間が
   余ってうろうろしている人が、迷い込むこともなくはないだろうと
   いう感じの場所です。それでも、くまざわ書店(元・駸々堂跡店)
   がある地下鉄側とは違い、西側には伊勢丹にも書籍売り場がないの
   で、ある程度は通勤通学客の常連化が見込めるでしょう。130坪
   とのことですが、くまざわ書店と似た品揃えのようでした。雑誌が
   たくさん、タレント本、文芸書、ビジネス書、文庫、新書、コミッ
   ク、そして京都ガイド本というあたりのようです。まったく興味が
   持てないタイプの店なので、滞在時間は2分くらいでしたから、あ
   まりあてになる観察ではありません。
   
  ○青幻舎から5月に出た「京の古本屋」がよく売れてます。京都の出
   版社が出す京都ガイド本は、京都新聞社本を筆頭に、ややダサイの
   が多いような印象がありましたが、この京都モザイクというシリー
   ズは、平凡社の「コロナ・ブックス」、あるいは新潮社の「とんぼ
   の本」クラスの雰囲気です。京都の主な古書店がカラー写真で紹介
   されていますが、店によっては実態よりもうんとカッコよく写って
   います。うちの店は井上章一氏が「古都の古書」というエッセイで
   チラッと触れてくださったおかげで、店舗のイラストと住所等のデ
   ータが載っていて得した気分です。うちはもちろん古書店ではあり
   ませんが、売り場の規模も店構えも似たようなものですから、もは
   や同業者のような気がほとんどしない、大型書店と並んで紹介され
   るよりも、よほど居心地がよいような気がします。
   
   
[#04] 雑、雑、雑、…

  ○新本特価の売れ行きが好調ですが、先月は某県立高校図書館から、
   まとめて120冊ほどの注文をいただきました。大部分が旧定価
   の5割引で13万円強の売り上げでした。注文してくださった先
   生のメールによりますと、限られたわずかな予算を有効に使いた
   いとのことでした。定価の約2倍の量が購入できるわけですから、
   選書能力さえあれば間違いなくお得です。新本特価に限らず、古
   書店を利用すれば基本図書などはうんと安く揃うはずなのですが、
   大学はともかく小中高ではほとんど未利用でしょう。百科事典な
   どは完全に値崩れしていて、捨てるにも産業廃棄物としての経費
   がかかるので、京都の古書組合では地元の小学校に無料で寄付し
   たこともあるそうです。しかし、大多数の公務員はコスト意識が
   ゼロなので、経理処理が面倒なスポット買いよりも、出入りの新
   刊書店からいままで通りの購入を続けて、面倒なしに予算消化す
   ることを選ぶでしょう。うちからわざわざ新本特価を購入してく
   ださったようなまめな方は極めて稀少と思われますから、コンビ
   ニや漫画喫茶やブックオフに食い荒らされた新刊業界も、学校図
   書館の予算を古書店に取られる心配はほぼないはずです。
   
  ○7月から郵便公社の冊子小包の料金が少し安くなります。これは
   あきらかに急速に伸びつつあるメール便に対する対抗策でしょう。
   郵便小包(ゆうパック)も常に宅配便を横目にみて、渋々サービ
   スを向上させてきました。30年ほど前にクロネコ宅急便が発明
   される以前、郵便局や日本通運などを利用するしかなかった頃の、
   サービス劣悪でお役所仕事丸出しだったころのことを覚えている
   人間としては、運輸省と郵政省の官僚相手にがんばってくれたヤ
   マト運輸の活躍がなければ、日本の小売り商業全体が、通販のみ
   ならず、仕入れの物流でも、どんなひどい状況になっていたかを
   想像するだけでも心底うんざりします。
   
  ○「ブルータス」6月1日号の「新しいスタイルの『本屋』が気に
   なる!」という特集号に載せていただきました。
   「100人の本好きが教える、マイ・ベスト・ブックストア30
   0店」となっていて、100人の方がひとり3店紹介されてます
   (実際には1店とか2店だけの人があるので300店にはならな
   いようですが)。うちの店はなかなか好調で4人の方が取り上げ
   てくださいました。うちお一人は文だけで写真がなかったので、
   3人半としても、これはかなりの高率といえるでしょう。ここ数
   年インターネットのおかげで「新本特価」や「非流通本」や「消
   えた出版社」などの本の扱いが増えつつあるのが評価されたのだ
   と思います。ネット以前、95年位だとせいぜい1人か2人がい
   いとこだったでしょう。
   
  ○大阪本社版のみかと思いますが、6月3日付「読売新聞」夕刊の
   文化面、「手帳」というコラムにて、「ネットの影響“幻の書”
   売れ行き好調」として、うちの店のことが少し紹介されました。
   5月に紙版の「三月書房販売年報(仮題)」をお送りしたところ、
   年間売上げランキングに、京都書院やペヨトル工房や小沢書店な
   ど「消えた出版社」が出てくるのが面白いと取り上げてくださっ
   たわけですが、メルマガばかりでなく、紙版も残しておいてよかっ
   たと思いました。
   
   
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  「たまや」創刊号

   多田智満子・佐々木幹郎・季村敏夫・瀧克則・細見和之・
   鬼海弘雄・浅見洋二・永田紅・島田幸典・豊原清明・間村俊一・
   笠原芳光・渡邊英綱・宮本隆司

   編集     季村敏夫・瀧克則
   発行所    山猫軒
   本体価格  1200円 

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三月書房販売速報[067]  
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2003/08/03[05-06-67]  (c)SISIDO,Tatuo     

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 067号
     
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「性愛の神秘哲学」アラン・ハワード著/西川隆範訳 アルテ
 ◆「茂吉を読む」小池光 五柳書院
 ◆「(歌集)夏のうしろ」栗木京子 短歌研究社
 ◆「国家論大綱 第1部(下)」滝村隆一 勁草書房
 ◆「関西フォーク70'sあたり」中村よう 幻堂出版

 ◆「樹が陣営25:特集・吉本隆明」佐藤幹夫・編集 樹が陣営発行所
   全280ページで1200円はお買い得。地べたで販売している書店は10
   店ほどだし、ネットで売ってるのはうち以外にはほとんどなさそう
   だから売れなければ不思議なくらい。現在の実売60冊強。   


