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2003年5月4日〜(2003.5.11up) |
・ スリランカ政府と「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」との和平交渉を再開させるための説得交渉が活発化。 |
・ 説得交渉に活発な関与をみせている主な国は、ノルウェーと日本。 |
→ノルウェー副外務大臣ヴィダル・ヘルゲッセン(Vidar Helgessen)とその特使エリック・ソルハイム(Erik Solheim)が、スリ |
ランカ首相ラニル・ウィクラマシンハ(Ranil Wickremasinghe)、LTTEの政治部門顧問アントン・バラシンハム(Anton |
Balasingham)と個別に協議(4日夕)。 |
→なお5月15日には、外務大臣ヤン・ペテルゼン(Jan Petersen)が、ウィクラマシンハ首相、LTTEリーダーのヴェルピラ |
イ・プラバーカラン(Velupillai Prabhakaran)と、和平交渉の再開について個別に協議する予定。 |
・ 日本からは明石康(スリランカの平和構築および復旧・復興に関する日本政府代表)。 |
→ウィクラマシンハ首相(4日夕)、LTTEリーダーのプラバーカラン(7日)と協議。 |
・ 7日に実施された明石康とプラバーカランの協議においては、和平交渉再開への目途は立たなかった模様。 |
→明石康は、6月に東京で開催される「スリランカ支援国会議」にLTTEが参加することを求める。内戦当事者が協力し合 |
っている様子を見せなければ、支援国の援助しようとする熱意が失われてしまうから、と。なた、その結果、十分な援助を |
供与してもらうことができなくなり、和平交渉の進展にも悪影響を及ぼすことになるから、と。 |
→LTTE側は、東京会議への参加には慎重な姿勢を見せる。計6回の和平交渉での合意事項をスリランカ政府が実行に |
移すことがまず必要、と考えているため。LTTEが憂慮するのは、@和平交渉における合意事項の実施が進展していな |
いこと、A国内避難民の帰還が進展していないこと、Bスリランカ北部・東部の再開発が進展していないこと、の3点。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.5.5)、 BBC 南アジア・ニュース(2003.5.7)、 |
Tamil Net(2003.5.8) |
2003年5月6日〜(2003.5.14up) |
・ スリランカ国会が開かれ、スリランカ政府と「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」との和平交渉について議論。 |
・ クマーラトゥンガ(Chandrika Kumaratunge)大統領が率いる野党の人民連合(People's Alliance, PA)は、ウィクラマシンハ |
(Ranil Wickremasinghe)首相が率いる統一国民戦線(United National Front, UNF)が進める和平交渉について、否定的な態 |
度を取ってきた。 |
・ PAの国会議員 Mahinda Rajapakse は、UNF政権は、「大統領よりもLTTEを信用している」、「外国がスリランカの和平交渉 |
に口をはさむことを許している」等と非難した上で、「和平交渉に失敗しているのだから退陣せよ」と要求。 |
・ ここにきて再び、スリランカの与党と野党の対立が深まりつつある。 |
→@PAと人民解放戦線(Janatha Vimukthi Peramuna, JVP)の関係強化が進行しつつあるが、これは、国会解散後の |
選挙協力の推進をにらんでのもの(大統領には国会を解散する権限が与えられている)。 |
→Aクマーラトゥンガ大統領が、UNF政権の権限を奪うために初めて大統領権限を行使した。大統領によって接収され |
たのは、Development Lottery Board (DLB)。これまでは、和平交渉にも参加してきたUNF政権の政治家 Milinda |
Moragoda の監督下にあった 。 |
→今後は、野党側の動きが活発化しそうな気配である。 |
・ 参考ニュース・ソース: Tamil Net(2003.5.8)、Tamil Net(2003.5.8)、 Tamil Net(2003.5.10)、 |
BBC 南アジア・ニュース(2003.5.13) |
2003年5月11日(2003.5.14up) |
・ タミル・イーラム解放の虎(LTTE)側の和平交渉の代表担当者であるアントン・バラシンハム(Anton Balasingham)が、急病 |
の治療のために急遽ロンドンに向かう。 |
・ ロンドン在住のバラシンハムは、LTTEの政治部門アドバイザー兼LTTE側の和平交渉リーダー。 |
