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back.gifソロモーンの遺訓 06

魔術書

ソロモーンの生涯





[底本]
TLG 2679 007
Vita Salomonis Hagiogr.
C.C. McCown, The testament of Solomon, Leipzig: Hinrichs, 1922: 88-97.




(88)

ソロモーンについて

Ⅰ. ダウエイドの息子ソロモーンは、ウゥリアース〔ウリヤ〕の妻から生まれた。かくなった所以は、ダウエイド王がウゥリアースの妻が浴場で裸なのを覗いたためである。するとサタナースがその心に、欲求に対する恋情として入りこんで、彼女に対して姦淫した。2. そうして、姦淫の仕業をしでかしたのみならず、姦淫された女の夫ウゥリアースを殺害するまでに及んだ、神に愛された者、偉大な予言者、神に選ばれし者、万人にとって最も偉大な者、詩篇の美飾者、旧約・新約の旗手、威名鳴り響く神君が。なぜならベリアルつまり悪のはじめたる敵に欺かれたから、初めに造られたあのアダムのように欺かれたからである。3. さて、ウゥリアースが殺害されたのは、ダウエイドから敵に遣わされ、彼〔ダウエイド〕の謀によって敵の前面に配置され、彼〔ウゥリアース〕一人が取り残され、助けを得られぬようにして殺害されたのである。これこそが出来したことであった。

 4. ところで、これらのことが起こる前、の天使が予言者ナタンのもとにやって来た、彼に曰く。「予言者ダウエイド王のもとに行け、そうしてサタナースの神法に悖る所業を為すべからずと彼に教えよ」。5. そこでナタンは出かけ、ダウエイドのもとに行こうとしたが、ベリアルに邪魔された。というのは、屠殺されて裸の人間を悪魔が見つけ、これを引っ張って、ナタンの道中に置いたのである。6. 死人を見たナタンは、これを埋葬しようとした。かくてこの埋葬のために、ダウエイドはサタナースの神法に悖る所業を成就したのである。そうしてこのことを後から知って、(89) 預言者ナタンはひどく歎いて言った。「わしのせいでこの罪が生じたのだ」。7. するとまたもや彼のもとに天使がやってきて言った。「そなたのせいでこの躓きが起こった、そなたのせいで匡正もあるだろう。されば出かけて行き、彼の無法を糾弾せよ」。そこでナタンは天使に向かって言う。「貧しいわたしがどうして王を糾弾できましょうや?」。8. すると天使が彼に向かって謂う。「わたしがそなたといっしょに居よう。そなたは告知せよ、わたしは彼に恐れをもたらそう」。9. かくてナタンはダウエイドのもとに出かけて行き、彼に跪拝して、云った。「主人なる王よ、私は或る者と争訟しており、御身にそれを云いにまいりました」。そこで王が彼に向かって言う。「その裁判は何か?」。10. そこでナタンが喩えをもって言った。「私は私の主人なる者を主人として持っておりますが、〔その主人は〕雌羊10頭を所有しております。そしてそれらに好機嫌です。他方、私は雌羊1頭を持っております。ところが、10頭を持つ者が私からそれ〔1頭の雌羊〕を取って、これを喰らい尽くしたのです」。11. このとき、ダウエイドは、自分のために拵えられた話を認知して、自分の寝椅子から立ち上がり、ひどく嘆息して涙ながらに言った。「それをしでかしたのは余である」。そうして、徹夜して50篇の詩篇を言いはじめ、ナタンも彼に向かって〔〕。そうして主なる神はその罪を取り除かれらのである。

 12. ダウエイドはウゥリアースの〔妻〕からソロモーンを子としてもうけた。そうして自分の父親の王国を受け取り、知恵と知慮の極致に到達したのであった。かくして彼の系譜の鎖は、われらの主イエースゥス・クリストスの神的肉化にまでも届くのである、その所以は、彼〔イエスゥス・クリストス〕自身も部族出身であり、いやむしろ、神君ダウエイドの腰から出たのは、いわゆる予言が満たされるためである、曰く。「支配者はイウゥダから、嚮導者は彼の腿から絶えることがない、蓄えられたものが来るまでは」〔創世記49章10〕。13. ところで、ソロモーンの知恵は、あの最初の人間アダムの知恵に似ていた。この知恵は、片や驚嘆すべきシラクから教育され、片や上なる摂理から〔教育された〕ものである。そしてこの者の知恵を主は天使たちに示して言われた、「???」、