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「吉本隆明全詩集」思潮社
 ◆「回転ドアは、順番に」穂村弘/東直子 全日出版
 ◆「(歌集)ニュークリスプス」加藤治郎 砂子屋書房
 ◆「現代詩手帖9月号 特集・詩人、吉本隆明」思潮社
 ◆「高橋源一郎 GEN'ICHIRO BOOK」 思潮社
 ◆「イエスからキリストへ」シュタイナー著/西川隆範訳 アルテ
 ◆「聞書 庶民列伝」竹中労 皓星社
 
 ◆「昭和の天一坊 伊東ハンニ伝」河西善治 論創社
   宣伝文によると「昭和の大詐欺師の正体!株で儲けた大金でジャー
   ナリズム界に彗星のように現れた英雄・ハンニ。ハンニはシュタイ
   ナーの夢を川島芳子や大宅壮一、藤山一郎らと共に新東洋で実現し
   ようとした。一大叙事詩」とのことですが、なにやら面白そう。

 ◆「『夜想』復刊1号:特集ゴシック」今野裕一編集 発行所名不明
   8月刊行と新聞に載ったが、確定的な案内はまだ来ていない。
   「2マイナス」と同様に自主流通本になるらしい。
   
    
[#03] 紙の本は2012年にはなくなる?

   さるメルマガに載っていた、インプレスの塚本社長のインタビュー
   によると、「2012年を目途に電子端末が紙の性能を超えてくるので
   はないかと考えています。紙は徐々に減っていって行って、2012年
   には紙はなくなると思います。」とありました。
   この文章では2012年が「紙を超える」年なのか「紙がなくなる」年
   なのかよくわかりません。また別の箇所では、専用端末が紙を超え
   るには15年くらいかかるとも述べておられます。ようするに2012年
   ころに紙を抜き、2020年ごろまでには紙本がなくなるという予測な
   のでしょう。紙の本に変わるのは、インターネット経由の電子コン
   テンツとのことですが、読書端末は専用機がメインで、パソコンや
   携帯電話やモバイル機器でも可能ということのようです。この予測
   は、すでに電子書籍を販売している出版社の社長の、希望的観測と
   は思いますが、専用端末の性能が100倍以上になり、価格が激安にな
   り、しかも使い勝手が現在では想像できないくらいによくなれば、
   紙の本は趣味的な本などだけになることでしょう。何しろ10年前
   にインターネットがここまで普及すると予測していた人はほとんど
   いなかったのですから、10年先のことも同様に不明です。読書端
   末の導入には、10億超の人口があり慢性的な紙不足に悩んでいる
   中華人民共和国が積極的だと、「出版ニュース」で読みました。億
   台の単位で売れるとなれば、端末の開発競争は携帯電話並の加速度
   になって、0円で購入できるようになるかもしれません。
      
   紙の本が無くなれば、出版社はともかく取次と新刊書店の仕事はな
   くなってしまいます。出版業界の売上げは前年割れを続けています
   が、世間の景気が戻っても、紙の本の終焉が見えていたら、売上げ
   が回復することはありえません。人ごとですから知ったことではあ
   りませんが、千坪級の書店は何年契約が普通なのでしょうか。2010
   年くらいになれば新刊が半減していて、あんな広さは必要なくなっ
   ているかもしれません。そうなれば、うちの店のように10坪しかな
   くて、新本特価も扱ったりしている店のほうがやや耐久力があるで
   しょうが、それも一時しのぎに過ぎなくて、遅かれ早かれ古書店し
   か生き残れなくなることでしょう。新本屋が下駄屋や時計屋や足袋
   屋などの後を追うことになるのは遅かれ早かれ避けられそうにあり
   ません。ところで、紙本がなくなれば失業確実な日販やトーハンは、
   このあたりのことについてどのような展望を持っているのでしょう
   か?

   ※このネタはちゃんとまとめて「出版ニュース9月中旬号」に掲載
    予定です
   

[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その34)

  ○ついにゼスト御池の紀伊国屋書店が撤退を発表しました。8月17
   日に閉店し、あとはふたば書房が引き継ぐことになったそうです。
   うちの店への影響は、地方からの来店客に電話やメールで道案内を
   するときに、「地下鉄市役所前駅の紀伊国屋書店前の11番出口の
   エスカレーターで地上へ出て、北へ200メートルです」と言えな
   くなることだけと思います。ふたばさんにはまことに失礼ではあり
   ますが、「紀伊国屋書店」と「ふたば書房」では、知名度に雲泥の
   差がありますから、<道しるべ>としてはかなり落ちると言わねば
   なりません。おそらく今後は「地下商店街の本屋の前の出口」とい
   う教え方をすることになるでしょう。その他の影響というのはあま
   りないようです。紀伊国屋の出店で売上げが減ったとは思っていま
   せんし、撤退されたからといって、もしふたば書房が引き継がなか
   ったとしても、売上げが増える見込みはほぼ皆無だからです。
   
   ゼスト御池は1997年秋、地下鉄東西線の開通と同時の開業です
   が、バブル期に計画された第三セクターのご多分にもれず、まこと
   にどうしようもない商業施設で、開業以来低迷という言葉すら恥ず
   かしいくらいの不振が続いています。
   
   これは聞いた話ですが、ゼストの経営態勢は市役所の天下り7名、
   大丸百貨店系の出向7名に地下街の権利保有者1名という構成だそ
   うです。天下り人は商売の経験も能力もなく、無事に任期を終える
   ことしか考えてないでしょうし、出向者はどう考えても出世コース
   ではなさそうな上に、ことなかれ主義の天下りに足を引っ張られる
   でしょうから、やる気が出せそうにありません。
   
   オープン前に地元優先で70店舗ほど募集があったのですが、テナ
   ント料がバブル期の設定のままで馬鹿高く、まったく人気がありま
   せんでした。たしか書店等が一番安くて坪25000円、4段階の
   一番上の飲食業は、4万弱だったはずです。結局全国に募集を広げ、
   それでも人気がなかったので、1区画希望者に2区画押しつけたり
   して、結局50店舗強でオープンしたはずです。紀伊国屋さんは、
   最後は4区画約600平方米でしたが、当初は飛び地に1区画文房
   具店も開いておられました。ほんの一時期ですが、さらにもう1区
   画でコミック店を開いておられたこともありました。
   
