キュラニデス第3巻
ヘルメス文書
キュラニデス
第4巻
Cyranides IV
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4."t".1
キュラニスの第4巻。魚類について。
4.1.2
アエトス(ajetovV)〔トビエイ〕魚について
アエトスは海の魚で、鱗がなく、タカ〔=トビウオ〕に似ているが、それよりも黒く、どこでも2本の針をもつヤマバト〔アカエイ〕の近くにいる。この魚の頭の中にある石は、巻きつけられると、4日熱患者を治癒させる。胆汁は塗りこめられると、鋭い視力をもたらす。これの骨は、葡萄の木で焼かれると、悪霊たちを追い払う。この魚は、食されると、てんかんを治癒させる。
4.2."1t"
アンティアス(ajnqivaV)〔マグロ?〕について
4.2.2
アンティアスは最大の魚である。これの胆汁は、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、発疹を治療して、額を花とする。これの硬脂は、膏薬とともに、癰(よう)や皮脂性腫瘍や膿瘍、「乳房」〔できものの1種〕や瘰癧や疔(ねぶと)を益する。頭の石は、巻きつけられていると、頭痛を治癒させ、頭や首の疾患をみな〔治癒させる〕。
4.3."1t"
アミア(ajmiva)〔サバ、カツオ〕について
4.3.2
アミアは傍若無人な魚で、他の〔魚〕たちを追いかける魚である。これの歯は、身につけられていると、小児の歯が生えるのを無痛にする。食されると、排尿困難を止める。〔抜けた〕歯は、樹木の根とか薔薇園とかに埋められると、数々の花を咲かせる。
4.4."1t"
アスタコス(ajstakovV)〔ザリガニ〕について
4.4.2
アスタコスは甲殻類の海の生き物である。これの甲殻は、焼いて粉末にし、イネ(Oryza sativa)の汁液といっしょに与えられれば、下痢患者や血性下痢患者を治癒させ、ねばついたブドウ酒といっしょに服用されると、出血を止める。肉は、食されると、消化を活発にする。
4.5."1t"
バトス(bavtoV)〔エイ〕について
4.5.2
バトスは、バティス(bativV)という人たちもいるが、料理に適した鱗のない、海の魚であり、ローマ人たちはこれをトゥウルパイナンと呼ぶ。これは、新鮮なうちに煮られると、スープが、それ自体でも、ブドウ酒といっしょに服用されても、胃腸を空にするものとなる。食されると、ますますもって胃によく、食する者たちの性欲を亢進させる。
4.6."1t"
ブゥグローッソス(bouvglwssoV)〔シタビラメ〕について
4.6.2
ブゥグローッソスは海に棲み、一部の人たちからはスキュトポマ(skuqovpoma)と言われる、万人周知の小さな魚である。これは脾臓患者に当てられ、包帯をされると、ある自然な場所で脾臓をどろどろにする。そこで、3日後、取って、乾燥するよう煙の中に吊るさなければならない。
4.7."1t"
ボーペス(bw:peV)〔複数形〕について
4.7.2
ボーペスは、一部のひとからはブゥペス(bou:peV)とかグゥペス(gou:peV)と言われるが、小さな頭に類似している。これのスープは、食されると、腎臓病患者に益する。これの胆汁は、女の乳といっしょに塗られると、鋭い視力をもたらす。これの棘は、焼いて乾燥されると、腫れ物をきれいにする。
4.8."1t"
ブデッラ(bdellw:n)〔ヒル〕について
4.8.2
焼かれたブデッラの灰は、酢で練って、目蓋の毛、あるいは、身体の他の望みの部分の毛を抜いて、下塗りせよ、そうすれば、もはや生えることはないだろう。これは、生きたまま、身体の質料が余分な部分に押し当てられると、これを〔質料〕を引き抜き、病人を健康にする。
眉間に押し当てられると、脾臓患者に、水腫患者、眼炎で流れてやまぬ者たちにも調和する。いぶせられると、シラミを取り除く。逆にシラミがいぶせられると、呑みくだされたヒルを引き出す。相互に反発し合うからである。
4.9."1t"
灰色ハゼ(glau:koV)について
4.9.2
灰色ハゼは、最大の海魚である。これは、野菜やウイキョウといっしょに煮られ、食され、そのスープが服用されると、女たちに乳を多く出させる。これの頭の中にある石は、結びつけられると、眼炎を治癒させる。胆汁は、子どもたちの灰色眼を黒くし、眼病や白斑を治癒させる。
これの両方の眼球は、ハタやメジの〔それ〕も同様、また、「海の星」〔ヒトデ〕やハイエナの胆汁の搗き砕かれたのも、望む獣の硬脂を混ぜて、焼かれた光り魚(luvcanoV)のそれ〔硬脂〕をいぶすと、見る者たちは、混ぜられた硬脂の持ち主である獣だと信じる。同様に、海の水を混ぜると、海を見るように思うだろう。河からのものを〔混ぜれば〕、河、雨からから、雨。完全な星〔ヒトデ〕をいっしょにいぶして投げこめ。これ〔ヒトデ〕の硬脂は、ヘドラ注35)や子宮の症状といった多くのものに有用である。
4.10."1t"
ゴングロス(govggroV)〔アナゴ〕について
4.10.2
ゴングロスは大きな海魚で、ウナギに似ている。
これは、稚魚のときに食され、服用されると、それ自体であれ、ぶどう酒といっしょに服用されると、腹をやわらかくする。これは、オリーヴ油といっしょに煮られ、どろどろにして、オリーヴ油が濾され、蜜蝋が加えられると、妊娠した女性に膏薬を塗りつけると、彼女たちの子宮を破れなくさせる。
次のような予備薬を作れ。 ゴングロス3ウンキア、蜜蝋2ウンキア、アミュロス〔デンプン?〕1+1/2ウンキア。こういうふうに準備され、塗布されると、手のヒビも足のヒビも、また関節の痛も痛風の痛みも楽にする。
4.11."1t"
ゴムポス(govmfoV)〔ボラヒメジ〕について
4.11.2
ゴムポスは、万人周知の海魚である。これは、稚魚をスープにして食され、服用されると、それ自体であれ、ブドウ酒といっしょであれ服用されると、便通を促す。これの歯は、結びつけられると、成人であれ幼児であれ、歯痛を治癒させる。
4.12."1t"
<グナペーシア(gnafhsiva)について>
4.12.2
