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back.gifキュラニデス第1巻

ヘルメス文書

キュラニデス
第2巻

Cyranides II






2."t".1
キュラニスの第2巻。四足動物について。

2.1."2t"
クマ(a[rktoV)について
2.1.3
 クマという獣がいる、毛むくじゃらで鈍重な生き物で、あらゆる点で人間に似ており、賢くて、真っ直ぐ歩行しようとする。
 この動物の各部分は、人間の各部分に対応して作られている。だから、療治に有益である。
 例えば、頭の骨は、あらゆる頭痛に対して結びつけよ。その脳みそは、食われると、てんかんを治癒させる。眼は、身につけられていると、眼のあらゆる種類の病状を退散させる。その耳の垢は、バラ油といっしょにすると、あらゆる耳痛を治癒させる。歯は、歯痛を〔治癒させ〕、幼児に結びつけられると、痛みなく歯を生えさせる。眼は、身につけられていると、魅力を増すお守りとなる。また、右手の爪は、身につけられていると、あらゆる種類の熱病を追い払う。毛は、くすべられたり身につけられたりしていると、悪性の呼吸やあらゆる種類の熱病を追い払う。肝臓は、干して、粉末にしてふりかけられると、肝臓病患者を治癒させる。手や脚の腱は、身につけられていると、脚や手の痛風患者を救う。その糞は、酢といっしょにこすりこまれると、鋭い視力をもたらす。心臓は、身につけられていると、身につけている者を、喜びにみちた者、成功者、恐れられる者となす。その硬脂は、ラダノン〔ハンニチバナ科キストゥス属の植物、Dsc.I-128〕注18)やアディアントン注19) maidenhair.jpg 〔Dsc.IV-136〕といっしょに塗油されると、キツネハゲavlwpekiva〔円形脱毛〕を発毛させ、同様に、眉毛や顎髭の無毛症をも、インク汁や硫酸銅の溶液やランプの芯といっしょに〔塗布されれば発毛させる〕。硬脂だけなら、耳たぶの裂け傷やひび割れや霜焼けを治癒させる。クマの恥部を子宮〔口〕に当てて子宮口を拭うと、子宮閉塞を治癒させる。この場合は乾燥したそれを用いよ。胆汁は、蜂蜜といっしょに匙1杯分だけ飲むと、肝臓患者をすっきり治癒させる。その皮は、どこでもノミたちがいるところに置かれると、〔ノミたちは〕逃散し、けっしてとどまることがない。

2.2."1t"
キツネajlwvphxについて
2.2.2
 キツネは万人周知の獣で、器用で、狡賢いことこの上なく、知恵者で、ニワトリ喰らいにして、悪臭を放つ〔獣である〕。
 さて、ひとがこれを生きたまま捕獲し、きわめて古いオリーヴ油の中に入れ、最終的にこれがとろけるまで煮詰め、次いで、オリーヴ油を漉し、まだ熱いうちに容器の中に入れ、このオリーヴ油そのものを塗油すれば、難病を — すなわち、痛風患者、関節炎患者、座骨神経痛患者、中風患者、何年も病状を持った者たちを療治する。だが、これ〔キツネ〕を狩るとき、何のためにこれを狩るのかという理由をこれに云うと効果がある。
 これの温かい硬脂は、耳に滴下されると、耳痛を治癒させる。これの右の睾丸は、乾燥させて、粉末にし、飲み物の中に振りかけられると、女たちの性的魅力を増すが、左のそれの場合は、男たちの〔性的魅力を増す〕。これの先端〔ペニス〕は、結びつけられていると、張り切り〔勃起〕を最大となす。粉末にしたものも、飲み物の中にひそかに振りかけられていると、同様である。睾丸も、乾燥させて服用されると、同じ作用をもつ。ただし、匙の分量を与えよ。とにかく、張り切りを害なきものとし、火のごとき欲望を偽りないものと見張るだけの有効性をもっている。
 ただし、これの睾丸は、この動物が生きている間に抜き取れ。次いで、生きながらにしてこれを解体し、療治せんとする者が結びつけよ。というのは、これの金玉は、先に述べられたように、結びつければ、たちどころに張り切らせるからである。これを雄ヤギの腰に投げつける人たちもいる。
 また、これの恥部の先端を、袋か皮にくるんで、これに、スミュルノメランsmurnovmelan注20)で、「tin bibhliqi」というこのことばを書きつけ、結びつければ、害なく性交できよう。
 また、これの血は、腎臓の痛みを治癒させる、熱を発するからである。また、これの腎臓は、食されたり服用されると、性欲を亢進させる。これの肝臓は、乾燥させて粉末にし、酢蜜といっしょに振りかけて服用されると、脾臓患者をすっきり治癒させる。これの脾臓も、身につけられる。またこれの肝臓は、ブドウ酒といっしょに服用されると、喘息患者を治癒させる。肺は、調理して食べられると、呼吸困難を〔治癒させる〕。
 これの硬脂は、キツネハゲをすっきり療治する。これの糞は、バラ油といっしょに座薬にすると、妊娠させる。心臓は、身につけられると、邪視をまぬがれさせる。キツネの歯は、結びつけられると、かさぶたに益があり、また、子どもたちの歯を痛みなくはえさせる。爪は、バラ油の中であらかじめ柔らかくし、瀝青(ajsfavltoV)注21)、未成熟オリーブの油(o[mfakinoV e[laion)注22)といっしょに両者を混合し、座薬にして当てられると、子宮閉塞をすっきり治す。
 睾丸は、膏薬といっしょに練られると、耳下腺腫瘍に益する。ひとがこれの肢を布切れに包んで、頭に結びつけると、頭のあらゆる難儀、偏頭痛、めまいを治癒させる。これの糞は、酢といっしょに練られると、苔癬を療治し、硬脂といっしょにふりかけられると、キツネハゲを発毛させる。

2.3."1t"
モグラ(ajsfavlax)について
2.3.2
 モグラは盲目の生き物で、地面の下に住処を作り、その中にひそみ、また徘徊する。もしも地表に出て行くことになったら、それが夜間なら、出て行った穴に再び行き会えば、自分の棲息地にもぐりこむなり、別の〔穴〕を掘って潜りこむなりできるが、昼間であるばかりか、太陽の熱がこれに降りそそぐ場合には、大地はもはやこれを受け容れず、〔モグラは〕おだぶつになる。
 さて、これの心臓は、鹿皮に入れて巻きつけられると、月に触れた〔=てんかん〕患者を治す。鳥類のヤツガシラの皮に、その鳥の両眼といっしょに入れて巻きつけられると、身につけた者を、聖なる者がこれを身につけているかぎりの期間、将来のことをすべて予知できるようにさせる。こういうモグラの心臓だけを身につけても、身につけた者に大きなすぐれたことを実行させる。この生き物の力はじつに神的で活動的なのであるが、これについてわたしは云って沈黙することをすまい。
 そこで、これによって調製されて賞味されると、賞味する者に大いなる活動力を植えつける。例えば、太陽が昇るとき、指1本を賞味する人がいたら、その太陽が沈むまでに起こることを予知できるであろう。ところで、賞味の下拵えは次のとおりである。モグラを生きたまま取って、雨水3コテュレーの中で窒息死させよ。次いで、これをとろけるまで煮て、膏薬状にせよ。次いで、水分を漉したのち、これらの試剤を青銅の容器に投入しつつ煮よ。次いで、以下のごとくに下拵えせよ。神から生まれたもの(別の書では、神の息吹よって生まれたもの)の根4ウンキア、ニイタカヨモギ注23)4ウンキア、葦に似た蘇合香(stuvrax)注24)4ウンキア、トログロデュティカというミルラ(smuvrna trwglodutikhv)注25)、ブデリオン樹脂注26)4ウンキア、(sfairivon)4ウンキア、雄の乳香8ウンキア、これらを砕いて、振るって、煮られたモグラに混ぜ合わせてから、最初の蜂蜜1コテュレーを投入し、蜂蜜が濃くなるまで、もう一度煮よ、そういうふうにしてから取り出し、ガラスの容器に収め、上述のごとく塗布せよ。モグラの骨は、汝の家の中に埋めよ。なぜなら、モグラは、生きていようと死んでいようと、役に立つこと、あたかも雌山羊たちのごとくだからである。
2.3.30
 さて、ひとが瘰癧や苔癬やさまざまな腫れ物に罹ったら、生きたモグラを取って、これを柔らかくする — もちろんその病者が、自分の手で、柔らかくされながらその手で死ぬまで、柔らかくする — なら、そういった病状を完全に治療するであろう。そうして、もはや口蓋垂炎を引き起こされたりわずらったりすることなく、扁桃腺炎や鼠径部炎や瘰癧やさまざまな腫れ物にいつか罹ることもない。
 これの硬脂は、とろけると、耳痛をすっきり治す。とにかく、モグラを地中に埋めよ。ひとがこれの心臓、まだひくひくしているのを飲みくだすと、将来の事柄、また永遠の未来の事柄の予知能力を得る。(他の書では、永遠の期間の予知能力を)。

