キュラニデス第4巻
ヘルメス文書
キュラニデス
第5巻
Cyranides V
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<キュラニスの第5巻>。植物類について。
5.1.3
アルゲモーネー(ajrgemwvnh)注52)は、オリーヴ樹に等しい大きさの根を持った植物である。これは洗浄や消散の効能を有する。乳鉢で砕いて、雄ヤギの硬脂と混ぜて、悪性の出来物に塗布されると、どんな〔出来物〕でも治癒させる。これの液汁は、蜂蜜といっしょに、濃厚な粘着性をもつにいたるまで煮つめて、塗布されると、犬に噛まれた者、獣に咬まれた者、痔瘻を治療する。乾燥したのを砕いて、ふりかけられると、非常に深い出来物の空洞を塞ぐ。これの煎じ汁は、服用されると、胎児を排出する。瘰癧、sklhriva、腫瘍を消散させる。身につけられていると、身体のお守りになる。
〔Dsc. II-208〕
5.2.2
バルサモス(bavlsamoV)注53)という植物〔樹木〕がある。これの幹は乾燥していて、わずかに熱をもつ。これの樹液は、はるかにわずかである。そういうわけで眼に塗るだけで、かすみや白斑や、瞳を暗化させる物質をぬぐい去り、きれいにする。これの実は微細で暖める効果を持つから、咳や肺病患者や喀血患者眩暈に効き目があるが、その際には水といっしょに服用される。粉末は押し当てられると、胎児を堕ろし、通経をうながし、外陰周辺炎を治癒させる。ブドウ酒といっしょに服用されると実は尿通をうながし、結石を砕き、肋膜炎や肺炎を治癒させ、獣に咬まれた者やサソリに刺された者をも〔治癒させる〕。蜂蜜といっしょに〔軟膏のように〕塗りつけられると、表面の腫れ物をふさぐ。これから採った油は、耳に滴下されると耳痛をとめ、難聴を治癒させる。
〔Dsc. I-18〕
5.3.2
グリュキシデー(glukisivdh)という植物があり、これはパイオーニア〔シャクヤク〕とも呼ばれ、ペンテボロンとも〔呼ばれる〕。これの根は苦く、やや辛く、乾燥させ収斂性がある。グリュキシデーと云われるのは、これの効き目による。すなわち、月経をうながし、肝臓や腎臓や胃痛(stonmacon daknwvmenon)に効き目があり、排尿困難や結石や膀胱の腫れ物を治癒させる。
〔Dsc. III-157〕
5.4.2
ディプサコス(diyakovV)〔Eruca sativa〕という植物(Dipsacus sylvestris)がある。棘だらけの花をつける。これの根は乾かす作用と下剤作用がある。これは、ブドウ酒と蜜蝋といっしょに煮沸され、どろどろになって濃い軟膏がとれるまで煎じられ、指で裂痔や痔瘻に挿入されると、療治する。この薬は真鍮の容器に入れて保存されねばならない。また、水とともに煮られ、練って膏薬として塗られると、獣の咬み傷や犬の咬み傷を治療するし、瘰癧や黄痃を癒し、下痢気味の糞便の潰瘍を療治する。
〔Dsc. III-13〕
5.5.2
エウゾーモン(eu[zwmon)という植物がある。ひどい臭いがするが、食用になる。煮られると臭いを取り除く。刺激性の効能と、暖めガスを発生させる効能を持っている。それゆえまた催淫作用もある。栽培種よりも野生種の方が強力である。というのは、水といっしょに茹でて服用されると、疝痛をすっきり治すから。種子は粉末にして水蜜といっしょに服用されると、結石患者や滴尿性排尿困難な患者や尿通困難者を治癒させる。患者には、4日間、空腹時と就寝時に服用させよ。この植物は食されると、健胃をもたらす。ぶどう酒といっしょに種子を続けて服用されると、不妊となる。またサソリの咬み毒を中和し、腹の虫を亡き者にし、黄疸患者を療治する。蜜乳といっしょに練って、膏薬として塗布されると、折れた骨を引き出す。同じ種子を蜜といっしょに塗布しても、眼球内の斑点をきれいにする。