グナペーシアのスープは、石灰水(konia stavkth)と混ぜられると、古い眼炎を明らかにし、楽にする。これの頭の中にある石は、見つけ出されて結びつけられると、不眠症をもたらす。食されると、いやな夢を見せる。
4.13."1t"
ナマズ(glavneoV)について
4.13.2
ナマズは、川や湖にいる魚である。これの骨は、焼かれると、悪霊たちを追い払う。胆汁はバルサム汁といっしょに滴下ないし擦りつけられると、眼の白斑をきれいにする。これの肝臓は食されると、狂気やてんかんを止め、盲目を治癒させる。魚の全体は食されると、有益で滋養に富む。これを非難する人たちがいるにしても。
4.14."1t"
リュウギョ(dravkwn)〔ハチミシマ、Trachinus draco〕について
4.14.2
リュウギョは猛毒の海魚である。これの頭は、搗き砕いて押し当てられれば、みずからの〔リュウギョの〕刺し傷を療治する。これの針は、焼いて、トウダイグサ〔Euphorbia peplus〕の液汁といっしょに押し当てられれば、それ〔針〕を根こそぎにする。頭の中にある石は、焼いて灰にして服用されると、結石や滴尿性排尿困難症を治癒させる。
灰にして硫黄とともに塗りつけられると、これの針でできた傷を療治する。これの針は、樹木に突き刺されると、これをたちまち乾燥させる。頭部だけは、針といっしょに焼いて、粉末にして服用されると、悪寒を解く。頭や針が異なって受け取られるのは〔???〕、この生き物が小さいからである。この魚の灰は、ドラコンティアという植物の液汁と混ぜて擦りこまれると、苔癬や癩を治癒させる。
4.15."1t"
イルカ(delfivn)について
4.15.2
イルカという海獣は、海棲の動物である。たいていは黒海海域で発見され、これから(delfinevlaion)や魚の膠(ijcquovkolla)ができる。
これの皮は、ふくらませて北〔クマ座の方〕に向けられると、北風を作る。南中の方に向けられると、南風を〔作る〕。他の風についても同様にする。
イルカの肝臓は、食されると、三日熱、四日熱、一日半熱をすっきり治癒させる。これの歯は、結びつけられると、歯が生える子どもたちにぴったりである。これの腸は、乾燥させて粉末にして服用されると、脾臓患者を治癒させる。
4.16."1t"
ウナギ(e[gceluV)について
4.16.2
ウナギは、海にも河にもいて、ヘビに似た魚で、たいていの場合、海水の混じった湾内にいる。
これの肝臓は、全部、胆汁といっしょに、ブドウ酒で練って、ひとに気づかれずに与えて服用させれば、そのひとはけっして酒を飲めなくなるであろう。これ〔ウナギ〕全体を、生きたままブドウ酒の中に投げこみ、窒息死させたのを、この酒が人知れず酔っぱらいに与えられると、酒に対する彼の欲求をやめさせる。調理して食されれば、胃病者や血性下痢患者を治癒させる。ウナギは開いてコブラに咬まれた者たちに当てられると、治癒させる。
4.17."1t"
〔海の〕ハリネズミ(ejcivnoV)〔ウニ〕について
4.17.2
「海のハリネズミ」の肉は、食されると、便通を促し、薬味といっしょに摂られると、腎臓患者や結石をすっきり療治する。ハリネズミそのものは、焼いて、その灰が粉末にして洗い流されると〔?〕、癩病を治癒させ、眉の潰瘍をすぐに傷跡を残し、潰瘍全体をすぐに傷跡へと導く。クマあるいはイルカあるいはイノシシの硬脂といっしょに塗油されると、キツネハゲをふさふさにする。
4.18."1t"
エケネーイス(ejcenhivV)注36)について
4.18.2
エケネーイスは卓越した魚である。これは次のような自然本性的力を有する。〔すなわち〕順風に乗って帆走する舟にひっつくと、これを制止するのである。
さて、エケネーイスを生きたまま取って、これを樹脂(kapnevlaion)の中に入れて、窒息させ、煮ることを望むときに、副食にする分を計測するがよい。例えば、1リトラ〔=コテュレー〕を取ったら、魚が崩れたときに、樹脂1クセステースを投入し、強火で煮よ。そして、その副食が崩れ、油によって液汁のようになったことが知れたとき、濾して、上等のバター3ウンキアを、副食の液汁と樹脂のクセステースの中に、混ぜ合わせるがよい。そして煮立ったら、ガラスの容器に収めよ。そして、これから、足、手、関節部の塗油に用いるがよい。
じっさい、十年ぐらい痛風の病状があり、足の痛風でも手の痛風でも膝の痛風でも、療治されるであろう。就寝時や入浴後に使用せよ。ただし、煮立てながら、煮えこぼさぬよう樹脂を加えよ。引火するからである。だから、これを戸外で煮て、家の中では前述の容量は〔投入しない〕。魚が9、ないし、7、ないし、それ以下になったら、また等量の樹脂を投入せよ。ただし、バターは3ウンキアである(樹脂(kapnevlaion)と呼ばれているのは、ナフサ(navfqa)〔Dsc.I-101〕注37)のことである)。
4.19."1t"
ジュガイナ(zuvgaina)〔シュモクザメ〕について
4.19.2
ジュガイナは、平らな頭を持った海の魚である。その他の身体は(kunogalevoV)注38)に等しい。これの胆汁は、バルサモンの樹液(ojpobalsavmon)といっしょに擦りこまれると、鋭い視力をもたらす。
4.20."1t"
ズミュライナ(zmuvraina)〔ウツボ〕について
4.20.2
ズミュライナ〔ウツボ〕は、悪いことをする邪悪な、鱗のない海の獣で、背と皮膚に黒い斑点を有し、有毒で、人間に対して攻撃的である。ズミュライナは「八足」〔タコ〕とは反対で、これ〔タコ〕を亡き者にする。しかし、ズミュライナを亡き者にするのがオオエビ(kavraboV)で、だから、ズミュライナとオオエビとが両方とも煮られると、ズミュライナは消えてしまう。オオエビは今度は「八足」〔タコ〕が亡き者にする。
さて、ズミュライナの歯は、巻きつけられると、歯の生えかけた子どもに調和する。胡椒をふりかけられた煮汁にして食されると、腎臓患者を治癒させ、像足病や疥癬の病状をすっきりと治癒させる。
4.21."1t"
ヘーパル注39)(h|par)について
4.21.2.
