いま考えていること 11(1998年11月:1999年5月増補)
―― 何 偉先生――

<

昨日は中国の旧暦九月九日、重陽の節句で、つまり老人の日でした。中国の伝統的な習慣によりますと、この日で老人はピクニックとか登高とかする筈です。われわれは”復明老人看沈城”という活動を主催しました。その内容は、無料でわが病院で復明した老人たちの市内観光でした。去年から、沈陽市役所のおかげで、沈陽市大きく変化しまして、より美しくなりました。だが、目の病気に苦しんだ老人たちは大体その変化をよくみられなかった。我が病院で復明したが、足不便ですから、まだ観光のチャンスが少ないです。それで、老人の日でこれらの老人を集めて一緒に車で市内観光することが有意義なことではありませんか。市内観光のうちに、これらの老人たちはみんな堪えないに喜んでいました。老人たちの笑い顔を見ると、私も嬉しくなりました。
以上甚だ簡単ながらご報告まで。
先生のご都合が宜しければお越し下さいますよう、お待ち申し上げます。

何 偉

      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

この電子メールは1998年10月29日に受信しました。
何 先生の執刀で再び眼に光を取り戻した老人の皆さんを招待されて、おそらくバスで美しくなった沈陽市(瀋陽市)街を案内され共に喜びを分かたれたレポートです。老人たちの嬉しそうな顔が目に浮かびます。

私が何 偉先生のことを知ったのは、1998年6月28日 に放映されました NHKの新アジア発見『----光よ、瞳によみがえれ----』を見たときです。ディレクターは、最近東京のNHK報道局番組部に転勤された行成博巳さんです。
この番組で私は陳 翠華さんの嬉しそうな顔も見ました。また中国にも大勢の目の悪い方がおられ、しかも白内障に使われるレンズが一枚7万円で、この金額は中国の一般の 方にとっては相当な高額を意味することも知りました。先生は巡回バスで市場を訪れ、バスでの検診を呼びかけられ、手術の必要な貧しい眼の悪い人たちに病院に来るように勧められるのです。高価なレンズの挿入手術もこのような貧しい人には無料で奉仕されています。陳 翠華さんもその一人です。先生の病院は官営ではなく、個人病院で、しかも病院のマークには中国の国土も描かれているのです。これには先生の烈々たる中国の民衆への愛が表現されています。久しぶりに映像に感激しました。それ以来ファックスや電子メールで先生との交流が始まりました。先のメールでもお分かりになるように、長く日本で学んでおられましたから、日本語で文通できるのです。私は先生の理想が中国で花開くよう祈っています。先生はその後も学会で中国各地やアメリカまで出かけられ研修にも励んでおられます。

日本の敬老の日はいわば出鱈目な9月15日ですが、中国の老人の日は旧暦9月9日ということを始めて知りました。この日は重陽の節句と我が国でも古くからいわれ、菊の節句ともいわれます。酒に菊の葉を浸して飲むと長寿の薬になるといわれたもので、確かに重陽の節句に老人の長寿を祝うのは由緒のあることと思われ、中国の長い長い伝統がほのぼのと感じられるのです。我が国でも沖縄では陰暦の9月9日には『菊酒』といって酒盃にキクの花を浸し、祖先の霊前に供える習俗があるようです。

(付記)次のメールは1999年4月16日に届いたものです。

(前略)6月6日は中国の愛眼日です。その時に生活に困っているお年寄りの方に日本の人々からの寄付金と何眼科の寄付金で無償で診療及び手術を致したいと予定しております。(後略)以上

