讀賣新聞の記者が、取材メモを他社の記者にメールで誤送信をした件で、諭旨免職になったそうです
(JCASTニュース )。
誤送信で諭旨免職というのは、ちょっと厳しすぎるような気がします。ただ、この記者が取材していたのは、暴力団捜査にあたっていた元警部が銃撃された事件と、その後に発覚した別の警察官による捜査情報の漏洩にかかわる汚職事件であり、誤送信による結果の重大性が考慮されたようです。
新聞記者の秘密漏洩は刑法上処罰されるわけではありませんが、我々弁護士が職務上知り得た秘密を漏洩すると犯罪として処罰されます。
ただ、処罰されるのは、「故意」の場合であり、メールの誤送信のような「過失」の場合は処罰されるわけではありませんが、故意であれ過失であれ、依頼者や関係者のプライバシーに対する重大な侵害であり、いくら注意してもし過ぎることはありません。
ところで、報道によると、この記者は、一人に対して誤送信をしたというのではなく、地元福岡の報道機関13社に誤送信をしたとのことなので、おそらく、地元報道機関の記者で作っているメーリングリストに誤って投稿してしまったのだと思われます。
実は、このメーリングリストへの誤送信というのは、恐ろしいことに、よくあることなのです。というのも、特定の個人にメールを送ろうと思って、その人が「送信者」となっているメールを利用するのはよくあることですが、そのメールに「返信」をすると、元のメールがメーリングリスト経由のメールだった場合、意図に反して、その人への送信ではなく、メーリングリストへの送信になってしまうからなのです。
このようなメーリングリストの仕組みに無知なのか、知ってはいても注意が足りないのか、私が加入している弁護士仲間のメーリングリストでも、こういった誤送信がときおりみられるのです。それをみるたびに、気をつけなければとの思いを新たにする次第です。
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■ 気づかない[公開設定]
2012.8.25
佐賀県武雄市の市長が作成した市民ら約200人分の個人情報が、インターネット上に流出していた
ことが分かりました(毎日新聞 )。
原因は、市長が、住所録のバックアップのためにインターネットのサービスを利用していたところ、バックアップしたデータが[公開設定]になっているのに気づかなかった、ということのようです。
報道からは、市長が誤って[公開設定]にしたのか、あるいは、デフォルトで[公開設定]になっているのに気づかず[非公開]に設定を変更しなかったのか、いずれかは明らかではありません。
インターネット上のサービスには、デフォルトで[公開設定]になっているものが少なくありません。以前、グーグルのカレンダーを使い始めたとき、書き込んだスケジュールが、公開される設定になっているのに気づいて、ひやりとしたことがあります。もちろん、すぐに[非公開]に設定し直したのですが、気づかずに、そのまま[公開設定]にしている人もいるのだろうと思っていました。
果たして、その数か月後、家裁に行く予定を検索していたところ、横浜家裁の予定が出てきて驚きました。横浜[地]裁には行ったことはあったのですが、横浜[家]裁の事件は一度も担当したことがなかったからです。そこで、よくよく検索の仕組みを見てみると、公開設定になっている他人のスケジュールまで検索するようになっており、東京の法律事務所の予定が検索結果として表示されていたのです。
早速、その法律事務所にメールで注意をしてあげて、すぐに対応されたのですが、つくづく、インターネットのサービスを使うときには気をつけなければいけないと実感したものです。
[公開設定]ほどの害はないのですが、インターネットのサービスを使うときは、デフォルトの設定に気をつけないと、思わぬ不利益を蒙ることがあります。たとえば、そのサービスを使うと自動的にブラウザをグーグルクロームに変更してしまうとか、メールマガジンが頻繁に送られてくるようになるとか、勝手にショートカットをデスクトップに配置するとか、色々あります。
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■ 大河ドラマ「龍馬伝」事件で、一審判決、著作権侵害を認めず 2012.3.28
大河ドラマ「龍馬伝」事件で、一審京都地裁は、著作権侵害にはあたらないとの判断をしました。
判決の概要については、 朝日新聞
等で、報道されています。
判決は、商業書道における文字配置の重要性や原作者上坂祥元氏の作品の独創性に関する理解を全く欠いたものであり、改めて、控訴審の判断を求めることになりました。
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■ グーグル検索予測機能、一部差し止め
2012.3.26
グーグルの検索予測機能の一部を差し止める旨の仮処分決定が東京地裁で出ました。
ある男性の名前で検索しようとすると、犯罪行為を連想させる単語が表示され、それを選択して検索すると、その男性を誹謗する
記事の一覧が出てきて、名誉、プライバシーを侵害されたというものです。
日経新聞等、各紙が報道しています。
ただ、単純なプライバシー侵害とは様相を異にしています。というのは、プライバシー侵害は、私的な領域のものを公にする、というものですが、検索予測機能は、もともと、その男性の名前と、犯罪行為を連想させる単語とがセットで検索されることが多い、という事実に基づいて、男性の名前が入力されると、自動的に、その単語もセットで表示するというもので、いわば、元々、公になっていたものを更に、より多くに人の目に触れさせる、というものだからです。