ヘーパルはおとなしい野生の魚で、大きな肝臓を有する。これの胆汁は蜂蜜酒といっしょに服用されると、肝臓患者をすっきり治す。またこれの肝臓は、練って膏薬として貼られると、あらゆる熱病や痛風を治す。これの頭は焼いて粉末にして乾燥されると、〔ケイローンの手当てを必要とするような〕悪性の出来物や潰瘍を療治する。
4.22."1t"
ヘードニア(hJdoniva)について
4.22.2.
ヘードニアは海や河の魚で、これはまた稚魚(ajfuvdion)とも謂われる。これはスープにして食されたり飲まれたりすると、精力強壮にし、腎臓患者たちに益する。
4.23."1t"
テュンナ(quvnna)〔雌のマグロ〕について
4.23.2.
テュンナは海の魚である。これの胆汁は、常緑植物の菜汁といっしょに差されると、眼の白斑を取り除く。テュンナの眼は、「海の肺」〔クラゲ〕といっしょに練って、夕方、暗くなったときに、家の屋根にばらまくと、その家の者たちは、星を眺めているように思う。夜道を行く者が杖に塗ると、月のない夜も、杖から光が放射するように思うだろう。家の壁や板に好きな動物や獣を描くと、昼間は見えないが、夜になると、描かれたものが見えるであろう。
テュンナの胆汁や肝臓は、いっしょに練って塗りつけられると、あらかじめ抜かれた目蓋の毛はもはや芽生えなくなる。これの眼がほかのことをなすなら、ハイイロハゼ〔Gobius tozzo〕という魚を探せば、わかるであろう〔???〕。胆汁の混合は、塗りつけられると、しもやけを治癒させる。
4.24."1t"
トゥリッサ注40)(qrivssa)について
4.24.2
トゥリッサは海の小さな魚である。これは、調理して食されると、疝痛患者たちや胃病患者たちや腎臓患者たちに効く、塩漬けにして食されると、尿通困難を治療し、皮は、ユリの香油をつけて焼くと、髪を美しくふさふさとさせ、抜け毛をとめる。
4.25."1t"
ヨウジウオ注41)(iJppovkampoV)について
4.25.2
ヨウジウオは海の生き物で、これの焼かれたものの灰は、しめったピッチとクマの硬脂といっしょにすると、キツネハゲを発毛させる。海のハリネズミ〔ウニ〕の殻も同じ作用がある。
4.26."1t"
ヤスデ(i[ouvloV)について
4.26.2
ヤスデは多彩な魚で、万人周知である。これの歯は、身につけていると、ダイモーンや妄想を追い出す。これの眼は、邪視を追い払う。続けて食されると、てんかんを療治する。
4.27."1t"
シイラ(i{ppouroV)について
4.27.2
i{ppouroVという魚は、一部の人たちがkorufai:oVと呼ぶところのものである。これの胆汁は、純粋の蜂蜜とといっしょに擦りこまれると、あらゆる視力低下や視力障害を治癒させる。全般的に言って、ハイエナの胆汁と等しい効能を有する。食するに快く美味である。
4.28."1t"
カニ(karkivnoV)について
4.28.2
川のカニは、練って、山羊の乳といっしょに飲まれると、サソリに刺された者、毒クモに咬まれた者、マムシに咬まれた者、毒ヘビ(diyavV)やツノヘビ(keravsthV)〔Cerastes cornutus〕の咬み傷を治癒させる。服用する際、蜂蜜といっしょに、難産の女たちに与えられると、安産をもたらす。練って、イネの液汁といっしょに服用されたり塗布されたりすると、狂水症患者を治癒させる。水といっしょに服用されると、経血を降ろす。練って矢傷に当てられると、矢のかかりを抜き出し、針やとげや、そういったものらをみな放り出す。蜜蝋といっしょに塗りつけられると、凍傷を治癒させる。
4.28.10
海のカニの煮汁は、服用し食されると、尿を促進し、また、なまのまま鉛といっしょに焼いて、擂りつぶされると、悪性腫瘍を治癒させる。これの灰は、2匙の量をリンドウ〔Gentiana lutea, Dsc.III-3〕の根1コクリアリオンとブドウ酒といっしょに、3日間、服用されると、狂犬に咬まれた患者を顕著に助ける。煮られた蜂蜜といっしょにすると、脚や指のひび、しもやけ、悪性腫瘍を緩和する。なまのまま練って、ロバの乳といっしょに服用されると、這うドクグモの咬み傷やサソリの刺し傷の助けとなる。スープといっしょに煮て食されると、脊柱癆患者に益し、海のウサギ〔アメフラシ〕を呑みこんでしまった者にも。バジルといっしょに灰にして、近づけられると、サソリを殺す。海の〔カニ〕も同じ効能をも有し、これらに劣らぬ作用をする。
川カニは、食され、これの煎じ汁は服用されると、女であれ男であれ子どもであれ、その排尿困難や滴尿性排尿困難を治癒させる。カニは焼いて、ajristolociva〔ウマノスズクサ, Dsc.III-4,5,6〕とクニデー(knivdh)〔イソギンチャク?〕を搗き砕き、いっしょに練って、これといっしょに石鹸をも混ぜて、外痔(ejxwcavdaV)や内痔(ejswcavdaV)に擦りこむがよい。
4.29."1t"
海のイヌ注42)について
4.29.2
イヌは海の魚で、これの焼かれたものの頭は、ガラスープ〔?〕(shpostravkoV)とともに、歯の瘢痕〔虫歯?〕を療治する。海のイヌの歯は、焼いて蜂蜜といっしょに練られると、瘢痕を払拭する。これの皮は、身につけていると、大地のイヌ〔?〕を逃げ出させる。これの肉は、食されると、健胃と消化をよくする。
4.30."1t"
カリス(karivV)〔エビ〕について
4.30.2