何向東

何偉は現在アメリカ眼科学会で発表するため不在です。

INDEX HOME

grenz

いま考えていること 12(1998年11月)
―― 結局、体だ――

先日、孫の誕生日なので久しぶりに長男の家に電話をしました。長男はさる新聞社の文化部で仕事をしています。自分の好きな音楽が担当ですが、今は秋の音楽シーズンで大忙しの毎日のようです。何でも帰宅は連日夜12時を過ぎるようです。一方、次男はさる通信社の記者ですが、今の支局に赴任してからまだ二年ほどで、警察関係を担当しています。隣の県で継続的に大きな事件が尾を引いているもので、相方(あいかた)がそちらに応援に行っておられて、残された次男は大忙しのようです。夕方3時間ほどは自由時間が与えられているようですが、そのあとも仕事に出かけ、これまた連日帰宅は12時を過ぎるようです。
長男も次男も子供のころから剣道をさせ、段を取るまでは止めないようにと指示していましたから、長男は高校時代に2段になり、次男は初段です。長男は中学時代は水泳部、高校時代は剣道部に入り、次男はラグビー部の選手でした。そんなに強いチームではありませんでしたが、卒業まで頑張り、今も当時の仲間がマンションに訪ねてきて泊まり、一緒に呑みにも行っているようです。大学はそれぞれ別ですが、共に要領よく試験科目の少ない私大を選び、入学後は兄はフルート、弟はファゴットで、自分の大学のオーケストラで4年間活躍しました。私はよく「お前らは法学部でなく、音楽部やなあ」と言ったものですが、専門の勉強をしたというよりは好きな音楽に専念していました。どういうものかそれでも二人ともジャーナリストの道を希望し、与えられました。次男の警察担当はかなり忙しく他の部署に変わりたいと希望して、少々弱音を漏らして居るのですが、私は、「いくらお前が永久に警察担当を希望したって、そうさせてはもらえないのだから、弱音を吐かずに今は気持ちの上ではいつまでも警察をやるつもりで、愉しさをその中に見付けて頑張れ」と言っています。二人とも話を聞いていると、体が丈夫だからやっていけるのだとしみじみ思います。世間に出れば、学界で仕事をしているのであればともかく、少々頭が良いとか東大・京大をでているとかではなくて、体が丈夫だというのが基本だとしみじみ思います。親たるもの塾へやって学校の成績をよくすることを思うよりも、子供の体力訓練に幼いときから配慮してよかったと思っているこの頃です。

INDEX HOME

grenz

いま考えていること 13(1998年11月:1999年5月;2000年7月;2002年6月増補)
―― “ようこそ 先輩”を見て――

<

NHKの番組の“ようこそ 先輩”(2005年4月現在、毎水曜日の夜11時15分から45分まで総合テレビで放映。土曜日午前1時55分からも綜合テレビで再放送)を見ていると、皆さんすばらしい先生だなあと思います。先輩として登場する一時限りの先生の何とすばらしいことでしょう。おそらく教育原理も教育原論も教育実習も経験されてない方が多いと思うのですが、"教育は人の能力を引き出すこと”という考えから見ると、“先輩”の皆さん方は本当にすばらしい先生なのです。教育の荒廃が叫ばれて現場の先生方の再教育が議論になりますが、私の考えでは、教育はテクニックの問題ではありませんから、講義で先生方の再教育は出来るとは思えません。皆さん方にこの番組に登場する“先輩先生”の教育をぜひ見ていただきたいのです。
私は旧制の大学をでましたが、旧制では卒業証書をもらうときに学部事務室に300円を付けて教員免許状を申請すると、例外なく中学校と高等学校の一級教員免許状をもらえたものです。教育に関する講義もなければ教育実習もありませんでした。京都府の教員採用試験も受けましたが"プログレッシブスとコンサバティブスの教育理念を問う”という問題には面食らいました。そんなことは全く知らないのですから。conservative=保守的、progressive=進歩的という言葉が頭の中をよぎるままに、勝手なことを書いて置きましたが、それでも合格できました。否、それどころか私は隣県の教員採用試験さえ受けていなかったのに、あることの成り行きから、その隣県の高校に出向いたところ、校長から“では、君、これから教育委員会に行こう”といわれて、校長と共に教育委員会に出向き、教育長に対する校長の“今度これを採ることにしたから宜しく”の一言で私の教員としての一生が始まったのです。大らかな時代でした。私はそんな先生でしたが、爾後四十年、教育にまんざら不適合であったとは思っていません。
教員に必要なのは、自分自身にも自分の能力を自分の力で引き出した経験があることと、人の能力を引き出してやろうとする熱意、愛情、人の成果を自分のものとして心から喜べる性格、素質だと思っています。テクニックではありません。