2.4."1t"
雌のヤギについて
2.4.2
 雌ヤギは万人周知であるが、実際称されるとおりの存在である。例えば、ひとが雌ヤギの皮をてんかん患者にまとわせて、川なり海なりに連れて行くと、ふるえに陥っていようと正気であろうと、たちどころにまともにされるであろう。
 これの乳は、まだ熱いうちに服用されると、肺病患者や黄疸患者に効く。血は、蜂蜜といっしょに服用されると、腫れ物を熟れさせる。これの肝臓が焼かれると、滴る体液が滴下されると、涙瘻に効く。これの角は、加熱されると、歯を輝かし、どろどろした尿をも治す。糞は、塗りつけられると、硬い戻りを粉々にする。
 ヤギの血は、火で加熱され食べられると、血性下痢患者を治療し、矢の毒を飲んだ者を効果的に救い、蜂蜜とともに水腫患者や胃病患者をすっきり治す。  胆汁は、無煙ものの蜂蜜とともに塗布されると、かすみ、眼の炎症、霞目を治療する。雌ヤギの脾臓は、まだ血がしたたって新鮮なうちに、火で焼いて食されると、血性下痢を治す。
 糞は、挽き割り麦といっしょに捏ねて、外傷に膏薬として貼ると、コブラに噛まれた者、マムシに噛まれた者、毒虫に刺された者を治す。また、糞は乾燥させて、酒蜜といっしょに服用されると、排尿困難をたすける。古いブドウ酒といっしょに煮て、患部に当てると、関節の出来物、睾丸や胸や腰の腫れ物をすっきり治す。蜂蜜といっしょに捏ねて、膏薬として貼られると、癰を治す。子ヤギの血は、半コテュレを酢といっしょに服用されると、胴から血の上がった患者たちを治し、蛇や毒獣に噛まれた者たちを治し、あらゆる毒を解毒する。
 雌ヤギの脾臓は、新鮮で熱いうちに、患者の名前を念じながら取り出し、脾臓患者の脾臓の上に当てて、1日、紐で結んでおき、次いで、次の日の夕方、外して、病者がこれを煙か風の中に、乾燥するまでぶら下げておくと、雌ヤギの脾臓は乾燥し、患者のそれは縮小する。
 子ヤギの皮は、服用されると、毒蛇に傷つけられて者を治す。これのrennet(tavmisoV)注27)は、焼いて食されると、血性下痢患者たちを治療する。焼いて、ひまし油やオリーブ油といっしょに煮て食されると、下痢(gastrovrroia)をとめる。これの脾臓は、焼いて持続的に食されると、脾臓患者たちを治す。これの皮は、燻されると、嗜眠症患者たちを覚醒させ、てんかんに陥った患者たちも、ヒステリー性窒息患者たちをも〔覚醒させる〕。毛も、燻されると、同じことを活発になす。

2.5."1t"
カエルについて
2.5.2
 カエルは、万人周知の生物である。
 これの舌を切り取って、生きているうちにこれを解体し、舌の上に次のように「couoc odamenofと書きこみ、眠っている女の胸に気づかれぬように置くと、人生にしたことをすべて汝に告白するであろう。これの灰は、ピッチの水分といっしょに塗布されると、円形脱毛症をもとどおりにする。酢といっしょに当てられると、鼻、出来物、臀部の出血をすべて止め、血管や気管の破裂や炎症を治す。
2.5.10
 太陽も月も現れないときに、ひとの名前を念じつつ、生きたカエルを地上に捕まえ、その後ろ足2本を鋏で切り取り、子ヤギの皮に包んで、右足には〔カエルの〕右足を、左足には左足をというように、足にくくりつけると、痛風を完全に治療する。
 身体全体の体毛を抜きたいときには、カエルの皮に加熱して、水で洗った箇所にかけよ、そうすれば体毛はすべて抜けるであろう。小さなカエルは加熱して、液状ピッチといっしょに捏ね、円形脱毛症に塗布せよ、そうすれば治るであろう。
 サッコスsavkkoV〔「袋」〕と言われる陸棲のカエルは、有毒な息を吐くが、頭の随にはまった石を持っている。これを、月の欠けた夜に狩猟し、40日間、亜麻布に塗れ、そうして、そのあとでこれを亜麻布からはがし、上述の石を切り取れ、そうすれば、これは大いなる護符となるであろう。例えば、帯のあたりにくくりつけておくと、脾臓患者や水腫患者を治す、これはわたしが経験を通して知ったことであるが。
 カエルは、塩とオリーブ油といっしょに煎じられると、あらゆる爬虫類の解毒剤となり、煎じ汁が取られると、慢性的な腱の腫れ物にも同様に〔解毒剤と〕なる。加熱して膏薬として貼ると、出血をとめ、円形脱毛症を治すが、このときはピッチの水分といっしょに塗布する。緑色のカエルの血は、滴下されると、眉から抜けた毛が生えるのを妨げる。水と酢といっしょに煮て洗浄されると、歯痛にも効く。

2.6."1t"
雌のウシについて
2.6.2
 雌のウシは万人周知である。
 これの糞をとり、乾燥したのを粉末にして、篩いながら1リトラ、蜜蝋6ウンキア、キャベツの液汁6(あるいは他の〔書〕では3)ウンキア、生卵3,美しいオリーヴ油1リトラ、硫黄1ウンキアを計量し、乾燥したものは粉末にし、溶けるものは溶かせ。次いで、火にかけて加熱しながら、卵を入れ、美しく捏ねあわせよ。そしてこれを脾臓患者、肝臓患者、水腫患者、同様に軟便患者や痛風患者に膏薬として塗れ、そうすれば、たちどころに大いに益することができよう。これは大いなる賜物として秘匿せよ。
2.6.10
 この糞を酢といっしょに練って、どこかの場所とか蜂蜜容器に塗れば、蟻たちがこれに入りこむことがない。牛たちの爪〔蹄〕は、煮詰めて、芥子といっしょに食されると、他にないくらいあらゆる魔法に対抗する。
 雌のウシの胆汁は、エルビナ粉注28)といっしょに擦りこまれると、吹き出物をもぎ取り、顔をすべすべさせる。糞は、妊婦の座席の下からくゆらせられると、分娩を促進し、後産を堕ろし、排出する。
 以上すべてが牝牛の〔働き〕である。
 雄のウシの用途は以下のとおり:これの距骨は、焼いて、歯に当てられると、これを白いまま守る。これの胆汁は、閉塞した子宮を開く。膣坐薬として当てられても、同様に同じ働きをする。これの肝臓の葉は、空の土器に取って、決して呼吸しないよう安全に蓋をして、かまどの熱灰の中で、7日間、じわじわと焼き、次いで粉末にして、飲酒の時、水蜜や温かいブドウ酒といっしょに水腫患者に与えよ、そうすれば治癒するであろう。下からくゆらせられたり、擦りこまれると、ミツバチやスズメバチの刺し傷を治癒させる。
 働く雌ウシに骨折させないためには次のようにする。オリーヴ油とテレビンティネー〔ウルシ科ピスタキオ属の植物、Dsc.I-91〕を煮て、その角に擦りこめ。

2.7."1t"
イタチ(galh:)について
2.7.2
 イタチは、万人周知の小動物である。
 これの血と脳みそは、乾燥させて、酢といっしょに服用されると、てんかん患者の助けになる。これの舌は、乾燥させて、履き物の下につけていると、〔相手を黙らせる〕魔除けとなる。
 いつか投げ捨てられたイタチの死体を見つけたら、取りあげて、オリーヴ油といっしょにどろどろになるまで煮よ、その油を濾して、蜜蝋の(ajrkou:n)を入れ、関節炎患者、あらゆる腎臓の共感、脚や関節の炎症、あらゆる帯下に効く膏薬をつくって、保持せよ。治癒させるのは、胸や睾丸の大きな瘰癧、外科的に処理されるあらゆるできものや腺である。
 これの睾丸は、妊娠剤にも不妊剤にもなる。すなわち、これの右の睾丸を灰にして、香油といっしょに練って、羊毛で膣坐薬として当てて性交すれば、女はたちどころに妊娠するであろう。しかし左の睾丸は、半ロバの皮に包んで、結びつけられると、不妊のお守りとなる。この場合は、半ロバの皮に次の名詞を書かねばならない。「iwa wia rauiw ou oikoocx」。信じられないなら、卵を産んだ鳥で検査せよ、そうすればこれに結びつけられると、どんなときでもまったく出産しないであろう。これの睾丸は、朔のときに切り取り、生きたままこれを放せ。睾丸は半ロバの皮に入れて持ち歩くよう与えよ。不妊、征服されざるもの、甘い性愛の魅力のお守りとなるからである。
 これの血は酢といっしょに保存せよ、そしててんかん患者にひそかに与えよ、そうすれば使い果たされる前にすっきり治癒させるであろう。尾は切って、これは生きたまま放し、持ち歩け、そうすれば犬は決しておまえに吠えかかることがない。