・ バラシンハムは、和平交渉の今後の進め方をLTTEリーダーのヴェルピライ・プラバーカラン(Velupillai Prabhakaran)と協議 |
するために、スリランカを訪れていた。 |
・ 現在64歳のバラシンハムは、心臓病と糖尿病を患い、2000年には腎臓移植を受けている。今回の急病は、その腎臓移植 |
に関係のあるものとされる。 |
・ 第5ラウンドの和平交渉は、バラシンハムの健康上の理由から、開催地(タイからベルリンへ)と日程(4日間から2日間へ) |
が変更された。 |
・ バラシンハムの健康状態も、和平交渉の関する不安材料のひとつである。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.5.12) |
2003年5月18日(2003.5.22up) |
・ スリランカ南部で、大洪水が発生。240人以上が死亡、20万以上の家族が被災。1947年の独立以来、最悪の被害。 |
・ 被害を受けた地域は、ラトナプラ(Ratnapura)、カルータラ(Kalutara)、ゴール(Galle)、ハンバントタ(Hambantota)、マータラ |
(Matara)の5つの郡。 |
→このうち最も被害が大きかったのは、宝石採掘の町であるラトナプラ。 |
・ 現在スリランカは、南西モンスーン期(5〜9月)。スリランカの南西部から高地(ヌワラ・エリヤ)にかけて、雨が降る季節。 |
→ちなみに島の北東部に雨が降る季節(北東モンスーン期)は、11〜3月。 |
・ ノルウェー、イギリス、アメリカ、オーストラリア、インドなどが援助を提供。 |
→タミル・イーラム解放の虎(LTTE)も、米の提供等の援助を実施。要請があればさらなる援助も提供する、とのこと。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.5.19)、 Tamil Net(2003.5.19)、 |
BBC 南アジア・ニュース(2003.5.21) |
2003年5月21日(2003.5.22up) |
・ LTTEリーダーのヴェルピライ・プラバーカラン(Velupillai Prabhakaran)が、スリランカ北部・東部における再建および開発を |
担当する、十分な実権を持った「暫定行政機構(an interim administrative structure)」の創設を提案。 |
→ノルウェー副外務大臣ヴィダル・ヘルゲッセン(Vidar Helgessen)に宛てた手紙(by アントン・バラシンハム)の中にお |
ける提案。 |
→なお、ヘルゲッセンは、先にLTTEと協議した折りに(5/17)、いくつかの提案をしたためた文書をプラバーカランに渡し |
ていた。今回のバラシンハムの手紙は、それに対する返答にあたる。 |
・ バラシンハムの手紙によると、暫定行政機構の構想は、現UNF政権が勝利した先の総選挙以前からLTTE内部で考えられ |
ていたものらしく、さらにその構想について次のような変遷があったとされている。 |
→和平交渉第1ラウンドにおいて、「合同作業部会(Joint Task Force for Humanitarian and Reconstruction Activities |
for the Northeast)」となった。 |
→和平交渉第2ラウンドにおいて、「迅速な人道・復興ニーズに関する合同委員会(Sub-committee on Immediate |
Humanitarian and Rehabilitation Needs, SIHRN)となった。 |
→しかし、SIHRNは十分に機能することのないまま現在に至っている。これが、スリランカ政府に対するLTTEの不信感 |
を募らせることになった。 |
→不十分にしか機能できないSIHRNでは、6月に東京で開催されるスリランカ支援国会議において十分な任務を達成す |
ることはできない。 |
→ゆえにSIHRNの拡充ではなく、新しい組織(暫定行政機構)の設立が必要なのだ(by バラシンハム)。 |
・ LTTEは、ウィクラマシンハ(Ranil Wickremasinghe)首相が、この提案について、早急かつ前向きかつ建設的な返答をするこ |
とを期待している模様。 |
→手紙の締めくくりは、「そのような首相の反応が、和平交渉の再開とスリランカ支援国会議への参加に関するLTTEの |
重要な決定を促す」(抄)。 |
・ スリランカ支援国会議は、6月9日から東京で開催される予定。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.5.21)、 Tamil Net(2003.5.21) |
BBC 南アジア・ニュース(2003.5.22) |
2003年5月23日(2003.5.29up) |
・ 人民連合(People's Alliance, PA)のチャンドリカ・クマーラトゥンガ(Chandrika Kumaratunge)大統領が、「暫定行政機構(an |