(2002年6月追加)初めてこの項を書いてから3年半が経ちました。相変わらずこの番組はたいてい見ていますが、近頃少し視点が変わって来ました。それはもしわたしが「先輩」に指名されたと想像するとき自分は一体何をどう教えられるかと自問して愕然とするのです。この番組に出てこられる方に敬意を表しないわけにはいきません。考えれば考えるほど未だに答えが出せない自分に腹立たしい思いさえするのです。ただ一つ言えることは皆さん言葉で講義されたりしないで、それまで自分でやってこられたことを土台にして、子供達に合う方法手段を工夫されて先ず行動させておられることに気づきます。言葉はこの行動の補足的手段で、語ることを目的にはされていないのです。説教調では子供達を教えられないし、子供の心に残るものもないのです。子供達は生き生きと行動し、時には「先輩」を驚かせるような何かが生まれています。教育は言葉だけではできない、共通した行動を通じ適切にアドバイスすることで初めて何か創造の芽を作れるそのような思いで番組を見ています。親が子供を教える場合も共通して必要な何かがこの番組にはあります。 

INDEX HOME

grenz

いま考えていること 14(1998年12月;1999年10月追記;2000年5月追記)
―― 夢を託して――

<

老年を迎えてこれまでを静かに振り返ると、自分が歩んできた人生と違う別の歩みを空想することがあります。私は化学を楽しんできて、未だに夢の中では実験をしていることもあるのですが、例えば芸術家であったり、文筆で身を立てていたらとか、法律家として、あるいは医師として、また社会活動家として理想的に生きたらどういうことをしていただろうかなどと夢を描くこともあるのです。現実にそういう職業に就いていたとしても、必ずしも理想的に生きられはしなかったでしょう。やはりお金のこと、生活のことも無視するわけにはいかなかったでしょう。でも、老年にはそういう違った道で、理想的に生きる自分を想うことも許されるのです。これも老年の特権かも知れません。そういう思いで眺めますと、世の中暗いおぞましい話も多いのですが、やはり自分の描く理想に近いことを実行している人物も結構あるものです。神ならぬ身ですから、何から何までその人物が理想的に生きていることはあり得ませんし、そこまで理想的であることを要求することは私のわがままでさえありましょう。理想的でないからといって裏切られたという思いを抱くのはその人物の責任でなく、私が勝手に心の中にあまりにも理想的な像を描いたからだと、思い過ごすことを密かに自戒してさえいるのですが、そういう保留、自戒の条件を付けながら、やはり世の中には自分ではなし得なかった、しかしできればそういう生き方もしてみたかったことを実践している人はいるのです。私に代わってそういう人生を生きて下さっていると想うと、私は私の夢が実現しているような喜びと一体感を味わっています

私事で恐縮ですが、最近次のようなことがありました。私の長男は立命館大学法学部を卒業後、直ちに北海道新聞記者として北海道に渡り、十数年勤務してきたのですが、1999年10月21日付で退社しました。立命館在学中は大学のオーケストラでフルートを吹いていました。北海道新聞在職中はいろいろ手がけてきましたが、根っからの音楽好きですから最近は文化部で音楽を担当でき、かのレオナード・バーンスタインの主導で始まったPan-Pacific Music Festival にも新聞社の担当として関わることが出来て、それはそれなりに満足の様子でした。しかしこの先はデスクを務めるとか地方支局の責任者になるという道が残るだけのようです。三十代の後期にあって、もう一度音楽に深く関与したいようで、将来、新しい分野のmusic managementを専攻すべく一念発起、この秋京都市立芸術大学音楽学部大学院を受験しました。幸い合格でき、家族は子供の学校の都合から春までは札幌に残して、11月には単身我が家に帰って来るようです。親切にも指導教授が指導を開始してくださるからです。

2000年5月から北海道新聞記者時代お世話になった方のお骨折りで、長男は大阪のザ・フェニックス ホールに社員として雇用していただきました。大学でゼミのある日は、出勤扱いで大学に行くことも認めていただいています。ザ・フェニックス ホールの企画・運営については東京の江戸京子さんを理事長とするアリオン音楽財団(ARION-EDO FOUNDATION)と一体のようです。この財団は日本を代表する<東京の夏>音楽祭を開催する母胎ですから長男の希望通りの職場が幸運にも与えられたと思っています。長男もこの音楽祭の時には研修のため上京します。

