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ギリシア語錬金術文献集成

TLG 4340

サルマナース

001
術知の業において名だたるアラビア人サルマナースによってこしらえ方されたる球形のカラザが完成される所以の常道



人物

 AD.9〜10の錬金術師。
 出身はアラビア人とも、ドリュラエウス〔プリュギアの都市〕人ともいわれる。


球形のカラザが完成される所以の常道/術知の業において名だたるアラビア人/サルマナースによってこしらえ方されたる
(MevqodoV di= h|V ajpotelei:tai hJ sfairoeidh;V cavlaza kataskeuasqei:sa oara; tou: ejn tecnourgiva/ peribohvtou !AraboV tou: Salmana:)

(e cod. Paris. B.N. 2327, fol. 141r)


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球形のカラザが完成される所以の常道
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術知の業において名だたるアラビア人
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サルマナースによってこしらえ方されたる

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chalaza.jpg  微細きわまりないカラザ〔卵黄の両端についているねじれ。原意は「霰(あられ)」。卵は輸卵管の長軸にそって回転しながら下がるので、卵白の中で粘度の高いカラザがよじれて、「あられ」の粒を連ねたようになる。昔からカラザが胚の原基だという俗説があったらしい。(島崎註)〕を取って、これらをガラス〔の容器〕の中に投入せよ。そうして、シトロンの染水を、これ〔シトロンの染水〕によってそれら〔カラザ〕が覆われるようその〔ガラスの容器の〕上に投げかけよ。さらに、そのような染水のうえに、水槽の、焼かれ、美しく磨りつぶされた藻(bruvon)〔Dsc.I-20〕少量をふりかけよ。次いでこれを蓋せよ。そうして、これの口の蓋を、処理された泥で安全に塗りこめ、このようなガラス〔容器〕を「犬星」の支配下にある焦熱の時機〔=土用〕の陽のもとに、1日間、吊せ。ただし、刻々に、そのようなガラス〔容器〕を取れ、そうして持続的に振って、これといっしょに、これの中にあるそのようなカラザも振られるようにせよ。翌日には、これの蓋を披き、染水をゆっくりと濃し、このようなカラザの混合物の本質から、それ何かがそれ〔染水〕といっしょに空けられないようにせよ。そうしてその中にそのような別の染水を投げかけよ、そうしてもう一度先のようにせよ。そうしてそういうふうに3度せよ。しかし、カラザの混合物が吸収され、染水がそれによって呑みこまれるのを汝が目にしたら、その上に 365.1 別のそういう染水を投げかけよ。次いで、そういうカラザがすっかり解消し、1つの混合物ができた後で、そういう混合物を取って、濾し器の中に投入せよ、そういう濾し器を甘い水で満たし、そういう混合物を、そういう水の中で掻き混ぜよ、そうしてその中の水を、1刻の間、そのままにせよ。そうして再びゆっくりと濾せ。そうしてこれを何度もせよ、そうすれば、その中のシトロンの染水の刺激は完全に消えるであろう。

 次いで、このような混合物を取れ、そうしてこれをガラスの小皿(patellivon)に投入せよ、そうしてこのような小皿を別の、もっと広口の小皿で蓋をして、その口によって下方の小皿の口が包まれるようにせよ。で、上方の小皿をして上方に穴を開け、これを通して混合物 の湿り気が噴き出すようにせよ。で、このような穴をして、カレシオンと添え名されるすこぶる薄い〔布〕で遮らせしめよ。そうして、これを、「犬星」の支配下にある焦熱の時機〔土用の〕日向に置け。そうして、混合物を乾燥させたうえで、これを保護せよ。

 次いで、水銀1リトラを取り、そうしてアスベストスで処理されたtzaparikon鍬?で2日、あるいは3日、あるいは5日、あるいは7日間搗き砕け。そうして乾燥させたうえで、蒸発させ、精製せよ。かくて、乾燥したら、これから半リトラを、水銀1リトラと均一化せよ。少しずつこすると、水銀がみな、いわば飲み干されるように見えなくなるだろう。そうして、雪のように白くなるまで、ガラス〔容器〕の中に小麦〔粉〕をcauvnonでふりかけよ。次いで、乾燥させられた混合物から、カラザ4ヶ、また上述の水銀から6ヶを取り、ガラスの小皿の中でこってりと均一化せよ、その際、ガラスの擂り粉木で搗き砕き、美しく粉末にして、zwkavronと添えなされる植物の白い染水を加水せよ。ただし、酵母をして硬脂のように濃いものたらしめよ。で、美しく、かつ、注意深く搗き砕け。そうしてこのような酵母から望むだけ取って、充分にしろい絹布の中に投じよ、そうして望む大きさで 366.1 球形にせよ。このような球形づくりの際に、次のような器具をしてあらしめよ。白銀の擂り粉木、白銀の取っ手、白銀の手指?。そうしてこのような器具によって、このような球造りを作業せよ。ただし、汝の精神をして、汝の手がそれに触れないよう、呼気はもちろん、埃さえかからないよう、そのような注意を持たしめよ。というのは、投薬され、黒くなり、無用物のままになるからである。それから、白く塗られた絹布の中の球を、煮沸された絹布で結べ。そうして、そういうふうにして、そういう球のそれぞれ1つをガラス〔容器〕に投入し、持続的かつゆっくりと振れ。転がし除けつつ。そうして美しく球形になっているのを目にしたら、取って、銀のsuvrmaで穴を開け、穴を開けた後で、もう一度ガラス〔容器〕の中で掻き混ぜよ。

