ギリシア詞華集(Anthologia Graeca)

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 アンソロジー(Anthology)の語源をなすギリシア語の"anthologia"とは、「花(anthos)」という名詞と「集める(lego)」という動詞からつくられた合成語で、エピグラム詩の集成を意味した。

 エピグラム(epigramma)とは、もともとは、何らかの対象物や記念碑について、それが誰のものであるか、誰が作ったのか、誰がいずれの神に奉納したのか、誰が埋葬されているのか、といったようなことを述べる以上のものではなかった。エピグラムの最初期のもの(前720年頃)は六脚韻律(hexametros)であったが、前500年頃から、古典期の2行連句形式のエレゲイアが優勢となった。(詩型の具体的な内容については、point.gif古代ギリシアの詩

 古代ギリシア人は、エピグラム詩に対する愛好が強いらしく、すぐれたエピグラムの集成も早くからつくられたようであるが、今にその名が伝わっているのは、前100年ころ、メレアグロスの手になる『花冠(Stephanos)』がその最初の秀作であろう。
 以後、ネロ帝治世下に、テッサロニケのピリッポスによる別の『花冠』、567/8年ころ、アガティアスによる『環(Kyklos)』などが編まれたが、これらをもとに、900年ころ、ビザンツの学僧ケパロスが、さらに同時代の作品をも加えて、エピグラムの大集成を編んだ。

 現在、『ギリシア詞華集(Anthologia Graeca)』の名で流布しているのは、1606年、ハイデルブルクで発見されたケパロスの集成の写本〔"Anthologia Palatina"〕に、ここに含まれていなかったプラヌウデス集成(1301年)になる300編ほどを収録して全16巻とした校訂本である。収録作品集は約4500、作者300人に及ぶ大集成である。



 画像は、Simeon Solomon(1840-1905)の「ミュティレーネーの花園のサッポーとエーリンナ(Sappho and Erinna in a Garden at Mytilene)」(1864年)。
 〔時代的に、2人が邂逅するはずはないけれど……〕。
 画像出典は、Tate Collections


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