INDEX HOME

grenz

いま考えていること 15(1999年01月)
―― 二つの手紙――

<

正月早々手紙を書くのに忙しかった。まず第一の手紙はこうです。

近畿郵政監察局京都郵政監察室 御中

 
前略

      これまで障害基礎年金受給を根拠に福祉定期預金を適用してもらっていましたが、昨年12月30日満期の分を継続扱いしていただくよう北郵便局貯金課に申し出ましたところ、この証書は障害基礎年金受給者のものではないと却下されました。担当者は年金コードの意味が分かっていないようです。紹介された他部局"お客様相談室"の人の回答はもう一つひどいものでした。「昭和61年以前から受給している人でないと駄目だ」の一点張りでした。私の調べた資料ならびに家内の裁定通知書、年金証書、北郵便局への送付ファックスも添えてもう少し指導をしていただけないか御願いする次第です。

     このケースでは、年金証書の基礎年金番号に続いて書いてある年金コードの数字を見れば、単なる障害年金を受けているのか障害基礎年金を受けているのかは一目瞭然なのに、北郵便局は自分の間違った判断で、客に不利をもたらしたのです。私が年金コードの意味を解説した資料を渡したので、社会保険庁に照会して、誤りを詫びてこられました。しかしもうすでにこの誤った判断に基づく処理で、不利な取り扱いを受けてしまった老人や障害者もいるのかも知れません。プロであるべき担当者がそれにふさわしい知識を持たず、勉強もしていない例です。

第二の手紙は、

  M信託銀行京都支店長 殿

  拝啓

新年おめでとうございます。
  社員教育の点でどうかと思うことがあるので御一報申し上げます。
  本日貴支店より満期手続き連絡カードを戴きましたが、
 「今回満期のご契約は
  1.元金と利息・・・・・・
  2.元金のみ・・・・・・
  3.自動継続扱いになっていません・・」
の3項目にチェックはされていないし、また電話で誰とは申しませんが、お客様担当という方にテレフォンバンキングについて質問しても誤ったinformation をさも自信ありげに言うので、私が貴社からのテレフォンバンキングのパンフレットを読み上げて正し、もっと勉強するように申しておきましたが、嘆かわしいことです。自分で的確な答えができないときは寧ろ率直に分からないので後で調べて返事しますと言ってくださるか、知識を持った上役に代わってもらうかすべきだと思いますが如何。貴店とは長いおつき合いでもあり私も少額ながら株主なので、M信託への関心も深いのですが、質が落ちたなあと言うのが正直な気持ちです。お客様担当は貴社をその時は代表して客に接していると言う自覚と責任を持たれるよう徹底して置いていただくことを期待します。

  貴殿の社員教育改善の努力を期待します。

こちらについては、「ビッグ」の満期の案内で、契約ビッグが満期時にどういう処理をするかあらかじめ契約している内容の連絡なのに、内容が明示されていなかったのです。さらに、この銀行が売り物にしているテレフォンバンキングの内容についても無知でこちらの質問に答えられず、あまつさえ間違ったことをとくとくと話して恥じないのです。

どちらの場合もその時に一応誤りを指摘すると、現場の人はいとも簡単に「すみません」と言うのですが、実はその場限りの心にもない挨拶なのです。それで私はどちらも責任ある立場の人に連絡したのです。直訴のように見えるかも知れませんが、下の人では責任が希薄で、出鱈目をいうので、責任のある人に管理の責任で指導してくれと依頼しているのです。上の人は下の人のミスは自分の指導が行き届いていないからだと、責任を感じて改善を計ってもらわなくてはなりません。

それにしてもどうしてこのような無知なプロが増えてきたのでしょうね。 昔は商売にたずさわる人でも素人と玄人ではものすごい差があって、なるほどなと思わせられることが多かったものですが。

知らなければ知らないといえばよいのに知ったかぶりで、誤った情報を呉れるので結果として、より一層悪辣です。

INDEX HOME

grenz

いま考えていること 16(1999年01月、追記02月;06月;10月;2000年02月;04月;5月;9月;10月;12月;2001年02月;04月;6月)
――インターネット 1――

