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ギリシア語錬金術文献集成

TLG2140

イアムブリコス

001
錬金術断片集



人物

イアムブリコス(後245頃-325/330頃)
 ローマ帝政後期の著名な新プラトーン主義哲学者。コエレー・シュリァのカルキスKhalkis(現・Mejdel Anjar)出身。ローマでポルピュリオスに師事し、のちシュリアーに帰ってアパメイアに新プラトーン主義哲学の一派を開いた。プラトーンとアリストテレースの注釈書や、ピュータゴラース派の数神秘主義教説の解説書など多数の著述を記したが、そのうち『ピュータゴラース伝』Peri; tou: Puqagorikou: bivou、『哲学への勧め』LovgoV protreptiko;V eijV filosofivanなど数巻が現存するに過ぎない。師に比して迷信的・魔術的傾向が強く、オリエント=エジプト的神秘主義の要素を色濃く深め、降神術qeourgiva を霊魂救済・神との合ーに不可欠の技術と見なした。主著『魂について』Peri; yuch:Vや『神々について』Peri; qew:n は散逸。新プラトーン主義哲学を伝統的多神教の哲学的な基礎づけとして用いたが、プローティーノスの思想を秘教的呪術の導入によって硬直化させたともいえる。
 なお彼の名の下に伝えられる『エジプト人の密儀について』Peri; musthrivwn その他の魔術書・錬金術関係の文献は、今日では門弟らの手になるものと考えられている。
 「神の如き人」と尊敬されつつ大勢の弟子に囲まれて生涯を送り、その教説はユーリアーヌス帝の「異教」復興に大きな影響を及ぼした込。また神々への祈祷中にイアンブリコスの体が空中浮揚し金色に光り輝いたとか、シュリアーの温泉地で呪文を唱えてエロースとアンテロースの2柱の少年神を湯の中から招き出してみせたといった奇跡譚が伝えられている。

 ちなみに、同名のシュリアー人でギリシア恋愛小説『パピュローン物語(Babyloniaka)』(断片のみ伝存)の作者イアンプリコス(160年-180年頃活躍)は、彼の先祖に当たるのではないかと推測されている。この小説家はバビュローンで教育を受け、トライヤーヌス帝の頃に捕虜となり奴隷に売られたが、のち解放されてギリシア語を完壁に修得し、修辞学者として名を成した人物である。『バビュローン物語』はエジプトの王女(のち女王)ベレニーケーと美女メソポタミアーとの女同士の性愛と結婚、およびこの美女メソポタミアーをめぐって起きた他国との戦争の次第を記した小説で、女性間の同性愛結婚を描いた珍しい例として注目に価する。

 またユーリアーヌス帝やリバニオスと同時代の新プラトーン派哲学者イアンブリコス(? -371)も別人で、後者は鶏占いを行なった嫌疑でウァレーンス帝の迫害を受け、自ら毒を飲んで死んだといわれる。

Iamb!. Myst., Vita Pythagorae, Protrepticus / Eunap. Iamblichus/ Julian. Ep. 34, 40, Or. 4/ Stob. Flor. 25/ Phot. Bib!. 94/ Libanius Ep./ Dio Cass. 50-13, 51-2/ Strab. 16- 753/ Cic. Fam. 15-1/ Suda/ etc.
(松原國師『西洋古典学事典』)


イアムブリコス『錬金術断片集』
(Fragmenta alchemica)

(e cod. Paris. B.N. gr. 2327, fol. 266r)


2140 001 2 285 6
イアムブリコスの染色 — カッパドキア産の塩2ドラクマ。イタリア産の辰砂1/2#106〔ウンキア〕。雄黄1#106。焙った銅鉱石6ドラクマ。曲がった?鉄(これは黄土の薄片である)6ドラクマ。一部の人たちは鉄-銅12ドラクマを入れる。木灰1/2ウンキア。イオス3ウンキア。孔雀石6ドラクマ。トラキア産のカドミア1/2#106。個々に搗きつぶして錬って、いっしょに混和させる。マンドラゴラスの液汁を、膠の濃さになるまで加え、乾燥するまで磨りつぶせ。そうして海の兎〔Aplysia leporina, アメフラシ〕の血を、再び膠の濃さになるまで加えよ。そうして、活きた葦の第4節の中に納め、羊毛の布切れで蓋をし、14日間静置せよ。そうして取れば、汝は鉄を見出すであろう。こうして貝殻の中に保持せよ。そうして、煙が強くならず、しかし硫黄の臭いをさせるまで練れ。そうして取り出して、冷ませ。