海のカリス注43)。これは、結びつけられると、サソリに刺された者たちを治癒させる。すなわち、刺された箇所に「(karivV)」と書き加えると、その瞬間に刺された者を無痛にする。ひとがカリスをガガテース石の上で切って、指につけておくと、けっしてサソリに刺されない。
カリスたちは、つぶして塗りつけられると、蟻いぼやいぼ、たこ、こぶを根こそぎにする。これのスープは、ウイキョウといっしょに服用されると、女たちの乳をたっぷり増やす。
4.31."1t"
ケパロス(kevfaloV)〔ボラ〕について
4.31.2
ケパロスは万人周知の海魚である。小さいこれのスープは、服用されると、胃腸の消化をよくする。頭は塩漬けにして、焼いて、蜂蜜といっしょに練って擦りこまれると、麦粒腫を除き、(ejxwcavdaV)や、ヘドラ部にできるものをみな散らし、療治する。同様にパラミス(palamivV)注44)の頭も同じことをする。どちらも丹念に混ぜて用いなければならない。
4.32."1t"
カラビス(karabivV)注45)について
4.32.2
川のカラビスは、湖にいる殻皮類で、大きさはきわめて小さく、アスタコス(ajstakovV)に似ている。これは、調理して食されると、胃病患者に益する。これの煎じ汁は、ブドウ酒といっしょに服用されると、通じをよくし、腎臓患者に益し、尿を予断する〔?〕。海のカリス〔IV-30〕は、練って塗布されると、サソリに刺された者たちの助けとなる。
4.33."1t"
巻き貝(kocliva)について
4.33.2
海の巻き貝のスープ、また、アカルナス(ajcavrnaV)〔スズキの一種〕注46)、ポーキス(fwkivV)、雑魚(ajfuvh)、ジンガサガイ?(lopavV)注47)のそれ〔スープ〕は、硬化した腹をやわらかくして、軟便にする。
4.34."1t"
ホラガイ(kehvrukeV)について
4.34.2
海のホラガイは、結びつけられていると、胸の痛みを止める。これの殻には、乾かす効能があり、悪性の腫瘍にぴったりである。化膿性の〔腫瘍〕には、酢とかブドウ酒とか酢蜜といっしょに用いるのがよい。これがまだ生きているうちの肉は、オリーヴ油の中で煮られ、肉は塗りこめ、オリーブ油は滴下されると、耳痛を治癒させる。
4.35."1t"
コービオイ(kwbioiv)〔ウニ〕について
4.35.2
コービオイは海の魚類である。水と混ぜた油(uJdrelaivon)や塩水といっしょに、どろどろになるまで煮て、そのスープが服用されると、腹をやわらかくして、通じがはじまる。食されると、健胃剤となる。
4.36."1t"
陸と海の巻き貝について
4.36.2
陸と海の巻き貝は、大きさは小さいが、最大の病状の治療剤である。例えば、焼いて服用されれば、まだ化膿していない血性下痢患者に益する。焼かずに粉末にして、腹部の浮腫や、関節の関節疾患部に、おのずから腫れが引くまで当てられると、有益である。深部からの水分を徹底的に乾燥させるからである。
これの殻は、灰にされると、あらゆる白癩を取り除く。蜂蜜と調合しても、腹や足の腫れ物(oijdhvma)を流れ出させ、腱の打ち身や目の暗くなる症状(zofwvsiV)、鼻の血を消すことができ、あなたは驚嘆して、その神的な強さ(kravtoV)を讃美することであろう。
つまり、わたしたちは陸棲の巻き貝を、その殻や肉といっしょに練って、乳香の中に満たし置いて、血の流れる鼻にまる1日詰めておくと、血の運行を阻止できたのである。
4.37."1t"
コイ(kupri:noV)について
4.37.2
キュプリノスは、川や湖にいる魚である。これの肝臓は、いぶせられると、てんかんを退散させる。これの胆汁は、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、あらゆる眼の障害や視力低下、かすみ、白斑、結膜炎を払拭する。硬脂は催淫剤となる。ひとがこれをどろどろにして性器のドングリ〔亀頭〕に擦りこめばだが。また、顔色のよさや妊娠をたちどころに実現する。
4.38."1t"
キクレー(kivclh)〔ツグミベラ注48)〕について
4.38.2
キクレーのスープは、便通をよくし、また消化もよくし、性欲をめざめさせ、授乳する女たちに乳をもたらす。
4.39."1t"
ラブラクス(lavbrax)〔スズキ〕について
4.39.2
ラブラクスは海の魚である。これの胆汁は、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、あらゆる視力障害、視力低下、白斑をきれいにし、鋭い視力をもたらす。これの腸は、単独で食されると、消化をよくする。乾燥させて身につけられると、楽しく喜ばしい食事の仕方をもたらす。これの眼の真珠は、身につけられると、眼病を止め、半面痛(hJmikraniva)を〔止める〕、右〔眼〕は右半面に、左〔眼〕は左半面に結びつければ。歯の生えかけた子どもたちにもぴったりである。これの頭の中にある骨は、魚の骨を呑みこんでしまった人の頭に当てられると、それを取り去る。
4.39.10
胆汁からは次のようにしてパップ剤もこしらえられる。ラブラクスの胆汁とハゲワシの胆汁、各6ウンキアずつ、雄の乳香9ウンキア、スミュルナ2ウンキア、密陀僧1ウンキア、バルサモスと常緑植物の液汁各8ウンキア、純粋の蜂蜜3ウンキア、これは古いほどすぐれている。視力低下に役立ち、初期の白内障、かすみ、昼盲症、トラコーマ、膿疱、かさぶただらけの眼瞼の炎症、蚕食された眼角を療治する。