<

いま考えていること 15(1999年01月)―― 二つの手紙――で書いたように、北郵便局の担当者の“福祉定期”についての説明で、担当者は「私の説明には間違いありません」といったのですが、私には納得できなかった。こういう今日的な問題の情報は、百科事典には書いてありません。インターネットに限ります。“福祉定期”、”障害基礎年金”、”年金コード”、すべてインターネットの情報検索で簡単に情報が得られました。世界中の新聞の主な記事を見ることも自由です。北朝鮮だってそれはそれなりに朝鮮中央通信は記事をインターネットで流しています。性的情報のインターネット上での氾濫や、今年になってからインターネットを使った異常な犯罪が報じられて、まるでインターネット悪人説が力を得るように見えるのですが、私の経験から、近い将来インターネットは電話並みに普及する道具だと確信しています。誰も電話を利用した犯罪について、電話は「悪だ。要らないものだ」と言う人は居ないでしょう。コンピューターのことは分からないので若い者に委せていますと言う中高年は、疑いもなくリストラ対象候補者でしょう。小学校でもコンピューター教育はどんどん進んでいます。若い国民が全員コンピューターに慣れているという時代が目の前にあります。

アメリカ経済の発展の一要素にインターネット経済の発展があります。昨年3,010億ドルの規模であったインターネット経済が今年は5,070億ドル(+68.4%)に成長すると推定されています。調査の対象になった会社の1/3は1997年以後に創立されており、この新しい会社での雇用人員は30万5000人です。(10月追記)更にInternational Data Corporationの11月3日の発表に拠りますと、2001年にはインターネット経済は1兆ドルになり、2003年には2兆8000億ドルに達すると予測しています。今年既に投資は技術・サービス部門からマーケッティング、セールス、コンテンツ作成部門が優位になっているそうで、この傾向はますます進むといいます。遅ればせながら日本でもインターネット経済の発展が加速していくのではないでしょうか。これが経済そのもののリストラクションを不可避にしましょう。

もう一つ挙げますと、電子メールです。市内電話の料金で瞬時に世界中の電子メールに登録している人に、便りや連絡をすることが出来ます。ショッピングの注文確認にも利用されていますね。こんなに便利な通信手段は疑いもなく普及します。1999年、全世界で電子メールアドレスを取得した人は前年に比べて83%増加したとのことですがこの調子で増加しますと、数年のうちに普及率は電話やテレビを追い越すことになるといいます(Message Online 調べ)。アメリカではインターネット・ショッピングが急速に普及し、営業経費の節減が出来るので商品の価格低下ひいてはインフレの抑制にも効果を発揮しているのです。日本でもNTTが分割される7月再編後,ISDN契約者を対象に年内にもインターネット接続の定額制(月額1万円程度)が実現する空気です。郵政省の発表では、1月末現在大手15社をプロヴァイダーとしているインターネット愛好者数は約1110万人です。また、杉井鏡生氏 の記事を参照すると2000年1月時点で、各国の人口10万人当たりのホスト数は次のようです。

    1位  フィンランド   20,362
  2位  ノルウエイ        15,074
  3位  アメリカ          14,613
        ・・・・・・・・・・・・・・・
    6位  デンマーク        10,625
    7位   オーストラリア     9,713
    8位   カナダ              9,015
          ・・・・・・・・・・・・・・・
  18位 日本               3,472   

2000年4月現在日本でのインターネット人口は1893万人、普及率15.8%だそうです。急速に拡大しています。
新しいところで、2001年7月18日発表のNielsen//Netratingsの調査では現在ネット人口は3590万このうち3010万人がPC利用で人口の24.2%に相当します。581万人は携帯電話を利用してインターネットに接続しています。

2000年9月11日のNielsenの発表では

           1位  アメリカ   15,000万
         2位  日  本        2,630万
         以下3位イギリス、4位ドイツ、5位カナダで、世界20カ国では約3億人

ということです(12月1日のNielsen発表では推定2億9901万)。中国は1,700万人ですが2000年中には世界第2位に増加すると見られています。Nielsen//Netratingsの調査では現在家庭のネット人口は全世界で4億5900万だといいますが、2001年5月31日のIDC報告では、インターネット利用者は2005年までには世界総人口の15%(10億人)に達し、電子商取引の売り上げは五兆ドルに上る見込みです。

2000年10月4日IT PROのUS NEWS FLASHはGartner Group の調査を紹介しています。それによるとアメリカでは現在インターネットの世帯普及率は50%で、2005年には75%になるといっています。アメリカでも収入や学歴による普及格差が大きくなってきています。

2000年9月から12月に野村総研は日本・アメリカ・韓国・シンガポール・スエーデンでインターネット個人利用率の調査を訪問によって調査しました。サンプル数は限られていますが、大体の傾向は分かります。