(90) Ⅱ.この知恵に勇み立って霊妙不可思議なソロモーンは、完美にして地上のいかなる奉納物よりすぐれた家を、主なる神のために建立することを望んだ。かくて主なる神の意向、知恵、神の創造によって家ができ建立されたのは、知者ソロモーンとその熱意のおかげである。かかる次第で、大いなる荘厳さをもって、このような神殿を彼自身とその子どもたちが建立したのである。2. ところで、彼の子どもたちの中で一人、誰よりも最も熱心な者をもった。????3. そこで或る日のこと、これに向かって謂う。「どうしてそんなに無愛想なのか? 現象の何がそなたを苦しめるのか? 余からすべて2倍を得ているのではないのか?」。4. すると少年が王に向かって謂う。「食べ物は、主人たる王よ、私にくださるものをみな使い果たします。それらは何ひとつ嬉しくありません、というのは、邪悪で不浄なダイモーン的なものが、夜中私をひっ捕まえて、さんざんに苦しめ、私の指の先をしゃぶるのです。そうして私の見てくれを、ご覧のとおり、不愉快で憂鬱なものに仕上げるのです」。

 5. そこで、このことばを聞いてソロモーンは、この〔子〕のために主なる神に代願と祈願を行った。6. すると、青銅の指輪の印章を持った大天使ミカエールが彼のもとに遣わされ、このような印章をソロモーンに与えた。7. そして謂う。「その子にしかじかの印章を授け、その寝台にこれを保持せしめよ、そうして彼のもとに悪魔がやって来たら、印章で以てその胸を打たしめよ、そうして縛り、これを汝のもとに連行せしめよ。というのは、自身と神の印章で以てあらゆるダイモーン的なものを従わせ、人間どもともども、大勢のダイモーンらを使役して、神の家を建造するであろう」。8. そこでソロモーンは印章を受け取り、聖なる神に感謝した、天使は彼のもとを立ち去った。9. そこで子どもを呼び寄せ、印象を与えて、10. 天使から言いつけられたことを知らせた。11. そこで子どもは神の印章を受け取り、夕方になると、 (91) 自分の寝台に横になった、するといつものとおり彼のところに悪魔が現れた。12. そこで音も立てず、子どもは神の印章で敵の心臓のあたりを殴りつけた。13. サタナースは哀れな声で叫んだ。「情けなや、情けなや、ソロモーン王の奴隷になるとは」。そこでこれを縛りあげて、王ソロモーンのもとに連行したのである。

 そこでこれを観て〔ソロモーンは〕謂う。「われわれに云ってくれ、邪悪で不浄な霊よ、そなたの呼び名は何で、そなたの働くは何か?」。すると悪魔が王に謂った。「オルニアースと呼ばれている。おれの働きとは、万事になくてはならんことだ」。2. そこで王が言う。「そなたの力を挫く天使は誰か?」。すると悪魔が。「大いなる大天使ミカエールによって、おれとおれの力は挫かれる」。3. そこで王が謂う。「主の神殿とその建造のために、何か有用なことを実行することができるか?」。すると悪魔が。「この印章を使って、あらゆるダイモーン的なものをおまえの前に集結させ、おまえの意思に従わせ、建造させることができ、連中の隷従と服従によって、おまえは万能の主の神殿を建立できるだろう」。4. これを聞いてソロモーンは、主なる神に感謝し、ダイモーンのオルニアースを促し、印章と子どもを伴って退出し、全ダイモーンを集合させた。5. そこで〔オリニアースと子どもは〕退出し、全員を集合させ、これを王ソロモーンのところに連れてきた。そして万事を王において成就すると同時に、これ〔王〕に跪拝した。6. そこで王はダイモーンたちの一人一人に、名号と働きと、聖なる天使たちのいかなるものによって挫かれるかを尋ねた。そうして、連中が神殿建設に従事することを赦した。そうして、知者ソロモーンから配置された当の隷従に一人一人が従事した。8.(92)

4 (6)2.