4.40."1t"
ウサギ(lagwovV)〔アメフラシ〕について
4.40.2
海のウサギは、練って、あらかじめ抜かれた目蓋の毛に塗りつけられると、二度と芽生えさせない。これを呑みこんでしまった人たちには、殺したてのガチョウの温かい血を飲ませよ。毒獣の毒の解毒剤となる。
4.41."1t"
マイニス(mainivV)について
4.41.2
マイニデス〔複数形〕は海の小魚である。これの頭は、焼いて灰にして、クマの硬脂といっしょに擦りつけられると、キツネハゲを治癒させる。単独では、イヌに噛まれた者や、サソリに刺された者に益する。拡大性潰瘍をも緩和させる。マイニス全体は、焼いて擦りつけられると、蟻いぼやいぼ、たこを取り除く。これのスープと肉は、食されると、健胃をもたらし、結腸やさしこみ患者を治癒させる。
マイニスの頭は、焼かれると、指にできた割れ目を緩和する。これのペーストは、口にできた化膿が洗浄されると、思いがけぬくらい療治する。
4.42."1t"
<メラヌゥロスmelavnouroVについて注49)>
4.42.2
メラヌゥロス魚。調理して食されると、鋭い視力をもたらす。これのスープは、服用されると、疝痛をともなう下痢患者を治癒させる。
4.43."1t"
<ミュアキア(muavkia)について>
4.43.2
ミュアキアは殻皮類である。これの煎じ汁は、服用されると、胃をやわらかくする。これの殻は、焼いて粉末にし、乾燥剤のようにふりかけられると、拡大性潰瘍や化膿を抑止し、古い潰瘍を療治する。蜂蜜といっしょに擦りこまれると、濃い眉毛を抜き、白斑をきれいにする。灰は甘い水で、白鉛〔スズ〕のように洗わ注50)ねばならない。
4.44."1t"
ナルケー(navrkh)〔シビレエイ〕について
4.44.2
ナルケーは海の魚で、多くの人たちがマルガス(margavV)と呼ぶところのものである。これは、まだ生きているうちに、頭痛のする人たちの頭部の長患いの患部に当てられると、痛みの激しさを止める。生きたままオリーヴ油の中に入れてどろどろになるまで煮て濾し、擦りこまれると、関節炎の痛みを緩和する。焼いて灰にして、乾燥剤のようにふりかけられると、外に出たヘドラを健康にする。これの硬脂は、羊毛に擦りこんでヘドラに当てられると、子宮のずきずきする痛みを抑える。女も硬脂からその性器に擦りこむと、男は彼女と交際することなく、まして全体として交合することなどなくなる。
4.45."1t"
<クシピアス(xifivaV)〔メカジキ〕について>
4.45.2
クシピアスは海の魚で、イウゥリス〔ニジベラ〕と同じだが、もっと小さく、ほっそりしている。これの油は、フダンソウ(seuvtlon)注51)および鉛といっしょに炙って、擦りつけられると、頭の膿漿やふけをきれいに除く。これの胆汁は、視力低下に関係する。
4.46."1t"
クシュトス(xuvqoV)〔スマリス〕について
4.46.2
クシュトスという魚がおり、一部の人たちがズマリス(zmarivV)と呼ぶところのものである。これの塩漬けにした頭は、焼かれると、余計な肉がついた潰瘍を抑え、拡大性潰瘍を安定させ、たこやこぶを消す。サソリに咬まれた者たちやイヌに咬まれた者たちにはなまがぴったりであるが、塩漬けにされたものは何にでも効く。
4.47."1t"
<オノイ(o[noi)〔ワラジムシ〕について>
4.47.2
水甕の下に集まるオノイは、多足の昆虫で、散らす効能・乾かす効能を有している。これは、練って、ブドウ酒といっしょに服用されると、排尿困難や黄疸を治癒させる。また、ひりひりする喉に蜂蜜といっしょに擦りこまれ、益する。耳痛にはバラ油といっしょに暖められたものを滴下せよ。
4.48."1t"
海のロバ(o[noV qalavssioV)について
4.48.2
「海のロバ」のことを一部の人たちは「多足(poluvpuV)」と〔言い〕、ある人たちは「八足(ojktavpouV)」と言う。これをまだ活きたまま空っぽの土鍋に入れて煮詰め、これから出る体液を、入浴時に古いブドウ酒といっしょに服用するよう、腎臓病患者たちや尿砂症患者たちに与えよ、そうすれば、治るであろう。砂のようなごく細かい石をも尿といっしょに排出するであろう。
4.49."1t"
<オルポース(ojrfwvV)〔ハタ〕について>
4.49.2
オルポースは海の魚で、万人周知である。これの血は、擦りつけられると、白癩を療治する。これの胆汁は、擦りこまれると、白斑を治癒させる。この魚は、食されると、消化のよさと健胃をもたらし、腎臓患者や排尿困難を治癒させる。これの頭にある石は、身につけられると、あらゆる頭痛を治癒させる。同様にこれの眼も、手に入れて身につけていると、あらゆる眼病と水腫の水のたまりをすっきり治癒させる。
4.50."1t"
<ペーラミュス(phlamuvV)〔マグロの子=メジ〕について>
4.50.2
ペーラミュスは海の魚であり、これは頭もろとも焼いて練って当てられると、拡大性潰瘍を安定させ、化膿を治療し、(ejxwcavdh)を散らす。これからできるペースト(gavroV)は耳痛を治癒させる。
4.51."1t"
<プネウモーン(pneuvmwn)について>
4.51.2
プネウモーンは無定型の海の生き物で、震えるもの〔?〕に似て、広がったり縮んだりする。これを練って、痛風患者に当てられると、痛みを止める。これをきれいな布に塗油して、天日に干して、夜これが現れるところを見よ、灯火のようである。