            スエーデン     60.7%      
      アメリカ      48.9
      シンガポール    39.2
      韓  国      31.2
      日  本      22.8   
となっています。韓国は3年前は11.4%でした。しかもISDN回線DSL回線利用率は次の通りです。DSL回線の普及は驚異的です。

     
                 ISDN                DSL
      スエーデン      8.8%      1.0% 
      アメリカ       2.8       1.8 
      シンガポール     2.0       0.0 
      韓  国       3.8      51.6
      日  本      31.3       0.0 


株式会社インプレスによると2001年2月末の日本のインターネット人口は
3,263万6,000人、このうち2割が携帯・PHSからの利用者。78.7%
がISDN利用で、現時点ではDSL利用はこれからと言うところです。

インターネットを国内だけで利用する手はありません。日本人は全員中学校で英語は習っているのですから、中学程度の英語は物にし、恐れないようにしましょう。「現在形」「過去形」たかだか「現在完了」位なもので「過去完了」などはまず出てきません。海外とのショッピングも簡単ですが、時には問題が生じます。こういうときに簡単な英語での電子メール通信はどうしても必要ですが、これも中学程度の英語で、充分意志の疎通が可能です。経験では、私取引先はみな誠実な対応をしてくれています。和訳にあたってのボキャブラリー不足などは、例えばバビロンを利用すれば十分カバーできます。もう一つ必要なのはキーボード操作です。一本指でも書き込みはできますが、ずいぶん時間が掛かって、億劫になります。時には回線に繋いだ状態で書き込みをしますから、電話代が嵩むことだって起こります。キーボードのアルファベット配置には早く慣れて両手でたたけるようにしましょう。ボケ防止にクルミを掌で揉み揉みしているのと同様に、我々年寄りのボケ防止にもなるかも知れません。

何をするときにも通じることですが、インターネットについてもガイドブックを読んでばかりいるよりも、まず試行錯誤的にやってみることです。失敗にめげずに工夫していれば必ず普通には使いこなせるようになります。苦心惨憺しつつ、3年くらいの時間を掛けている内に「勘」と言う奴が付いて来るのです。「勘」が付いてきて始めて少々のトラブルには柔軟に対応できるようになります。どうか時間を掛け、焦らないでコンピューターと仲良くなってください。

電子情報技術産業協会(JEITA)の発表では、2000年のパソコン出荷台数は、前年比25.4%増の1,155万台で、過去最高になりました。これまで3〜4割程度だった個人向けが5割近くにまで伸びた点が特徴です。

私の機器はNECのPC-98ですが、デスクトップ型なので、CPU交換やメモリー増設が容易で未だに使っています。ISDNを使って通信速度を高めていますが、プロバイダーはbiglobeとkyoto-inetの二つに加入しています。最近になってはっきりしてきたことは、通信速度がこの二つのプロバイダーで驚くべき違いがあるのです。biglobeですとアットいう間に入ってくるインターネットを介した情報がkyoto-inet では唸らなければならないほど遅く、プログラムをダウンロードするのに必要な時間も全く違うのです。kyoto-inetは使用料がすごく安いのですが、これでは電話代に大きな違いがでます。「安もん買いの銭失い」とはよくいったものです。

追記:いやあ驚きましたね。昨日夕方帰りの車の中から次男が電話してきました。到着したパソコンは箱から取り出しはしたが、まだ組み立てていないというのです。それが今朝9時の電話ではもうパソコンが動き、ついてきた限定使用のインターネットにも繋がっているというのです。次男からの購入機種選定の依頼を受け、知人に相談を持ちかけて教えてもらったのが、次のメールです。

PC9821−NXシリーズ
VALUESTAR NX 省スペースCRTモデル VE35D/57C

選定の理由は,Windows98一太郎他の組込仕様で、17型モニター付で、 搬入後、詳細な絵入りの組立マニュアルをみて順に繋げば、動きます。
内装56Kモデム経由で、 加入インターネットプロパイダーへの接続も附属ソフトで簡単に出来ます。 このクラスからハイパーフォーマンス機となり、CPU350MHz、 システムバス100MHzの高性能機です。OS立ち上げ時間が相当速くなります。 HARDDISKが6.4Gの大容量であり、大量データの収納に活躍するでしょう。 これで、実勢価格は24万円を切っており、実に隔世の感大であります。