(93)9. さて、5日が経ったので、老人が王のもとにやって来た、うなだれ、悲しみにくれ、目にいっぱい涙をためて謂う。「わが息子は死にました、死にました、もはや彼を謁見することはかないません。私めを、このうえなく重い歎きと、心の苦しみと、堪えがたい嘆息の内に置き去りにしました。もはやあやつを見ることかないませぬから。もはやあやつの顔を目にすることかないませぬから。光なき、蔭暗き、暗黒の場所に隠されてしまいましたから」。10. そこでこのことに驚倒して王は謂う。「いつ亡くなったのか?」。すると老人が謂う。「御身のお裁きの場にやってまいりました日から3日後に亡くなりました」。11. そこで王が言う。「平安のうちに下がるがよい、御老体よ、慰めの父、主なる神は、苦悩する者らに対する励ましが、そなたの心がもはや苦しむことのないよう願うがよい。というのは、そなたの息子は人間であり、子は人間として死すべき存在であることを記憶せよ。されば苦しむな、なぜなら????」。これを聞いて、老人は心を元気づけられて、退出した。

 12. そうしてオルニアースを呼び寄せて謂う。「われらに云ってくれ、どうして人の死を知っていたのか、不浄な精霊であるのに」。13. するとオルニアースが言う。「われらは、主人よ、天上から投げ落とされたのだ、神の天使でもあり、光をまとったものでもあるのに。今は、ダイモーン、不浄にして闇の精霊となっていることは、ご覧のとおり、また、多分、神の公共奉仕者でもある。今はおまえの従僕にして助手に(神の命令で)なっている。14. されば、天上から落下して、冥府までも恐ろしく投げ落とされ、今度は天上の下の層に引き上げられて、天使たちの会話を聞き、彼らから40日前の人間の死を知った。15. そうして彼らから聞いたうえでわれわれが気にかけ、努めたのは、人間の死を火によってか水によってか、崖によってかと管理することだった、そこ〔死〕から何らかの分け前に与るように。16. しかしわれわれは天上の層に留まれる足をもたないので、樹木の葉のように落ちるのだが、人間どもには (94) 流れ星のように思われるのだ、そうやって人間どもから栄化されるのだが」。17. そこで王が、「流れ星も、星と思われるものらも、星であるのではないのか?」。するとオルニアースが、「違うのだ、王よ。天上の星々は不死で、確乎不動で、動かないのだから」。18. するとこれを聞いて王は、オルニアースを釈放して、自分の仕事に従事させた。

 Ⅴ. 神殿は建造された。地上の王たちは皆、???の支配者たちも、「南」の女王である知者シビュッラも、自らが主の神殿を見物しにやって来て、自身も神殿の建造用に高価で語るに足る材木を寄進した。

  さて、アラビア人たちの王が王ソロモーンに書簡を送り、その内容は以下のごとくであった。「ソロモーン王へ、ご機嫌よう。御身の王国をして知らしめよ、われらの国土に難儀なダイモーン的な力が住みつき、3日にわたって強力な風を惹起し、家々、樹木、丘陵を根こそぎにし、人間どもを滅ぼしています、これ〔人間ども〕を崖に、水中に、火中に投げこんで。2. されば、御身の力においてよろしければ、〔ひとを〕派遣し、かかる国土からやつを抹殺し、根絶やしにしたまえ。そこで、御身の王国がこれを為したまえば、神殿の建造用に金・銀・銅125タラントンを寄進いたします」。

 3. さて、書簡を読むと王は、印章を持った少年に、彼〔アラビア王〕のところですぐに捕まえるよう指示した。そして出かけるときに謂う —「アラビア人たちの王のところにすぐに赴け、そうして印章と、最速の駱駝1頭と、新しい皮袋を汝に伴え。

