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ヘルメス文書/占星術の作品

草木の諸徳について

De virtutibus herbarum(1/5)


[底本]
TLG 1004
THESSALUS Astrol. et Med.
(A.D. 1: Trallianus)

TLR 1004_001
De virtutibus herbarum (e cod. Paris. gr. 2502 + Vindob. med. gr. 23)
Astrol., Med.

H.-V. Friedrich, Thessalos von Tralles [Beiträge zur klassischen Philologie 28. Meisenheim am Glan: Hain, 1968]: 43-44, 56, 59, 62, 65, 137, 142, 147, 175, 179, 183, 187, 219, 223, 227, 231, 235, 239, 243, 247, 251, 255, 259, 263, 267.



草木の諸徳について

1004 001 1
prol t1

星辰の学問的知識と自然的流出とに関するヘルメース・トリスメギストスの要約的医術書。自分の弟子アスクレーピオスに伝授されたる。

1 1
白羊宮のエレリスパコス〔サルビア、Dsc.III-40〕
金牛宮のペリステレオーン・オルトス〔クマツヅラ科クマツヅラ属の植物、Dsc.IV-60〕
双児宮のペリステレオーン・ヒュプティオス〔クマツヅラ科クマツヅラ属の植物、Dsc.IV-61〕
巨蟹宮のシュムピュトン〔ムラサキ科ヒレハリ属の植物、Dsc.IV-9, 10〕
獅子宮のキュクラミノン〔サクラソウ科シクラメン属の植物、Dsc.II-194〕
処女宮のカラミンテー〔シソ科ハッカ属の植物、Dsc.III-43〕
天秤宮のスコルピウゥロス〔「サソリの尾」の意。ムラサキ科キダチルリソウ属の植物、Dsc.IV-193, 194, 195〕
天蝎宮のアルテミシア〔キク科ヨモギ属の植物、Dsc.III-127, 128〕
人馬宮の火色のアナガッリスと青黒色のアナガッリス〔アカバナルリハコベ、Dsc.II-209〕
磨羯宮のラパロン〔タデ科ギシギシ属の植物、Dsc.II-140〕
宝瓶宮のドラコンティオン〔サトイモ科の植物、Dsc.II-196〕
双魚宮の植物アリストロキア〔ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属の植物、Dsc.III-4, 5, 6〕
これらの植物を採集し汁液にすべき時は、太陽が白羊宮にあり、しかしもちろん、ひとつの宮にはひとつの植物ごとにきまっており、月も太陽の三合(trivgwnon)ないし星位(wJroskovpoV)にあるときである。さらに日も時間も、宮の家長〔首座星〕のそれとせよ。じつにこういうふうにすれば、おまえは好評を博することができよう、あたかも、教師が世界の自然的感応力について言っているとおりに。