<

WINDOWS 3.1を使っていた頃は、インターネットにつなぐのにも、独特のソフトの組み込みが要り、条件設定にも苦心惨憺し、また、再インストールをたびたびしなければならなかった苦い思い出があるので、本当に嘘のような時代です。性能は私の使っているパソコン並で、それでいて値段のこの安さ、驚くべきものがあります。

次男は、完全な文科系の人間で、コンピューターはもちろん、器械には全般的に弱いのです。

いま考えていること 39(2000年01月)−情報革命−もお読みください。

INDEX HOME

grenz

いま考えていること 17(1999年01月;03月追加;05月追加)
――金融再生委員会――

<

国会が始まりましたが、予算、ガイドラインと重要な議案が目白押しですね。これからの論戦に注目していきたいと思います。政府の方針には基本的に賛成ではないのですが、小淵内閣は思いの他に倒れずに続くかもしれないという気がしてきました。私はかねて現在の一番解決しなければならない問題は、金融機関の不良債権問題だと貯蓄のところにも書いてきましたが、柳沢委員長率いる金融再生委員会は問題解決に本腰を入れているように思えます。この委員会のことは現在国会の論戦でもそれほど注目されていませんが、成果を収めれば金融問題、ひいては経済問題全体を改善の方向に導き、小渕内閣の成果として内閣の人気を下支えする可能性を否定できないのです。興味深く見ていきたいと思っています。

昨日公的資金注入に伴う申請15行の頭取会見なるものが行われ、いよいよ公的資金が投入されることになりましたが、2月末、早くも柳沢委員長自身再度の投入をほのめかす始末。実体としての不良債権処理は行われず、国からのつなぎ資金を元に帳簿上の引当金の増加が本質であることが、明らかになりました。これでは本質的な解決にはほど遠く、不動産価格の低迷が益々深刻化するであろう現時点では、不良資産は帳簿上増え続けるでしょうから何も解決はしないでしょう。”再生”の文字が宙に舞う日も遠くありません。

5月、幸福銀行が小さい銀行だからかも知れませんが、経営者が安易に申請しようとした公的資金の導入は認められず、幸福銀行は廃業をすることになりましたね。NHKの朝のビジネス展望で櫻井さんはどうやら再生委員会も本気で駄目な銀行は整理する決意が固まったようだ。この調子では、2001年のペイオフを前に、怪しい銀行は預金全額の保護が行われている今の内に整理してしまうつもりと思われると言っておられましたが、注目されます。

INDEX HOME

grenz

いま考えていること 18(1999年01月)
――卒業研究――

<

十年あまりも前に勤め先の学校で、論文の盗作問題が起こりました。アメリカの研究者の著書がそのまま盗用されているというのです。調査委員会ができて私も専門外でしたが、委員に任命され、一夏、休みも返上という状態で論文と原著の照合で過ごしたことがあります。結果は残念ながら盗作といわれても反論できない内容で、その方は辞任されました。しかし、調査していくうちに、これは盗作というよりもこの方は論文の書き方の指導を受けておられず、引用の仕方もご存じなく、自分の意見と原著者の意見が全く混線してしまっている、かわいそうな人だなあというのが、私個人としては正直な気持ちでした。
引用が正確になされていたら、おそらくこんな大きい問題にならず、辞任されることもなかっただろうと思ったのです。この方は東京の有名な大学の学部を出られ、その後京都の大学院で修士号を取られた方でした。東京でも、京都でも指導された先生が論文の書き方を十分指導しておられなかったのだと思います。大学を出てから生涯研究者の道を歩む学生は少ないでしょうが、企業に就職してもレポートを書いたり、文章を作成しなければならないことは、きっとあるでしょう。その時の基礎として卒業研究を論文にまとめさせ、内容についても、形式についても徹底的に指導しておくことは、大学教員として非常に大切な仕事だと考えています。