 次いで磨りつぶせ。そうして、エジプトマングース、あるいは、キツネの胆汁、あるいは雄鶏の黒脚melovpodoV?、火石〔黄銅鉱〕の粒を加え入れよ。さらに、木箱の中でこれに鉛ないし 286.1 錫を投入し、15日間、馬糞の中に埋め、取って、次のようにせよ。ojxeivaのためには、薬の重さ3オボロスと、駱駝の胆汁等量を取り、潰せ、そうして大量の胡麻を与えよ。しかし、無痛なら、7日間埋めよ。だが、10日間なら、大量の豆を〔与えよ〕。しかし、穿刺する度にほとばしる間は、木箱から出して?、男児を生んだ女性の乳とともに、粉末になるまで磨りつぶし、7日間塗りこめよ。ただし、46日間入浴してはならない。

 染色のためには、サフラン、ミシュ〔キプロス産銅鉱石〕、緑礬水、キュアノス〔Dsc.V-106〕クサノオをそれぞれ1ドラクマを、汝の気前がよければ?銀の中に投入せよ。次いで、木箱であらかじめ発酵させたもの?3スタテールを〔投入せよ〕。この3は先の?2+1/2#106である?。中に収容され、すべてがいっしょに混和され、銀が満腹するまでふりかけられ、もはやしない。しかしその徴が観察されたら、もう一度静置される。

イアムブリコスの製法 — 空いた土瓶を取り、この上に蓋を置き、杯の中に、水銀1+1/2#106、銅、削り取られた純粋な錫、1+1/2ないし2#106、オリーブ油少々を取り、均一になるまで火にかけよ。次いで取って、後者を前者のものらといっしょに搗き砕け。割れた明礬1+1/2#106、生のmusivdh1+1/2#106、雄黄1+1/2#106を取り、空の長頸フラスコに入れよ。そうして硫黄水を、少量のガムといっしょにそれらといっしょに搗き砕き、安全に蓋をして、形相がすっかり化合したように見えるまで、緩火で煮沸せよ。それから引き上げて、7日間、固い塩を酢に漬けよ。次いで、乾燥させて、搗き砕き、膠状になるよう浸けた硫黄の油に投入せよ、そうすればすぐに石のように固まるであろう。乾燥したら、これをもう一度搗き砕け。火石1+1/2#106、陶器のカドミア、他の〔容器〕ではオリュムピア産カドミア(染め師たちが使うやつで、「平菓子」とも呼ばれる〕を、これといっしょに混ぜ合わせよ。287.1 いっしょに搗き砕いたうえで、気前のよい銀に、満腹させたものもろとも投入せよ。そうして、この銀1部分、金3部分、2倍の雲を取って、軟化剤を作れ。そうして、硝子製小瓶の中に、シノーペー土と緑礬水を等量撒いたうえで、入れよ。いっしょに搗き砕いたうえで、suvmfimoVを作り、1昼夜焼け。そうして引き出して、ハツカダイコン種子の油と白い密陀僧とともに磨りつぶせ。そうして球形にして、ふりまけ。じつにそういうふうにして純金を槌で打ち、火に入れよ、そうすれば純〔金〕になる。

金の製法 — 清浄な紅い銅を取って、縮小された小片(la:mna〔Lat. lamina〕)を作れ、そうして炭火の上に載せ、吹管を吹け、そうして紅い普通の塩をふりかけよ。次いでe[craVして、次いで引き上げよ。そうして小片を引っ繰り返して、同じことをし、そうしてこれを何度も???