〔Dsc. II-170〕
5.6.2
ゾーエーコス(zwvhcoV)という食用植物がある。少し辛く、万人周知である。これの菜汁を練って、胸膜炎患者に与えて服用させると、治療するであろう。バラ油と同種の菜汁とをいっしょに熱病患者に塗れ、そうすれば消えるであろう。剣とか材木とか石に撃たれたら、この植物をオイネライオン〔ミルクを混ぜたブドウ酒〕といっしょにフライパンに入れて煎じ、〔???〕で傷口を暖めよ、そうすれば炎症を起こさないであろう。この植物の根は、服用されると、毒クモに咬まれた患者やサソリに咬まれた患者を療治する。また葉も、傷口に軟膏として塗られると、同じ働きをする。煮てにしろ生(なま)にしろ食されると、女性の乳を促す。
〔Dsc.になし。?〕
5.7.2
エーリュンギオン(hjruvggion)〔Eryngium creticum〕という植物は、暖め乾かす効能を持ち、自然本性的に中庸である。これの根は、ぶどう酒といっしょに服用されると、尿を動かせ、排尿困難な患者たちを治癒させ、結石を砕き、疝痛を止め、膀胱の腫れを療治し、致命的な毒薬を効き目なしとし、獣に咬まれた者や爬虫類に咬まれた者たちに益する。
〔Dsc. III-24〕
5.8.2
トゥリダクス(qrivdax)〔Lactuca scariola、トゲジシャ〕は、水分が多く、冷やす効能を持った、食用野菜で、万人周知である。これはまた多くの人たちの間でマイウゥリ(mai&ouvli)とも言われる。これは胃を回復させる。オクシュガロンやラサルといっしょに食されると、意欲感(o[rexiV)を動かせ、たくさん食されると、便通を促す。少量であれば、胃を保全し、コレラの障害を解く。酢蜜といっしょに食されれば、下痢に益し、また、夢をもたらす。これの種子は、眉間に塗布されれば、火のような頭痛を解消する。
〔Dsc. II-166〕
5.9.2
イオン(i[on)〔Viola odorata〕という植物は、効能上冷やす。これは、練って軟膏として塗られると、炎のような炎症、とりわけ母胎の〔炎症〕を止める。根は水といっしょに茹でられると、子宮の疝痛や痛みを止める。さらにまた、酢といっしょに塗布されると、頭痛にも作用する。〔???〕
〔Dsc. IV-122〕
5.10.2
クラムベー(kravmbh)〔Brassica cretica〕は万人周知の食用野菜であり、自然本性的に乾かす効能を有する。これは、ブドウ酒といっしょに煎じて、空腹時に1コテュレ摂ると、腸をやわらかくする。傷は、最新のものならず古い傷も、生のまま練って、火に2度軟膏にして塗られると、療治する。ブタの古い硬脂ときわめて古いオリーヴ油といっしょに練って軟膏にして塗られると、胸の痛みを止め、解きがたい重みをも。これの種子は、服用されると、腹の虫を亡き者にする。これの根と幹と、硬脂とともに焼かれた灰は、のどちんこに滴下された部位をおさえる。「葡萄の房(stafulhv)」と言われる部分の全体も両脇もその苦痛を治療する。
〔Dsc. II-147〕
5.11.2
レウクアカンタ(leukavkanqa)〔Crisium tuberosum〕は、乾かす効能と暖める効能をほどよく持った植物である。これの根は、服用されると、喀血患者や胃病患者に効く。利尿作用もある。膏薬にして塗られると腫れ物をおさえ、治療する。またこれの煎じ汁は、すすぎに使われると、歯痛を止める。服用されると、咳に益する。練って塗布されると、腺患者を治療する。服用しかつ括り付けられると、獣に咬まれた者たちにも効く。