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■ 「別府マンション事件」3度目の高裁判決 2012.1.11
「別府マンション事件」で、3度目の高裁判決が出ました。判決文は手元にありませんが、
讀賣新聞によると、極一部についてのみ施工業者らの責任を認めたにとどまるもので、購入者を広く保護すべきとした最高裁判決の趣旨に反して、またしても、業者保護に著しく傾斜した判決のようです。
昨年7月の最高裁判決の半年も経たないうちに高裁判決が出たというのは、弁護士や裁判官から見れば異例の早さです。しかし、世間の常識からすれば、これまで、最高裁と高裁を行き来するたびに2年程度の年月がかかっていたというのが、異常な世界というべきでしょう。
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■ 大河ドラマ「龍馬伝」の題字(レイアウト)による著作権侵害で、NHKを提訴
2011.9.22
大河ドラマ「龍馬伝」「武蔵」の題字(レイアウト)による著作権侵害で、NHKを提訴しました。
提訴の概要については、 朝日新聞、共同通信 等で、報道されています。
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■ 「讃岐うどん」の商標登録申請を却下−続報(京野菜の商標登録) 2011.8.1
先日(2011.7.20)の「讃岐うどん」の商標登録で、京野菜などの登録について、京都府の担当者に尋ねてみると書きましたが、このほど、メールで回答が来ました。
これによると、まず、日本国内では、「京野菜」ほか、いろいろな野菜について商標登録の出願をしたのですが、普通名称となっているという理由で、出願を拒絶されたそうです。
また、中国については、検疫条件により野菜の輸出が実質上できない状況であることから、現時点で商標登録をする予定はないとのことでした。
実際、 JETROの解説 によると、「現在のところ、日本から生鮮野菜は輸入されておらず、日本政府から中国政府にナガイモ等の輸入解禁を要請しているところ」だそうです。
なお、京野菜については、以上のとおりですが、京都府産の農林水産物・加工品全体について、ロゴマークを作成し、そのマークを中国において商標登録をする準備をしているところだとのことでした。
そういったロゴマークが中国で商標登録された場合、仮に、将来、中国国内で、「京野菜」「九条葱」などが、中国の業者によって商標登録されたとしても、このロゴマークを使えない以上、本物の京野菜のようなブランド力は持ち得ない、ということになります。
なお、その後、
京都新聞8月8日付夕刊に、北山杉、宇治茶などの京都の伝統産品につき、京都の生産者団体が中国で商標登録を積極的に行っているという記事が出ていました。
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■ 「別府マンション事件」最高裁、再度の差し戻し
2011.7.21
いわゆる「別府マンション事件」について、本日、最高裁は、再度の破棄差し戻し判決を言い渡しました。
この事件は、建物の瑕疵について、所有者が、直接の契約関係にない施工業者等に対し、損害賠償を求めた事案です。
◆事件の概要は、こちら
最高裁は、平成19年に、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」がある場合には、施工業者等は賠償責任を負うと判断して、高裁に差し戻しました。
ところが、福岡高裁は、平成21年に、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、「建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合」をいうとして、損害賠償責任を否定しました。
最高裁は、本日、再度の上告審で、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、「居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵」をいうとして、「建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合」に限らず、 「当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合」には、当該瑕疵は、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」に該当すると解するのが相当であるとの判断を示しました。
そして、具体的には、放置すると、外壁が剥落して通行人の上に落下するような場合や、ベランダ等の瑕疵により建物の利用者が転落するような場合には、上記の瑕疵にあたると判示したのです。
なお、判決の全文は、最高裁のホームページにあります(最近では、重要な判例は、その日のうちに最高裁のホームページに掲載されるようになっています)。
最高裁の判決は、一読しただけでは理解できないかと思いますので、図解してみました(私も、自分で図解することにより、ようやく、理解できました)。