   ゼスト全体の総売上額は昨年度が22億円とのことですが、これは
   開業直前に下方修正された予定額の3分の1ですから、いかにひど
   い状況かおわかりいただけるでしょう。現在50店が営業中ですが、
   サンリオや新星堂などいくつかあった有名店は次々に撤退してしま
   い、オープン以来続いている店は、紀伊国屋さんを入れても5店の
   みとのこと。代替店は空き店舗を作らないために、無理に頼んで出
   店してもらったらしい、仕込みの安そうな雑貨店や靴店や婦人服店
   が大部分です。眼鏡店は同じ場所で変わらず営業しているように見
   えますが、いつのまにやら「メガネのミキ」とかいう有名店がいな
   くなって、店名もよくわからないメガネ店になっているようです。
   
   紀伊国屋さんはやたらに広い公共通路を挟んだ両側に各2ブロック
   という、お客にとってもお店にとっても、使い勝手のはなはだよく
   ない店でした。当初は4区画それぞれにレジを置き、各2名の店員
   が配置されていたのですが、現在は通路に面してレジを2箇所に置
   いて向かい側の店の分もカバーしておられます。こういうことは、
   間の公共通路の人通りがほとんどないから可能なわけで、梅田の地
   下街だったら絶対に不可能な配置でしょう。
   
   いかに紀伊国屋さんの知名度が高くとも、この程度の広さでは吸引
   力に限界があり、ほかのテナントとの相乗効果がまったく期待でき
   ないとなれば、撤退はむしろ遅かったくらいでしょう。実際のとこ
   ろ2年目ごろからは、撤退の噂が流れ続けていました。撤退後には
   ふたば書房さんが入られるそうですが、直近の地べたに河原町店を
   持っておられますから、ゼストの状況は百もご承知間違いありませ
   ん。それでもあえて出られるからには、よほどテナント料が安いの
   でしょう。もっとも界隈の別の書店主の意見では、無料でも苦しい
   だろうとのことですが。
   
   とにかくゼストの閑散振りは定評があり、一日1万円売れない店が
   あるとか、定休日でもほとんど人通りが変わらないとか、いろいろ
   聞いてます。京都市は援助のために、まず広場の大型テレビを買い
   上げ、その次にエスカレーターを買い上げました。これは、エスカ
   レーターの利用者が、商店街の利用者よりも、地下鉄や地下駐車場
   の利用者、ようするに公共通路としての利用者のほうが多いからと
   言う苦しい理屈でした。きっと次は天井や壁やトイレを買い上げる
   のだろうと思ってましたが、さすがにエスカレーターの件が議会で
   不評だったのでそれはやっていようです。いずれにしろ、第3セク
   ターは全国的に死屍累々で、京都でもマイカル破綻の北大路タウン
   を初め、醍醐のダイゴローとか、山科のラクトとか景気のよい話は
   皆無です。それでも懲りずに二条駅前の再開発中ですがどうなるこ
   とでしょう。
   
   ゼストについてはこの3倍くらいはすぐ書けますがこの程度にして
   おきます。紀伊国屋さんの撤退のニュースを「京都新聞」のサイト
   で見つけたとき、まず最初にひらめいたのは、<天に唾する>のネ
   タができたということでした。こういうコラムを続けていると、ま
   すます人間が悪くなるようです。ついでに「出版ニュース8月中旬
   号」もこのネタで稼げてラッキーでした。8月10日ごろ発売です
   が、このメルマガのほうがうんと詳細です。
   

[#05] 雑、雑、雑、…

   ○トランス・ビューの池田晶子本は書店への直卸し主体なのに、す
    でに8万部を突破したとのこと。これは画期的なことではないで
    しょうか?取次は太洋社のみでトーハンや日販は太洋社扱いの完
    全買い切り高正味になります。うちはほぼ全点直で委託していた
    だいていますが、たいして売っていないにもかかわらず、実に行
    き届いたサービスをしていただいています。8万部となれば、開
    業時には冷たかった取次も手のひらを返しつつあるに違いありま
    せんが、せっかく画期的なビジネスモデルを構築されたのですか
    ら、現在の取引形態を持続していただきたいと思っています。

    ※トランスビューの書店向け案内は下記にて読めます
     http://www.transview.co.jp/syotens/top.htm
    

   ○夏休みの初めごろに、京都でトーハンの児童書展があったとかで、
    和歌山県の美山村の書店さんが見学に来てくださいました。村に
    書店があるのは全国的にも珍しいのではないでしょうか?数字は
    忘れましたが、エリアの小中学生が800人位とかお聞きしまし
    た。沿岸部の御坊市までしかトーハンの配達便がなく、そこから
    は毎日別の運送屋さんが届けてくれるとのこと。とにかく、コン
    ビニもブックオフも漫画喫茶も、それどころか競合店もなくて、
    商圏人口がちょっと少ない以外は、空気も環境も最高で、商売し
    ながらリゾート気分?というまことにうらやましいところのよう
    です。
    
    その「イハラ・ハートショップ」さんのサイトです
        http://www5.ocn.ne.jp/~i-heart/
    

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  「季刊ブッキッシュ Bookish」4号 (2003 JURY)

   <特集>海野弘が歩いたモダンシティー
   
      五十嵐殿利治、橋爪紳也ほか
      
   発行 ブッキッシュの会  発売 ビレッジプレス
   本体価格  700円 

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三月書房販売速報[068]
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2003/09/17[05-07-68]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 068号
     
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「夜想復刊1号 特集ゴス」ステュディオ・パラボリカ
   初回30冊入荷は結果的には少なすぎた。予約状況はたいしたこと
   なかったのだが、発売日が確定すると注文が集まり、ほぼネット通
   販のみで即日完売してしまった。追加20冊仕入れ。現在の売上げ
   は40冊超。いまのところ「2マイナス0号」の時と同じ程度の売
   れ行きのようだ。年末までに60冊超くらいの予想。

 ◆「(歌集)ニュー・エクリプス」加藤治郎 砂子屋書房
 ◆「(歌集)雨を聴く」高島裕 ながらみ書房
   今年も歌集ラッシュのシーズンがやってきました。現在のところ
   はこの2冊と前号で紹介した「(歌集)夏のうしろ」栗木京子、「茂
   吉を読む」小池光の4点が好調です。

 ◆「現代詩手帖9月号 特集・吉本隆明」 思潮社   
 ◆「吉本隆明全詩集」思潮社
   ちかごろ<吉本>本のラッシュが続いています。「<吉本隆明>本 新
   刊のお知らせ」というメルマガも配信しているのですが、せわしな
   くてたいへんです。
   バックナンバーをHPに貼り付けましたのでごらんください。
   http://web.kyoto-inet.or.jp/people/sangatu/
      yosimotohon/yosimotohon02.htm#
 