25t
ヘルメース・トリスメギストスの書、聖なる植物と汁液化について
25 1
 神々からの浄福なる名誉を†ヘルメースは獲得して、時代が進み、[おまえの]成功が知られたとき、より多くの人間どもがおまえを尊敬するであろう。そういうわけで、おまえが望む事柄について尋ねるがよい。わたしは喜んでおまえに伝授するであろうから。
 というのは、これらは彼に神が謂ったことであるから。
26
 だが、わたしは聞くのもやっとであった。というのは、神の姿を目の当たりにして、仰天してしまい、心〔理性(nou:V)〕を満たされてしまったからである。にもかかわらず、とにかく聴きとり、それ〔神の姿〕を通して†ネケプソーの諸々の力能に気後れした者たちは得損なった。これに対して神が云った。
27
ネケプソーは第四代の王で、最も知慮深く、あらゆる徳に飾られた人物であった。だが、神的な声からはあらゆる事柄を学び損なったが、鉱石や植物の諸々の共感性と、植物の調合の仕方を学び知った時機や場所を発見した。
28
すなわち、おまえが知ってのとおり、万物は星辰の流出によって増大し減少する。しかし、あのものら〔星辰?〕の親(みずか)らの霊気は、極微であるので、あらゆる有性を貫流し、とりわけ、世界の初めに、星辰が地上の部分にめぐり会ったあの諸々の場所に〔貫流している〕。この証拠として、以下のことを信じるようおまえに提起しよう。
29
 ドクニンジン〔Dsc.IV-79〕と言われる植物がある。これは、火星の流出から生出したと思われている。しかし、世界の初めに、アレース〔火星〕が光線(ajktivV)を放って手に入れた。<じっさい>彼はドクニンジンをイタリアの部分に放った。というのは、イタリアのクリマ(klivma)は、たまたま天蝎宮の下にあるからである。
30
さて、この植物は、神的流出よりもかなり有り余るものを有している。なぜなら、引き抜かれて、四足動物によってであれ、人間によってであれ、食されると、たちどころに死ぬからである。
31
また植物の呼吸についても、あるものらは、荒野では、自分のそばに傾き、吸入することで眠るが、呼吸によって自己の作用力を達成するものである。
32
またクレーテーも、人馬宮のクリマの下にある。ところがそこで巡り会ったのは、世界の初めに、クレーテーに光線を放出した木星であった。
33
そういう次第で、このドクニンジンという植物をば、人々はあらゆる野菜の中でより美味なるものとして食するのである。
34
このように、神々の流出は、所により、時によって、害したり益したりすることができるのである。
35
さて、明らかに、あらゆる星辰の王は太陽である。そして、これが白羊{宮}に現れると昂揚し、この白羊宮で最大の力能を得る。
36
だから、諸々の植物はこのとき最高の力能をもつのであるが、それは太陽によってのみならず、この宮はあらゆる神々と†多くの場合、交流するからでもある。
37
というのは、前に云ったように、白羊宮は太陽の昂揚(u{ywma)であるが、土星の失墜(tapeivnwma)、火星の宿(oijkoV)、木星の三合(trivgwnon)だからである。とにかく、先に述べられた宮は、これだけの力能を有するのである。
38
そういう次第で、太陽がこの{宮に}あるとき、これから述べられるはずの植物を採取して汁液化せよ。ただし、煮てはならない。なぜなら、熱によって変化するからである。そうして刻んで、汁液を擂りつぶし、汁液の1クセステースごとに、蜂蜜1キュアトス†(ejnagg' h{n)を加えよ。なぜなら、保存したい年月の間、この汁液によい色と、これに持続力をもたらすからである。
39
そして、これを作ってガラスの容器に入れ、60日間安置せよ。じつにこういうふうにして、†これより前に、果たすべき用途へと赴け。そして、その後で、それぞれの効能が次のようにして調製される。

8t
巨蟹宮の植物アルテミシア

 これの汁液は、太陽が白羊宮にある満月のときに採取されると、最大の作用を有する。例えば、バラ油と等量に塗油すると、三日熱患者や四日熱患者を〔病気から〕放免する。

また、この〔汁液〕によって、月に憑かれた〔てんかん〕患者に対しても次のようなものが調製される。ヒヨス〔Dsc.IV-69〕6ドラクメー、イッリュリア産聖草〔クマツヅラ科クマツヅラ属の植物、Dsc.IV-61〕14ドラクメー、コロポーン・ガム〔Dsc.I-92〕9ドラクメー、ホルトソウ〔Dsc.IV-167〕2ドラクメー。これらを搗き砕いて、汁液に調合し、<トローチ>に形づくって、1ドラクメーずつ保存せよ。そして、与えようとするときは、ロバの乳〔Dsc.II-75〕1キュアトスの中に1錠をひたして{すすぎ、そして}四日熱患者に対してと同じく塗りつけよ。

また、腱鞘炎や子宮の症状に対する塗り薬も次の仕方でできる。蜜蝋2ドラクメー、ガチョウの硬脂12ドラクメー、鹿の髄20ドラクメー、カルバネー〔Dsc.III-97〕16ドラクメー、サフラン泥〔Dsc.I-26〕12ドラクメー、イッリュリア産イリス〔Dsc.I-1〕16ドラクメー、イリス香油〔Dsc.I-66〕20ドラクメー、古いオリーヴ油24ドラクメー、この汁液6キュアトス。これらを搗き砕いて、混合して、膠の濃さになるまで煮よ、そして用いよ。また、身体の無感覚な部分にも美しく効く。

