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back.gif010 卵の造語:これこそがこの術の奥義である

ギリシア語錬金術文献集成

TLG1379

錬金術断片集

011
ウゥロボロス・ドラコーン(verso 1)







ウゥロボロス・ドラコーン(versio 1)
(+O oujrobovroV dravkwn)(表題なし)

(e cod. Paris. B.N. gr. 2327, fol. 196r)



2.21.21
amcl_ed06.jpg ウゥロボロス・ドラコーン、これこそが奥義そのものである、すなわち、浸蝕しつくし、溶解しつくし、発酵作用によって化合物を融解し、変成させる。こうして土色のものが生じ、これから黄金の華(crusavnqion)〔硫酸塩〕ができる。また、謂われるところでは、これから深紅の辰砂色をしたものができる、これこそが哲学者たちの辰砂である。

2.22.1
 これの腹と背はサフラン色。そして頭は土色。これの4つの足は4鉱石(tetraswmiva)。これの3つの耳は3つの昇華蒸気(aijqavlh)である。

 そして、一なるものが他なるものに血を供し、一なるものが他なるものを生みなす〔Kai; e}n to; a[llo aiJmateuvei` kai; e}n to; a[llo genna/:`〕。そして自然は自然を歓び、自然は自然を愉しみ、自然は自然に打ち勝ち、自然は自然を支配する。そして、別々の〔自然〕が別々の〔自然〕に〔働きかける〕のではなく、自然そのものがみずから、処理(oijkonomiva)を通して、艱難辛苦をともなって、ひとつの〔自然〕に〔働きかける〕のである。〔???〕

 汝はこれらのことに心(nou:V)を傾注せよ、おお、最も親愛な友よ、そうすれば、過つことはないであろう。むしろ、限界を目にするまで、不注意のうちに真剣に競い合うということはないであろう。

 ドラコーンというものは、この神殿を護りながら寝そべっている。最初に屠れ、そして皮を剥げ、そしてその肉をとり、神殿の入口に、それの骨で土台を作れ、そうして登れ、そうすれば、探し求めていたものをそこに見出すであろう。というのは、聖なる銅-人間を、その自然の色から変換させ、銀-人間となるからである。こうして数日後、汝が欲するなら、それをまた金-人間としても汝は見出すであろう。

2009.04.15. 訳了。




[参考]

 龍はたぶん、記録にはっきり残っている錬金術の具象的象徴としては最古のものであろう。10ないし11世紀のものと見られるマルキアヌス古写本(Codex Marcianus)に龍はウゥロボロス(oujrobovroV・われとわが尾を咬む龍ないし蛇)として、一にして全なるものe{n to; pa:n)という伝説の衣をまとって登場している。錬金術師たちは、「作業(opus)」は一なるものの内より生じ一なるものに還るのであって、いわば円循環のごときものであると再三再四語っているが、この円循環はまさしくみずからの尾を咬む龍に他ならない。それゆえ「作業(opus)」はしはしは「円形のcirculare」という形容詞を冠せられたり、「輪(rota)」と呼ばれたりするのである。メルクリウスは作業(opus)の始めに位置し、終りに位置する。メルクリウスは「第一質料(prima materia)」、すなわち「烏の頭(caput corvi)」ないし「ニグレド」である。メルクリウスは龍として己れ自身を呑み込み、そして龍として死に、石(lapis)となって蘇生する。メルクリウスは「孔雀の尾(cauda pavonis」の目も綾な色彩の戯れであり、分離した四大である。メルクリウスは原初の両性具有存在ヘルマプロディトスであり、一旦は二つに分れて古典的な兄-妹の対の形をとるが、最後に「結合(conjunctio)」において再び一つに結びつき、「新しき光(lumen novum)」すなわち「賢者の石」という形態をとって光り輝く。メルクリウスほ金属であるが同時に液体でもあり、物質であるが同時に霊でもあり、冷いが同時に火と燃え、毒であるが同時に妙薬でもあり、諸対立を一つに結びつける対立物の合一の象徴なのである。
 (ユング『心理学と錬金術』II, p.98-99)

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