〈ピュータゴラース〉『占星術断片集』1
ギリシア占星術文書目録0632_007
〈ピュータゴラース〉『占星術断片集』2
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[底本]
TLG 0632 007
Fragmenta astrologica
Astrol.
K.O. Zuretti, Codices Hispanienses [Catalogus Codicum Astrologorum Graecorum 11.2. Brussels: Lamertin, 1934]: 124-125, 135-138, 139-144.
11,2.
(124)
哲学者ピュータゴラースの、生まれる嬰児に関する、また、7惑星の同様の観察に関する数価、観察によって各々がいかなる星のもとに生まれるかを汝が考察するために
土星が象徴するのは次のような者たちである。色黒く、陰気、髭薄く〔去勢された者の髭で〕、眼が窪み、逞しく、厄介者、生まれつきよく、嘘つき、性悪、盗人、浮浪者、悪知恵が働き、こそ泥、役者、恰好に気を遣う者か独り者か教会人、しかし何事にも不平の多い人たちである。
木星が象徴するのは次のような者たちである。位高く、背高く、額広く、ひとを喜ばせ、鼻孔に毛が生え、デコ禿げ、頭大きく、善良、善い忠告を与え、自由を愛し、誰とでもつるむ人たち。
火星が象徴するのは次のような者たちである。背高く、裕福、眼大きく、溌剌とし、身体に疵をもち、大胆、侮られやすく、戦士、猜疑心強く、惨め、自然児、姦夫、苦労多く、万事に危うい人たち。しかし、象徴する者たちの一部は、帯の下とかクラミスの下あるいは???の下に武装し、しばしば奴隷たちの……形姿の見かけが……からである。
太陽が象徴する男たちは、格好良く、器量よく、男らしい眼、天使のようで、俊敏、信実で、旅する者、年齢的に程よい者たちである。
金星が象徴する男たちは、背低く、価値に満ち、蜂蜜色〔蒼白い〕、眼小さく、幸福者、度量大きく、魅力的で、富裕、(125) 優美、とりわけ女たちに持て、愛者、音楽的、身体に 豆のような、あるいはまた身体に眼のような、性愛の徴を持つ者たちである。
水星が象徴する男たちは、顔に黒子を持ち、天使的で、弁舌さわやか、流暢、嘘つき、能書家、盗人、賭博師、居酒屋の常連、詐欺師、多弁、身体強健で、背丈大きく、両替屋、法律家、公証人たちである。
月が象徴するのは、色白く、ふくよかな脚を有した女たちで、身体の幅広く、がさつ、背が低く、眼のきれいな、女の顔をし、信実で、よく食べ???(eujfagei:V)、優雅で、おのれの興味を追求し、美になじみ、あらゆる身体に順応し、女たちと社交的で、寛容で、粗野で空威張りする者たちである。
7惑星の層
第1層を領するのは土星。第2層を領するのは木星。第3層を領するのは火星。第4層を領するのは太陽。第5層を領するのは金星。第6層を領するのは水星。第7層を領するのは月。
(135)
哲学者ピュータゴラースの、
12宮の形態と象徴について、
いかにして各観測によっていかなる宮とその行いを有するかを学知するのか
白羊宮の生まれの徴を持つ者たちは、面長、鼻伸び、垂れさがり?、やや紅く、額広く、(136) デコ禿げ、唇薄く、ひとを愉しませ、陽気?、眼黒く、発声は不用意、自然本性的に贈り物に有用、???、肉づきよく、自然児、母国を裏切り、毛髪多く、うなだれ、もじゃもじゃで、顔長く、あからさまな?、心に臆病、冗談好き、気概のある、戦いの扇動者たちである。行為においては創意に富み、男らしく、無慈悲、向こう見ず、将軍、掻っ払いにして、略奪に生きる者たちであるが、移り気な者たちでもある。
