[底本]
TLG 0581
PARADOXOGRAPHUS PALATINUS
vel Anonymus Palatinus
(A.D. 3?)
1 1
0581 001
Admiranda, ed. A. Giannini, Paradoxographorum Graecorum
reliquiae. Milan: Istituto Editoriale Italiano, 1965: 354-360.
(Cod: 621: Paradox.)





"t"
『驚くべきことども(Admiranda)』

断片1
 ワシ(aetos)は病気になるとカメ(chelone)を食って〔病気を〕癒す。血も飲む。

断片2
 フクロウたちは自分の雛たちをアリから防ごうとして、巣にコウモリの心臓を置く、ひとがコウモリの心臓を〔アリの〕巣穴の上に置くと、アリたちは巣穴そのものさえ捨てようとするごとくである。

断片3
 「黄疸(Ikteros)」という生き物は、そう言われるのはその色によってである。黄疸に罹った人がこの生き物を見ると、すぐにその病気からのがれられる。
 〔Plin. XXX_94 では、この鳥の名は"galgulus"とある。〕

断片4
 オオガラスは、あたかも結婚歌(gamelia)のように歌のようなものを雌たちにがぁがぁ鳴きかけないうちは、雌たちと交わることはない。そういうふうにして雌たちが口説かれてから交尾する。

断片5
 クレイトール〔アルカディア北部にある堅固な都市、現Dorf Klituras〕にある泉の水を飲むと、飲酒をやめ、〔飲酒を〕嫌うようになる。

断片6
 カンニノイ〔?〕にある泉は、火口がピッチの蒸気を吹き上げる。夏の季節には、早朝の露がピッチに似ている。

断片7
 ナクソスでは、アグラオステネースの主張では、ブドウ酒が大地からひとりでに噴出し、河の中を運ばれるときも、水と混ざることがない。しかしこれを味わう者は正気を失うという。

断片8
 ペルニコン〔?〕では、大地が掘られると、石が見つかる、この石を太陽が暖めると燃えあがる、だからここに土器をかけると、肉でもその他何でも煮ることができる。

断片9
 セラスポロス〔?〕という都市に湧き水(pege)が吹き上げているが、〔この湧き水は〕冷たく、透明で、見たところ油状をしていて、身体でも毛髪でも滑らかにし、頭痛を止める。これに火のついた蜜蝋をひっつけると、それによって水は燃えあがり、別の水を近づけるまで火花を放ち続ける。この水は他の水より透明であるとともに、いかなる匂いももっていない。

断片10
 アリストテレースの主張では、ケルティケー〔ケルタイ人たちの地域〕にはいつも2羽のオオガラスが現れる、このオオガラスこそ、次の仕方で人間たちに占われるのである。すなわち、何らかの契約について仲違いがあった者たちは、上述の場所に出かけていって、マザ(maza)を作って何羽かの鳥たちに供える。オオガラスたちは、不正行為のあった者のマザは脚で粉々にするが、義しい行為の者のは食べるという。

断片11
 アルテミドーロス〔エペソスのアルテミドーロス、前150頃-100?活動、地理学者〕の主張では、リパリタノイ人たちのところでは、掘り出される魚が見つかり、この掘り出される魚を土地の人たちは惜しみなくデザートに用いるという。
〔アリストテレース『異聞集』74参照〕

断片12
 アンドロニコスの主張では、イスパニアのある場所に、生まれつき多角形の小石が散らばっているのが見つかる、そのあるものは白く、あるものは油ぎっているが、自分と同じ小石を孕む。わたしもその一つを試しに手に入れてみたが、たしかにわたしのところで出産したから、この話(rhema)は嘘ではありえない。またイスパニアには湧き水(pege)もあり、その水は甘く飲むことができる。しかし、ひとがこの水に手を入れ、しばらくそのままにしておくと、手が白い塩まみれになるのを眼にすることができるという。

断片13
 ティマイオスの主張では、イタリアにあるクラティスという河は、ここで沐浴する者たちの髪を黄変させるという。

断片14
 セラスポロン〔?〕で薬草が見つかるが、これを使って当地の人たちは、春草によっては黄色胆汁(xanthe chole)の排泄をなし、秋草によっては黒色胆汁(melaine chole)の〔排泄をさせ〕、冬には発熱の〔排泄をさせる〕。こうしてこれらのひとつずつが混じり合うことなくすべて別々の〔症状〕に効くのである。

断片15
 カッリマコスの主張では、トラケーにはケローンとネーレウスと名づけられた2つの河がある。妊娠した家畜〔=ヒツジ(probata)〕のうち、ネーレウス河から〔水を〕飲んだものは白いのを、両方の河から〔水を〕飲んだものは色とりどりのを〔産む〕。

断片16
 ポリュクレイトスの主張では、ソロイにリパリスという河がある、この河は沐浴する者たちにたっぷり塗油するので、軟膏を必要としないほどであるという。

断片17
 同じ人の主張では、パムピュリアにあるムウアビスという河は、投げこまれた詰め土(stoibe)を石化させるという。

断片18
 アテーナイオスの主張では、ペルサイには致命的な果実の成る一種の樹木があって、これをペルシア人たちは、カムビュセースがアイギュプトスに遠征したとき、アイギュプトスに運び、処々方々に植えた、アイギュプトス人たちがこの実に近づいてくたばるようにとである。ところがこの樹は、土壌を変えたために無害な実をつけるようになり、ペルシア人たちによって植えられたことから、ペルサイア〔ふつうの表記は"perseia"、学名"Mimuscops schimperi"〕と名づけられたという。

断片19
 テオポムポスの主張では、アグリエオイ・トラコイ人たちの領土に、ポントスと名づけられた河があり、この河は石炭のような石を流れ下らせるという。この石は、点火されてふいごで煽られても燃えることはないが、水をふりかけられると燃えあがるという。この石は四足動物のような体臭は何ひとつとどめないという。

断片20
 家畜〔=ヒツジ(probata)〕の腸について、アンティゴノスの主張では、牡ヒツジのそれは無音だが、牝ヒツジのそれは有音だという。このことに詩人は気づかなかったわけではない。すなわち〔詩人は〕主張している —

  より女らしい雌ヒツジ(oio)の7本の弦を張った。〔出典不明〕

断片21
 カトーン〔大カトー、234-149 BC〕『植民市建設論(Ktises)』の主張では、アルペイス〔アルプス〕山脈のウサギは白くなり、ネズミは11リトラ〔容積の単位か?重さの単位か?〕もあり、ブタは単蹄(monochelos)で、犬は毛むくじゃら、牛は角なしであるという。
 〔ブタの単蹄については、『動物誌』第2巻1章(島崎註31;『異聞集』68;『動物発生論』第4巻6章など参照〕

 //END


back.gifAnonymi Paradoxographi
forward.GIFインターネットで蝉を追う/目次