〔Dsc. III-22〕
5.12.2
マラトロン(mavraqron)〔Foeniculum vulgare〕〔ウイキョウ〕は食用植物で、自然本性的に乾かす作用と暖める作用がある。これの菜汁は、耳に滴下されると耳痛を治療する。服用されると吐き気を止め、乳の出がよくなる。根は(ptisavnh)といっしょに煮て、空腹時に服用されると、腎臓患者に益する。蜂蜜といっしょに練って当てられると、犬の咬み傷を療治する。葉の液汁塗られると、眼の充血やトラコーマを治療する。ぶどう酒といっしょに種子を粉末にして服用されると、サソリに咬まれた者や獣に咬まれた者を助ける。
〔Dsc. III-81〕
5.13.2
ナルテークス(navrqhx)は万人周知の植物で、暖める作用が適度にあり、収斂作用を持っている。これの種子と茎は、緑のうちに食されると、健胃剤となる。それゆえにまた疝痛、咳、喀血にぴったりである。菜汁はオリーブ油といっしょに塗られると、発汗を促進し、熱発をとめる。
〔Dsc. III-91〕
5.14.2
クシュラロコン(xulavlocon)、一部の人たちはクシュラロエー(xulalovh)と謂うが、インドの樹木で、甘い最上の芳香性を有し、かじられると、口をよい匂いにする。香料でもある。これの根は1ウンキアだけ服用されると、胃のだぶつきや衰弱を治癒させ、赤痢、肝臓病、肋膜炎にぴったりである。
〔Dsc. I-21, ajgavlocon〕
5.15.2
オリオセリノン(ojriosevlinon)〔パセリ〕は、他の人たちはペトロセリノン(petrosevlinon)と〔いう〕が、形も効能もセリノン〔ハイキンポウゲ、Ranunculus repes〕に類似している。ただし、もっと強力である。これは、食されると誇腸をやわらかくし、利尿効果を持つ。また煮て服用すれば排尿困難を止め、尿滴瀝や腎臓病を治療する。煎じ汁は、食しかつ服用されると、腎臓の痛み(yualgiva)に効く。
〔Dsc. III-76〕
5.16.2
ペーガノン(phvganon)〔ヘンルーダ〕は万人周知の植物である。栽培種・野生種ともに暖め乾燥させる働きがある。尿通をうながし、濃い粘つく液を切る。原因が何であれ、胸部の痛みを止め、腰や脇腹の痛みを、服用されれば内部から、当てられれば外部から、治癒させる。ペーガノンの種子ないし葉は、干し無花果2個といっしょに空腹時に摂られると、毒薬を飲んだ者たちに、効き目なしとする。ペーガノンの種子ないし葉はくすべられると、獣たちを退散させる。練って塗りこめられると、きたない潰瘍を治癒させる。ペーガノンの葉は、最もきつい酢の中にひたし、バラ油といっしょに練って眉間に塗りこめられると、頭痛を止める。
〔Dsc.III-52, 53〕
5.17.2
ダイコン(+Pavfanon)は、暖める効能をもった食用植物である。ただし、野生種は、多くの人たちの間で(rJafanivV)とも言われるもので、効能の点で栽培種よりも強力な実を生じ、その結果、(uJpwvpia)をも青黒い斑点(pelidnwvma)をも療治する。毒薬を摂った者たちには、空腹時に食されると、摂られたダイコンが危険なき者たちとなす。これの液汁は、塗りつけられると、シラミやナンキンムシを除く。液汁は、入浴の時に蜂蜜といっしょに空腹時に食されると、黄疸患者を治癒させる。同じものが腎臓病や排尿困難を治癒させ、いやそればかりか、滴状性排尿困難をも。咳に対しては、ダイコンが杯状に彫られて、第一流のオリーヴ油で満たし、花〔炎症〕に当てて、煮て、次いで、温めて、オリーヴ油といっしょに服用され食されると、はなはだ有益である。