interim administrative structure)」の創設を求めるLTTEの提案を拒否。 |
・ 拒絶の理由は、「LTTEによる事実上の独立国家樹立につながる恐れがあるから」。 |
→さらに、「そのような提案は、LTTEが@和平協定に調印し、A武装解除し、Bテロリズムを否定し、C分離主義を否定 |
してからでなければ検討不能」であると、従来からの見解を再度主張。 |
・ 大統領はさらに、ウィクラマシンハ首相がLTTEに対して過剰な譲歩を行った場合には、大統領権限による国会解散をも厭 |
わないと発言。 |
・ 人民解放戦線(Janatha Vimukthi Peramuna, JVP)も、後日、同様の態度を表明。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.5.24) |
2003年5月27日(2003.5.29up and 6.15revised) |
・ 国民統一戦線(United National Front、UNF)政権のラニル・ウィクラマシンハ(Ranil Wickremasinghe)首相が、「暫定行政機 |
構」案に前向きに応対した書簡と政府提案(NOTE)をLTTEに提示。 |
・ ウィクラマシンハ首相は、書簡において、LTTEの求めるものを「北部・東部の復興と開発のための、新規の独創的な組織の |
創設」と理解。 |
・ 政府提案の詳細については、以下の通り。 |
→設立目的は、政府提案のタイトルに示されているように、「北部・東部地域における救済(releaf)・ |
復興(rehabilitation)・開発(development)に関わるプログラムとプロジェクトを効率よく促進すること」。 |
→組織の概要は、以下の通り(組織図)。 |
@東部・北部の開発に関する最高機関[評議会](Apex Body [Council] on North-East Development) |
→最高機関は、修復・復興・開発業務に関する意思決定組織。政策助言組織かつ政策再検討組織であると同 |
時に、北部・東部で実施されるそれらのプログラム及びプロジェクトに関する計画の立案・優先順位の決 |
定・モニタリングの責任を負う(第1項)。 |
→最高機関の設立は、タミル語を話す人々が歴史的に居住してきた地域における、内的自決のための暫 |
定的な措置(interim measure)(第1項)。 |
→最高機関は、業務実施に携わる多様な組織に対し、救済・開発資金を対立する目的に使わないこと、効率 |
的に有効活用することを求める(第1項)。 |
→最高機関は、北部・東部のエスニック・グループの構成比を反映する必要があり、同地域に住むムスリム |
人とシンハラ人の正当な利益を守る組織でもある(第2項)。 |
→開発資金の供与ルートは2経路あり、資金の活用については最高機関が決定・監督する(第4項、第5項)。 |
@「北部・東部復興基金」(North-East Rehabilitation [Reconstruction] Fund, NERF。世銀が運営)を通じた |
供与。NERFを経由した資金提供は、スリランカ政府が主に行う(第4項)。 |
A「特別基金」(Special Fund)を通じた供与。特別基金は、NERFを経由しない政府資金・援助資金を扱う |
組織。 |
A特別長官(Special Commissioner)と理事会(Board) |
→特別長官(Special Commissioner) |
→スリランカ政府とLTTEが協議し、特別長官(Special Commissioner)を任命する(第8項)。特別長官は、最 |
高機関が承認した開発活動を迅速に実施するのに十分な権限と法的地位を有する(第8項)。特別長官 |
は、決定事項の実施責任を最高機関に対して負っており、問題を明確化し、NERFおよび特別基金に関す |
る状況を報告し、提案を提出する(第8項)。特別長官は、最高機関によって承認された計画・プログラム・ |
プロジェクトを実施する国家組織を監督する権限をもつ(第9項)。特別長官は、理事会の最高行政官 |
(Chief Administrative Officer。議長)を務める(第10項)。 |
→特別長官のもとには、補佐役として秘書官(Secretariat)を置く(第9項)。 |
→理事会(Board) |
→北部・東部地方議会(North-East Provincial Council)と中央政府が北部・東部地域のの行政に責対する任 |
を負う(第10項)。行政を調整するための組織として「理事会(Board)」を創設し、また理事会は、最高機関 |
の仲立ちをする役割を担う(第10項)。 |
→理事会は、最高機関の決定事項に関わる効率的なマネージメントと迅速な実施、および、北部・東部地域行 |