 その後、zwkavronを取って、清浄なイチジク〔?〕(triblivon)の中に投入せよ。軟膏を少し磨りつぶせ。それらの果肉のうえに振りまけ。というのは、それらが粘着性によって圧搾されると、膠状のものを放り出すからである。そこで、この膠状のものから少量の部分を取って、ガラス〔容器〕に投入し、球形のカラザの各々を包め。で、〔カラザの〕おのおのをして、銀のsuvrmaを持たしめよ、そうして、それによってこれ〔カラザ〕を右利きのものとして受け容れよ。そうしてtagavrionと呼ばれる笊を取って、その中に小さな穴を作れ、そうして、このような穴で、球形のカラザを含んだsurmavtiaを、内側の部分から凝固させよ。それから、さらに別の、別のものに合致するタガリオンを取って、詰めこまれた試薬で満たせ、表面に隈無く投入して。そうして真珠を含んだものを取り、合致させよ、そうして、そのような笊の中で、10日間、乾燥するに任せよ。次いで、カラザに似た球それぞれを、蒸留瓶に似たガラス〔容器〕の中に投入せよ、石のように音を立てるのが分かるまで、その中で転がし除けながら。それから、これを輝かせよ、石でさえkabatovronから輝くかのように。?

 それから、1年生の、あるいはまたこれよりも少ない長さを持った、367 港ないし河の魚を取って、左の脇腹から引き裂け、そうしてこれらからはらわたを投げ捨てよ。そうしてこれらのはらわたの容器を美しく洗い、その中に残り物が何も残留しないようにせよ。次いで、これらのposcaを取って、これに穴を開け、磨りつぶされ、水で発酵させたニトロンをこれの中に投入し、1刻の間放置せよ。次いで、このようなposcaを、このようなニトロンで、汝の手でそれらをつぶしつつ、美しく洗え。そうして洗浄した後で、上述の球形のカラザを取って、ひとつずつ、poscaの中に投入せよ、そうして、煮られた絹布で緊縛せよ、ひとつの結び目ごとにひとつのカラザを結んで、poscaの中にひとつずつ投入せよ。そうして、そうやって、このような魚のはらわたの容器の中に、それらの中のカラザとともにカラザを投入しつつ、それらの引き離された皮を生糸で縫い合わせよ。そうして、これらを陶板(keramivV)の上に置け。で、この上に準備されたものをして、小さな天火を持たしめよ、そうして、これを、その火によって白くなるまで美しく拭え。そうしてそういうふうにして、このような天火の中に、このような陶板の上に載せられたそのような魚を投入し、天火を保存せよ、そうしてその口を塗りこめよ。そうして3刻の間、熱するに任せよ。そうしてそういう魚を天火の中から取り出し、温められるに任せよ。そうしてこれを割って、それらの中のカラザをそれらから引き出せ、そうしてこれを濾し器の中に投入せよ、そうして石鹸と熱で、魚の肥満を洗え。そうすれば、これらが完全な球状のカラザで、よりまさった自然物と何ら異ならないのを見出すであろう。

2014.12.01.


 われわれのコレクションで最も近代的な著作品は、アラビア人サルマナース(8世紀)のものとされたガラスと人工宝石についての技術の文書である。この文書は、たぶん古代エジプトから伝わってきたたいへん古い処方を含んでいる。<……>
 要するに、錬金術の叢書が、コンスタンティノープルでつくられたのは、種々の日付をもった、これらの著作品の寄せ集めによるのである。これらの著作品は、あるものは異教徒、他はキリスト信者というように、種々の著作家によって書かれ、ビザンティンの僧侶によって写され、註釈され、しばしば要約されている。これらの写しは、イタリアにもたらされ、次にその他の西欧諸国に伝わったのである。
(ベルトゥロ『錬金術の起源』p.95)

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