4.52."1t"
多足〔タコ〕(poluvpouV)について
4.52.2
多足〔タコ〕という生き物がいる、いわゆる八脚(ojktapovdion)である。これは、スープにして食べられると、腎臓患者や排尿困難者を治癒させる。これからとれる黒墨は、紙に書ける。
4.53."1t"
ポリュプリス(porfurivV)〔ムラサキガイ〕について
4.53.2
海のポルピュラ(porfuvra)はコンキュレー(kogcuvlh)とも言われ、小さなホラガイ(khruvkion)〔巻き貝〕で、小爪のようである。これは、少しいぶされると、子宮のどくどくする痛みを止め、窒息状態を退散させる。スープは、服用されると、胃をやわらかくし、便通を促す。ポルピュラのなまの肉は、スミュルナといっしょに練って痛みを感じる場所に当てられると、半面の痛みをすっきり療治する。結びつけ、縛りつけられると、あらゆる頭痛を治癒させる。
4.54.21t"
ペローリデス(pelwrivdeV)について
4.54.2
ペローリデスは海の小魚である。これとイチョウガニ〔Cancer pagurus, HA525b5〕とのスープは、ブドウ酒といっしょに服用されると、便通をよくする。
4.55."1t"
ラピス(rJafivV)〔「針」の意。Belone acus〕について
4.55.2
ラピスは海の魚、いわゆる(belonivV)で、多くの人たちが(zargavnh)と名づけているところのもので、長い口を持っていて、スピュライナ(sfuvraina)にやや似ている。これの口は、身につけられたり、いぶされると、ダイモーンを追い払う。これは焼いて、イリス香油といっしょに擂りつぶされると、キツネハゲに発毛させること、大いなる賜物であり治療薬のごとくである。
4.56."1t"
リナ(rJivna)〔ヤスリザメ〕について
4.56.2
リナは海の魚である。これの皮は、焼いて粉末にして擦りこまれると、結節を治癒させ、鼻からの出血を止める。
4.57."1t"
スコルピオス(skorpivoV)〔カサゴ Scorpaena scrofa, HA508b17〕について
4.57.2
スコルピオスは海の魚で、万人周知である。これをブドウ酒の中で窒息させ、脾臓患者に与えて服用させよ、そうすれば治癒されるであろう。女に与えて服用させれば、たちどころに出血するであろう。出血を止めたいときは、スコルピオスを煮て与えて喰わせよ、そうすれば治癒されるであろう。
スコルピオスの刺し傷を治癒するには、アカボラ(trivgla)〔HA543a5, 591b9〕を引き裂いて当てるか、あるいは、人間の尿をかけたり、鉛に当てたりするとよい。
4.58."1t"
サルペー(savlph)〔ヒラダイ, Boops salpa, HAIV_8〕について
4.58.2
サルペーは食用される海の魚である。これの頭の中にある石は、身につけられると最大の強壮剤となる。右の〔石〕は右の睾丸に、左の〔石は〕左の〔睾丸〕に〔結びつけられる〕。これの硬脂は蜂蜜といっしょに練って、恥部に擦りこまれると、交合の際の快楽はきわめて最美となる。
4.59."1t"
シュナグリス(sunagrivV)について
4.59.2
シュナグリスは海の魚で、万人周知である。これの歯は、歯の生えかけた子どもたちの身につけられていると、痛むことなく生え、結びつけられていると、あらゆる歯痛を治癒させる。これの胆汁は、アーモンドないしナッツの油といっしょに顎に擦りこまれると、歯の痛みを治癒させる。
4.60."1t"
<セーピア(shpiva)〔コウイカ〕について>
4.60.2
セーピアの骨は、ぎざぎざの目蓋〔の毛〕を削ぎ落とし、身体の毛を薄くすること、軽石(kivshriV)のごとくである。これ〔骨〕は海岸で入手するがよい。パップ剤として当てられた乾燥剤のように、白斑を持続的にきれいにする。
4.61."1t"
サルゴス(sargovV)〔タイ〕<とステッリネス(stelli:neV)について>
4.61.2
サルゴスは万人周知の海の魚である。これの歯は、身につけられていると、あらゆる歯痛を退散させる。これの胆汁は、擦りこまれると、女たちの乳房に豊富な乳をもたらす。同様にステッリネスも、食されると、女たちに乳をもたらす。ステッリネスのスープも、服用されると、同じ働きをする。ステッリネスは、腐らせ、あらかじめ抜かれた毛に、ケドリア〔ヒノキ科ビャクシン属の樹木の露滴、Dsc.I-105〕といっしょに擦りこまれると、これを二度と芽生えさせない。
4.62."1t"
トリグラ(trivgla)〔アカボラ〕について
4.62.2
トリグラは海の魚である。これの肝臓は、練って、海のトリュゴーンや大蛇やサソリの咬み傷や、ウツボの咬み傷に塗りたくられると、すっきり治癒させる。これの灰は、蜂蜜といっしょに当てられると、とげやそげを抜く。ブドウ酒の中で窒息させ、この酒が服用されると、難産を助ける。これのスープは、服用されると、同様にまたこれも食されると、毒獣を呑みこんでしまった者たちの助けになる。