〔Dsc.II-137, 138〕
5.18.2
スコロドン(skovrodon)〔ニンニク〕は辛くてつんとする〔刺激がある〕。煮て食されると、尿通をうながし、内臓をきれいにし、暖める。なまで食されると、爬虫類から咬まれないよう護り通し、咬み傷に塗るつけられると、獣に咬まれた者たちを益する。頭にできた外傷を根治するのは、ニンニクの汁液が、ガチョウの硬脂やコエンドロ〔Dsc.III-71〕といっしょに練って当てられるがよい。これの液汁は、オリーヴ油といっしょに滴下されると、耳痛を止める。ニンニクが煮られて、練って当てられると、こめかみの痛みを治癒させる。練って当てられると、苔癬や眼の斑点を消散させる。ただし、安全性のためにニンニクの害も知っておく必要がある。〔すなわち〕〔吐いた〕息によって〔?〕視力を低下させ、胃に不正し、渇きを掻きたてるのである。
〔Dsc. II-182〕
5.19.2
トリボロス(trivboloV)はトゲのある植物である。これの葉は、蜂蜜や薔薇蜜といっしょに塗布されると、扁桃炎〔?shpedovnaV〕や口の腫れ物、鵞口瘡を治癒させる。根は服用されると、尿通をうながし、腎臓病を治癒させる。
〔Dsc. IV-15〕
5.20.2
ヒュッソーポン(u{sswpon)は神聖このうえない植物である。これは肺炎や腎臓病を治癒させ、衰弱(fqivseiV)や咳を〔治癒させる〕、そのさいには、ペーガノン〔ヘンルーダ〕や蜜蝋といっしょに服用する。ヒュッソーポンの煎じ汁は服用されると、腹の虫を殺す。腸の通じをうながす。粉末は鼻孔に近づけられると、卒倒を回復させる。酢といっしょに口をすすぐと、歯痛を治癒させる。炭酸ナトリウムといっしょに〔軟膏のように〕塗りつけられると、脾臓患者や水腫患者を治療する。
〔Dsc. III-30〕
5.21.2
ピレタイリオン(filetaivrion)という植物がある。これはポレモーネー(polemwvnh)とも称される。これは乾燥させる自然本性を有している。ブドウ酒といっしょに服用されると、坐骨神経痛患者や赤痢患者を治癒させ、食されると脾臓病を治療し、内部の症状を取り除いて消す。
〔Dsc. IV-8〕
5.22.2
カマイダプネー(camaidavfnh)という植物がある。これの茎は栽培種でなくても食され、根は服用され、脾臓患者たちや肝臓患者たちや水腫患者たちを治癒させ、痛尿をうながし、腎臓や膀胱内の結石を砕いて尿といっしょに排出させる。
〔Dsc. IV-149〕
5.23.2
プシュクリス(yucrvV)は、カルダイオイ人たちの土地に生える植物である。プシュクリスと言われるのは、自然以上に冷たいからで、それゆえ、火のような炎症を治療する。これの液汁は、バラ油と混ぜて塗布されると、熱病を自然に撃退する。根は焼いてその灰がふりかけられると、火傷をも治癒させ、古い腫れ物や瘢痕を治療する。
〔Cf. Dsc. IV-70〕
5.24.2
オールミノン(w[rminon)は、外見はニガハッカ(prasivon)に等しい植物である。これの種子は、服用されると、性交欲を刺激する。これの葉は、練って〔軟膏のように〕塗りつけられると、腫れ物の瘢痕を治癒させる。これの液汁は、蜂蜜といっしょに塗布されると、眼の肥厚病(pacuvthV)を療治する。根は種子といっしょに〔軟膏のように〕塗りつけられると、首の腺の瘰癧や浮腫を療治し、とげを抜き、毒獣に刺された者たちや爬虫類に咬まれた者たちを治癒させる。
〔Dsc. III-145〕
END |