 ◆「つげ義春自選集1〜6」嶋中書店
   故安原顕がボロクソに書いていた中央公論社元社長?の新会社が出
   しているコンビニ向けコミック。造本は最低だが、とにかく安いし、
   ザラ紙は昔の漫画によく合っている。B6判だから文庫判よりは描
   線が潰れていなくてよほど読みやすい。つげ義春がコンビニで売れ
   るとは意外だが、続々と出るところを見ると好調なのだろう。
   
 ◆「眞夏の夜の怪人二十面相」うらたじゅん 北冬書房
   北冬書房のFAXは、社長が居合わせた時しか通じません。ようす
   るに手動受信しかできないのだそうです。その社長は副業?が別に
   おありのようで留守がちです。日販に発注すると1ケ月はかかりま
   すから、急ぐときははがきで発注しています。それでも入荷まで平
   均2週間ほどかかります。現在の出版業界の流通速度を10段階に
   分けると、下から3番目くらいのランクでしょう。最初の5冊が売
   れて現在補充中。この本に併載されている作者の日記によると、う
   ちの店の古いお客さんらしいので、再入荷したら目立つところに飾
   らねばと思ってます。
   長年来てくださってるお客さんでも、付け払いにされたり、取り寄
   せ注文されたり、領収書を要求されたり、宅配を依頼されたりしな
   い限りは名前がわからないのが普通です。入って来るなり自分の著
   書を指さした人(例・玉川某さん)とか、在庫があれば署名します
   とおっしゃった人(例・秦某さん)もおられましたが、そういう著
   者はきわめてまれです。
      
 ◆「芥川龍之介の素顔」 関口安義 EDI
   この出版社は直取引のみなのだが、この社名で検索すると関係のな
   い略語ばかりヒットしてなかなか見つからない。書名で検索すると
   三月書房が先に出てくることが多いようで、書店数社及びトーハン
   から問い合わせの電話がかかった。EDIというのは「エディトリ
   アルデザイン研究所」の略称とのことだが、もう少し文芸書の出版
   社にふさわしい社名に変えたほうがよいでしょう。


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「(絵本)風さん」オルファース 平凡社
 ◆「植草甚一コラージュ日記1 東京1976」平凡社
 ◆「金子光晴道草対談(仮題)」吉本隆明、きだみのる、他 現代書館
 ◆「現代詩手帖10月号 特集・吉本隆明」思潮社
 ◆「現代詩手帖増刊 特集・吉本隆明」思潮社

 ◆「新聞社の欺瞞商法〜押し紙・折込広告の実態を追う(仮題)」
    沢田治+黒藪哲哉 リム出版 予価1500円
   沢田治さんは、新聞販売店の現況について日本一詳しい人。新聞販
   売店は圧倒的に本社有利な片務的契約に縛られているとか、新聞の
   発行部数は2割前後の水増しがあり、その分の新聞代は販売店が負
   担させられているが、販売店もその水増しの部数を元にして折り込
   み広告で儲けているとか、これにはもちろん本社も荷担しているの
   だが、摘発されれば当然のごとく販売店にのみ罪を押しつけるとか、
   新聞社の販売部門はいかに経費を水増しし裏金を作っているかとか
   を、実名を上げて公表する本のようです。当然のことながら新聞社
   側からの妨害工作もあって予定通りに9月末出るかどうかは予断を
   許しません。
   出版業界は先の再販制見直しの際に、新聞業界の政治力のおかげで
   再販制の継続を認められましたが、沢田氏によりますと、新聞販売
   店業界は書店業界よりも疲弊が激しく、あと数年で崩壊しかねない
   とのことです。新聞宅配業界の崩壊は書店業界にとってもひとごと
   ではありません。
   

[#03]  <天に唾する>京都の書店のうわさ(その35)

  ○「夜想復刊1号」は「2マイナス」同様に直扱いのみ。地方小出版
   センターの口座くらいはあったほうが便利ではと思うのだが、今野
   氏はなぜか気が進まないらしい。発売前日の又聞き情報ですが、京
   都市内での取り扱いは下記の書店のみとのこと。ふたば、アヴァン
   ティ、くまざわ、丸山あたりは手を出していないようです。ここら
   の書店はこの本の内容を判断してパスしたのか、直扱いを避けてい
   るのか、そもそも出版社が声をかけなかったのかは不明です。
   
   ●三月書房
   ●メディアショップ
   ●恵文社一乗寺店
   ●大垣書店本店、ビブレ店、
   ●阪急ブックファースト京都店、四条大宮店
   ●ジュンク堂書店京都店
   ●丸善京都店
   ●BS談京都店
   ●旭屋書店京都店
   
   全国的に見ると、大手で熱心なのはジュンク堂、TUTAYA、
   ヴィレッジバンガードあたりのようです。タワーレコードも一部の
   店で扱っているようです。これ1冊だけではデータ不足は否めませ
   んが、この手の自主流通本を扱う書店と扱わない書店のカラーの違
   いが少し見えるようです。前号で取り上げたトランス・ビューと同
   様に、取次を通さずとも出版業が成り立つようなら、出版業界の余
   命が少しは伸びるでしょう。
   
  ○ゼスト御池のふたば書房は、商品もレイアウトも紀伊国屋のをほぼ
   そのまま引き継いで営業してるようです。目立つところでは、南側
   通路に面した部分を開放してありました。紀伊国屋は数年前にこの
   部分を閉鎖してレジを半減したのですが、ふたば書房は再開放した
   にもかかわらずレジは2箇所のままです。あれだけ閑散としていれ
   ば、万引きも目立つのでしにくいだろうということかもしれません。
   それから、とてもわずらわしかった、英会話のセールススタンドが
   なくなったので入店しやすくなりました。
   
   
[#04] 雑、雑、雑、…

  ○浅草の上野文庫、中川氏がお亡くなりになったそうです。元リブロ
   等の書店におられ、「金茎和歌集」などの著者としても少し有名で
   した。その当時、自著の営業に来られたことがあります。10年ほ
   ど前に古書店を開業されましたが、けっこう評判がよくて繁盛して
   いるようでした。古書業界で修業経験のない新刊屋が、古書店に転
   業するとしたら、上野文庫さんの方法論がもっとも有効であろうと、
   つねづね注目していましたが、お店を見学する機会はついにありま
   せんでした。うちも以前から、新刊屋として立ちゆかなくなったら、
   古本屋になるしかないであろうと考えていますから、転業に成功さ
   れた先輩の早すぎる死が惜しまれます。享年63歳とのこと。
   