金牛宮の生まれの徴を持つ者たちは、額広く、鼻大きく、顔は品良く、顎とがり、眼大きく、頸は四角く肥り、魂は臆病、自然本性的に痩せ、牛のごとく、何でも力尽くで成し遂げ、大喰らい、たいていは隷従によって落ちぶれて、長い間放浪する連中。彼らの鼻は大きく、鼻孔はあぐらをかき、額が広い(この点は格段である)。武者、嘘つきでペテン師で惜しみなき悪行者、裡に悪を有し、広げた手をもち、淫ら、判断力悪く、自分たちの重要事すべてをだめにし、明白な強奪をする連中。行為においては有名、快楽好き、魅力的で、親切、巧者、思慮深く、富裕者、子沢山な者たちである。
双児宮の生まれの徴を持つ者たちは、顔が紅く、眼うるわしく、優美な眼と長い眉を有し、色よく、年齢は中程、痩せっぽちで、肌白く?、???万事に大胆。行為においては思慮深く、???弁論家、愛知者、学者、格闘好き、贈り物のやりとりで生計を立てる者たち。
巨蟹宮の生まれの徴を持つ者たちは、次のような象徴を有する。肩幅広く骨太で、髪の毛はもじゃもじゃで密、大顔。また色黒く、眼は虚ろ、頭は平らで、親切、性愛に溺れやすく、思慮深く、詐欺師、志操堅固、呪い師、儲けを愛し、借金をし、???、重要事においてより人間的、顔大きく、なじれた 歯をもち、(136) 四角、上部より下部が大きい者たちである。大きな顔をしているとはいえ、円い。肌は色白、紅い髪。行為においては創意に富み、富裕、子沢山、気高く、移り気、万屋、小売商、園芸家、緑の糧を扱う者たちである。
獅子宮の生まれの徴を持つ者たちは、〔眼は〕灰色、赤毛、合理的で、格好良く、美しいが、勇敢で荒々しくて阿呆、知において寡黙……下部よりも上部が大きく、耳は小さく、色は血色良く、大口、薄い歯、身体は滑らか、細長い脚、痩せた足、本性的に暴力的で、怒りっぽく、大胆不敵、こういった点でライオンに似ている。胸広く、額大きく、小知の者たちである。行為においては嚮導的で、名誉ある権力者、富裕者たち。
処女宮の生まれの徴を持つ者たちは、年齢的に中程で鳥の全身を伸ばし?、眼は円く、鼻筋とおり、独立的な唇、ふくよか、重く、有用、清浄、身体的に見た目に美しく、器量よし、髪うるわしく両眼もきらめく。行為においては思慮深く、帯に価値を持ち、教養深く、学者、医師、代理人、贈り物のやりもらいによって生計を得る者たちである。また農業を愛し、孤独を愛し、畑地で修練する者たちであるが、愛学者にして学びを愛し、判定し、何でも燻らされるものを??作る人たちである。
天秤宮の生まれの徴を持つ者たちは、顔が格好良く、色白く、眼うるわしく、髪うるわしく、手肥え、若々しく、親切、惚れっぽく、嘘を喋りながら信用され、イアムボス詩をきわめ、外国語で著作し、合致させ?、性愛事や女たちに対する欲情に留意し、何時も道中でつまずき、巧妙、諸術知の欲求者、巧妙な役者、あらゆる生き方において多彩、善良、好意的な人たちである。これらの人たちに近いかぎりの事どもにおいても?
天蝎宮の生まれの徴を持つ者たちは、〔魚のように〕小頭で、(138) 丸顔、かぎ鼻、やや浅黒く?、垂れた手をもち、声細く、性悪、ごわごわの髪、碧眼の者たち。広い胸、長い脛、不格好な足、組み合わせの悪い身体の<持ち主たち>。行為においては高邁、惚れっぽく、男らしく、愛勝的、掻っ払い、盗人、盗賊、戦士にして将軍たちである。だから、これらの者たちは暴力と掠奪で生長し、旅へと導き、サソリに譬えられる者たちである。
人馬宮の生まれの徴を持つ者たちは、身体の点では四角く、羊に富み?、孤独、大胆、粗野、身体全体に紅く、壮健、眼は円く、小さく、頬髭長く、デコ禿げ、威張りや、羊に富み、射手に似ている。行為の点では大きく、創意に富み、高邁、将兵、家畜飼いである。
磨羯宮の生まれの徴を持つ者たちは、毛むくじゃらにして痩せ、骨質、うなだれ、顎がとがり、眼うるわしく、手足は痩せ、黒い眼、黒い髪、姿よく、手は肥え、親切、労苦によって糧を見つけ、行為においては創意に満ち、富裕、愉しみ好き、世話人、農夫、湿っぽい場所で暮らし、天象に精通し、かつ、隠れた事象を気遣う人たちである。