また、この根から、腱や関節の収縮や無感覚に対する、また麻痺に対する軟化薬も同様に調製される。蜜蝋120ドラクメー、テレビン油〔Dsc.I-50〕20ドラクメー、バルサモンの木〔Dsc.I-18〕12ドラクメー、アムモーン香〔Dsc.I-14〕16ドラクメー、カルバネー〔Dsc.III-97〕14ドラクメー、この植物の根で刻まれ篩にかけられたもの2ドラクメー、ケドリア〔Dsc.I-105の露滴〕32ドラクメー。乾燥したものらを湿ったものらに調合して、用いよ。

また、この植物が煮られ、子宮窒息の症状、[あるいは](markinwvma)をもった女性が挿入されると、療治するであろう。

12t
双魚宮の植物、アリストロキア

 これには2種類ある。{そして}すなわち、ひとつは雌性、ひとつは雄性で、相異なった効能によって飾られている。そこで、先ず、雌性からはじめよう。

これは、リンゴに似た実をつける。これの汁液は、採取され、白内障や、そのせいで見えなくなった眼に対する水薬が調製される。ボトリュイテスと呼ばれるカドメイア〔Dsc.V-84〕で焼かれ、パレロン〔アテナイ西部の港〕産ブドウ酒で洗われたもの8ドラクメー、どうの焼かれたもの〔Dsc.V-87〕4ドラクメー、硫化アンチモン〔Dsc.V-99〕6ドラクメー、白コショウ〔Dsc.II-189〕2ドラクメー、アッティカ産蜂蜜4ドラクメー、インド産リュキオン〔Dsc.I-132〕1ドラクメー。これらを搗き砕いて、膠の濃さになるよう汁液に注ぎ込み[そして、用いよ]。というのは、この効能は、はなはだしく自暴自棄になった病状を治癒させるからである。

[また同じ汁液からは膏薬ができ、その〔効能が〕治療するのは]白いキツネハゲ、白い白癩、癩、他の糜爛や、不治と思われるすべてである。調整法は次のごとくである。火にかけない硫黄〔Dsc.V-124〕40ドラクメー、アプロニトロン〔Dsc.V-130, 131〕20ドラクメー、鶏冠石〔Dsc.V-122〕12ドラクメー、<インド産>リュキオン〔Dsc.I-132〕12ドラクメー、雄黄〔Dsc.V-12〕12ドラクメー。これらを搗き砕いて汁液に加え注ぎ込み、膠の濃さになるようにする。そしておまえが療治する場合は、あらかじめ二トロン〔硝石〕で洗浄してから用いるか塗りこめるかせよ。

葉の汁液からは、顔の輝かしさや滑らかさをつくる塗り薬が調製される。あざ[や]黒い白癩を取り除く。調整法は次のごとくである。[白い]エッレボロス〔Dsc.IV-150, 151〕1.6ドラクメー、キオスの土〔Dsc.V-174〕24ドラクメー、イッリュリアのイリス〔Dsc.I-1〕で刻まれて篩にかけられたもの[7ドラクメー]。次いで、汁液に加え注ぎ込み、膠の濃さになるようにして用いよ。

根からは、火傷や小潰瘍や眼中の汚れに対する丸薬が調製される。で、それらをこれは綺麗にし、瘢痕を形成し、もとどおりにする。ボトリュイテスと呼ばれるカドメイア〔Dsc.V-84〕8ドラクメー、乳香のマンナ〔Dsc.I-83〕8ドラクメー、サフラン5ドラクメー、この根の刻まれ篩にかけられたもの24ドラクメー、コムミ〔Acacia arabicaから採られる樹脂〕12ドラクメー。水ではなくて〔イタリア産〕アミナイオス・ブドウ酒で調合して用いよ。

さらに、汚くて古く、瘢痕を形成しがたい傷や、瘢痕が形成され、ふたたび削り取られたときに、苦い体液が流出するかぎりの〔傷〕に対する膏薬が調製される。蜜蝋〔Dsc.II-105〕120ドラクメー、テレビントス〔Dsc.I-91〕の樹脂2ドラクメー、乳香のマンナ〔Dsc.I-83〕40ドラクメー、[屑鉱で集められた]錆〔緑青、Dsc.V-91〕7ドラクメー、これの根80ドラクメー、古いオリーヴ油60ドラクメー。乾いたものらを湿ったものらに調合して、用いよ。