  ○「新文化オンライン【8月20日更新】」に「河出書房新社、初の謝恩
   価格全集セール。須賀敦子全集(全9巻)や澁澤龍彦全集(全22巻・
   別巻2巻)、日夏耿之助全集(復刻版・全8巻)など93年から2000年
   に刊行を始め完結した7全集を対象に申込制でセールを行う。セット
   数は50〜100セット限定で、受付期間は10月1日〜12月15日。販売期
   間は来年3月末まで。取引条件は55掛、3カ月延勘、完全買切り。書
   店が自由価格で販売する方式。」という記事が載ってました。
   
   この取引条件は、筑摩書房が過去数回行ったセールとほぼ同じです。
   この記事では、書店直なのか取次を通すのかが不明ですが、筑摩の
   場合は書店がどちらかを選べました。55掛だとせいぜい3割引にし
   かできません。ようするに10000円の本なら5500円で仕入れて7000円
   で売るわけです。これで粗利益が1500円ですから利益率21%です。
   しかし、買い切りのリスクを考えるともう少し利益率がないと割が
   あわないので、2割引きにすれば利益率は31%になりますが、それ
   だとたいして割安感がないので売れ行きが落ちます。まして、通販
   だと巻数の多い本ですから送料も安くないので、まずは売れないで
   しょう。店頭でしか売れないとなれば、商品の内容は最高とはいえ、
   ものすごく場所をふさぐので、うちのような小書店では展示する場
   所がありません。筑摩の時は事前予約があった数組のみを、3割引
   きで売りました。
   ところで、一般客でも自由に見られる「新文化」のサイトで、業界
   秘ともいうべき特価本の卸値が公開されるようになったことは、な
   かなか画期的なことではないでしょうか?どしどし正味を公開して
   くれれば、書店がちっとも儲からない商売だとわかってもらえるこ
   とでしょう。
   
  ○角川書店のPR雑誌「本の旅人」の9月号の巻頭コラム「書店の遠
   景」にて、森青花さんが「私の贔屓の本屋さん」として、三月書房
   のことを書いてくださってます。この方もうらたさん同様に学生時
   代からのお客様らしいのですが、まったく知らない著者名でした。
   お客様としてのお顔はよく知っている人のはずなのですが、黙って
   おられれば何をしている人かはわかりません。あわてて検索すると、
   新潮社の「日本ファンタジーノベル大賞」優秀賞を数年前に受賞さ
   れてましたが、文学賞の類にはぜんぜん興味がないので発表記事や
   写真なども見なかったのでしょう。この受賞作は品切れでしたが、
   最新作が角川から出たばかりなのでいちおう仕入れてみました。

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「夜想復刊1号・特集【ゴス】Gothic」

 G・ヘルンバイン/フローリア・シジスモンディ/金子國義/トレヴァー・
 ブラウン/三原ミツカズ/ルーカス・スピラ/アリス・アウアア/
 S・ルミャック /池田宏彦/P・モリニエ/宮西計三/鈴木真理子/須永
 朝彦/服部正/蜂巣淳/小谷真理/高柳カヨ子

 アーティストへのインタビューはすべてとりおこしで、オリジナリティ度
 は高い。いま流行している『ゴス』とは何か『ゴスロリ』とは何か? 
 ということも分かるし、それを楽しむこともできる。

  定価:本体1500円+税 B5変型
  発行:ステュディオ・パラボリカ 
  ペヨトル工房:http://www.tctv.ne.jp/sparabo/peyotl.html

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三月書房販売速報[069]
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2003/11/17[05-07-69]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 069号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「新聞社の欺瞞商法」沢田治/黒藪哲哉 リム出版新社
   30冊ほど売れているが、もっと早くもっと大量に売れると思って
   いたので少しがっかり。沢田氏が京都中の全新聞販売店に三月書房
   で買うようにとのダイレクトメールを出してくれたのに、販売店主
   らしき人は3名ほどしか見かけなかった。販売店主が読めば絶対に
   得する本なのだが、そういうことに関心のない人が多いのだろう。
   
 ◆「アルバム・山之口貘」山之口泉ほか編 沖縄タイムス社
   20年ほど前に思潮社から出た山之口泉さんの「父山之口貘」とい
   う本はとてもよい本だったがすぐに売り切れて絶版になった。どこ
   かが文庫にするといいと思う。
   
 ◆「渡辺京二対談集:近代をどう超えるか」 弦書房
   葦書房編集部が独立した弦書房の本はすでに数点出ているが、どれ
   もなかなか渋くてよい本だ。しかし、日販でフリー入帳の葦書房に
   比べると、地方小出版流通センターのみの扱いなので、正味は5%
   ほど高いし、返品も原則不可と、条件がかなり悪くなったのが残念
   である。

 ◆「装飾文字の世界」鶴岡真弓訳 三省堂
   これは秋に入荷した新本特価だが、探している人が多かったらしく
   ネット通販でたいへんによく売れている。どうもカリグラフィーを
   カルチャー教室か何かで勉強している人たちの必備図書らしい。定
   価でも喜んで買ってくれそうな印象だが50%引きで売っている。
   必死で探している読者が多いのに、なぜ三省堂が絶版にしたのかは
   不明だが、どれもカバーが傷んでいるから定価では販売しにくい汚
   損本ばかりになったからだろう。20冊弱売ったとこで在庫切れ。

 ◆「永遠の吉本隆明」橋爪大三郎 洋泉社 
 ◆「現代詩手帖特集版 高橋源一郎」思潮社
 ◆「現代詩手帖10月号 特集・吉本隆明とはなにか」 思潮社
 ◆「忘れられる過去」荒川洋治 みすず書房
 ◆「(歌集)風翩翻以後」齋藤史 短歌新聞社 
 ◆「(歌集)風位」永田和宏 短歌研究社 
 ◆「(歌集)渾円球」高野公彦 雁書館 

 
[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「わたしの深澤七郎」田中眞壽子・著/発行 ※入荷済み
   純然たる自費出版物。10年ほど前に「こころの旅人深沢七郎」が20
   冊以上売れた著者の続刊。こんどの本は深沢関係以外のエッセイも
   半分近くあるので前著ほどは売れないかもしれない。
 