 そこで、この銅1グラムマ、純化された第1級の銀3グラムマを取って、熔融し、金属を作れ、そうして、ヘブライ人の実修による鉄2グラムマを上へ下へと塗布せよ、そうすれば黒い金のようになる。そこで再び熔融せよ。これを三度なせ、そうすれば汝は処理を重ねた金を見出す、そうして真の〔?女性名詞〕1#106、<マグネーシアの> 体1#106を入れる、そうすれば純〔金〕があるであろう。

金の倍化 — 雲をハツカダイコン種子の油で煮沸し、7日間塩漬けにせよ。そうして甘くしたうえで、乾燥させよ、そうして保持せよ。

 そうして、辰砂を取って、ハツカダイコン種子の油で辰砂化せよ。次いで小壜で凝固させ、安全にして、6刻の間cwvstraの中に静置せよ。そうして洗浄したうえで、乳鉢に明礬をも塩をも入れよ、そうして7日間磨りつぶせ。そうして水で洗浄したうえで、甘くせよ、乾燥させよ、そうして保持せよ。

 そうして、孔雀石を取って、若い牝牛の尿で7日間処理せよ。288.1 次いで火で、7日ないし8日間、ハツカダイコン種子の油の中で染色せよ。ハツカダイコン種子の油で煮よ、そうして保持せよ。

 次いで、musivdhを取って、堕落していない尿で7日間、あるいはまたそれ以上処理せよ、乾燥させたうえで、保持せよ。

 次いで、雄黄を取って、搗き砕け、そうしてもう一度7日間酢に漬けよ。そうして、たっぷり浸かった染水を煮よ。次いで、洗って、それの蒸気を濾し取ったうえで、乾燥させよ。次いで、雌牛の尿を取って、7日間静置せよ、そうして洗浄したうえで、乾燥させよ、そうして保持せよ。

 次いで、緑縵1ヶ、火を通していない硫黄1ヶを取って、いっしょに搗き砕け、そうしてcwvstera< あるいは>壜の中で3日間焼け、そうして保持せよ。

 次いで、そういうふうにして数種の形相?あるいは雲1#106、辰砂1#106、孔雀石2#106#106、ミシュ6ドラクマ1グラムマを混和せよ。少量の酢でいっしょに磨りつぶせ。膠状にせよ、そうして穴あき釜(klibavnoV)<の中>で、容器がたっぷり赤熱するまで焼け。そうして、この焙焼されたものに雄黄2ドラクマ、鶏冠石2ドラクマ、ガム2ドラクマを混ぜよ。尿による硫黄水で7日間、いっしょに搗き砕け、そうしてこれを膠状にせよ。使用せよ。そうしてこれに金属を塗布せよ、そうすれば変化しよう。

 もしもこれを乾燥剤として保持したければ、乾燥させよ、そうして、望むときに、尿と硫黄でこしらえた水で解き、銅と銀と金との混和によってできた金属を塗布せよ。で、その混和とは —。清浄な銀1ヶ、第一級のnikahnoV銅1/2ヶ。銅を2つに分割せよ、そうして1/2を銀3といっしょに融解せよ。そうして葉を取り除いたうえで?、処理されたもので?火石を打て   酢と塩のソースで7日間処理され、甘くされ、焼かれ、蓋をしたcwvstraで  そうして取って、熔融せよ、そうして再び銅の別の部分を入れ、同じ仕方で3を熔融せよ。

 次いで、葉を取り除いて、再び火石を撒き、1昼夜焼け。そうして 289.1 イタリア産の雲を眼前でいっしょに搗き砕き、半分を熔融せよ、そうしてこの時等量の金を衝突させよ、そうして葉を取り除き、以下の染水に浸けよ。サフラン、ベニバナの花、クサノオ、輪状の脈状のあるカラミン〔Dsc.V-84〕各1ヶずつ。アイギュプトス酢で7日間いっしょに溶け。火にかけて染色せよ。この時も、葉を取って、先ず、羽根のある薬を塗布せよ。そうして乾燥させて、ランプ用油cwvstraで2昼夜焼け。そうして引き上げて、葉を詰めこめ。そうして炉にとって、蓋をし、穴あき釜で熔融せよ、そうすれば影のない琥珀を見出すであろう。

要約。エテーシオン1ヶ、槌で打たれた鉄1ヶ、マグネーシアの体1ヶ。いっしょに搗き砕け。5日間焼け、そうすれば黒いoJmilhvzwn?を見出すであろう。これの2ヶ、第一級の山の銅2ヶ、美しく混淆するまで熔融せよ、そうすれば琥珀よりすぐれたものができる。

2014.11.23. 一応訳了。

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