この膏薬は、{また}バラ油と蜂蜜を注入されると、胴体の傷や口の〔傷〕を、また耳の〔傷〕をも療治する。また、恥部や指の病状にも効く。

またこの汁液からは、†明礬によって、胴体に起こる病状に対し、発熱したり悪臭を放つ粘液をもたらされる人たちに〔効く〕。すなわち、それらを綺麗にし、瘢痕を形成するのである。サフラン14ドラクメー、カッシアの節20ドラクメー、ブデリオン樹脂〔Dsc.I-80〕4、ある人たちのところでは2ドラクメー、オロボス〔マメ科エルヴム属の植物、Dsc.II-131〕で乾されて篩にかけられたもの8ドラクメー、[苦いアーモンド〔Dsc.I-176〕で清められたもの8ドラクメー]。これらを搗き砕いて、汁液を可能なだけ増し加えて、[1ドラクメー]ずつを含有したトローチをつくれ。そして、早朝に1錠、就寝時に1錠を与えよ。
10
また、この植物の果実の汁液によって、結石や、膀胱の炎症や糜爛に対するトローチが調製される。そして、尿道が緊縮し、その結果、通尿に苦労し、少量で或る者たちに美しくする。また、尿が澱状であったり、熱を持つ〔者たちにも〕。モッコウ〔Dsc.III-77〕の{種子}、[ペーガノン〔Dsc.III-53〕の、ダウコス〔Dsc.III-83〕の種子、それぞれ]4ドラクメーずつ、モッコウ〔Dsc.I-15〕8ドラクメー、長いコショウ2ドラクメー。アッティカ産蜂蜜と汁液をたっぷり加え、2ドラクメーずつを含有したトローチを白ブドウ酒3キュアトスによって1錠を与えよ。これは結石を破壊し、排出し、(sarkwvsiV)を綺麗にして瘢痕を形成し、排尿困難なら、3日のうちに、一部の人たちのもとでは9日間で、〔治す〕。
11
また、この根からは、瘰癧や(ajqerwvma)、(steatwvma)、膿瘍に対する、また、あらゆる消化不良に対する軟化剤が調製される。[蜜蝋]10ドラクメー、テレビン油40ドラクメー、アムモーン香12ドラクメー、ケドリア60ドラクメー、この根の刻まれ篩にかけられたもの80ドラクメー。乾燥したものらを湿ったものらに調合して用いよ。この効能は硬化を散らし、こぶになったものらを砕く。しかし、凝固した場合は、ヒメツルニチソウ〔Dsc.IV-7〕に解かれたものを用いよ。綺麗にして瘢痕形成するからである。

24t
木星の植物、いわゆるエウパトリオン〔キク科フシバカマ属の植物、Dsc.IV-41〕、一部の人たちのもとではペンタダクテュロス〔「五本指」の意。Dsc.IV-42では「五つ葉」、バラ科キジムシロ属の植物〕

 これの汁液は結石患者に効く。服用薬に調製するには、次のようにする。スタキュス〔Dsc.III-120〕2ドラクメー、カッシア〔Dsc.I-12〕の節4ドラクメー、オポパナクス〔Dsc.III-55〕2ドラクメー、リュギスティコン〔?〕20ドラクメー、メランティオン〔キンポウゲ科クロタネソウ属の植物、Dsc.III-93〕4ドラクメー。これらを搗き砕いて、この汁液に調合し、半ドラクメーを含有する丸薬をつくり、1キュアトスの水とともに与えよ。また、バラ油と混ぜて、塗布されても益する。

 また根からも、下痢患者や(luenterikouV)、またあらゆる下痢症状に対するトローチが次のようにして調製される。白いギンバイカ〔Dsc.I-155〕12ドラクメー、ミュリア産〔?〕ルゥス〔ウルシ科ウルシ属の植物、Dsc.I-147〕24ドラクメー、ザクロ〔Dsc.I-151〕の果皮で刻まれ篩にかけられたもの24ドラクメー、この植物の根20ドラクメー。

これらを搗き砕いて、最も辛いブドウ酒に調合し、1ドラクメーずつを含有したトローチをつくり、1[トローチ]を、発熱患者には水に入れて、熱のない患者にはブドウ酒に入れて与えよ。[というのは]腸の流出物はたちどころに安定するからである。ただし、1トローチ以上は与えてはならない、腸がゆるむのはどうしてかを再び探求することになるからである。