 ◆「シュタイナー教育のまなざし」吉良創 学研 ※入荷済み
 ◆「つげ義春初期傑作長編集(1)」講談社 ※11月予定
 ◆「永井陽子全歌集(仮題)」青幻舎 ※12月予定
 ◆「常用字解」白川静 平凡社 ※12月予定
 ◆「全南島論」吉本隆明 作品社 ※1月予定
 ◆「『ならずもの国家』異論」吉本隆明 光文社 ※1月予定
 ◆「『書』で解く日本文化」石川九楊 毎日新聞社 ※1月予定


[#03]  返品の無伝票化について

   日販では今年の4月から、雑誌の返品は無伝票になっています。月
   刊誌もムックも週刊誌も同じ箱に入れて返送するだけで、返品伝票
   を切る必要はありません。雑誌は返品期限等のルールが明文化され
   ていますから、とくに難しい問題はありませんでした。黒カーボン
   を挟んだ2枚伝票を切らずによくなったので返品作業時間は8割方
   減少したような感じです。返品不能品は廃棄されて丸損になるので
   すが、まだ1冊も廃棄通知が来ていません。計算が合ってるかどう
   かはめんどうなので精査してませんが、おおむね正確のようです。
   今のところ唯一の不満は、「雑誌返品宛名ラベル」を5000円分ほど
   押し売りされたことだけです。1000枚強ありましたが、うちは月に
   5箱程度しか返品しないので、いくらがんばっても全部消費するに
   は10年以上かかります。今のシステムが10年も変更されないという
   ことは考えられないので、きっと半分以上が無駄になるでしょう。
   
   日販では来年から、コミックと文庫も無伝票返品にするのだそうで、
   先日支店で説明会がありました。参加しなかったので詳細はまだ不
   明ですが、コミックも文庫も大部分がフリー入帳ですから、返品条
   件を雑誌同様にマニュアル化することはさほど難しくないでしょう。
   
   一般書籍もいずれは無伝票返品の方針だそうですが、これは雑誌や
   文庫とは大違いで、そうそう簡単には返品条件をマニュアル化でき
   ないでしょう。各出版社の返品条件はまちまちで、しかも公表され
   ていないのがふつうです。返品するときは過去の経験によって、適
   当に判断してますが、よくわからない時はダメ元で返品して、逆送
   されたら、また棚に戻すなり、出版社と交渉するなり、処分するな
   りしています。これが没収廃棄になると大損ですし、逆送を希望す
   ると宅配便代を負担しなくてはならなくなってたいへんです。現在
   は逆送品は注文品と同送されるので送料はほぼ無料です。
   
   ようするに、一般書籍の無伝票返品を実施するには、全出版社の返
   品条件を明記した一覧表が必要なのですが作成可能なのでしょうか。
   20年近く前、加賀美編集長時代の「新文化」が数百社にアンケー
   トして、各社の返品条件を公開されたことがありますが、「原則と
   して」とか「場合もある」とか「出荷の条件による」とかのあいま
   い表現が目立ちました。さりとて、注文品は原則買切という本来の
   条件を持ち出されると、現状では返品条件付買切り、実質はフリー
   入帳である多くの出版社から、いちいち返品了解書を貰う必要が発
   生してお互いにたいへんです。
   
   逆にいえば、それでも取次が無伝票返品を実施したいのなら、いま
   まであいまいなまま放置されていた、返品条件を整備する必要があ
   ります。そうなれば、無理に無理を重ねてわけがわからなくなりつ
   つある委託制度の見直しも必要なわけで、うまくすればすっきりと
   整理できるかもしれません。あまり期待はできませんが…。
   
   
[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その36)

  ○河原町三条下ル西側の文祥堂書店さんが移転されました。移転先は、
   河原町三条上ル一筋目西入ルですからごく近所です。文祥堂さんは
   10年ほど前にお隣の文房具店と共同で8階ほどある立派なビルを建
   てて各階にテナントを入れ、自らは半地下部分で文房具店と並んで
   書店をしておられました。しかし、以前よりも売り場面積が狭くなっ
   ていましたし、半地下とはいえ急な階段を降りるのはおっくうなの
   で、なんとなく客足が落ちてるような感じでした。立地は市内でも
   最高ですし、もともと外商が圧倒的に強いらしい書店ですから、他
   人に貸したほうが効率がよいということでしょう。うわさでは新店
   は10坪未満らしいですが、山の本に力を入れるとのことです。
   (11月4日開店。未見。)

   これで河原町の三条四条間の路面店はまた1店減少しました。古書
   店及びメディアショップ、平安堂書店、官報販売所など、横の筋へ
   ちょっと入る店を除くと、路面店は丸善、ブックファースト、河原
   書店の3店のみになってしまいました。この10年ほどの間に、京
   都書院、オーム社、サワヤ書店、駸々堂河原町店(※京宝店はブッ
   クファーストになった)、そして横の筋へ入った海南堂書店とミレ
   ー書房が消えたわけですから半分以下になったわけです。
   京都府の書店組合の加盟店数は、1990年が432店で、2003年が283店
   と34%の減少率ですから、河原町界隈はそれをはるかに上回る減少
   率です。この減少は福岡市などのように、千坪級書店の乱立による
   ものではなく、純減なだけにちょっと寂しい話ですが、書店業界衰
   退の流れを先取りしている「先進都市」ということかもしれません。
   
  ○「出版ニュース」10月上旬号掲載の「書店売上ランキング2002」に
   よりますと、売上げ5億円以上の379社中、京都市に本社がある書店
   はこの3社のみでした。
    市内1位(全国 84位)大垣書店  30億5千万円 前年比 6.4%増
    市内2位(全国108位)ふたば書房 22億1千万円   同 7.1%増
    市内3位(全国200位)丸山書店  12億円      同22.2%減
   このランキングでは、店舗数や売り場面積と損益の前年比が不明な
   ので、売上げの増減がそのまま好不調を表しているわけではありま
   せんが、丸山書店の落ち込みは大きいようです。この3社の店舗は
   大きい店でもせいぜい200坪級です。大型店は他都市に本社があ
   る、旭屋、ジュンク、丸善、イズミヤなどのしかないわけですから、
   地場の書店業界は90年代の書店バブルには乗り損ねたわけですが、
   いずれはこのバブルも崩壊するに違いないので、むしろ冷静に対処
   できているいうことかもしれません。
   

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「新聞社の欺瞞商法」黒藪哲哉・沢田治著 1600円 リム出版新社

   詳細はリム出版新社のサイトをごらんください
   http://www.bekkoame.ne.jp/~rim/

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 [おまけ]