4. そうして、邪悪な風が吹くところを汝に示さしめよ。そうしてその場所を領して、その皮袋をその口を開けて巣穴の割れ目に当て、邪悪な霊が (95) 出てくる日を待て。5. そうして、皮袋が風のように膨らむのを見たら、その皮袋の口を指輪で封印せよ、そうしてこれを駱駝に載せ、すぐにわれわれのところに伺候せよ」。

 6. かくして少年は出かけて行き、万事ソロモーン王の意向どおりに実行した。7. しかし、彼が帰るとき、ダイモーン的なものが言う。「おれのために開けてくれ、おお、少年よ、そうしたら、薄緑色の石や黄金が隠されている場所を、お礼として教えよう」。しかし少年が言う。「先ず、王のところに出向こう、そうしてその後で、彼が命ずるなら、そうしよう」。8. ????。9. そこで王が謂う。「何者か、また、そなたの名号は何か?」。すると相手が謂う。「ダイモーン的なものだ、エピッパースと呼ばれる」。10. そこで相手に言う。「余のために何か有用なことを実行できるか?」。するとエピッパースが、「人間どもやダイモーンたちが失格審査した隅石を持ち上げ、これを隅の頭に置くことができる」。11. そこで王は、エピッパースにそれに辛労するよう養った。そうして、王や居ならぶ人々が環視する中、それを実行した。12. そこで王は吃驚して、他にも彼に似た精霊を知っているかどうかエピッパースに尋ねた。するとエピッパースが言う。「 13.14.

(96) Ⅶ. そこで王は再びオルニアースに言う。「他にもダイモーン的なものがいるか?」。するとオルニアースが言う。「大勢いる、おお、王よ。だが、中でも最大の力を所有しているのが1柱いる」。2. 「それはどんなのか?」と王が謂う、「最大の力とはどんなのを持っているのか、そやつの名号は何か?」。オリニアースが言う。「名はサマエールだ、おお、王よ、ダイモーン社会の支配者だ。しかしおまえにとって幸いなのは、おお、王よ、彼を見ないことだ」。3. すると王が、「これについておまえの心配することは何もない、邪悪で不浄な精霊よ、さあ、印章を取って、そやつをここ、余の所にすぐに連れて来い」。そこでオルニアースは神の印章を受け取って、王の意向を満たすため、出かけて行った。4. そこで王は、玉座に坐し、冠と飾り紐に飾られ、サマエールを連れたオリニアースを迎えんと、王笏と王?を方手ずつに持った。5. さて、サマエールとオルニアースとが王のもとにやって来ると、王がサマエールに向かって謂う。「何者か、またそなたの名号は何か?」。そこで相手が謂う。「サマエールと呼ばれている。ダイモーンたちの社会の支配者である」。6. そこで王が。「余をどうすることができるのか?」。すると相手が謂う。「おまえに息を吹きこむこと、おまえを地の果てに連れて行くことができる」。言葉と同時に、彼に息を吹きこみ、地の果てに連れて行った。

  すると王の噂が地の端々まで広がり、地の王たちや支配者たちがみな彼に跪拝し、神殿の建造のために公共奉仕した。2. かの御代には、讃歌中の讃歌が説いたものだ。そして次のように言っていた。「王国をわがものとした。男の歌い手たちと女の歌い手たちとをわがものとした」〔コーヘレト書2章8〕。またすべてを詳説したうえで最後に招来する。「そして万事は空の空。万事は (97) 空」〔コーヘレト書1章2、12章8〕。3. さらにこうも言った。「あらゆる文字は x に始まる」。4. そして、神の愛顧によってソロモーンは自分の王国を救い通された。5. そして神の万人に崇められる神殿が建造された。また万事が評価の??模倣どおりに建造された。6. ケルゥブたち、セラピム〔熾天使たち〕、六翼の天使たちがひかえていた。宝庫の後ろには、多眼天使、座天使たち、主天使たちが〔ひかえていた〕。7. このような神殿の美しさは言い表し得ず、説明しえず、このようなものは過去にも未来にもありえないものだった。

2018.07.18. 訳了

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