設計手法その2 -住み手も近所の方もお互いに気持ちよく暮らすことのできる庭のあり方-

プライヴァシーを確保し、植栽の背景となるよう、庭と道路との間には塀を設けるのが通例ですが、軒先から境界線までが1~1.5mと余裕がない場合は、塀を設けることがかえって通風の支障となったり、閉塞感を与えてしまう恐れがあります。
ここでは思い切って塀を無くし、通行者や車両の多い所には生垣を設け、近所の方が通行する静かな道路に接する所をツツジの寄植えとし、周囲と庭を共有することで、誰もが気持ち良いと感じるスペースをつくり出すようにしています。
居住者のプライヴァシーを確保するために、ポーチの軒桁に「すだれ」を掛けて腰から上を隠し、足元を開放するようにします。これによって、室内にいる居住者と通行者との視線は、すだれに遮られて合いませんが、双方が庭を楽しむことはできます。
東向きの玄関に差し込む夏の日差しは適度に遮ってくれますが、通風を妨げることはありません。午後からは庭が日陰になるため、打ち水によって室内に涼しい風を招き入れることができます。それだけでなく、すだれの存在が小さな庭の緑を引き立てる美しい背景ともなり得ます。
高い塀は、時として防犯上不利となることがありますが、庭の寄植えは視覚的に侵入を抑制する効果があり、華奢なすだれは足元をあらわにするため、防犯上も有利であるといえます。

設計手法 その2

昨今の住宅は、防犯や気密・断熱などの性能面を重視するあまり、街とのつながりを断ち切ってしまうかのような閉鎖的な住まいが多いように見受けられます。
街並みの秩序が失われる要因として、街並みにそぐわない建物の形態や仕上げ等があげられますが、実は住み手の気配を熱損失と同じように建物の中に封じ込めてしまったことによる不自然さが、無秩序化に拍車をかけているように思われるのです。
その土地の環境にもよりますが、皆が集まって住むことで街並みがつくられるのですから、やはり地域とのつながりのなかで、程よい加減を保ちながら、「開き方」や「閉じ方」のバランスを工夫することが大切ではないかと考えます。
安浦の家・アプローチ

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