064 同じ硫黄水について
ギリシア語錬金術文献集成
TLG4319
ゾーシモス
065
神的なゾーシモスの書/徳について。水の構成について/作業I-VIII
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神的なゾーシモスの〔書〕(Zwsivmou tou: qeivou)
徳について(peri; ajreth:V`)
水の構成(peri; sunqevsewV uJdavtwn
<作業> I-VIII<(pra:xiV a'>)
(e codd. Venet. Marc. 299, fol. 92v, 115r; Paris. B.N. gr.2325, fol. 88r + 2327, fol. 84v; Laur. gr. 86.16, fol. 90v)
諸々の水の構成(qevsiV)、動き(kivnhsiV)、増大(au[xhsi)、体からの転換(ajposwmavtwsiV)、(ejpiswmavtwV)、体からの霊の凝縮(ajpospasmovV)、霊と体との結合(suvndesmoV)は、余所余所しい自然ないし外来の自然に起こるのではなく、単相の自然そのものが、自身に対して、諸々の金属の固体や、諸々の植物の抽出物を所有しているのである。
a
そして、この単相・多色のものによって、万物の質量豊富な多彩さと探求が形づくられる。ここから、月下の自然の時間的尺度に、消長盛衰 このなかを自然が通過する を従わせるのである。
b
そして、この単相・多色の形態のなかに、万物の、充分に議論を要する多彩な探求が保存される。ここから、消長盛衰 これによって自然が操る も、月下の自然の時間的尺度に従わせるのである。
こういったことをしゃべりつつ、わたしは居眠りをしていた。そしてわたしの前、盃形の祭壇の上に、一人の犠牲祭官(ijerourgovV)が立っているのを見た。そこには、同じ祭壇が、上方への15段の階段をもっていた。神官はそこに立っていた。そして声が上からわたしに言うのをわたしは聞いた。
「暗く光るこの15段の階段をわしが降りること、光り輝く階段をわしが登ることを、わしは充足した。そして、犠牲祭官はまたわしを新しくする者でもあり、身体の嵩を脱ぎ捨て、やむをえず祭司となって、わしは霊(pneu:ma)を完成した〔霊となった〕」。
そこで、盃形の祭壇の中に立っている彼の声を聞いて、何者であるかを彼から学び知るべくわたしは尋ねた。すると彼は弱々しい声でわたしに答えて言う。 「わしはイオーン、至聖所の神官、しかし耐え難い暴力に耐えている。というのは、夜明けごろ、ある者がまっしぐらに襲いかかってきて、わしを切断しようと、戦刀でわしを手にかけ、階調(aJrmoniva)の一貫性にしたがって、切り分け、自分に支配された両刃剣で、わしの頭の皮を剥いだ。骨を肉といっしょに混ぜ合わせ、手による火で焼き尽くし、ついにわしは、体が変成して、霊となった。これこそが、わしの耐え難き暴力である」。
このことをまだわたしと対話し、わたしも彼に言うことを強いているとき、彼の両眼は血のようになり、彼はその肉をすべて吐き出した。そしてわたしは見た 彼が〔言っているのとは〕正反対に、手足を切断された小人(ajnqrwpavrion)で、自分の歯で自分自身を噛みきり、倒れるのを。
そして、わたしは恐怖の念にうたれて眠りから覚め、思案した。
「いったい、これは水〔複数〕の構成のことではないのか」。
そして、美しく理会したと自分で納得できたようにわたしは思った。
そこで再びわたしは居眠りをした。そして見た 同じ盃形祭壇、その上でぐつぐついう水、多くの民人が際限もなくそれ〔祭壇〕の方へと向かって行くのを。しかし、祭壇の外にはわたしが質問できそうな人はいなかった。そこで、その光景を見るため、わたしは祭壇を登っていった。そして見た 〔歳で〕灰色になった、床屋の小人(ajnqrwpavrion)がわたしに言うのを。
「何を見ているのか」。
わたしは彼に答えた、水の煮沸と、生きたまま焼かれる人間どものそれに驚いているのだ、と。すると彼はわたしに答えて言った。
「おまえが目にしているこの光景は、入口であり、出口であり、変化である」。
そこでもう一度わたしは彼に問いただした。
「いかなる変化ですか」。
すると彼は答えて言った。
「いわゆる木乃伊化の実習の場所(tovpoV ajskhvsewV th:V legomevnhV tariceivaV)である。というのは、徳(ajrethv)に与ろうとする人間どもは、こういうふうに進み行き、身体を忌避して、霊(pneu:ma)となるのである」。
そこでわたしは彼に言った。
「あなたも霊(pneu:ma)なのですか」。
すると彼は答えて言った。
「霊(pneu:ma)でもあり、霊の守護者(fuvlax)でもある」。
そして、こういったことでわたしたちが交わっている間に、煮沸が進み、民人が大声で叫んだので、わたしは見た 銅人間がその手に鉛の書板を掴んでいるのを。そしてその書板を見ながら、声に出して云った。
「懲らしめを受けている者ら全員にわれは命ず、静かにするよう、そして、めいめいが鉛の書板を自分の手に取り、手で書き、眼を上に向け、汝らの葡萄が生長するまで、汝らの口を開けていることを」。