2.8."1t"
ミミズ(gh:V e[ntera)〔「大地にはらわた」〕について
2.8.2
 ミミズは万人周知である。これは、練って当てられると、筋肉に障害を負った者たちにぴったりである。すなわち、驚くほどたちどころに利するからである。挽き割り大麦といっしょに練られると、胸にできた膿瘍を治癒させ、蜂蜜といっしょに練って当てられると、結節腫をたちどころに恢復させること驚くほどであし、サソリに咬まれた者たちや、海のミュライナ〔ウツボ〕の咬み傷をも治癒させる。ブドウ酒といっしょに練って、服用されると、知らぬうちに結石を砕き、排尿困難を治癒させる。授乳する女たちには、述べられたとおり服用されると、乳を豊かにする。歯痛に当てられると大いに療治する。ナルド油ないしバラ油、あるいはバターといっしょにどろどろになるまで熱せられ、耳に滴下されると、耳痛を治癒させる。焼かれたものらの灰は、処女の尿といっしょに練って、髪に擦りつけられると、それが白くなることを拒む。乾燥させて、ヨモギといっしょに練って、臍に当てられると、腹の虫〔寄生虫〕を下す。セリ〔Eryngium campestrae, Dsc.III-24〕とハッカ〔origanum dictamus, Dsc.III-37〕の煎じ汁といっしょに練って服用されると、排尿困難を止める。臼歯の虫歯〔で腐った部分〕に詰められると、それ〔臼歯〕を苦痛なく抜き、臼歯は手にしたがって根から根こそぎになる。卵で練ってできる膏薬といっしょに当てられると、歯痛を治癒させる。
 ミミズは、鉄とか石とか他の何かの切り傷をも癒着させる。特に、筋骨や癒着しにくい部位 — 手とか、鼻〔の部位〕とか耳〔の部位〕やそれに類した部位 — において〔癒着させる〕。5匹とか7匹とかだけを、舎利別酒(glukuvV (oi¥noV))といっしょに服用されると、排尿をうながし、同様に、望むだけ服用されると、あらゆる種類の「腹の虫」を排出する。平たい「腹の虫」を排出するには、酢蜜といっしょに服用される。尿を通して、黄疸も難病もきれいにできる。舎利酒といっしょに5匹ないし7匹が飲まれるさいに、それだけでも、また、ピスタキオ(terebivnqoV)の大きさのが(smuvrna trwgliti:V)といっしょに服用されても、同様である。ミミズ6ウンキア、バラ油1リトラを、勇気を出して用いるがよい。そして、油を熱して、歯に注がれると、そうすれば、歯痛を患っている者の相互間の歯の痛みを止める。また、下からいぶせられると、癰(よう)に起因する歯の痛みをも止める、〔その際〕病んでいる者は、痛みを感じる歯に、漏斗で煙を受ける。抜歯を必要とする臼歯を歯痛なしに抜くのは、焼いて、粉末にして、痛む歯のぐるりにふりかけられた〔ミミズ〕である。ただし、あらかじめ正確にまわりを切開しておかなければならない。
 〔ミミズ〕だけが土器の上で焼かれたのも、その灰も、粉末にして、濃厚な目の軟膏(xhrokolluvrion)として適用されれば、初期の白内障に大いに益する。目蓋の毛にも益する。わたしたちが余分な〔?〕毛を前もって抜いて、次いで(di;a muvlhV tou;V tovpouV th:V tevfraV aujtw:n)〔?〕ふりかけると、自然に反した発毛を妨げる。7匹を練って、毎日、空腹時に、蜂蜜酒といっしょに服用されると、膀胱内の多くの結石を棄て、少しずつ尿通をうながす。内部の膿瘍を破って排出に導くのは、7ないし9匹を薬用にするため(pro;V duvnamin)〔?〕柄杓3杯の水で練って服用する。
 これら〔ミミズ〕を練って、蜂蜜の中に保存して守れば、サソリに咬まれた者たちにとって最美な救助剤をもつことになろう。また、筋肉の引きつりを解くのは、わたしたちが(gavgglia)〔複数形〕と呼ぶものが、それ自体で練られて、塗りこめられた〔ミミズ〕である。胸の腫れ物をも止めるのは、それ自体で練られて、塗りこめられた〔ミミズ〕である。(puopoih: ga;r ejpispa:tai rJuvsei ejpoulei:)〔?〕。焼いて、粉末にして、酢といっしょに擦りつけられると、(rJusipevlata)〔?〕にも益する。蜂蜜といっしょに、軟膏の厚さになるぐらい練って、患部に当てられると、大いなる炎症を止める。ただし、バラ油で患部を下塗りして、緩めておけ。バラ油の膏薬で練って調製されたものは、特に足の痛みを楽にする。
7匹を蜂蜜酒といっしょに水腫患者にも与えよ。腎臓患者、あるいは、膀胱に裂傷を有する者には、煮て、タマネギ〔Dsc.II-181〕の煮汁といっしょに練られたものを与えよ。また瘰癧を少しずつ縮小させる、瘰癧の数だけ生きたまま患部に巻きつけられると。布に包んで、こめかみに擦りつけられると、あらゆる頭痛や半面痛を止める。
 これら〔ミミズ〕は地中にある。しかるに、太陽が出ているにもかかわらず匍匐前進しているのは、嵐や豪雨を予告する。

2.9."1t"
ガゼル(dorkavV)について
2.9.2
 ガゼルは、あらゆる人間によく知られている四足動物である。これは、敏感な能力を持つ部位に作用する。したがって、妊娠のしやすさを最大かつ永続的たらしめんと望むなら、次のようにするがよい:サテュリオン〔ラン科の植物、Dsc.III-143〕の種子4ウンキア、ガゼルの胆汁の湿ったもの丸々、蜂蜜4ウンキア、これらを練って、ガラス容器に納めよ。そして必要となったら、これから羊毛布に包んで、膣坐薬として与え、性交させよ。もし、男児が生まれることを望むなら、雄の胆汁を入れよ。女児〔が生まれることを望む〕なら、雌の〔胆汁を入れよ〕。大した快楽剤だからである〔?〕。乾燥している場合は、蜂蜜をたっぷり加えよ。

2.10."1t"
アイルゥロス(ai[louroV)あるいはカッタ(kavtta)〔ネコ〕について
2.10.2
 ネコは万人周知である。
 さて、てんかん患者あるいはめまい患者が引きつけを起こして地面に倒れ、あるいは、卒中がひとをとらえて、その人が仰向けに横たわって痙攣しているとき、生きているカッタをその人の上にいきなり置けば、すぐさま引きつけや、めまいや、卒中をとめる。そのさい、「コベルトー(kobelqw)」というこのことばを続けさまに言うがよい。
 これの糞は、アヤメの香油といっしょに塗布されると、微熱をとめる。乾燥させて辛子と酢と練り合わされると、キツネハゲを美しく発毛させる。

2.11."1t"
シカ(ejlavfoV)について
2.11.2
 シカに3種類ある。いずれもよく知られた動物である。ひとつは平たくて高い枝角を持っているので、広角(plavtwniV)と呼ばれ、第二のものは丸い角を持っており、第3は角のない雌である。これと雄が交わるには、泉のそばでなければならない。というのは、〔雌が〕渇いて、泉を求め、飲もうと渇きに燃えているとき、雄はこれにのしかかることができるからである。〔雌は〕渇きと飲水に強いられて、衝動のために逃げることができないからである。他の機会には、交尾を迎え入れない。だから、妊娠は用意である。この動物の寿命は、捕獲されなければ、500年、そうして特有の死に方で命終する。
 さて、丸い角を持った真のシカの、角の削り屑の匙1杯を、水蜜とともに、7日間、疝痛の持病の或る者に与えよ、そうすれば、病状から完全にまぬがれるであろう。同様にまた酢蜜とともに服用すれば、脾臓〔硬化〕を溶かし、腹の虫を殺す。これの胆汁は、蜂蜜といっしょに塗布されると、明視をもたらす。サテュリオン注29)を加えて、綿布の中に置き、座薬にして、子宮の口に置くと、妊娠と快楽を
 シカの角は、焼いて、オリーブ油といっしょに捏ね、膏薬にすると、ぐらぐらする歯を治す。また、焼いて洗ってから、匙2杯ぐらいを服用すると、血性下痢患者、腸疾患の者、黄疸患者、喀血患者に効く。また、男児を出産した女の乳といっしょに〔服用すると〕、眼からトラコーマを取り除く。また、これの肝臓は、乾燥させて雄黄2片といっしょに練り、入浴時にブドウ酒といっしょに飲むよう与えられると、咳や咽喉炎をすっきり治す。また、これの髄は、これの眼からたれている目やにといっしょに服用されると、毒獣に咬まれた者を救助し、あらゆる毒薬を中和する。また、シカの毛皮の上で寝ると、爬虫類の毒に害されることがない。

2.12."1t"
マムシ(ejcivdonh)について
2.12.2
 マムシは万人周知の爬虫類〔這う動物〕である。
 この動物は私人たちから捕獲され、頭部の一部と、尻尾の一部とを、中央の目的部に毒が残らないよう、切り離され、残りは煮詰めて、背骨から肉部を取り除けて、新しい大鍋に塩といっしょに入れ、1昼夜、焦げるまで炉にかけ、香料を混ぜこむ。〔そうすると〕万病に対する抵抗剤となる。これは象皮病患者、癩病者、痛風患者、てんかん患者、中風患者に効き、絶望的な病状を治す。
 また、マムシの硬脂は鋭い視力をもたらし、あらゆる視力低下を癒す。その眼球は身につけられると、あらゆる眼病に効く。
 これ〔マムシ〕を追い払うのはガガテース石である。シカの脂肉といっしょにいぶされたり服用されると、それの咬み傷を治癒させる。

2.13."1t"
陸棲のハリネズミ(ejcivnoV cersai:oV)について
2.13.2
 陸棲のハリネズミとは、ajkanqovcoiroVともいわれる小動物で、きわめて邪悪である。これを捕獲し、塩漬けにして、大いなる治癒剤として保持せよ。ただし、これの胆汁は棄てよ、害悪があるからである。これの頭は焼いて、蜂蜜といっしょに塗布されると、キツネハゲをふさふさにする。
 塩漬けにされた身体の部分は、乾燥させて、服用時に与えられると、てんかん、震え、視力低下、頭痛や、そういったかぎりの病状を癒す。腎臓患者や腰痛患者を治す。1ウンキア、ただし皮を別個に焼いて粉末にしたものだが、を与えよ、キツネハゲをふさふさにする。他の身体はすべて、内臓(といっても腸と胆嚢は別だが)といっしょに塩漬けにし、乾燥させて、次いで美しく練って、ガラスの容器に収めよ、そうして、象皮病患者、肉の中にできた水腫患者に、服用するよう1ウンキアの蜂蜜といっしょに与えよ、そうすれば癒されるであろう。
 同様に肝臓、腎臓、心臓、肺臓も、いっしょに塩漬けにされると、同じ症状を癒す。
 このハリネズミの腸とゼニアオイ(malavch, Malva silvestris)、ヤナギの樹皮は、いっしょに軟膏として塗られると、身体のどこ部位であれ、そげ(木材のそれであれ、骨のそれであれ)に驚くほど有益である。