結局、H19判決で、もうちょっと踏み込んで、H23判決のように述べていれば、福岡高裁も、H21判決のような不法行為の成立範囲を限定する解釈をとることはできなかったのではないかと思います。
そう考えると、H19〜H23の4年間は、一体なんだったんだろうという思いが拭えません。
最高裁は、部下に仕事を命じるに際して、抽象的な指示しか出さないでおいて、いざ、部下が失敗すると、「俺の言ったのは、そういうことではない」と、部下を叱りつける無能な上司、と言ったところでしょうか。
あるいは、上司の指示を都合よく曲解した部下に手を焼いて、(やれやれ、と思いつつも、そこは、ぐっとこらえて)咬んで含めるように、再度、指示を出す上司、と言った役回りかも知れません。
一つだけ心配なのは、◆事件の概要 にも記載したように、H19判決は、今回、具体的に最高裁が解釈を示した「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」のみならず、不法行為の成立要件として、当然と言えば当然なのですが、「それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された」ことを、要件としている点です。
H21判決を書いた福岡高裁の裁判官なら、「ベランダの瑕疵により利用者が転落したりするなどして人身被害につながる危険のあるとき」でも、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」の存在は認めつつも、まだ、人が転落していないのだから、「生命、身体又は財産が侵害された」とは言えないとして、結局は、不法行為責任を認めないのではないか、という点が危惧されます。
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■ 「讃岐うどん」の商標登録申請を却下
2011.7.20
中国での「讃岐烏冬」(讃岐うどん)の商標登録申請に対し、香川県や、地元の業界団体が異議申し立てをしていた事件で、中国商標局が異議を認めたとの報道がありました。
異議を認めた理由の一つに、「申立人により中国で先行使用され、出願人が飲食店の区分で登録すると誤認を生じさせやすい」ということが挙げられていました。
そうすると、仮に、日本国内で著名なものであっても、現時点で中国に輸出されていないものについては、中国で商標登録されてしまうことになります。
近年、中国の富裕層の間で日本の農産物に対する嗜好が拡大しており、農水省も、中国への農産物の輸出拡大に取り組んでいます。ところが、日本の農産物が広く中国に輸出されるようになる前に、中国国内で商標登録されてしまうと、輸出に際し、大きな障害となってきます(東電の原発事故の影響も、これに劣らず、大きな障害ですが、その点は、また、別稿で)。
そこで、気になったので、地元の「九条葱」「聖護院大根」「堀川牛蒡」といった、いわゆる「京野菜」について、どうなっているか調べてみました。
すると、京都府のホームページに、次の記載がありました。
「京野菜」等の商標登録(「改正商標法」<18.4.1施行>に基づく地域団体商標)を支援し、他県産京野菜との違いの明確化を図ります。
そこで、その後、どうなったかを調べてみると、特許庁のホームページに、京都の農産物の登録状況が出ていました。これによると、「京都米」「京の伝統野菜」というのは、登録されているのですが、「京野菜」や「九条葱」は、登録されていませんでした。
日本国内でも登録されていないということは、おそらく中国でも登録をしていないのでしょう。この先、どうなるのか心配です。京都府の担当者に尋ねてみることにします。結果は、また、改めて、御報告致します。
続報(京野菜の商標登録)2011.8.1
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2011年6月17日、コンピュータウイルス作成罪の新設を含む刑法改正案が成立しました。
意外と思われるかも知れませんが、これまで、コンピュータウイルスを作成する行為そのものを処罰する規定はなかったのです。
そうすると、これまで、コンピュータウイルスの作成者が処罰されることはなかったのか、というと、必ずしも、そうではありません。
例えば、ウイルスに他人の著作物を組み込んでいた場合は、著作権法違反で処罰されており、他人の名誉を害する内容であれば、名誉毀損罪で処罰されていました。最近では、ウイルスが感染したパソコン内のファイルを壊したということで、器物損壊罪でウイルス作製者が逮捕されています。
今回のウイルス作成罪の新設の結果、こういった事情(他人の著作物の利用、名誉毀損、ファイル破壊)がなくとも、ウイルスを作成したというだけで、処罰されることになりました。
もちろん、ウイルスを作成する行為のすべてが処罰されるのではなく、「正当な理由なく」という限定が付されています。従って、アンチウイルスソフトの研究開発の過程でウイルスソフトを作成する行為については、処罰の対象外であることは言うまでもありません。
なお、上述の器物損壊罪による逮捕の件ですが、7月に同罪で実刑とする判決が出て、被告人が控訴しているそうです(2011.9.2)。
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