トリグラの顎は、これがまだ生きているうちに切り取って、生きているこれは海に放して逃がしてやり、飲むときに女に与えると、恋情的な最大の同感と愛情を招来する。身につけられていると、あらゆる事態に対する成功をもたらす。これの眼を粉末にして、人の眼に擦りつけると、たちどころに視力低下を来す。これの解決法:この魚の胆汁は、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、鋭い視力をもたらす。
4.63."1t"
トリカイオス(tricai:oV)について
4.63.2
トリカイオスは海の魚である。これの頭は、焼いて、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、潰瘍の爛れを治癒させ、キツネハゲに発毛させる。オリーヴ油といっしょにどろどろにして、濾して、ラダノス〔ハンニチバナ科キストゥス属の植物、Cistus creticus、Dsc.I-128〕とホウライシダ〔Dsc.IV-136〕と混ぜられると、頭の抜け毛を止める。
4.64."1t"
トリュゴーン(trugwvn)〔アカエイ〕について
4.64.2
海のトリュゴーンの刺し針は、樹木に打ちこまれると、これを枯らす。建築中の家屋や舟にこれを打ちつけると、失敗し、完成することがない。家や舟の中に置かれると、失敗を明らかにする。なぜなら、あらゆる場合において大きな損害の原因だからである。
4.65."1t"
ミズヘビ(u{droV)について
4.65.2
ミズヘビは、たいていは、淡水に棲息するヘビで、湖を泳ぎ、水の表面にいる、邪悪な生き物であるが、ペルシア人たちやシュリア人の間では食される。これは頭の中に石を有している。これを捕獲したら、これを次のようにするがよい、そうすればそうのような石を吐き出す。〔すなわち〕これを上下に吊るし、これを月桂樹で下からいぶし、次の言葉を言って誓え:「汝を殺す神、我がしばしば誓願する神にかけて、汝の二つの舌に跪拝して誓う、余に石を与えなば、我は汝に不正することなく、汝のみずからなる場所に汝を帰さん」。そして石を吐いたら、絹の布の中にとって守れ。しかし、もしも石を与えることを聞き入れなかったら、切るものをとって、その頭部を裂け、そうすれば、石が頭に運ばれているのを見出すであろう。生き物の多くも別のものを持っているように。この石の効能は、次のようにすれば試せる:青銅の器に水を満たし、この石を容器に当てて結びつけよ。こうして、〔水の減り具合を〕印づけよ、そうすれば、水が毎日2コテュレないし1クセステース減っていることを発見するであろう。
ところで、わたしはかつて女の水腫患者にこの石を巻きつけ、病状から苦痛をなくさせようとした。とにかく、毎日、彼女の腹をパピュロスで計り、毎日、計測が常に4ダクテュロス足りないのを見出した。そして、胎が自然な嵩になったとき女を立たせ、次いでその石を取り除いた。というのは、石が巻きつけられたままにしておくと、内生する水分が抜けだし、身につけている者を乾燥させてしまい、あなたは益するよりもむしろ害することになるからである。ほどほどに巻きつけられているのがふさわしいのであって、これは水腫患者のみならず、足の流出や、涙の(ejpiforav)や、あらゆる部分にとってもそうである。流出する足とか頭は、自然の反感の道理(lovgoV)によって療治する。
このような自然と作用を、いわゆるミズヘビのこの石は所有している。
4.66."1t"
パグロス(havgroV)〔マダイ〕について
4.66.2
パグロスは最美の海の魚である。これの頭の中にある骨ないし石は、身につけられていると、呑みこまれたとげを引き上げる。これの胆汁は、眼に擦りつけられると、鋭い視力をもたらす。歯は、身につけられていると、歯痛を治癒させる。
4.67."1t"
ポーケー(fwvkh)〔アザラシ〕について
4.67.2
ポーケーは、四足の海の動物である。これの獣皮は、家の中であれ舟の中であれ、保管されたり持ちこまれたりすると、身につけている者にどんな悪も降りかからないようにする。なぜなら、落雷、ハリケーン、霰、諸々の危険、風、邪視、ダイモーンら、海賊、夜の災い、獣、爬虫類や幻視をを退散させるからである。これといっしょに、海の珊瑚(koravlion)石をも結びつけておかなくてはならない。
この獣皮でできた革靴を履いている者は、痛風であっても、治癒されるであろう。健康な者にしてかつて痛風になった者はない。舟の帆柱に括りつけておくと、落雷を逸らし、いつか海難に遭うこともないであろう。
ポーケーの脳味噌は、服用されると、ダイモーンを追い払い、神聖病を療治する。眼は、身につけられていると、あらゆる眼病を治癒させる。これの右眼は、身につけている者を、愛される価値の或る者・成功者となす。舌は、履き物の下につけられていると、勝利をもたらす。鼻のまわりの毛が身につけられていると、また心臓も、最大の成功と勝利のまじないとなる。
鼻の中の大きくてごわごわした毛を、あぶらぎった獣皮に包んで身につけて、敵のまっただなかに突入したら、万人が彼を友として歓迎するだろう。心臓は、身につけられていると、同様に凝乳も、あらゆる困難を退散させ、身につけている者にあらゆる善をもたらす。ポーケーの凝乳を結びつけている者は、法廷であらゆることに勝訴する。なぜなら、行動における勝利のお守りだからである。 肉は、食されると、また血も、ひそかに乾燥させて、ブドウ酒といっしょに服用されると、あらゆるてんかん、狂気、眼眩み、あらゆる病状を治癒させる。胆汁は、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、あらゆる眼病を療治する。ポーケーの心臓や、舌の先や、鼻の毛や、右眼や、凝乳をあぶらぎった獣皮に包み、身につけていると、陸や海の戦争においてあらゆることに勝利する者となるであろう。というのは、あらゆる病状や病気が、また、あらゆるダイモーンや獣が、彼を避けるであろうから。端的に云えば、あらゆる点で何か善きものである。
