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アダム( =Adavm)

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 字義では、血で造られた男性である。聖書以前の神話では、大地女神がその土 adamah をこねて造った者で、女神の血をもらって生命を得た。point.gifEve.。アダムの肋骨からイヴを造ったという考えは、母親の肋骨から子の身体を造るというシュメールの太女神の話に由来するものである。シュメールの太女神は「肋骨の女神」であると 同時に、「生命の女神」でもあった。その名前はこの2つを同時に意味するものであった[1]。point.gifBirth-giving, Male.


[1]Hooke, M. E. M., 115.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 フックが述べているのは、こうである。
 エンキとニンフルサダの神話では、母神ニンフルサグは神々の楽園に9本の樹木を植えさせた。ところがエンキはそれを食べようとして、イシィムッドに命じて取らせた。エンキが一つずつ食べていると、怒り狂ったニンフルサグは死の呪いをエンキに下す。その結果エンキの体の八つの器官は病いに冒されて、瀕死の状態となる。偉大なる神々は当惑してしまうが、エンリルも助けることはできなかった。
 ニンフルサグは強引にもどされて、いやいやながら8つの癒しの神々を造った。この神々は病いに冒されたエンキの器官をそれぞれ癒したのであった。この器官の一つが神の肋骨であって、この肋骨を治療するために造られた神がニンティである。ニンティとは「肋骨の女」という意味である。 ところがシュメール語の「ティ」には「生命」と「肋骨」の二つの意味がある。従ってニンティは 「生命の女」という意味にも訳されるのである。
 ……へブライの神話では、アダムは自分の肋骨から造られた女を「ハッバー」すな わち「生命」と呼んでいる。このことからへブライの楽園神話の独特な特色の一つになっている女性誕生物語は、やや生硬な感じをもって伝わっているシュメール神話に起源があることが明らかになろう。
          (『オリエント神話と聖書』)

[画像出典]
William Blake「アダムを創造するエロヒム」