 「週刊朝日11/14号」に載ってたのですが、日本で前シーズンSARS
 の発症患者がゼロだったのは、つばが飛ばない日本語のおかげだったそ
 うです。感染症の専門家が英国の医学誌「ランセット」に投稿した新説
 だそうで、まったくのデタラメではなさそうです。(実証的な研究では
 なくて、単なる思いつきレベルのようですが)
 中国語の発音にはしゃべったときにつばきが飛ぶ、p、t、k、の有気音が
 あり、とくに「p」の場合に多く飛ぶが、これは英語も同じだそう。とこ
 ろが日本語のp、t、k、はつばきが飛びにくい無気音で、しかも奈良時代
 にp音だった「は」行の発音が、現在はh音に近くなって「ぱ」行の言
 葉が非常に少なくなっているということです。
 むかし「ニホンでなくニッポンと言え」と、くだらない指示を出した首
 相がいましたが、あれから数十年たち、いまのニホン人はもっと口の開
 きが小さくなって、かったるーくしゃべるようになってますから、ます
 ますつばが飛ばなくなってることでしょう。ほんとに何が幸いするかわ
 かったものではありません。これからは若いひとたちがだるーく話して
 いても、もっとはっきり話せなどと、余計なことは言わないようにして、
 「ニホン語族」の飛沫感染に対する「優位性」の保持につとめるべきだ
 と思います。
 
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三月書房販売速報[070]
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2003/12/31[05-08-70]  (c)SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 070号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] 今年は8号しか発行できませんでした。月刊とかの定期発行を約束
   しているわけではありませんが、せめて月に一度は出さないと「速
   報」とは言えないでしょう。回数が減ったのは多忙のせいもありま
   すが、駸々堂書店や鈴木書店の倒産のような突発的な「大事件」が
   なくて、速報ネタがないことが大きいです。
   
   出版業界の景気は下降の一途で、この暮れにも、大明堂と青樹社の
   解散や芳林堂の池袋店売却が公表されましたが、自主解散される出
   版社や、自社ビルを売却して経営の立てなおしをはかられる書店の
   ほうが、死んだも同然なのに倒産すらままならない多くの書店や出
   版社よりはまだましかもしれません。
   
   後のコーナーにもくわしく書きましたが、出版業界は長期的に見れ
   ば、世間の景気がどうなろうとも、市場が縮小し売上げが下降して
   行くばかりであろうと考えています。景気さえ良くなれば、出版業
   界の景気もよくなると考えている関係者が多いようですが、本格的
   に景気がよくなれば金利が上がり、テナント料も上がるわけですか
   ら、その時には書店バブルが崩壊し、もっとひどいことになるでしょ
   う。
   
   うちの店も今年はやや売上げが落ちました。これで、2000年と2001
   年にやや上昇した分が、昨年、今年とやや下降して、1999年並にな
   りました。来年もよくて横ばいで、下降する可能性のほうが高いよ
   うな気がします。ネット通販はまだ今年も10%以上伸びていますが、
   店頭現金販売が10%ほど落ち込みました。ただし、営業時間を年々
   減らしていることと、数%はあるといわれるデフレを考慮すれば、
   それほど大きい落ち込みではないようです。それに、3年目に入っ
   た新本特価の売上げがますます好調で、今年も10%以上伸びていま
   すから、仮に総売上が1999年と同じだったとしても、粗利益は少し
   増加しているはずです。このあたりのもう少し詳しいことは、年明
   けに昨年の決算をしてみないとわかりません。
   
      
[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「常用字解」白川静 平凡社
   これは安くて読みやすくて装幀もよくてロングセラー確実です。
   今春、英和辞典や国語辞典は電子辞書が紙の辞書を抜いたといわれて
   ますが、この辞書は「字統」や「字通」とともに、紙の辞書としては
   一番最後まで残る本になるでしょう。
   昔、保育園の保護者研修会で、某大学教授から「親という字は木の上
   に立って子どもを見送っている姿」だとか、「家」という字はどうだ
   とか、「育」という字はこうだとか、まるでテキ屋講釈のごとき最低
   の講演を聴かされて、よっぽど席を立って帰ろうかと思いましたが、
   保護者会の役員だったので最後まで我慢したショボイ記憶があります。
   この辞書が普及すれば、あの程度の教授でも、もう少しましな話がで
   きるようになることでしょう。

 ◆「金子国義 富士見ロマン文庫コレクション」ステュディオ・パラボリカ
   「Yaso 夜想」復刊記念、1000部限定版。2800円
   金子国義の装幀のおかげで古書価が高いことで有名な、富士見ロマン
   文庫の全表紙をカードにした本。これがまたきれいな装幀なので、また
   古書価が高くなりそう。ただし、封を切ると値下がりしそうだし、中を
   読まずに置いておく人も多そうだ。小生も封を切ると商品にならないの
   で見てません。30部仕入れて現在20部弱の売上げ。
   
 ◆「現代詩手帖増刊 吉本隆明入門」思潮社
 ◆「吉本隆明における疎外から言葉へ」宮内広利 新風舎
 ◆「異形(いぎょう)の心的現象」吉本隆明&森山公夫 批評社
 ◆「智慧の実を食べよう」糸井重里・編 ぴあ
   今年の<吉本>本ラッシュは空恐ろしいほどでした。定期刊行物数種、
   単行本、インタビューが載った雑誌等、まだ勘定してませんが、30種
   くらいは扱ったのではないでしょうか。

 ◆「久坂葉子詩集」北宋社
 ◆「ひっつきむしの図鑑」丸山健一郎 トンボ出版
 ◆「人智学から見た家庭の医学」西川隆範・編訳 風濤社
 ◆「新訳 魂のこよみ」シュタイナー イザラ書房 
 ◆「シュタイナー教育のまなざし」吉良創 学研
 ◆「清水幾太郎」小熊英二 御茶ノ水書房
 ◆「男性誌探訪」斎藤美奈子 朝日新聞社 
 ◆「土方巽の舞踏(CD-ROM付)」慶大出版会 
 ◆「とおいところ」まどみちお 新潮社 
 ◆「(歌集)銀耳」魚村晋一郎 砂子屋書房 
 ◆「(覆刻)滝口修造の詩的実験1927〜1937」思潮社
 
   2003年の売上げTOP3は現在集計中ですが、1位は「Yaso 復刊1号」、
   2位が「樹が陣営25号」、そして3位が「原型:斎藤史追悼号」とい
   う結果のようです。この3冊に共通するのは、一般の取次を通してい
   ないために「他店ではあまり見かけない本」だということです。
   