政組織の能力開発を実施する(第10項)。 |
→理事会は、議長、上級公務員(秘書官クラス)3名、北部・東部地方議会(NEPC)の最高秘書官、特別長 |
官、秀でた専門家3名で構成されるものとし、首相によって任命される(Appendix 1)。 |
B実施組織(implementing Institutions) |
→既存の政府官公庁やNGOなどが、これに該当する(第11項)。 |
→全ての関係者は、復興(rehabilitation [reconstruction])・開発事業に関する提案を最高機関に送付できる |
(第12項)。この点については「開発委員会」(Development Committee)においても同様である(第12項)。LT |
TEの代表は、郡及び地域レベルの開発委員会においても代表されうるものとなる(第13項)。 |
・ 救済(releaf)・復興(rehabilitation)・復興(reconstruction)・開発(development)の4語が入り乱れている提案である。 |
→急いで作成したから? |
・ UNF政権の一翼を担うセイロン労働者会議(Ceylon Workers Congress、CWC)も、暫定行政機構の設立に対しては前向き |
な態度を表明している。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.5.26) |
2003年5月30日(2003.6.3up and 6.15revised) |
・ LTTEが、国民統一戦線(United National Front、UNF)政権の回答案を拒否する書簡を、ウィクラマシンハ首相に送付。 |
・ LTTEは、自らの提案を「暫定行政機構(an interim administrative structure)」の提案と位置づけた上で、政府案を「開発専 |
門機構(a development oriented structure)」であると批判。 |
→さらに、その「開発専門機構」の提案においてでさえ、意思決定プロセスや行政プロセスへのLTTEの参加が十分に保 |
障されていないと批判。 |
・ LTTEの「開発専門機構」に対する批判は、以下の通り。 |
→@最高機関については、それが単なる勧告機関であるが故に行政権を有していない。LTTEの参加についても明確な |
言及がなされていない。 |
A理事会については、特別長官、公務員、秘書の全てを首相が任命することになっており、LTTEの参加が不明確で |
ある。 |
Bプロジェクトを実施する諸機関については、最下層レベルの「開発委員会(Development Committe)」への参加、 |
「北部・東部復興基金(the North East Reconstruction Fund)」における行政的役割以外にLTTEの参加する余地 |
が示されていない。 |
→なおLTTEは、スリランカ政府行政組織が復興開発事業を効率よく実施できないことに不満を覚えている。そのためL |
TTEは、その様な行政組織にさらに屋上屋を重ねるような「開発専門機構」の創設にいは同意しにくい模様。 |
→LTTEは、「迅速な人道・復興ニーズに関する合同委員会(Sub-committee on Immediate Humanitarian and |
Rehabilitation Needs, SIHRN)」の組織強化案に反対してきたが、その理由がまさにこれである。 |
・ なお、LTTEは書簡の中で、いくつかの国家(たとえばアメリカ)が依然としてLTTEをテロ組織に指定していることに対する |
不満を表明している。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.5.30)、 Tamil Net(2003.5.30) |
2003年6月1日(2003.6.15up) |
・ ウィクラマシンハ(Ranil Wickremasinghe)首相が、LTTEの書簡(5月30日付)に回答する(書簡)を送付。 |
・ 6月1日付書簡におけるウィクラマシンハ首相の回答。 |
→基本線は、最高機関(Apex Body)に関する説明の繰り返し。 |
→首相は、最高機関におけるLTTEの参加については、LTTEも当然に参加するものとしたうえで、「ムスリム人とシンハ |
ラ人の利益のために相互に合意された効果的なセーフ・ガードと調和する形で」という限定つきではあるものの、「LT |
TEが多数派の声を形成しうる」と説明。 |
→首相は、LTTEが要求している北部・東部地域における復興関連事業を実施することはこの首相案によってでも十分 |
に可能である、と主張。 |
→さらに、政府案に基づく協議を早急に開催することを求める。 |
・ なおウィクラマシンハ首相は、書簡の前半で、和平プロセスと国際社会との関わりについて言及。 |
