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[人物]
伝統という言葉は、まことに錬金術にぴったりしている。というのも、近代科学が前むきであるのに、錬金術は全般的にうしろむきだからである。錬金術師は、「古代人」はこの術の秘密を知っていて、それをおこなうことができたと信じていた。そこで彼らは、主として古代人の書物の意味を理解することに専念した。それにたいして近代科学は、これまでまったく知られていなかった事実がいつ解明されるかを努力して待ち望む。近代科学は、それを仕上げた人たちを、尊敬と栄誉の念で回顧するけれども、その人たちの著作のなかに、近代科学の啓発を明らかにするはずの秘密が隠されたままになっている、などとはすこしも信じない。 モーセースの倍化 (MwsevwV divplwsiV) (e cod. Venet. Marc. 299, fol. 185r) 2181 002 2 38 13t
青緑色をした銅1 2009.09.11., 2010.07.22. この処方のテキストは正しくはないが、生成物には、金およそ六六パーセント、銅・鉛・砒素の合金三三パーセントが含まれており、色や化学反応に対する抵抗性の点で、純金によく似ていると思われる。こういう処方をおこなった錬金術師なら、当然、金は雄黄の黄金色の助けをかりて鉛と銅を金固有の物質に変えた、と考えるだろう。それらの作り手たちがこのように考えたという証拠は、技術的記載をしているパピルスにのっている。 (テイラー『錬金術師:近代化学の創設者たち』p.51) |