また、根からも、白斑や(pteruvgia)や(ojnuvcia)や、これらに類似した症状に対する眼薬が次の仕方でできる。赤鉄鉱〔Dsc.V-144〕の砕かれたもの8ドラクメー、カラミン〔Dsc.V-84〕の焼かれたもの4ドラクメー、鉛〔Dsc.V-96〕の砕かれ焼かれたもの3ドラクメー、サフラン9ドラクメー、この根の刻まれ篩にかけられたもの24ドラクメー、スミュルナ〔Dsc.I-77〕4ドラクメー、コムミ〔Acacia arabicaから採れるガム〕8ドラクメー。これらを辛いブドウ酒によって調製して、用いよ。[塗りつけられると、(uJpwvpia)、あらゆる青あざ、苔癬を取り除き、できた瘢痕を白くする。

5t
火星の植物、ペウデカノス〔?〕

 この汁液は、[次の仕方で]労なく調製されるとき、毒獣の咬み傷に作用する。鹿の髄40ドラクメー、[マヨナラ〔Dsc.III-47〕12ドラクメー、ハマスゲ〔Dsc.I-4〕40ドラクメー、カルバネー〔Dsc.III-97〕24ドラクメー、テルミントス〔Dsc.I-91〕の樹脂40ドラクメー]、古いオリーヴ油18ドラクメー、[この植物の汁液60ドラクメー]。{汁液化せよ}これらを搗き砕いて、膠の濃さになるよう煮、保存せよ。こうして、あらかじめ塗布された者は、決して咬まれることがないであろう。

また、この汁液によって、前述の爬虫類に咬まれた者たちに対する服用薬も次のようにしてできる。[アモーモン〔Dsc.I-14〕4ドラクメー]、スミュルナ〔Dsc.I-77〕4ドラクメー、シナモンの木〔Dsc.I-74〕6ドラクメー、コショウソウ〔Dsc.II-185〕の種子16ドラクメー、アッティカ産蜂蜜17ドラクメー。これらを汁液に調合して、搗き砕いて、1ドラクメーを含有した服用薬を形づくり、1錠を黒ブドウ酒4キュアトスに浸して与え、走るよう強制せよ。

また、この根からは、黄疸患者に対する — さらには水腫患者をも療治する — トローチが次のようにして調製される。亀石の焼かれ砕かれたもの8ドラクメー、シルピオン〔Dsc.III-94〕12ドラクメー、赤鉄鉱〔Dsc.V-144〕4ドラクメー、苦い蜂蜜8ドラクメー、これの根7ドラクメー、あるいは一部の人たちによれば2〔ドラクメー〕。これらを<搗き砕いて>{そして}海水を混ぜられたブドウ酒に調合し[1ドラクメーずつ含有したトローチをつくり、熱のない者たちには、海水を混ぜたブドウ酒3キュアトスとともに、しかし熱の或る者たちには、水によって1錠を与えよ。

また、以上の〔症状〕に対する膏薬も調製され、[神経の]断裂も次のようにすれば3日間で繋ぐ。[蜜蝋]8ドラクメー、サルココッラ〔Dsc.III-99〕16ドラクメー、乾燥した松柏類の樹脂〔Dsc.I-92〕40ドラクメー、雄の乳香〔Dsc.I-81〕12ドラクメー、牡牛の硬脂〔Dsc.II-90〕24ドラクメー、ビーバー香〔Dsc.II-26〕20ドラクメー、[この植物の]根8ドラクメー、ひまし油〔Dsc.I-38〕9ドラクメー。乾燥したものらを湿ったものらに調合して用いよ。

6t
金星の植物、パナケイア(panevleia)〔「万能薬」の意。Ferulago galbanifera、Dsc.III-55, 56, 57〕は、ある人たちによっては髪房(plokamivV)と言われ、何人かの人たちによっては美しい髪(kallivtricon)と、さらにはヘーラクレースの万能薬〔Opopanax hispidus、Dsc.III-55〕とも言われる。

 これの汁液は、充分で最大の効能を有し、根も劣らぬ〔効能を有する〕。

すなわち、これの汁液をバラ油といっしょに眼に塗ろうとする人は、自分に恩恵を与えたまえと ThetaPhiSampiLambdaStigmaQoppaPsi を勧請すれば、その日の間は、あらゆる人たちによって、とくに、塗りつけるさいに、その名前を口にした人々、その人たちによっては、喜んで見られるであろう。