→暫定的な行政機構に対する国際ドナー共同体の承認(endorsement)がなければ、北部・東部地域の復興資金を十二 |
分に動員することは困難である、と主張。 |
→これは、首相案に示された資金活用メカニズムが復興資金を復興以外の用途に用いないようにするための重要な制 |
度であることを明らかにする見解と言える。 |
→さらに首相は、このメカニズムこそが和平交渉プロセス全体を守りうる国際的なセーフティー・ネットの核になるもので |
ある、とも主張。 |
2003年6月4日(2003.6.15up) |
・ LTTEが、ウィクラマシンハ(Ranil Wickremasinghe)首相の「6月1日付書簡」を拒否する書簡を送付。 |
・ 6月4日付書簡におけるLTTEの批判的回答。 |
→首相の回答について: LTTEは、LTTEのより広範な参加に基づいた「政治的行政機構(politoco-administrative |
structure)」の創設を求めている。しかしウィクラマシンハ首相は、「開発専門機構」案を再び提案し、さらには実 |
質的な協議の再開をも要求している。 |
→首相の政治姿勢について: 首相は、暫定行政機構の設立を公約として掲げた前回の総選挙に勝利した。つまり、暫 |
定行政機構については既に国民の信任を得ているのである。そうである以上、速やかに公約を実施すべきだ。 |
→国際ドナー共同体の承認(endorsement)について: 国際社会には、依然としてLTTEをテロ組織に指定している国家 |
が存在している。そのような状況下では、LTTEが参加する組織に対する承認は得られるはずがない。 |
→首相案の実効性について: 首相は、復興開発事業は首相案でも十分に実施できると楽観しているが、スリランカの汚 |
職に満ちた非効率的な官僚制やバッド・ガバナンスなシステムを考慮に入れると、首相の楽観を額面通りに受け |
入れることはできない。 |
→昨今の和平交渉について: 平和で平穏で文化的な生活を待ち望んでいる人々の苦しい現実を無視し、恒久的な解決 |
に向けた理論モデルとロード・マップを追求する方向へと、変質してきた。 |
→「暫定行政機構」の創設を求める理由について: 首相は、大統領との共治関係(cohabitation)にある。そのため首相 |
は、スリランカの政治システムや憲法制度を変えることができず、恒久的な平和をもたらせないでいる。そのよう |
な状況を打開するために、LTTEは実効的な政治権力を有する暫定行政機構の創設を求めている(←大統領外 |
しの一案?[ホームページ作成者])。 |
→和平交渉の再開について: 首相が自己のおかれている状況を再考し、より具体的な案を提案してきた場合には、和 |
平交渉を再開する。 |
・ LTTEのアントン・バラシンハム(書簡作成者)は、政府案とLTTE案には大きな隔たりがあると認識している。 |
→ウィクラマシンハ首相は、基本的に大きくは異なっていないと認識している。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.6.4)、 BBC 南アジア・ニュース(2003.6.5)、 |
Tamil Net(2003.6.4)、 Tamil Net(2003.6.7) |
2003年6月4日(2003.6.15up) |
・ 米の収穫量が、マハ期の収穫としては過去最大に。 |
→昨年の15%増。 |
→理由は、和平交渉の進展。 |
@北部・東部地域で利用可能な田んぼが増加した(20%増)。 |
A北部・東部地域への肥料等の輸送が可能になった。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.6.4) |
2003年6月9−10日(2003.6.15up) |
・ 第2回スリランカ支援国会議が東京で開催され、「東京宣言[英文/日本語(仮訳)]」を採択して閉会。 |
→正式名称は「スリランカ復興開発に関する東京宣言」 |
→LTTEは参加せず。 |
・ 会議の目的は大きく2つ(第6項)。 |
→@スリランカの復興と開発への力強く一致したコミットメントを表明する機会を、国際社会に対して提供すること。 |
A和平プロセスのさらなる進展に向けた努力をスリランカ政府とLTTEが倍加させることを勧奨する機会を、国際社会 |
に対して提供すること(具体的には第15-17項で)。 |
・ 参加国は、米、英、豪、日、仏、カナダ、ノルウェーなど計51ヶ国。参加国際機関は、世銀、IMF、アジア開発銀行、UNDP、 |
WHOなど計22機関。 |
・ 以下の点につき、合意された。 |
@2003年から2006年までの4年間で、総額45億米ドルを超す援助を行うこと(第11項)。 |
→いくつかのドナーは、援助の大半が北部・東部地域に対するものであること、援助が和平プロセスの進展に応じて |
供与されるものとなることを表明(第12項)。 |