そしてこの言葉に行動がしたがった。すると家長(oijkodespovthV)がわたしに言う。
「おまえは観た。おまえの首を上に伸ばして、行われていることを見た」。 そこで、見たと云った、すると彼はわたしにこう言う、 おまえが見たのは銅-人間(xalkavnqrwpoV)が自分の肉を吐き出すところだ。この者は犠牲祭官にして犠牲にされるもの。そして彼には、この水と、懲罰を受ける者らに対する権限(ejxoisiva)が与えられている。
そして、こういったことを幻視したうえで、わたしは再び眠りからさめた。そして自分に向かって云った。
「この幻の原因は何か。いったい、これは白くて黄色い水、ぐらぐら煮える水、神的な水〔硫黄〕のことではないのか」と。
そして、ますます美しく理会していることをわたしは見出し、わたしは云った、 言うことは美しい、聞くことは美しい、与えることは美しい、受け取ることは美しい、貧しいことは美しい、富むことは美しい、と。いったい、いかにして自然は与えることや受け取ることを学び知るのか。銅-人間(xalkavnqrwpoV)は与え、溶解鉱石(uJgrovliqoV)は受け取る。金属は与え、植物は受け取る。星辰は与え、花は受け取る。天は与え、地は受け取る。雷は、きらめき出る火の〔素であるから〕、与える。そして、万物は組み合わされ、万物は分割され、万物は混合され、万物は結び合わされ、万物は〔葡萄酒が水で割られるように〕割られ、万物は生(き)となり、万物は潤い、万物は渇き、万物は花開き、万物はしおれる、盃形の祭壇の中で。2.110.20 なぜなら、おのおののものは、四元素の道筋(meqovdoV)と重さ(shvkwma)と量(oujgkiasmovV)によって、あらゆるものの化合(sumplokhv)と分解(ajpoplokhv)、つまり、あらゆる紐帯(suvndesmoV)は、道筋(meqovdoV)なしには生じないからである。道筋(meqovdoV)とは自然の道筋であり、息を吸うこと息を吐くこと、道筋の順序を守るもの、増大するもの減少するものである。そして、手短にいえば、万物は分割と合一によって調和し、道筋は何ひとつも欠くことがないから、〔万物は〕自然を変容させる。すなわち、自然は自分で変容して、みずからに向かって転向するのである。これこそが全世界の自然、徳の自然にして、〔全世界の〕紐帯(suvndesmoV)である。
そこで、あなたのために長々と書くことがないよう、親愛なる友よ、ひとつの岩塊でできた神殿を建てよ、それは白鉛のような、雪花石膏のような、プロコンネーソス産の〔大理石でできた〕かのようで、この建物には初めも終わりもない。しかし内部には、清浄このうえない、太陽の光をきらめかせる水をたたえた泉をもっている。この神殿の入口がどこにあるか精査せよ、そしておまえの両刃剣をとれ、そしてそういうふうにして入口を探せ。なぜなら、入口の開口部になっている場所は狭い。しかも、竜が入口に待ち伏せ、神殿を護っているからである。そこで、これ〔竜〕を手にかけ、まず屠れ。そうして、そやつの皮を剥ぎ、そやつの肉を、骨ともどもに取って、肢体を分割し、神殿の小口に、骨ともども肢体を合わせて、自分のために土台を作れ、そうして登れ、そうして入れ、そうすれば、そこにおまえは探していたものを見つけられよう。というのは、銅-人間である神官が、泉の中に座り、ものを集めているのをおまえは目にする。しかし、それは銅-人間のようではない。なぜなら、それは自然の色を変え、銀-人間になって、おまえが望むなら、しばし後には金-人間になるのをおまえは見出すであろう。
この序は、下降するロゴスの花 諸徳、知恵、知慮の探求、理性(nou:V)の教説、能動的な諸々の道筋、隠された言辞が明らかになる啓示 がおまえのために花開くための入口である。そして、万有(to; pa:n)を処理するのは、徳の時間である。
「自然が自然〔複数〕に勝つ」とは、いったいどういうことか、また、「〔自然は〕完成し、ふらふらになる」とは、また、「次いで、〔自然は〕第一の形から転落して死を思う」とは。また、「〔自然が〕野蛮となって、ユダヤ的な〔自然〕を有するものの真似をするとき、自分の復讐をして、苦しみ(tavlaina)は自分よりも軽くなり、自分の肢体の混合を有する」とは。また、「湿は火とともにまた熟した実を結ぶ」とは〔どういうことか〕。
自然をはっきりと転向させて、理性のこういった思索の中に立て、そして、多種の質料からなるもの(poluvu&lon)をひとつの質料からなるもの(monovu&lon)のごとくに思量せよ、何びとにもこのような徳を話すことなく、自分で自足せよ、何としても言うことを自分に許してはならない。なぜなら、沈黙は徳を教えるからである。四つの金属、鉛、銅、銀、錫の、完全な金になることへの変化を見るのは美しい。
塩をとって、歓喜する蜂蜜色の硫黄で潤せ。両者の力を結びつけ、〔第3の成分として〕緑礬水を加え、これらから、白く輝く緑礬水の第一発酵体である酸をつくれ。そして、過程と行程によって、白い銅を必然的に制御し、第五の行動の後に、3つの昇華(aijqavlh)のもとに発見し、続いていわゆる金ができる。見よ、そうすれば、単相的なものを多相的なもののように制御して、質料(u{lh)を所有するであろう。
2009.05.12. |