2.14."1t"
トカゲ(zauvra)について
2.14.2
 トカゲは万人に周知である。トカゲには3種ある。ひとつは陽トカゲと言われ、ひとつは銅とかげ、ひとつは緑トカゲと〔言われる〕。
 さて、陽トカゲは万人に周知である。これの右手を、"(eblousaure)"というこの語を書かれた黄金の小筒に入れて、左腕につけていると、あらゆる難病からまぬがれられ、生きて身につけている間、慢性病にかかることも決してない。
 これの眼は、患者の名を念じながら、生きながらえぐり出されると、あらゆる眼病を治療する。トカゲは生きたまま放される。
2.14.10
 2匹の両性具有が交わっているところを捕まえ、細かく砕いて、乾燥させ、女に飲ませると、不壊の愛情が生まれる。また、交尾しているときに、スカーフか襤褸をその上に投げかけると、大いにありがたいものになる。尾は、身につけられていると、精力を増強する。
 これの頭は、焼かれて、〔患部に〕当てられると、棘を抜き、かさぶたや疣やたこを〔抜く〕。これの肝臓は、焼かれ、損傷した歯につけられると、無痛となす。トカゲの全体が切り裂かれ、〔患部に〕当てられると、サソリの咬み傷を救う。これの肝臓は、貼りつけられると、たこを治療する。
 これの胆汁は、ブドウ酒の中で41日間腐らせられると、〔狂〕犬による発熱や、目蓋の毛を散らす。陽トカゲは緑トカゲと同じことができる。
 陽トカゲを右手で捕まえて、黄金か銀のピン2本を作り、これでトカゲを盲目にして、サモス土(gh: parqenoV)〔「処女の土」〕を含んだ土器に入れよ。次いで、9日間放置し、その後、土器を開けると、トカゲの眼がみえるのを見出すであろう。これを生きたまま放し、〔2本の〕ピンで指輪を作って身につけよ。右手には右眼をえぐりだした〔ピン〕を、左手には、左眼を〔えぐりだした〕のを。これが囲んでいるのが碧玉で、これには腹を開かれたトカゲと、その下方に次の名辞が彫られている。「(couqesoule)」、これを身につけよ。というのは、汝の全生涯、反対者の眼に害されることなく、指輪をつけている者は、眼病を患っている者たちを治癒させられるからである。
 丸焼きにされものは、ニンニクといっしょに押し当てたり擂りつぶしたりすると、鉄の打撃や矢や深くに刺さったものを、他に類例がないぐらい、表面に表し出す。これは発毛させもする。

 

2.15."1t"
半ロバhJmiovnoVないしブゥルドーンbourdw:nについて
2.15.2
 半ロバは、牡のロバと牝のウマとの交配によって生まれる万人周知の動物である。
 さて、このラバ(mou:lh)の耳の中にある汚物は、それ〔ラバ〕の皮に包まれると、不妊剤となることは、はっきりしている。だから、この汚物を、服用する際、ひそかに女に与えると、妊娠することは決してない。同様にまた、それの子宮からのをほかの肉といっしょに煮て、食べるようひそかに女に与えても、けっして妊娠することがないであろう。同様にまたそれの爪も、焼かれると同じ作用をする。
 ひとがカタルに罹っても、ブゥドローンにやすりをかけることを好むなら、たとえ風邪をひいても、癒されるであろう。さらに、ひとがひそかにブゥドローンの尿をとって、蜜蝋、オリーヴ油、密陀僧といっしょに煮こみ、痛風患者に塗りつけると、病者は癒されるであろうが、ブゥドローンの方は痛風になる。男に効くのはブゥドローン、女に効くのはラバである。

2.16."1t"
クモ(qhvrafoV)について
2.16.2
 クモあるいはアラクネー(ajravcnh)は、falavggionともkamaterhvとも、一部の人々の間ではsalamivnqhとも言われるところのものである。これは小さな昆虫で、六足、壁に蜘蛛の巣(ajracnh)を織りなす、万人周知のものである。
 これが、患者の名前を唱えつつ捕まえられ、オリーヴ油といっしょにやわらかく膏薬状にされ、眉間やこめかみに当てられると、三日熱の悪寒発熱を追い払う。これを活きたまま葦笛や葦のなかに入れ、腕に結びつけられると、毎日熱を治癒させる。少量のバラ油ないしカンショウコウの中でいっしょに煮られると、耳痛を治癒させ、脚のひび割れをも〔治癒させる〕。これの蜘蛛の巣(つまり、巣そのもの)は、食されると、血管からの出血を抑え、患部の炎症を保全する。
 樹木に巣を張るクモは、黒くて、白いものよりも大きいが、患者の名前を唱えつつ捕らえ、結びつけられると、初期の瘰癧を治癒させる。白い〔クモ〕の巣は、活きた葦〔の管〕で吹きこまれると、眼病を止め、流出物や、喉まわりに発症するかぎりの症状をも止める。
 クモを水で煮て、次いでこの水を不眠患者の頭に塗ると、夢を見させる。白い〔クモ〕の巣(u{foV)に塩の塊を入れ、すり減った歯に詰められると〔?〕、治癒させるであろう。オリーヴ油の中でクモを窒息させ、このオリーヴ油をコブラに咬まれた者に塗りこめよ、そうすれば痛みがすぐに止まり、咬み傷は健康になる。
 これの卵は、三日熱には3個、四日熱には4個、毎日熱には1個、服用されると、あらゆる型の発熱を追い払う。

2.17."1t"
ウマ(i[ppoV)について
2.17.2
 ウマは、四足、王者的、俊足で、万人周知の動物である。これが生まれたらすぐに留意せよ、眉間の部位に雲状のもの — これを馬飼いたちは「雄馬狂い(iJpomanhvV)」注30)と言う — がある場面に居合わせるためである。これを身につけている者は、身につけている間、最大の性的魅力を持つことになろう。なぜなら、これを誰かに結びつけておくだけで、あなたをひじょうに愛するだろうから。これを飲み物に入れて、誰かに与えて飲ませても、同じことをするであろう。食べ物に入れても同様である。完全に愛されるであろうから。
 ウマの胆汁は、鉛の容器の中で甘くされ、ブドウ酒に入れて人間に与えられると、強力な作用を成就し、休息を成就する〔?〕。
2.17.10
 繁殖用雌馬の乳は、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、白斑を薄くさせる。これの爪は、くすべられると、死んだ胎児を排出し、下からくすべられると、分娩促進剤となる。胆汁は蜂蜜といっしょに擦りこまれると、鋭い視力をもたらす。ウマの糞は、当てられると、あらゆる出血を止める。

2.18."1t"
ラクダ(kavmhloV)について
2.18.2
 ラクダは万人周知の動物である。
 これの脳味噌は、乾燥させてt、酢といっしょに服用されると、てんかん患者を治癒させる。ラクダの胆汁は、同日、甘くなるまで鉛の容器の中で凝固させると、食事の飾りとなり、恩恵をもたらす。これの排泄物は、焼いて、オリーヴ油といっしょに擂りつぶすと、キツネハゲや、病気に起因する脱毛をすっきり治癒させる。塗りこめられると、述べられたとおり、水腫患者を、尿を通じて空にする。乾燥させて粉末にして水で当てられたり服用されると、血性下痢患者を治癒させる。くすべられると、逆の症状を追い払う。
2.18.10
 これの乳は凝固しない。ほかのものの乳に混合されても、やはり、それをも凝固しないものにする。そして、温めて服用されると、神聖病を追い払い、助ける。肉も、煮て食されると、同様に同じことをする。これの髄は、バラ油といっしょに、先に頭に、次いで身体全体に塗油されると、てんかんを意想外に、しかも言語を絶して治癒させる。

2.19."1t"
川のイヌ(kunopotavmoV)すなわち(kavstwr)〔ビーバー〕について
2.19.2
 川のイヌはカストールとも言われるもので、よく知られている。
 これの睾丸は、いわゆる(kastovrion)で、有益である。さて、これは練って、膣坐薬として当てられると、月のものを招来する。ラバの外耳から出る耳の垢といっしょに服用されると、子なしとなる。イノンド油〔Dsc.I-61〕といっしょに煮て塗油されると、筋肉を緩め、寒気を益する。ブドウ酒といっしょに擦りこまれると、子宮の閉塞に利する。ヘンルーダ油といっしょに注入されると、下痢患者を治癒させる。服用されると、胃病患者、脾臓患者、嗜眠病患者、反弓緊張患者をすっきり治癒させる。肺や脳味噌に起こる病状には、いぶされたものを吸入することで大いに利する。これの皮は、履き物につけられていると、痛風を治癒させる。これの糞は、女の出血を止める。いぶされると、疱疹を追い払う。

2.20."1t"
子犬(kuvwn mikrovV)について
2.20.2
 小犬(kunavrion)とも言われ、小さくて、生まれたて、まだ乳を吸っているイヌである。長い間病弱である病弱者といっしょにたえず横になり、胸(女であれ、男であれ、子どもであれ)の上でこれといっしょに眠り、寝椅子の上で常時これにもたれさせていると、イヌは死ぬが、病弱者は永年の病気から解放されるであろう。
 イヌの脾臓は、温めて、脾臓患者の脾臓に当てると、治癒されるであろう。糞は、乾燥させて、練って、飲酒の際に与えられると、黄疸患者や血性下痢患者を療治する。蜂蜜といっしょに喉や身体に擦りこまれると、喉痛をすっきり治癒させる。ただし、万事患者の同意を得ずに行う。服用されると、水腫患者をすっきり治癒させる。
 糞は練って、酢といっしょに擦りつけられると、水のような下痢患者や陰部の炎症を治癒させる。土器で焼いて、バラ油といっしょに練られると、ヘドラにできたひび割れを治癒させ、いぼ状の贅肉や吹き出物をを根こそぎにする。鉛といっしょに押し当てられると、瘤や吹き出物を治癒させる。蜜蝋やバラ油といっしょなら、きたない腫瘍や瘢痕形成しにくい〔治りにくい〕腫瘍に効き、オリーヴ油といっしょにすると、ミツバチやスズメバチの打撃に〔効く〕。
 左手でイヌの心臓、ないし、布に巻かれた舌を入手したら、あらゆるイヌが口輪をかけられたようになり、逃げ出すであろう。
 灰色のイヌの両眼を、磁石と黒曜石といっしょに、乾燥膏薬のように硫化アンチモンに作り、眼に化粧して、暗がりにあるものを見よ。生きているダニを切り刻んで、まだ温かいうちに、喉痛患者の頸や喉に当てられると、わたしの実験では、驚くほど療治させる。
 病弱者にして、生き延びるか死ぬかどちらなのかを知りたい場合は、温かい酵母から を取って、虚弱者の顔、脇の下、鼠径部、脚、手を拭け、そしてその酵母をイヌに与えて喰わせよ。これを喰えば、生き延びると知るがよい。喰わなければ、死ぬ。ただし、酵母は温かいものとせよ。