[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「Niche(ニッチ)別冊:9.11/3.20以降の世界史と日本の選択」批評社
 ◆「(歌集)火太郎」梅内美華子 雁書館
 ◆「セレクション歌人:江戸雪集」邑書林
 

[#03] 「出版ニュース連載コラム」最終回 2003/12/中旬号から転載

   「出版ニュース」は月3回の発売で、「ブックストリート」という連載
   コラム欄は、<流通><印刷><図書館><書店><出版><古書>を
   それぞれの担当者が月に1回づつ執筆するものです。小生はもちろん
   <書店>の担当で毎月中旬号掲載でした。任期は決まってなくて、他の
   担当者はかなり長く続けておられる方もあります。無料で店の宣伝がで
   きる上に、ギャラももらえるので悪い仕事ではないのですが、とにかく
   ネタが不足気味で、締め切りが近づくとかなり悩ましかったので交代し
   てもらいました。連載中に残念だったのは、ほとんど何の反響もなかっ
   たことです。どうもこの雑誌は、出版社や図書館の備品として安定して
   売れてはいるものの、個人で購読している人が少ないのではないでしょ
   うか。大書店の雑誌売り場でも、必ずしも立ち読みできるとは限らない
   ようですし。というわけで、清田編集長の許可をいただいて三月書房の
   HPに一挙再録しましたので、おひまな時にでも読んでみてください。
   とくに図書券の発行会社が、紙の券を廃止して、図書カードに一本化し
   ようとしている件に反対意見を書いたのは、今でも有効な議論と思いま
   すからぜひお読みください。昨年5月中旬号掲載(第5回)です。

   12月中旬号に載った最終回を見本としてここに転載しました。
      全24回はこちらでお読みください。
   
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    2年間おつきあいいただきましたが、このコラムの担当は今回が最終
   回です。2年前は鈴木書店が倒産したばかりで、いよいよ出版業界の全
   面崩壊が始まるのではという時期でした。ひょっとしたら波瀾万丈の実
   況記録になるのではと、密かに期待もしていたのですが、この間はさほ
   ど大きな波乱はありませんでした。とはいうものの、明るい話は何もな
   くて、業界全体の売上はとめどなく低下しつつあり、書店、出版社、取
   次の倒産や廃業が静かに続いています。しかし、この程度ですんでいる
   のは、経営が改善されたからというよりも、低金利政策の恩恵が大きい
   ようですから、金利が上昇すればたちまち破綻が続出することになるで
   しょう。
    出版業界の売上低下は、たんに全体経済が不況だからばかりではなく、
   衛星放送やテレビゲームなどに代表される娯楽の多様化、IT関連の技
   術発展にともなうペーパーレス化、レンタル店やリサイクル店を上手に
   利用するようになった消費者の意識変化など、業界外から押し寄せる大
   きな構造変化の複合的な結果ですから、もはや押し止どめることは不可
   能と思われます。将来、景気が回復すれば、一時的に売上が上昇するこ
   とがあるかもしれませんが、長期的に考えれば、紙に印刷された出版物
   の売上が縮小していくことは確実です。少し前までは「雑高書低」とい
   われていた雑誌の売上が、ここ数年急速に落ちつつありますが、これも
   おそらく一時的なことではなくて、メディアとしての限界性の現れと見
   るべきでしょう。
    今後の出版業界は、おそらく和服業界のような衰退の仕方をして行く
   ことになるのではないかと思います。戦後の和服業界のピークは大阪万
   博のころだったようですが、その後の30年で売上は10分の1以下に
   なっています。現在、和服はごく限られた愛好者と、職業上や芸事上必
   要な人たちの需要を別にすれば、コスプレの一種になってしまった晴れ
   着と浴衣だけしか売れていません。このように普段着としての需要がまっ
   たくなくなってしまったことは、着物文化を支える下部構造が完全に消
   え去ったことを意味しています。仕立てや洗い張りや縫い直しはいうま
   でもなく、帯の結び方も着物の畳み方も知らない人が大部分になり、し
   かもそれで日常生活に何の不便もないわけですから、関係業界がいかな
   る振興策をとろうとも回復の見込みはありません。
    出版物もあと30年もたてば、限られた愛好者向けの特製本とごく一
   部の専門書、そして粗悪な読み捨て本以外は新刊が出なくなっているか
   もしれません。もちろん何らかの端末で文字を読むわけですから、文字
   文化が絶えることはありませんが、通勤電車の中で読むのも、寝る前に
   ベッドで読むのも、印刷物以外の端末が主流になっている可能性が大き
   いでしょう。和服を普段着とする習慣がある人が、せいぜい昭和一桁生
   まれまでであるのと同様に、娯楽としてあるいは暇つぶしとして本や雑
   誌を読む習慣がある人は、せいぜい平成一桁生まれまでだといわれる日
   が来るのではないでしょうか。ゲームボーイや携帯電話の小さな画面と
   省略フォントで鍛えられている世代の人たちは、端末の価格さえ手頃に
   なれば、驚くほどあっさりと印刷物を見放してしまうかもしれません。
    うちの店はこの2年間の連載中、しつこく宣伝させていただきました
   ように、インターネットとの相性が妙によくて、取次ルート外の出版者
   との直取引やネット通販の道が新たに開けたこと、再販制の弾力運用に
   伴う自由価格本の波にいち早く乗れたこと、立地の商店街が近年上向き
   なことなどの幸運が重なって、何とか横ばい程度の売上を維持できてい
   ます。しかし、これだけの幸運が重なっても横ばいがやっとなのですか
   ら、うちの店もやはり下降局面にあることは間違いがありません。
    うちは極小書店ですが、土地建物は自前だし、家族以外の従業員はい
   ないし、借金もないので、業界が縮小していっても、比較的耐久力があ
   りそうです。筆者は54歳ですから体力の低下に合わせて徐々に仕事を
   へらしつつ、のんびりと無理をせずに、あと10年店を続けられるとよ
   いなと希望しています。このコラムはこれで終了ですが、ときどきは三
   月書房のホームページを覗いて、まだ潰れていないかどうかをお確かめ
   いただけるとうれしいです。 (2003/11/20記)
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[お断り] 「 <天に唾する>京都の書店のうわさ」は、ネタがぜんぜんない
      のでお休みです。スミマセン、と謝ることもないのですが、期待
      してくださってる方が多いようですので…

 

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