宝瓶宮の生まれの徴を持つ者たちは、姿・性質ともに美しく、眼うるわしく、恥を知り、諸々の病に取り囲まれ、愛者、すこぶる美しく、身体壮健、色白で、痩せっぽち、滑らかな髪、眩い者たちである。余分に手に入れたかぎりのものは、これを投げ捨て、実際日々の暮らしを苦労して見つけ出すであろう。飲んべえである。だが、彼らの行いは敬虔で、富裕、けちん坊、狭量、湿っぽい場所に人生をもつ。
双魚宮の生まれの徴を持つ者たちは、頭紅く、火色の短髪、痩せっぽちで、年齢は中程、両肩広く、長い脚を有し、背骨は痩せているが節くれ立ち、身体の均斉がとれている。声は澄み、聞き分けよく、髪美しく、色白、時には蒼白くさえあり、魚のような眼、しなやかな両の手をしている。行為においては創意に満ち、知を愛し、女たちと交わることしばしば、高邁で、信実、船主、商人、狩人、狩猟者、漁夫、鳥刺し、鳥飼い、世話人たち。
(139)
一重形姿の宮と二重形姿の宮とはいかなるものらか
一重形姿の宮は以下のものら。宝瓶宮、獅子宮、天蝎宮。
二重形姿の宮は以下のものら。双児宮、処女宮〔鳥の翼を背負っているから〕、天秤宮、双魚宮。
四足動物は以下のものら。金牛宮、獅子宮、白羊宮、人馬宮。
人間の形姿をした生き物らは以下。双児宮、処女宮、宝瓶宮の前部。
ピュータゴラースにおける、予見の仕方
実例のために。$Ektwr〔5, 20, 300, 800, 100 だから〕5, 2, 3, 8, 1 は〔合計〕19となる。さらにまたもう1つ。Pavtrokle〔80, 1, 300, 100, 70, 20, 30, 5 だから〕8, 1, 3, <1> 7, 2, 3, 5。〔合計は〕30 になる。19 から 2 x 9 を引け、すると余りは 1、30 からは 3 x 9 を〔引け〕、すると余りは3になる。そこで Plinthis(plinqivV)に進め、そうすれば (141) 3に打ち勝つ1を見出すであろう。もし、裁判沙汰にある者たちが同数となり、1 x 1 が余れば、原告が勝つが、偶数の場合は被告が〔勝訴する〕。
1 x 1 原告と若い方が勝つ。
1 x 2 2が勝つ。
1 x 3 1が勝つ。
1 x 4 4が勝つ。
1 x 5 1が勝つ。
1 x 6 6が勝つ。
1 x 7 1が勝つ。
1 x 8 8が勝つ。
1 x 9 1が勝つ。
2 x 2 原告と代理人?が勝つ。
2 x 3 3が勝つ
2 x 4 2が勝つ。
2 x 5 5が勝つ。
2 x 6 2が勝つ。
2 x 7 7が勝つ。
2 x 8 2が勝つ。
2 x 9 9が勝つ。
3 x 3 原告と若い方が勝つ。
3 x 4 4が勝つ。
3 x 5 3が勝つ。
3 x 6 6が勝つ。
3 x 7 3が勝つ。
3 x 8 8が勝つ。
3 x 9 3が勝つ。
4 x 4 被告と代理人?が勝つ。
4 x 5 5が勝つ。
4 x 6 6が勝つ。
4 x 7 7が勝つ。
4 x 8 4が勝つ。
4 x 9 9が勝つ。
5 x 5 原告と若い方が勝つ。
5 x 6 6が勝つ。
(142) 5 x 7 5が勝つ。
5 x 8 8が勝つ。
5 x 9 5が勝つ。
6 x 6 被告と若い方が勝つ。
6 x 7 7が勝つ。
6 x 8 6が勝つ。
6 x 9 9が勝つ。
7 x 7 原告と若い方が勝つ。
7 x 8 8が勝つ。
7 x 9 7が勝つ。
8 x 8 被告と代理人?が勝つ。
8 x 9 9が勝つ。
9 x 9 原告と若い方が勝つ。
[In margine superiore manu Constantini Lascaris:
男女の名前〔の数価〕を合計せよ、もし偶数なら、妻が命終する、単数なら、男が。]
男女について、彼らのうち先に亡くなる者を知るために。男の名前〔の数価〕を合計し、どれだけの数になるかを見よ、
勝つか負けるかするはずの者について。戦う者たち二人の名前を数えよ。そうして、もし汝の名前が勝つのを見出したなら、その戦いは汝が勝つだろう。だが敗者の名が汝に〔勝つ〕なら、敗北すると。