もう一つは、ことに理科系の卒業研究でみられることですが、先生の研究の全く下請けを学生にさせているケースです。いわば働き手としての役割です。現在の学生のレベルでは先生方の研究のレベルからは遙かに離れているので、先生の研究内容を十分理解させる努力と技術的な訓練が必要です。これを無視して先生の研究の推進力(労働力)としてのみ考えるのでは、大学の教育機関という役割を無視しています。もちろん研究者としての課程を踏みつつある院生などでしたら、私も昔のようにいわば徒弟的に見習うことの意義を、大変重要なものだと思っていますが、そうでない一般学生の卒業研究では、これまで、習ったことの理解度を重点に小学校以来、受身的に試験をされてきた学生が、その過程で身につけた知識を土台に、初めて能動的に自分が持っている全知全能を未知の対象にぶつけ、それを解決しようとするプロセスを体験することに意義を求めるべきだと思っています。その意味では卒業研究のテーマは慎重に学生の能力に応じたものを選んでやらなければならないと考えています。それが先生方の研究にも貢献するものであればそれに越したことはありませんが、自分の研究の推進にプラスするかでなく、あくまでも一人一人の学生の能力開発に役立っているかが意識されていなくてはならないといいたいのです。

INDEX HOME

grenz

いま考えていること 19(1999年02月)
――朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)――

<

昨年末の北朝鮮のミサイル発射があってから、日本でも人工衛星を利用した情報収集をしようとか、アメリカと共同で戦域ミサイル防衛(TMD)構想の推進などが政府サイドから出てきて、国民の間に北朝鮮に対する危機感を煽る動きが激しくなりました。北朝鮮では食糧事情も悪く、飢えているのに、とんでもないことを考える国だというわけです。私も王朝のような世襲制の国家体制、日本人の誘拐問題に対する北朝鮮の態度や、事ごとに交渉を自分に有利に進めようとしてフェアーでない駆け引きを展開し、平気で嘘をつく北朝鮮流のやり方には憤りを感じています。しかし、国家体制といえば我が国でも近い過去まで、そういう政治体制の下にありましたし、あまり偉そうには言えますまい。こういうときほど冷静に物事の本質を考えないと大きな誤りを犯すように思います。
まず、アメリカの核の傘の下にある日本を、北朝鮮の側から突然攻撃することは、その後の展開を予想すればとても出来ることではありません。とても勘定に合わないからです。また米日合わせた海軍力、空軍力に於いても比較にはなりません。本当に危機を感じ防衛を考えざるを得ないのは日本ではなくて、北朝鮮ではないでしょうか。在韓米軍(俗に国連軍を称している)は紛れもなく脅威の存在ですし、イラクに対してもアメリカは公然とフセイン体制の転覆を口にする国なのです。何かの口実を設けて先制攻撃を加えるのもアメリカの通常のやり方です。いくら日本の外相がアメリカは国際法を守るから、といっても、私達の世代はかっての戦争でアメリカが国際法で禁じている都市の市民に対する無差別爆撃を、日本中にジャンスカ見事にやってのけた国であったことを忘れてはいません。その強いアメリカに対し対等の立場で交渉し、また、自衛の実を形だけでも備えようとすれば、国力に見合わなくても、力の象徴である核爆弾を持ち、ミサイルを持ち、人工衛星を持つことは強力な駆け引きの切り札カードになるからこそ、それらの開発に力を入れているのでしょう。今のところオウム事件でクローズアップされたサリンのような致死的化学物質の製造や細菌戦の準備は報じられていませんが、満州における日本の石井部隊の例もあることでそのうち問題に上ったとしても驚きません。それもこれも私は北朝鮮は積極的攻撃のためではなくて、むしろ広い意味での自衛と交渉上のエースカードとして、開発を進めているのであろうと考えています。我が国では新ガイドラインが国会の議案に上っていますが、日本がアメリカの作戦の後方支援をやり、武器の輸送もやって兵站基地の役割を演ずるとなれば、日本もこれらの手段による攻撃の対象となるのも当然の成り行きでしょう。

といっても北朝鮮のこういう戦略に賛成しているのではありません。真の国家の尊厳はこういう物騒なもので保たれるものではなく、高い文化、豊かな自由な国民、尊敬に値するリーダーの存在によるものだからです。早く北朝鮮の政策にもそういう変化が出ればよいのにと思っています。しかし政府のようにはカッカしないで冷静に考えると、北朝鮮の現在の戦略にもこのように一理があるのです。我が国の軍備やアメリカとの同盟関係を考えると、一概に北朝鮮はけしからんとは言えないと思うのです。あまりカッカとしないでおきましょう。

INDEX

HOME