4.68."1t"
ケローネー(celwvnh)〔カメ〕について
4.68.2
陸のカメの血は、乾燥させて、水によって服用されると、てんかんを治癒させる。硝石といっしょに練って擦りこまれると、癩や痒みを治癒させる。
海のカメの血は、あらゆる獣の解毒剤となり、乾燥させて服用されると、あらゆる獣の咬み傷を治癒させる。これも卵は、食われると、てんかん患者や精神異常者(selhniakoiv)を治癒させる。
4.69."1t"
カンノス(cavnnoV)〔オオグチ〕について
4.69.2
カンノスは海の魚である。これは調理して食されると、鋭い視力をもたらす。頭に擦りこまれると、キツネハゲやふけをぬぐい去る。これの胆汁は、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、眼のなかの瘢痕を治癒させる。きわめて古い白斑をもきれいにする。
4.70."1t"
クレマ(clevma)について
4.70.2
クレマの眼は、シャクヤクの根といっしょに身につけられていると、最高の成功者をつくる。胆汁は、擦りこまれると、あらゆる拡大性潰瘍を追い払う。肝臓は黄疸症状を追い払う。
4.71."1t"
ケーロス(chlovV)について
4.71.2
ケーロスは海の魚である。これの硬脂は、コロハ〔(thvliV)Dsc.II-124〕の液汁といっしょに練って擦りこまれると、手にできるひび割れを治癒させる。
4.72."1t"
コイロス(coi:roV)〔ブタ〕について
4.72.2
海のブタがいる。これの皮は、家の中に保存されると、あらゆる邪視やダイモーンやガス〔鼓腸〕を追い払う。
4.73."1t"
ケリドーン(celidwvn)〔トビウオ〕について
4.73.2
ケリドーンは、驟雨のときに海の浪の上を飛ぶ小さな小魚である。というのは、これらがたくさん同時に飛びあがり、飛びこむとき、船乗りたちは知っているのである、海に風や霰が起こることを告げていることを。
これを舟の中に捕獲して、乾燥させて身につけていると、あらゆる事柄や言葉において、全力疾走者、機敏な者、成功者となる。
4.74."1t"
クリュサポス(cruvsafoV)について
4.74.2
クリュサポスは海の魚である。これの眼は、結びつけられると、三日熱、四日熱を追い散らす。頭の中にある石は、喉に結びつけられると、肺癆患者を自然に治癒させる。これの胆汁は、きれいな道具のなかにつけられたり、香油といっしょに擦りこまれると、器量のよさをもたらし、交合の際の適切さや快楽をもたらす。眼は三日熱を治癒させ、あらゆる眼病をも〔治癒させる〕。
4.75."1t"
プサロス(yavroV)について
4.75.2
プサロスは海の魚である。これは、幼魚とスープも食され、またブドウ酒といっしょに服用されると、美姿と健胃をもたらす。
4.76."1t"
プシュッロス(yuvlloV)について
4.76.2
海岸で発見されるプシュッロスは、バラ油かブドウ液香油〔Dsc.I-67〕で煮られると、耳痛を益する。海のプシュッロスは、プシュッロス〔ノミ〕のいる家で、植物のコニュザ〔Dsc.III-136〕やラナといっしょに海水で煮ると、もはやその家にプシュッロス〔ノミ〕は出なくなる。海のプシュッロスを猟師が身につけていると、漁に大いに成功する。その際は、イルカの皮に包まなければならない。
4.77."1t"
オーミス(wjmivV)について
4.77.2
オーミスは海の魚で、いわゆるダウス(dauvV)のことである。これの頭は、焼いて、蜂蜜といっしょに擦りこまれると、ヘドラにできたひび割れを療治し、長い間に硬化した口蓋炎に益する。
4.78."1t"
魚属の卵について
4.78.2
魚属の卵は、塩漬けにして食されると、あらゆる病気や病弱を療治し、あらゆる食欲不振解消する。とりわけ、ボラ〔Cyran.IV-31〕やスズキ〔Cyran.IV-39〕やウツボ〔Cyran.IV-20〕や、同属の〔卵〕はそうである。新鮮なものは、塩漬けにして食されると、あらゆる急性症を治癒させる。
これら〔の卵〕も、神的自然が、人間どもの益になるよう、大気中、地中、水中のあらゆる生き物に授けられているが、それは、腐敗しないものは何ひとつ生命に残されていないためである。いやそればかりか、鉱石にも草木にも、植物にも、水にも、浄福の自然はみずからの効能を証示している。そして、必要不可欠の賜物はわれわれに恵まれているのであり、それなくしては生きることができない。例えば、水、火、いやそればかりか、生命の必然性、すなわちわれわれが呼吸する大気、太陽、日、そしてこれらに付随するものらである。他方、生に必要不可欠でないものらの方は、特別の得難さを〔自然が〕置いたのは、必要不可欠性に欠けるものは、困窮して探求されるためである。例えば、高価な鉱石や金属がそうであるが、それらについては続いて詳述しよう。しかし先ずは、地中の金属について研究調査しよう。
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