2.21."1t"
イヌ(kuvwn)について
2.21.2
 イヌは、万人周知の、最速、邪悪、賢明な動物で、とりわけ狩猟者である。これが骨を喰う場合、その糞は喉痛の治療薬となる。乾燥させて、雄の赤鉄鉱とチョークといっしょに練って服用されると、血性下痢患者を治癒させ、古い潰瘍も、これに効く薬 — 例えば、蜜蝋とか、ギンバイカ〔Myrtus communis, Dsc.I-155〕とか、オリーヴ油とか鉛とかと混ぜられることで、〔治癒させる〕。蜂蜜といっしょに調合されて、擦りこまれると、喉痛患者を療治し、扁桃腺の炎症をも〔療治する〕。狂犬に咬まれた者たちや狂犬病患者をすっきり助ける。
2.21.10
 生まれたばかりのイヌの凝乳は、狂犬に咬まれた者たちを助ける。同様に、授乳するイヌの乳も、寝椅子の中で、10カラットが7日間服用されると、患者が妨げられるとき〔?〕、夢なしを持続させる。温かい乳が耳に滴下されると、難聴を療治する。イヌの脾臓は、脾臓患者に当てられると、治癒を招来する。これの心臓ないし舌を左手で入手し、布に包んでおくと、あらゆるイヌが口輪をはめられ、あなたから逃げ出すであろう。

2.22."1t"
ワニ(krokodeivloV)について
2.22.2
 万人周知の陸棲のワニは、四足、扁平な頭、長い尾を持った動物である。
 これの皮を焼いて、粉末にし、乾燥剤を作り、焼いたり切ったりしようとする患部に当てると、そこを無痛となす。ワニの炙られたものを塗油すると、どんな打撃を受けても感じることはないであろう。
 これの右の歯が、生きて放されるこれから抜き取られ、結びつけられると、男たちに最大の張り切りを作り、左の〔歯〕は、女たちに〔最大の張り切りを作り〕、括りつけられたり結びつけられたりすると、両方がふさわしいことをなす。
 糞は、酢といっしょに顔に擦りこまれつけると、白癩をかなぐり捨て、蜂蜜と混ぜて擦りこまれると、白斑をなくし、オリーヴ油といっしょにすると顔をすべすべさせる。これの血は擦りこまれつけると、、視力低下を治癒させ、鋭い視力をもたらす。
 ワニが丸焼きされ、灰にして、きれいな小麦粉に混ぜ加えて、言葉なき動物 — ウマやウシやその他のものら — に与えられると、太らせる。人間たちにも太るようそういうふうに調剤する人たちがいる。ワニの灰を、小麦粉と蜂蜜によって見つけ出し、小鳥を、これ〔小麦粉と蜂蜜〕で12日間、ほかのものは何も味わうことなく飼育する。次いで、供儀し、調理して、太ろうとする人に与えて食させると、太る。ただし、小鳥に属するものは何も残してはならないが、これの中にあるものだけは、内臓ともども捨てなければならない、有害な原因が生じないためである。

2.23."1t"
オオカミ(luvkoV)について
2.23.2
 オオカミは、四足、野性的、邪悪な動物である。
 さて、これの血を飲む者は、発狂して、もはや助からないだろう。これの眼は、身につけた者を、あらゆる裁判の勝利者となし、種々さまざまな幻覚を追放するだろう。あらゆる型の悪寒発熱〔マラリア熱〕を追い払う。しかし、オオカミの皮は、羊のそれを凌駕しない。
 これの糞は、ある場所や茂みに見出されるものはこのうえなく白い。これは、服用されると、下痢患者を驚くほど利する。これの肝臓は、乾燥させて粉末にして当てられると、肝臓患者をすっきり治癒させる。同様に、精神異常者や発狂者たちをも。これの犬歯は、精神異常者とか、昼も夜もおびえている者、邪悪な夢を見る者たちに括りつけられれば、救われるであろう。優秀な親によって得られる薬〔?〕にも混ぜられ、飲酒の際に与えられる。これの硬脂は、擦りこみつけられると、筋肉や関節を益し、解決し、反弓緊張患者を治癒させる。
 これの胆汁は、膏薬のように毛皮に擦りこみ、人間の眼に当てられると、その胃をきれいにすること、下剤よりも多大である。これの心臓は、調理して空腹時に食されると、狼人間(lukanqrwvpoV)(夢魔(baboutzikarivoV)とも)いわれる者たち — 3日まで空腹で或る者たち〔?〕 — を療治する。これの皮は、細工して履き物をつくって身につけると、もはや決して足を痛むことがない。
 これの右眼は、家の中で、尻尾の第1椎骨といっしょに、身につけられると、いっしょであれ別個であれ、黄金の容器に入れて身につけている者たちは、大きな行為をなす。なぜなら、飼育されたものであれ野生のものであれ、あらゆる四足動物が、身につけている者から逃げ出すであろうから。身に帯びた者は、敵対者たちのただなかを通り抜けても、恐れないばかりか、むしろ相手の方が彼を恐れるであろう。さらにまた、このお守りは、身に帯びた者を評判の者、成功者、誉れ高き者、勝利者、見た目に快く恋される者、女たちに愛される者、恋される者となす。なぜなら、この眼は、身に帯びた者が眼病になることも許さないばかりか、化膿した眼病をも治癒させる。左眼も同様である。オオカミの首からとった骨は、括りつけると、反弓緊張患者を治癒させるであろう。

2.24."1t"
ウサギ(lagwovV)について
2.24.2
 ウサギは万人周知の動物である。
 これの血は、温めて、脚に擦りこめられると、痛風をすっきり治す。腰肉を温めて当てられると、腎臓患者をすこぶる治癒させる。大麦挽き割り粉といっしょに捏ねて食されると、血性下痢患者を療治し、しもやけを治癒させる。これの心臓は、亜麻布にくるまれて括りつけられると、四日熱患者をすっかり治癒させる。
 これの脳味噌は、煮て、擂りつぶして食されると、子どもにとって生えかけた歯に最も有益である。というのは、苦痛なく歯を生えさせるから。脳味噌は、調理して、食されると、震え患者を治癒させ、寝小便をする者をその病状から解放する。
 これの肺は、細切れに切って、目蓋に当てられると、眼の腫れを止める。腎臓は、乾燥させて、擂りつぶし、水蜜の中で胡椒といっしょにして当てられ、飲まれると、腎臓患者を治癒させる。これの胆汁は、キツネの硬脂といっしょにカンショウコウの中で滴下されると、難聴を治癒させる。これの凝乳は、練って、サモス土(ajsthvr samivoV)やレムノス土(lhmniva sfragivV)といっしょに服用されると、喀血患者を助ける。サテュリオン〔ラン科の植物、Dsc.III-143〕といっしょに胆汁、凝乳、脳味噌が膣坐薬として、ウスベニタチアオイ〔Dsc.III-163〕の液汁とタチアオイ〔Dsc.II-144〕といっしょに当てられると、死んだ胎児を堕ろす。凝乳は(propovliV)といっしょに練って当てられると、有毒な獣の咬み傷を治癒させる。
 これの糞は、温かいブドウ酒といっしょに練られると、桁外れな座骨神経痛患者を治癒させ、下痢患者をも同様に。胡椒といっしょに練って、服用されると、腎臓患者を療治する。
 これの毛は、焼いて粉末にして、火と燃える外傷に当てられると、きれいな瘢痕を植えこみ、発毛させる。卵の白味といっしょに当てられると、あらゆる出血を止める。生きたウサギの足を、患者の名を唱えながら括りつけよ、そうすれば長患いの関節炎患者をすっきりと治癒させ、足や手の痛風患者をも。右〔足〕は、患者の右足に〔括りつけよ〕。同様に、また〔左足は〕左足に。
 ウサギの脳味噌は、幼児の歯茎に擦りこまれると、痛みなく歯を生えさせる。ウサギの皮は、耳も爪も丸焼きにして、粉末にして、与えられ、味つき酒といっしょになると、嗜眠病患者を完璧に治癒させる。
 バビュローン人アプリカノスが謂うには、子どもをつくりたい者は、女との性交の前に、すなわち、交合に及ばんとするときに、自分の陰部にウサギの血を擦りこめ、そうすれば男の子を作れよう。ガチョウの硬脂を擦りこめば、女児を作れよう。

2.25."1t"
アリ(muvrmhx)について
2.25.2
 アリは六足の小さな生き物で、万人に周知である。
 アリには7種類ある。コイノイ(koinoiv)〔普通アリ〕はよく知られている。アンドロケパロイ(ajndrokevfaloi)〔「人頭」〕と呼ばれるものは、色も黒いやつである。白くて、痩せていて、黄色いのは、スクニパイ(sknipaiv)〔暗いアリ〕と言われる。他は、大きくて羽があり、別の種類はド田舎アリ(ajrourai:oi mevsoi)、ほかにも長旅アリ(ejnovdioi makroiv)、他は、アリライオン(murmhkolevonteV)とも言われるもので、他より大きくて多彩なアリである。が、これは、自然本性上、肉を喰うとたちどころに死ぬ。
2.25.10
 さて、コイノイ・アリは、頭をとって目蓋にこすりつけると、そこにある膿疱を療治する。同様に、「穀物を運ぶド田舎者アリ(sitofovroi ajrourai:oi)」も同じ作用がある。ひとが水で、水がなくなるまで煮つめて、足や手にかけると、そこにできた蟻いぼを抜け落ちさせる。
 人がアリ40匹を、ツルボラン〔Dsc.II-199〕の液汁で煮て、ひとに与えると、生きているかぎり頑張りすぎない者となるだろう。

