今朝(2007年3月4日朝刊)の毎日新聞を見ていると、先日来の世界株安の捕まえ方の異なる視点で書かれた記事がありました。“「投資マネ−」の流れに変化が生じているとの見方が強く“というのがそれです。中国発の不安が全世界を走ったというこれまでの意見にも一理はあるのでしょうが、私はたとえばヘッジファンドなどの姿勢が変わったことが原因だと見ていましたし、日本銀行が基準金利を0.25%から0.5%に引き上げたことが一因だと睨んでいました。確かに0.5%といっても世界の金利水準から見れば安いのですが、金利が2倍に引き上げられたというのは大きいことです。これまで日本で調達していた資金にとっては利息が2倍になるのですから少しためらいもでて作戦の変更を迫られます。日本からの借り入れをいったん返済しておく動きがあったのでしょう。このため円高が同時進行しました。株価は金融哲学が再構築されるまで当分は低迷を続けるでしょう。投機資金の一部はすでに例えばトウモロコシに向かっているのかも知れません。バイオエタノ−ルの原料として。
このように日本の動きもどうしてもグローバルに世界を頭に置いて考えなければならなくなっています。私の高校生時代には戦争中の天皇国家主義への反省からコスモポリタンという言葉が日常的にあふれていましたが、最近は滅多に耳にしなくなり、安倍さんが首相になってからは「グロ−バル」という言葉ですらやや白眼視されるような流れです。かえって安倍さんは「美しい国日本」のかけ声の下、国家主義的動きを強めています。
しかし冷静に考えると生産拠点もますます海外に移り、儲けていると非難される企業の利益も七割方は海外で上げていると言います。格差問題を背景に「働く人たちへの還元が少ない。」と組合の人たちは賃上げを要求していますが、国内での賃金を上げるのと同時に海外での日本企業労働者と連携してその人たちへの還元も語られなければならないグロ−バル化の時代だと思います。残念ながらそのような取り組みは見られません。国内の自分達だけの賃上げを望めばますます企業の海外移転を進める結果になり自分の首を締め上げかねないと思います
大企業の減税や配当金減税の継続が格差社会の推進の元凶だと思わせるような議論もありますが、現在企業の株主(配当金を受け取る人)は日本人だけではなく外国人も増えてきており、日本の株価も外国人投資家による売り買いが大きな影響を与えています。この事態を「悪」と見るかグロ−バル化した経済の必然と見るかでそう単純な答が出る問題ではないように思います。野球と同列には論じられないかとは思いますが、外人選手が日本の球界で活躍して試合を面白くさせ、日本人選手がアメリカメジャ−リ−グで活躍する時代です。現在の各国法人税率はウエブテレビのデ−タでは次のようでした。
1位、アメリカ 40.75%(国税31.91%+地方税8.84%)
2位、日本 40.69%(国税27.89%+地方税12.8%)
3位、ドイツ 39.90%(国税21.53%+地方税18.37%)
4位、フランス 33.33%(国税33.33%)
5位、中国 33%(国税33%)
6位、イギリス 30%(国税30%)
7位、韓国 27.5%(国税25%+地方税2.5%)
5月からは三角合併も解禁され、企業は海外との激しい競争が激化しますし、韓国はアメリカと自由貿易協定を2007年4月締結しました。両国の貿易拡大は日本にも大きい影響を与えます。我が国も早晩自由貿易協定の拡大を迎えるでしょうが、それと共に日本農業は関税面での保護を失っていきます。農業・工業共にこれからは世界の中にあることを意識して他では生産出来ないユニ−クなものの開発と生産で太刀打ちしていかなければならないのです。そうすれば高くても良いものは海外でも歓迎され、農産物でもむしろどんどん輸出されて行く時代になるのも夢ではありません。今年は学卒者の就職が売り手市場だと言いますが、少子化の時代を迎えて大学への進学がますます楽になり、大学卒業と言うだけでは何の価値も無い時代になるでしょう。学生も気持ちの上で外国も意識した高度のユニ−クな発想と学識を身につけ世界を相手にできるものを持たないと見向きもされないことになるでしょう。意識の転換が要請されます。人口3000万で身分固定の江戸時代ででもなければ鎖国状態で生きていくことは不可能で他国と共存し貿易を前提としなければ生きていけません。
核廃絶の6カ国会議への日本の取り組みは「核問題への対処」という視点と「日朝国交回復」という視点をごっちゃにして6カ国会議に拉致問題の解決を求めるという頭の悪さです。「核問題への対処」を真剣に考えるのなら、一時拉致問題は棚上げにしてでも会議のメンバ−と歩調を合わせた取り組み、経済支援も処理していく視点かなくてはなりません。拉致問題は核から離れた別の場、すなわち「日朝国交回復」の場で処理しなくてはならないと思います。ベトナムで日朝二国間会議が開かれるようですが、この場はあくまで「核廃絶」という枠内での議論でなければならないのですが、自らの力で日朝二国間の外交ル−トを開く能力を失った我が国外交は、6ヶ国会議に便乗して二国間会議への道を拓こうとしました。折衝はうまく行くはずが無く何ら道は拓かれませんでした。安倍・麻生路線は拉致問題の前進がなければ一歩も進めないという固陋さです。自国のことばかりに眼を向けさせてグローバルにものを見るという姿勢のない安倍さんでは結果的には6ヶ国会議妨害の動きしかできないでしょう。6カ国会議の目的は何かそれをしっかり認識して会議に臨んでほしいものです。国民にグロ−バルな視点をとらせないのが現状です。
栄養の点から海外で日本食ブームが始まるとその内容が日本的ではないと今度は標準日本食の認定基準を作ろうという有様です。国内でも、格式では祇園甲部よりも上だという日本有数の花街京都の上七軒の仕出し屋「紅梅庵」の弁当でさえ焼き豚も使っている時代です。日本食といっても刻々材料も含めて変貌していくのです。私の意見では基本としてだしに昆布・鰹節、調味料に醤油・日本酒を使うものを日本食というとしてそれ以外何を使い、どう調理しようとよく、敢えて政府お墨付きの認定などよけいなお世話だと思っています。世界中の人が脂肪の少ない日本料理の基礎に沿って各地に日本料理店を開かれればその善し悪しの判定はその地の人々に任せればよいのです。偽りの日本料理は自然に決して長続きはしないでしょう。
現在の憲法、前の教育基本法などはいわばコスモポリタニズムが底流にあって、世界のすべての人々に受け入れられる視点があります。その貴重な視点を潰そうとするのが安倍内閣ではないでしょうか。私たちは日本の良さを築き、認識し、発展させながら片時も忘れてはならないのは国際的視点だと思います。資源のない我が国は所詮平和の内に貿易し、外国との友好を基本としなければなりません。金融面を見ても日本の金融機関はまだまだ国内活動中心で海外支店の数も多くないのが実情で日本の現在を反映しています。経済も文化も国際的になっているとき私たち個々の頭も常に国際性を保つ必要があります。そうでないとまた嘗ての誤りを犯しかねない安倍さんの姿勢です。私は深く憂えます。