Fabulae(P.Ryl.493)


[底本]
TLG 0096 012
Fabulae (P. Ryl. 493), ed. A. Hausrath and H. Hunger, Corpus
fabularum Aesopicarum, vol. 1.2, 2nd edn. Leipzig: Teubner, 1959: 187-189.
(Pap: 332: Fab.)

[解説]
 イギリスのライランズ図書館所蔵の写本で、デメトリオスによる集成の面影をとどめているのではないかと言われるので、全訳しておく。





"t"

寓話集 (ライランズ・パピュルス 493)

"t"1
イノシシとウマと猟師(Perry 269)
 力が強くても、他の人たちに反抗もできなければ、うまいぐあいに轡をかまされてもいるような者に、次の話(logos)はぴったりだ。
 ウマとブタとが牧草地を共有していた。しかしブタは、ウマの水飲み場と牧草をむちゃくちゃにした。
 ウマは何度も……

"t"2
羊飼と羊(Perry 208)
 他の人たちには善い行いをするのに、友たちには悪いことをする者たちに対しては、次の話がぴったりだ。
 牧童が上着を置いて、樹に登って、羊たちのためにドングリの実を叩き落としてやっていた。ところが羊たちは、ドングリの実を争うあまりに、羊飼の着物をぼろぼろにしてしまった。降りてきた〔羊飼〕は、結果を見ていった、「極悪ヒツジどもめ、おまえらは他人には羊毛を……

"t"3
ヘーラクレースとプルウスト〔富の神〕(Perry 111)
 悪人同然の富者には、次の話がぴったりだ。
 ゼウスが、ヘーラクレースを神々の列に加えるために、他の神々も食事に呼んだ。それぞれの神がやってくるたびに、ヘーラクレースはうやうやしく歓迎したが、ヘーラクレースはこの神には言葉ひとつかけなかった。ゼウスがいぶかって、どうしてそんな態度をとるのかと、ヘーラクレースに尋ねると、こう答えた、「おお父よ、わたしはこの神がいつも極悪人たちといっしょに過ごし、そいつらと相談していたのを知っているのです」。するとプルウトスが言った、「極悪人め、プルウトスがその場にいた時には、行動は何も起こさず、今ごろ、言葉でいきり立っている……

"t"4
梟と小鳥たち(Perry 39)
 ……とりもちのできる宿り木が生えるのを〔フクロウは〕知って、小鳥たちに、宿り木が生えたら、鳥の種族に悪いことが起こると注意を促した。けれども小鳥たちが、その言葉を軽視していたところ、宿り木が生長し、ひとりの鳥刺がその宿り木からとりもちをとって、狩りをした、小鳥たちは〔これを〕見て考えを改め、フクロウは未来の予見にかけては恐るべき鳥だと言い合った。今も、フクロウを見ると、ほかの鳥たちからは離れていようと、飛びまわって、忠告を請おうとするのである。しかしフクロウは言う、「何とまぁ、ろくでなしの鳥たち、恥をお知り、今でも憶えているでしょう? ……まだ……さえ……なかったとき、けれども……とき、……あんたたちはわたしの忠告に従わなかった。それどころか、かつては、あんたたちもわたしのことを気に留めなかった、今ごろ……さえ……ないときに、……」。すると、この言葉に〔小鳥たちは〕心打たれ、こう言って自分たちの考えをはっきり述べた、「こういうふうに、後になっては何の益もない……
 この寓話については、point.gif第9章 テクストの変容・挿絵の変容をも見よ。

2002.02.01. 訳了


forward.GIFディオン・クリュソストモス寓話集