2.26."1t"
ネズミ(mu:V)について
2.26.2
 家ネズミは万人周知である。
 これの頭は、焼いて灰にして、ブタあるいはクマの硬脂といっしょに練って、キツネハゲに擦りこめ、そうすれば治癒させられよう。ネズミを丸焼きして、ブドウ酒・カンショウコウ・バラ油といっしょに練って、擦りこむと、慢性の耳痛を予想外に治癒させよう。ネズミを生きたまま、その先端をすべて切り取って、包みこんで腕に括りつけよ、そうすればあらゆる悪寒を止められよう。
 これの糞は、同様に同じ作用をする。子どもたちのヘドラに当てられると、流出〔?〕を促す。水といっしょに練って、擦りこまれると、胸の炎症をともなったしこりや痛みを治癒させる。乾燥させて、3日間、膏薬として当てられると、(ejxwcavdaV)をとりのぞく。ただし、これをブドウ酒で浣腸しなければならないが。水といっしょに擦りこまれると、癩や苔癬を療治する。
2.26.13
 ネズミを丸焼きして、ブドウ酒、微量のカンショウコウ、バラ油といっしょに練って、擦りこむと、慢性の痛風を予想外に治癒させる。生きたままのネズミの先端(例えば鼻、耳、足、尻尾)をすべて、患者の名前を唱えながら切り取って、束ねて括りつければ、慢性的な悪寒発熱〔マラリア熱〕を驚くほど治癒させられよう。
 矢弾をつかって、その口を通して、縫合線を越えて、そのヘドラまで抜き出し、縫合線を結べば〔?〕、下痢患者を治癒させる。

2.27."1t"
ネブロス(nebrovV)について
2.27.3
 ネブロスとは、シカの子どものことである。
 これの眼球の内側に見出される汚物(rJpoV)は、水といっしょに与えられれば、毒を飲んだ者たちにとって最大の解毒剤となる。これの硬脂は、塗布されると、頭の傷を治し、ヒエンソウ(Delphinium Staphisagria)注31)といっしょに塗られると、膿漿や粃糖疹をきれいにする。
 牡のシカの恥部は、乾燥させて粉末にして酒といっしょに服用されると、毒蛇に咬まれた者の助けになる。まさにこの効能を有する固形の薬剤にも、こういういったものが混ぜられる。

2.28."1t"
コウモリnukterivVについて
2.28.3
 コウモリは四つ足をもった鳥類として万人周知の動物である。ツバメのように飛び、四つ足動物のように子を生み、授乳する。
 これの血は、目蓋の毛のあらかじめ抜いておいたのに塗ると、ほかの毛はもはや生えないだろう。これの頭は、黒革のお守り袋に入れ、左腕に結びつけておくと、これを身につけているかぎり、まどろむことなく、眠ることもない。
 いやそれどころか、これの心臓は、身につけていると、覚醒を最大にする。人がこの血を羊毛布に受けて、それと知らぬ女の頭に当て、この女と交わると、たちまち妊娠する。
 他にもいろいろな作用を有するが、口を閉ざそう。というのは、それを口外したり公表してはならないからである。

2.29."1t"
クシュロバテース(xulobavthV)について
2.29.3
 クシュロバテース〔樹の上を歩くもの〕とは、ある人たちはトイコバテース(toicobavthV)〔壁の上を歩くもの〕、多くの人たちは親しみをこめてサマミュテース(samamuvqhV)と言い、他の人たちはシュレーグゥディス(sulhgouvdiV)〔という〕もので、小さなトカゲの1種である。
 これの丸焼きは、塗油されると、鞭打たれる者たちを無痛となす。性的魅力を増す作用もある。トカゲは魚のように煮て食されると、愚かな振る舞いをする者たちを無恥無慚となす。
 これの糞は、蜂蜜ないし女の乳といっしょになって、視力低下や白斑を治す。血も同様である。右の膝蓋骨は、身につけていると、精力を亢進させ、左のそれは、女に同程度の快感をおぼえさせる。

2.30."1t"
ヘビ(o[fiV)について
2.30.2
 ヘビは、度外れに邪悪な、四足、爬虫類、万人周知の獣である。
 これは、老齢になって、その眼が視力低下すると、もう一度若返ろうとする。そこで、40昼夜、その皮がたるむまで彷徨する。その後、岩の中に狭い孔を捜し当て、そこに入りこむ。そして身体をこすりつけ、その皮を脱ぎ捨て、それと同時に老齢をも〔脱ぎ捨てる〕。若返ると、すぐに視力も回復する。
 これの皮は、焼いて、塩といっしょに練って、歯に擦りこまれると、歯痛を止める。降誕節(ejleuvsiV)〔?〕の前にひそかにくすべられると、慢性の悪寒を止める。同様に、オリーヴの木といっしょに、その果実から、すなわちオリーヴの骨〔?〕からの数で3あるいは5あるいは7をくゆらせられると、(ejswcavdaV)や(ejxwcavdaV)を、他にないぐらい療治する。皮は括りつけられると、半面痛を助ける。家の中に置かれると、お守りとなる。
 ヘビによってできた咬み傷は、水棲動物のカエルが、引き裂かれて当てられ、結びつけられることで、治癒させる。というのは、薬の毒をすぐに輩出するからである。

2.31."1t"
ロバ(o[noV)について
2.31.2
 ロバは万人周知の四足動物である。次のような諸々の効能を有する。
 これの右前足の爪で指輪とか輪をつくって、ダイモーンに憑かれた者に身につけるよう与えると、救われるであろう。
 これの糞は、塩といっしょに練って、当てられると、あらゆる出血や、気管や血管の裂け目を治癒させる。

 

2.32."1t"
ワラジムシ(o[noi)注32)について
2.32.2
 水差しの下にいるオノイ〔「ロバ」の複数形〕は、多足で、押されると丸くなる小生物である。
 これは、バラ油ないしカンショウコウ〔Dsc.I-6〕で煮られると、耳痛を療治する。針で刺して、歯に当てて磨くと、歯痛を治癒させ、有用性が多い。

2.33."1t"
ヒツジ(provbatoV)について
2.33.2
 ヒツジは万人周知の動物である。
 これの糞は、酢といっしょに擦りこみつけられると、半面痛の痛みを止め、蟻いぼやいぼや疔(ねぶと)やたこを治癒させる。これの硬脂や随は、イチジクないしオークないしオリーヴの蒸留液といっしょに石鹸となる。このように多くの用途に適する。
 牡羊は次のような実効性を有している。すなわち、これの右の角をのこぎりで切り取って、櫛をつくり、これで梳ると、半面痛を療治するのであるが、右の角から〔作った〕ものは右側の半面痛を、左側〔の角から作った〕ものは、左側〔の半面痛を療治する〕のである。
 太陽が牡羊座にあるとき、その糞を乾燥させて、酢といっしょに、頭痛患者の上に置くと、解放することができよう。角のうちにいる蛆は、不易の性的魅力を増す剤である。角は、くすべられると、子宮閉塞を回復させる。
 ヒツジの肺は、空腹時に食されると、食する者を、その日にどんな酒を飲んでも酔わない者であることを証し、将来も酔うことがない。これの肝臓は、煮て、女たちの頬の上に置かれると、顔を色よく形よき者となす。
 これの硬脂は、膣坐薬に有用である。仔羊の肺は、乾燥させて、練って、服用時に与えられると、毒獣の薬に害された者たちを救助する。仔羊の胆汁や血は、てんかん患者を療治する。
 これの乳の花(ajpavnqisma)は、擦りつけられると、悪疫性の病気をきれいにする。これの脳味噌は、調理して、食されたり、擂りつぶされると、子どもたちの歯の生え方にめざましく助ける、苦痛がなくても、生え方を簡単にするからである。
 これの羊毛は、汚れいやなものになっても、洗われると、頭の(xeracwvma)に役立つ。いやそればかりか、矢弾や石によってできた他の新しい打ち傷にも、温かいオリーヴ酒といっしょに当てられると、これ〔打ち傷〕を炎症のないものにとどめる。焼かれると、乾燥剤となり、ぐにゃぐにゃになった肉を外傷から溶かし出す。これの硬脂は、あなたにとって多くのことに有用と考えよ。
 若い仔羊の肺は、軟膏として塗られると、足や手の腺炎を治癒させる。これの血は、乾燥させて服用されると、てんかん患者を助ける。

2.34."1t"
鼻角獣(rJinovkerwV)について
2.34.3
 鼻角獣は、シカに類似した四足動物で、鼻の上に巨大な角を1本持っている。いい衣裳を着た女たちの香油と美形によらぬかぎり、他の方法では捕まえられない。好色な動物だからである。
 これの、鼻ないし角の中にある石は、身につけられていると、ダイモーンたちを追い払う。これの睾丸ないし恥部は、服用されると、男たちや女たちの交わりを絶頂まで亢進させる。

2.35."1t"
イノシシ(suvagroV)について
2.35.2
 イノシシは野生のブタ(coi:roV)である。
 これの睾丸は、乾燥させて粉末にして服用されると、性欲を亢進させる。これの糞は、酢といっしょに練られると、丹毒を治癒させ、胆汁も同様である。これの爪〔蹄〕は、焼いて、ブドウ酒といっしょに練って、空腹時に服用されると、下痢患者を治癒させる。これの脳味噌は、澱粉やバラ油といっしょに練って、擦りこまれると、痛風の痛みをやわらげる。
 これの肝臓の端、つまり(prwtovbolon)は、少量の水といっしょに練って、羽で擦りつけられると、丹毒や疱疹を療治する。これの糞は、くすべられると、周期的な三日熱感者や子宮閉塞患者を治癒させる。雌の糞は、蜂蜜といっしょに練って、擦りこまれると、瘰癧を治癒させ、胸のあらゆる硬化症をも〔治癒させる〕。これの胆汁や凝乳は、服用されると、あらゆる致命傷的毒薬に効く。解毒剤だからである。