→供与額は、日本(10億ドル)、アジア開発銀行(10億ドル)、EU(2億9000万ドル)、アメリカ(5400万ドル)、世銀(8 |
億ドル)など。 |
A北部・東部に対する中長期的な(経済)援助だけでなく、緊急人道援助をも重視すること。援助を供与する際には、デリ |
ケートなエスニック及び地理的なバランスに十分配慮すること(第10項)。 |
→援助の指針として、「リゲイニング・スリリンカ」を重視することを表明(第10項、第14項)。 |
→支援の経路として、世銀によって運営される「北部・東部復興基金(North-East Reconstruction Fund, NERF)」を重 |
視することを表明(第13項)。 |
B援助の供与を和平プロセスの進展と密接に関連づけること(第18項)。 |
→国際社会は以下の諸点が進展しているかどうかを監視する義務を負う。 |
@停戦合意の完全遵守、A北部・東部の開発活動に関わる効果的な実施メカニズムの形成、 |
Bムスリム人代表の参加、C最終的な政治的解決、D国内避難民問題の解決、E全ての人々の人権保障、 |
F平和構築におけるジェンダー間の平等と公平、G子ども兵士の徴兵禁止及び子ども兵士の社会復帰支援、 |
H紛争で肉体的・精神的に障害を負った北部・東部地域の兵士と市民の社会復帰支援、 |
I緊張緩和(de-escalation)・武装解除(de-militarization)・正常化(nomalization)プロセスに関するスリランカ政 |
府とLTTEの合意。 |
・ ウィクラマシンハ首相は会議冒頭の演説で、「暫定行政機構」に関する新しい提案を行った。 |
→「北部・東部地域の復興と開発、及び移行プロセスの行政上の役割に対する責任を負う」ような「革新的な暫定行政 |
政機構(innovative provisional administrative structure)を設立する必要がある」ことを表明。 |
→また、この暫定行政機構の権限は、「人々の生活を向上させるための、@戦争によって疲弊した経済の再建、A復 |
興、B再定住、C死活的なサービスの効率的な供給、に関わるものとなろう」。 |
→さらに、「最終的な政治的解決についての交渉がなされた暁には憲法を改正することとし、そのことについてはレファ |
レンダムを実施して、スリランカの人々の決断に委ねることを約束する」と明言。 |
・ スリランカの野党人民連合(PA)は、多額の援助は「債務の罠(debt trap)」を招くと批判し、世銀の開発モデルに代わるもの |
を求める必要がある、と主張。 |
→PAの中心政党であるスリランカ自由党は、かねてより世銀・IMFに代表される新自由主義的な経済政策に批判的で |
あった。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.6.9)、 BBC 南アジア・ニュース(2003.6.10)、 |
Tamil Net(2003.6.10) |
2003年6月11日(2003.6.15up) |
・ LTTEが、「東京宣言」を拒否する声明を発表。 |
→主な拒否の理由は、以下の通り。 |
@LTTEは、「東京宣言」の審議にも作成にも一切関与していない。 |
Aスリランカ政府とスリランカ政府寄りの国外勢力によって作成された「東京宣言」は、彼らのアジェンダをLTTEに押 |
し付けるための文書である。 |
→LTTEは、「国外勢力(extra territorial forces)の過剰かつ不当な介入を許容することによって、和平プロセスを複雑化 |
させている」として、より本質的にウィクラマシンハ政権を批判している。 |
・ 同時にLTTEは、開会式におけるウィクラマシンハ首相の提案を拒否。 |
→批判は、以下の通り。 |
@首相の提案は、「開発専門機関」である「最高機関」(Apex Body)に、新しい名称を付けただけのものに過ぎない。 |
A首相はスリランカの憲法と法律を尊重しようとするが、それらはタミル人に対する差別を制度化してきたものだ。 |
B首相は、スリランカ憲法の断片的な改正を思い描いているようであるが、LTTEが提案しているのはそのようなもの |
ではない。LTTEが求めているのは、タミル人の自決権とホームランドを認めるような新しい世俗的で平等な憲法の |
制度化、および、そのような憲法によって実現されるスリランカのガバナンスの革命的な変革である。 |
→明確に定義された草案でフレームワークが示されない限り、交渉の再開には応じられない。 |
・ 参考ニュース・ソース: BBC 南アジア・ニュース(2003.6.11)、 Tamil Net(2003.6.11)、 |
LTTE Peace Secretariat(2003.6.11)、 BBC 南アジア・ニュース(2003.6.13) |
・ ところで今回の参考ニュース・ソース、Tamil Net(6.11)とLTTE(6.11)の文章が完全に同じなのは何でだろう? 怪しいな。 |