近侍について。汝の名と、汝が近侍せんとする支配者の名とを合計せよ、もし汝の名が (142) 勝つのを見出したなら、近侍は汝にとって益するが、支配者の〔名が勝つ〕なら、汝に益さないだろう。近侍してはならない。
何らかの行為について。同様に、汝の名と支配者の名を合計せよ、もしも汝の名が勝つなら、益するだろうが、支配者の〔名が勝つ〕なら、損なわれるだけである。
出発、旅行、同道について。汝の名と同道者の名とを合計し、もしも汝の名が勝つなら、益するだろう。しからずんば、彼と旅をしてはならない。
共働について。汝の名と汝と共働する者のそれとを合計せよ、もしも汝の名が勝つなら、益するだろう。だが汝と共働する者の〔名が勝つ〕なら、益しないであろう。
故国から他郷に出かけることについて。汝と故国の名を計算せよ、もしも汝の名が勝つなら、益するだろう。だが故国の〔名が勝つ〕なら、益しないだろう。
[In ima pagina manu Constantini Lascaris:
(143) 結婚について。男と女の名を計算せよ、もしも両者が12ないし14なら、契約が成立し、第1子に女子を産んで、女が先に亡くなるだろう。もしも不等になるなら、その契約は力尽くで、第1子に息子を生んで、夫が先に亡くなるだろう。例えば〔男が〕NikhfovroV、〔女が〕Mariva〔とする〕。偶数の14。女が先に亡くなる。今度は QeovdwroV と (Eijrhvnh〔の場合〕。〔結果は〕13、男が先に亡くなる。]
紛失について。失う人と失われる物との名を〔それぞれ〕合計せよ、もしも失う人が勝つなら、紛失物は見つかるだろう。もし失われる物の名が〔勝つ〕なら、見つからないだろう。
逃亡について。逃亡者とその主人との名を合計せよ、もしも主人の名が勝つなら、逃亡者は見つかるだろう。もし逃亡者の名が〔勝つ〕なら、見つからないだろう。
自由について。奴隷とその主人との名を合計せよ、もしも奴隷の〔名が〕かつなら見つかるだろうが、その主人の〔名が勝つ〕なら、見つからないだろう。
奴隷の売り立てについて。奴隷とその主人の名を (143) 合計せよ、もしも奴隷の〔名が〕勝つなら、売られないだろう。
結婚について、得するかどうか。男と女の名を合計して考察せよ。男の名が勝つなら、益になるが、女の〔名が勝つ〕なら、益にならないだろう。
疑わしい連中の中から盗人を知ることについて。疑わしい者ら全員の名を合計せよ、そうして負けた者たちから勝った者たちを引いて?、再び、一人が全員に勝つまで組み合わせよ、**それが盗人である。
病について、生きのびるかどうか。病気になった人の名前と、引き受けた日、ないし、病臥した日を主宰する神の名とを合計せよ、もしも病人の名前[と]その日の星とが勝つなら、生きながらえるだろう。だが〔病人の名前が負けたら?〕神の名が勝っても、死ぬだろう。2つの名が同数になったら、すぐに健康になろうが、合致していなければ?、ゆっくりとである。
兄弟たちの終焉について。両者の名を、各々一人ずつ個別に合計せよ、そうしてこれらを Plinthis(plinqivV) に照らし合わせよ、そうすれば勝者が先に亡くなるのを見出すであろう。
客人について汝が質問されたなら。質問の月に現れる宮と、その日に現れる惑星とを見よ、もしもそれらの神がおのれの家にあるなら、出郷はすぐに出来するであろうが、日没時に外にあるなら、その客人は患うか、命終するかである。
2018.01.14. 訳了
[名前の数価]
例に出されている「パトロクレース」の表記 Pavtrokle は呼格であって、主格は PavtrokloV ないし Patroklh:V である。前者なら 80, 1, 300, 100, 70, 20, 30, 70, 200。後者なら 80, 1, 300, 100, 70, 20, 30, 8, 200 となって、数価は異なってくる。
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