2.36."1t"
サラマンドラ(salamavndra)について
2.36.3
 サラマンドラは、四足動物である、ミドリ・トカゲよりも大きく、藪や森の中に棲息している。
 これの心臓は、身につけられていると、身につけている者を火に対して恐れなき者、火災の心配なき者、燃えない者となす。
 ところで、この動物は、火中であれ炉の中であれ、投げこまれても、あらゆる焔を消す。これの心臓を、熱病患者にひっつけると、たちどころに熱が引く。  女がこれを膝につけると、けっして妊娠することなく、月経を見ることもない。黒い獣皮にこれを包んで、肘にひっつけると、3日熱、4日熱、ありとあらゆる熱病を治療する。
 これが焼かれた灰は、オリーブ油といっしょに塗布されると、手や足のかさぶたを自然になくする。あるひとたちは、皮膚病や、さらには癩病や壊死性の治療薬としても、このような灰を混入する。

2.37."1t"
Scincus_officinalisスキンゴス(skivggoV)について
2.37.2
 スキンゴスとは、ワニに似た陸生の動物で、黒土〔アフリカ〕地方(MelanivV gh:)に見出せる。
 これの尻尾の先や、睾丸や、腎臓は、飲酒の際に与えられると、性交に対して性器を勃起させる。

アフリカ北部、アラビア、ペルシアの沙漠地帯に分布するトカゲ科の動物で、沙漠の生活によく適応し、38℃ぐらいの高温でも活発に活動する。西洋の民間療法では、服用すると催淫効果がもたらされ、外用すると四肢疼痛に効くとされる。Dsc.II-71参照。

2.38."1t"
ヤギ(travgoV)について
2.38.2
 ヤギは、万人周知である。
 これの肝臓は、体液といっしょに調理され、滴下されると、昼盲症に益する。これの血は、乾燥させて、ひまし油やバラノスといっしょに食事の時に服用されると、膿瘍を熟させる。
 同様に、輪形をした黄金の印鑑の中に、カエルの舌、シナモンあるいは若枝とともに〔ヤギの図像を〕閉じこめ、シカの皮の中に縫いこめて、括りつけるなりこれを帯の中におさめるなりせよ、そうすればその場所での供儀が有名となろう。普通のタカも同じことをする。しかしその際、これを完全に隠すこと。
 ヤギの皮は、もちろんヒツジのそれもだが、剥ぎたてでまだ温かいのを、鞭打たれた者たちをくるむと、他にないぐらい驚くほど彼らの傷を治癒させる。これの腎臓から得られる獣脂は、オオムギ〔Dsc.II-118〕やイネ〔Dsc.II-117〕の液汁といっしょに耳に注入される。
 これの髯から集められる脂(lavdanon)は、ブドウ酒や未熟ブドウ酒の搾り汁とともに、キツネハゲや抜け毛に効く。酢といっしょに擦りこまれると、頭痛を止める。硬脂は、ヤドリギや鶏冠石といっしょに練って、糜爛した爪に軟膏として当てられると、根こそぎにする。これの硬脂だけでも、あなたにとって多くのことに役立つとせよ。
2.38.20
 ヤギの鼻孔に香料を塗って、自分の手でみずからしごいてやると、これが快楽から射精するようにさせることになる。この精液を、人間の性器に塗れば、張り切りを最大にさせ、女たちにや恐怖に対して敗北せざるものとなす。

2.39."1t"
牡牛(tau:roV)について
2.39.2
 牡牛は、万人周知の強情な動物である。
 これの胆汁は、白鉛と卵の白身といっしょに練り合わして擦りこまれると、傷跡をその他の身体と同色にする。酢とキモロスの土〔dsc.V-176〕といっしょに混ぜ合わされると、黒い白癩を治癒させ、視覚のあざをも〔治癒させる〕。フダンソウ〔Dsc.II-149〕とオクセライオン〔ビネガーと油のソース〕の液汁といっしょにすると、頭のふけやあざをきれいにする。また女たちのそばかすも、中足骨によってきれいになる。なぜなら、この動物そのものが強力なのではなく、これの内にある効能は、中足骨にやどっているからである。というのも、人間がこれを身につけていると、あらゆることを知るからである。角を持たない牝ヤギも同様で、これを身につけていると、同じことをなす【託宣する】。人像に纏わせられても、同様に、託宣し、偽証する者たちも、本性を表し、白状し、その場で最大の奉納物を捧げるであろう。
 さて、海のタカをとって、雨水で窒息させよ。同様に、ヤツガシラをも水で窒息させ、これらの眼を持ち歩いて、ミルラ〔Dsc.I-77〕とサフラン〔Dsc.I-25〕、これらを陽のあたらぬ影で乾燥させて、これで療治せよ。他方、それら〔タカとヤツガシラ〕の身体の方は、身につける者が、人間であれ、他の何かであれ、いる場所の土の中に埋めよ。そして、これらの眼を取って身につけよ。
 胆汁そのものは、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、胃病患者をすっきり治癒させ、助ける。イリス油と二度混ぜて、膣坐薬として当てられると、その日のうちにおびただしい嘔吐を招来する。アマラキヌム香〔Dsc.I-68〕とエッラボロン〔Dsc.IV-150〕いっしょに当てられると、死んだ胎児を堕ろし、自分で指ないし臍に、浣腸液よりも多量に擦りこまれると、子宮を空にする。ニガヨモギ〔Dsc.III-127, 128〕といっしょに軟膏にして臍に当てられると、腹の虫〔寄生虫〕を殺す。
 これの糞は、鼻孔からの出血をおさえ、キツネハゲを発毛させ、病気による抜け毛をとどめる。これの血は、乾燥させて、服用されると、膿瘍を熟れさせ、血性下痢を治癒させる。これの角は、焼いて、粉末にして、水といっしょに服用されると、女の下り物をとどめる。焼いて、未熟ブドウの搾り油といっしょに練って、塗油されると、灰色の髪を黒くする。この場合は、黒い牡牛のものとしよう。
 牡牛が死ぬと、7日にして蛆を生じ、これが21日にして、蜂蜜を作るミツバチとなる。これは巣箱に入れて保持しなければならない。

2.40."1t"
ハイエナ(u{aina)について
2.40.2
 ハイエナは、四足の、獰猛な、両性具有の動物である。というのは、この動物は、雌として生まれ、1年後に雄となるからである。次いで、もう1年後に再び雌となる。そして、時にはさかり、時にさかられ、孕み、授乳する。次のような諸々の効能を有する。
 この動物の胆汁は、甘く、作用を及ぼす。これによって最大の演示物(ejpivdeixiV)が調製されるが、その調合は次のようなものである。魚のハイイロハゼの眼とハイエナの胆汁は、総じて湿性である。すべてをいっしょに練って、ガラスの容器に入れて美しく蔽いをかけよ。さて、最大の証示物(s[ndeixiV)をつくりたいときは、次のようにするがよい。灯火が置かれて、爬虫類あれ四足類であれ、何でも望むものの硬脂を、この調合物少量と混ぜて、紙片ないし小さなガチョウに擦りこみ、夕方、灯火が置かれたときに、居合わせる者たちに示すと、その人たちは硬脂の主 — それがライオンであれ牡牛であれ蛇であれ他の何かであれ — が真実いると思いなすであろう。だから、どんな獣でも望むものの硬脂が少量の調合物を使って証示されることを望むなら、家の真ん中で炭(ajnqravx)の上に置くがよい、そうすれば、混ぜ合わせた硬脂の主の動物が現れるであろう。家禽類の上でも同じ作用をする。
 海の波からとった水少量をこの調合物に混ぜ、酒宴の時にふりかけると、あらゆる人たちが、自分たちの真ん中に海が現れたと思いこんで、逃げ出すであろう。
 月が双子座ないし乙女座にあるとき、ハイエナを供儀して、これの灰から煮詰めたものをひそかに与えれば、精神錯乱者たちを療治できよう。わたしはこれを調査研究し、てんかん患者について、何度も取り憑かれた人間が、もはや倒れなくなったことにわたしは驚いた。ただし、2ないし3ウンキアを与えよ。調合物に関してもわたしは調査研究し、それに協力した。
 ハイエナの胆汁は別の調整法をも有しており、それは次のごとくである。ハイエナの胆汁6ウンキア、インド産リュキオン(lukivon)〔Dsc.I-132〕2ウンキア、バルサモンの菜汁1ウンキア、ミルラ〔Dsc.I-77〕3ウンキア、ヒエラキティスという植物(iJeraki:tiV)〔Dsc.III-64〕((ajgrioqrivdax)のことである)の汁液10ウンキア、胡椒1ウンキア、蜂蜜6ウンキア、これらを丁寧に練って、水薬をつくって、ガラスの容器に収め、用いよ。すなわち、視力低下、二重瞳孔(dikoriva)、白内障の初期や、雲状の濁り(nefevlion)の初期や、眼に関する限りの症状に効き、鋭い視力をもたらす。
 恐水病患者あるいは狂犬に咬まれた者に、ハイエナの硬脂少量を、食事の際にひそかに与えると、救われるであろう。生きたハイエナの両眼をえぐりだし、紫色の布に〔包んで〕両肘に巻きつければ、あらゆる夜の恐怖や、胎児をつまらせ、産婦を悩ませるゲッロー(Gellwv)〔一種の吸血鬼ないし小鬼〕を追い払い、あらゆるダイモーン的なものを追い散らすだろう。
 これ〔ハイエナ〕の子宮は、乾燥させて、切って、イリス香油に混ぜ、塗油されると、コレラ患者や、多量の排出によって引きつけを起こした者たちや、関節の痛みを療治する。これ〔ハイエナ〕の右の足は、(fiavlh)の中に括りつけられ、この〔杯〕で、狂犬に咬まれた者や恐水病者に飲むよう与えられれれば、たちどころに救われるであろう。これ〔ハイエナ〕の肝臓は、乾燥させて、食されると、四日熱患者を治癒させ、震え患者や心臓病患者をも〔治癒させる〕。しかし、すべての場合に、気づかれないように与えよ。
 これ〔ハイエナ〕の舌を、右の履き物につけて行くと、犬どもであれ人間どもであれ、あらゆるものが親愛の情を示すであろう。黙らせるお守り(fimokavtocon)だからである。これ〔ハイエナ〕の網膜(ejpivplouV)は、溶かされると、あらゆる炎症を療治する。これ〔ハイエナ〕の背骨の随は、塗油されると、腰や背骨のあらゆる病苦を治癒させる。これ〔ハイエナ〕の腰骨から得られる硬脂は、下からいぶせられると、難産の女たちにとって最大の分娩促進剤となる。ハイエナの膀胱は、乾燥させて、粉末にし、ブドウ酒といっしょに飲まれると、敷布に勝手に小便する子どもたちを制止する。
 これ〔ハイエナ〕の皮を少し巻きつけられたり、あるいはこれで履き物をつくって身につけられたりすると、足の痛風、膝痛、手の痛風、関節痛、またあらゆる流出(rJeumatismovV)、筋肉の痛みをたちどころに止める。これ〔ハイエナ〕の胆汁は、眉間や目蓋に擦りこまれると、眼のあらゆる流出を静止し、眼病を止める。蜂蜜といっしょに擦りこまれると、鋭い視力をもたらす。ハイエナの皮は、門戸の前に吊り下げられると、犬どもを追い払い、あらゆるたくらみを退散させる。

2.41."1t"
アザラシ(pwvkh)について
2.41.2
 アザラシは、四足、水棲、人間の手と類似した手を有する両棲動物で、顔は子牛のそれである。四足類のように出産し、授乳する。数多くの効能を有する。
 これの凝乳は、ビーバーのそれを有する。これの脳味噌は、服用されると、精神異常者たちを治癒させ、神聖病を療治する。頭は、焼いて、杉油(kedriva)といっしょに練られると、キツネハゲやあらゆる症状を治癒させる。肺は、乾燥させて、ブドウ酒といっしょに服用されると、あらゆる狂気やてんかん症状を治癒させる。これの右眼は、鹿皮に入れて身につけられると、身につけている者を、恋される価値或る者、成功者となす。心臓は、身につけられると、同様にまた凝乳も、困難なことはすべて退散させ、善いことはすべて、身につけている者に招来する。
 これの鼻にある毛は、鹿皮に包んで身につけると、大きな  をわたしは言うが、敵のまっただ中に入っても、あらゆる者が彼を友として歓迎する。舌は、履き物の下につけられると、勝利をもたらす。硬脂は、あらゆる炎症や痛みを関節から取り除く。塗りこめられると、〔小児麻痺?〕に罹った子どもたちを療治する。
 皮は、帯にされると、腎臓患者や座骨神経痛を療治する。肉は、食されると、血は、乾燥させて、ブドウ酒といっしょにひそかに服用されると、あらゆるてんかん症状や狂気や目まいやあらゆる病状を治癒させる。同様に、肝臓も肺も脾臓も、乾燥させて、飲酒時に軟膏にして当てられると、同類のことやあらゆる病状を治癒させる。骨は、くすべられると、分娩促進剤となる。胆汁は、蜂蜜といっしょに塗られると、あらゆる眼病を治癒させる。舌は、履き物の下につけられると、〔人間やイヌの〕口を閉ざさせるお守りとなる。皮は、履き物を製作して身につけると、脚に痛みを感じさせることが決してない。これの糞は、肥満を消散させ、他にもひとかどのことをなす。脳味噌は、服用されると、神聖病を療治する。
 アザラシの心臓、舌の先、鼻の毛、右眼、凝乳を鹿皮なりアザラシの皮なりに包んで身につけると、地上であれ海上であれ、戦争において万人に勝利する者となるだろう。あらゆる病気、病状、厄、あらゆるダイモーン、獣が彼を避けるであろう。彼は富裕者、幸福者、渇望される者となるであろう。

2.42."1t"
ヒキガエル(fruvnoV batravcoV)について
2.42.2
 ヒキガエルは、黄緑色のカエルの一種で、陸上に棲息する。これが人間に唾をかけると、〔人間は〕すぐに丸禿になる。これの血は、髪の毒である。数多くのヒキガエルは、生きたまま、オリーヴ油の中で、タイム〔Dsc.III-44〕の群葉、ニガハッカ〔Dsc.III-19, 119〕、スキュレー〔(skuvllh)?〕といっしょに、三昼夜の間、風呂の釜に入れて煮られると、痛風を思いのほか治癒させる。
 これの肝臓は、練って、水を張ったもののなかに加えると、目蓋の毛が抜け落ちるだろう。
2.42.10
 ヒキガエルを空の土器に入れ、黒こげになるまで熱すると、その灰は酢といっしょに塗られると、あらゆる出血を止める。男のであれ、女のであれ、腎臓からのであれ、子宮からのであれ、血管の流出をも、動脈の切り傷をも止め、端的に云えば、出血がどこから起ころうと〔止める〕。もしも調べてみたいなら、戦刀をとって、その灰を擦りつけ、望みの四足獣の喉を切ってみよ、それでもそれから血は流れないであろう。

2.43."1t"
カメレオン(camailevwn)について
2.43.2
 カメレオンは、ワニに似た動物である。1日の間の瞬間瞬間に色を変える。顔は、ライオンのそれを持ち、脚と尻尾はワニのそれであり、色は多彩である。これの頭から尻尾まで硬い神経が伸び、これは、患者の名を唱えながら抜き取り、腕に括りつけられると、反弓緊張を療治する。
 これの胆汁は、甘くされると、頓服を調合する〔?〕。その他の部分はすべて、アザラシやハイエナが〔した〕かぎりのことを等しくする。黒カメレオン草〔(camailevwn covrtoV)?〕の根といっしょにこれの舌やシタビラメの〔舌〕が身につけられるなり、入手されるなりすると、敵に対する最大の口を噤ませるお守りとなる。

2.44."1t"
飼いブタ(xoi:roV)について
2.44.3
 ブタは、ヒュス(u|V)ともシュス(su:V)とも「ひとりもの(moniovV)」とも呼ばれ、万人周知である。
 これの肺臓は、履き物の擦過傷〔靴擦れ〕を療治する。去勢ヒュスの尿は、強烈な下剤である。疫病の時これを飲んで救われた人たちもいるところのものである。癩や、腫瘍の腐蝕、膿漿。ふけを療治し、足のひょう疽も炎症にかからぬようにする。
 胆汁と硬脂は、アーモンド油といっしょに滴下されると、耳痛を止める。これの脳味噌は、蜂蜜といっしょに調理して、練って軟膏として塗られると、癰(よう)をやわらかくする。デンプンといっしょに膏薬として貼られると、痛風を宥める。イノシシ(kavproV)の硬脂は、バラ油といっしょに練られると、夜間性膿疱や膿漿を療治する。イノシシの肝臓は、乾燥させて、ブドウ酒といっしょに練って服用されると、爬虫類の咬み傷を治癒させる。

2.45."1t"
「海のノミ」(yuvlloV qalassivoV)について
2.45.2
 海岸地帯に見出されるノミは、バラ油ないしウラジロハコヤナギ〔Dsc.I-109〕の油といっしょに煮られると、耳痛の助けとなる。多数の「海のノミ」を、植物の葉といっしょに海水で煮て、ノミがたくさんいるところに振りかけよ、そうすれば、もはや発生しないであろう。漁師はこのノミを餌として使い、釣りを成功させる。イルカたちの皮膚でつかまえるのがよい。

「海のノミ」が何を指すか議論があるが、魚類に外部寄生する小甲殻類(魚ジラミやウオチョウ等)のことと考えられている(HA537a、島崎註)。

2.46."1t"
「スナモグリ」(yammoduvthV)について
2.46.2
 「スナモグリ」とはモグラ(ajsfavlax)のことで、いくつの肢をもっているか、薬効はどれくらいの力能を持っているか、つまり、てんかんや白癩や足痛や象皮病や眼病を治療するということ、また、あまたの有用性をもち、金になる、愛らしい生き物であることは、最初の字母の中で述べられたとおりである。

2.47."1t"
卵について
2.47.2
 夜の明け初め、道々で見つけられるクモ(ajravxnh)の卵や、ドクグモ(falaggivon)そのものの卵は、患者の名前を唱えながら採取し、黒い布に包んで、左の腕に括りつけると、三日熱、四日熱、毎日熱を治癒させる。ただし、月が欠け、これ〔月〕が魚座にあるとき、安息日の9時ころ、毎日熱の場合は1時、准三日熱の場合は2時、三日熱の場合は3時、四日熱の場合は4時に採取し、これらは頸ないし肘に括りつけなければならない。卵はまた、くすべられ、括りつけられると、分娩促進のお守りとなる。
2.47.10
 キュラニスの第2巻の終わり。

2."47a"."1t"
メンドリの卵について
2."47a".2
 メンドリの卵の殻は、焼いて、酢蜜といっしょに練って、服用されると、出血する膀胱を安定させる。完璧な卵は、灰になるまで焼いて、雄のマスティコス〔ピスタキオ。Dsc.I-89, 177〕といっしょに練って、鼻孔に吹きこまれると、鼻の出血を回復させる。
 卵の白身は、白鉛とデンプンといっしょに擦りこまれると、炎症を宥める。新しい卵の白身は、羽で塗りこめられると、火と燃える炎症を治癒させる。白鉛といっしょに塗りこめられると、黒い傷跡を白くする。生の卵は、空腹時に呑みこまれると、旅行者をして渇かないことを維持させる。
 卵は、硝石〔Dsc.V-130〕と蜜蝋〔Dsc.II-105〕といっしょに揚げて空腹時に食されると、流れる便を安定させる。卵から搾り取られた油は、ありとあらゆる炎症に益する。というのは、これらには他にないほどの反発力があるからである。ヘドラの引きつけを患っている者たちには、白身と分けた卵の黄身が、乾燥ピッチ〔Dsc.I-97〕といっしょに練って、火にかけて煮て、呑まれると、数多くの益をほどこす。
 ウズラの卵は、言い伝えでは、食されると、性愛を亢進させるという。クモの卵は、くすべられたり括りつけられたりすると、分娩促進のお守りとなる。
 陸上動物の終わり。

END

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