また、ひとが、いわゆるカンショウコウ〔Dsc.I-6〕の香油といっしょに髪に塗油すると、その人の髪は常時すこぶる黒いままでありつづける。もちろん、ごわごわになったり伸びたりすることはない。

また、眼の水っぽさや白斑を黒くしたり、同様にまた灰色眼を黒眼にする眼薬も、次のようにして調製される。黒アカシア〔Dsc.I-133〕2ドラクメー、ミシュ〔Dsc.V-117〕4ドラクメー、緑礬水〔Dsc.V-114〕1ドラクメー、銅の焼かれたもの〔Dsc.V-87〕1ドラクメー、サフラン1ドラクメー。これらを搗き砕いて、汁液に投入し、蜂蜜の濃さになるようにして、用いよ。

これは、子宮のあらゆる症状を療治する。これがこの汁液による用法である。

また、この根によって、トローチが調製されるが、これをひとがあらかじめ飲んでおけば、毒の飲み物<とか>毒薬を摂っても、害悪をこうむることは決してない。[いや、毒を飲まされた後でも、ひとがすぐにこのトローチを飲めば、]解放されるであろう。スミュルナ〔Dsc.I-77〕8ドラクメー、アロエ4ドラクメー、コエンドロ〔Dsc.III-71〕の種子12ドラクメー、サフラン8ドラクメー、アニス〔Dsc.III-65〕の種子12ドラクメー、パナケス〔Dsc.III-55, 56, 57〕の樹脂8ドラクメー、アッティカ産蜂蜜20ドラクメー、[この植物の]根の粉末にされたもの8ドラクメー。これらを練って、海水を混ぜたブドウ酒に注意深く調合し、1ドラクメーずつを含有したトローチをつくり、[まだ毒薬を飲んでいない者たちには、<1錠を>ブドウ酒2キュアトスとともに与えよ、すでに毒薬を飲んでしまった者たちには]2錠を、ブドウ酒4キュアトスによって〔与えよ〕。

また、頭に傷ができ、その結果毛が生えることに対する塗り薬も調製される。カドメイア〔Dsc.V-84〕の焼いて砕かれたもの12ドラクメー、密陀僧〔V-102〕20ドラクメー、乳香のマンナ12ドラクメー、牡牛の硬脂20ドラクメー、蜜蝋60ドラクメー、松柏類の樹脂で乾燥したものと湿ったもの60ドラクメー、緑青8ドラクメー、古いオリーヴ油70ドラクメー、この根の刻まれ篩にかけられたもの100ドラクメー。乾燥したものらは湿ったものらに調合して用いよ。

女たちにとっての顔の塗り薬もでき、皺がなくなり、顔が白くすべすべする。またあらゆる発疹を取り除く。インド産リュキオン20ドラクメー、しかしある人たちは蜂蜜を持たないが、苦い蜂蜜20ドラクメー、白いエッレボロス〔Dsc.IV-150〕40ドラクメー、[この植物の]根で刻まれ篩にかけられたもの60ドラクメー、最もきつい酢1クセステース。これらを搗き砕いて、膠の濃さになるまで煮よ。次いで用いよ。

7t
水星の植物、プロモス〔ゴマノハグサ科の植物(Verbascum sinuatum)、Dsc.IV-104〕
 これは「ヘルメースの善き杖(rJavbdoV)」とも言われる。


 これの汁液によって調製される塗り薬は、ひとが旅行したり、[他の面倒な仕事に従事するときに塗布されると、苦労せずにすむ]ところのものである。また、走者たちや、競争者たちにとっても、身体の部位を善く動く強力なものにする。また、苦労してきた人が塗布されると、その苦労が止んでしまう。マヨナラ〔Dsc.III-47〕12ドラクメー、鹿の髄40ドラクメー、テルミントス〔Dsc.I-91〕の樹脂40ドラクメー、古いオリーヴ油60ドラクメー、[この植物の]汁液1クセステース、カルバネー〔Dsc.III-97〕8ドラクメー、蜜蝋60ドラクメー。膠の濃さになるまで煮よ、そして用いよ。

この汁液を空腹時に飲んで、EpsilonSampiXiBetaNu を勧請すれば、しゃべることに最も用意のできた、最も信頼される者となる。

また、この根によって塗り薬が調製され、これは、打ち傷、刺し傷、骨の耐え難い症状を散らす。次の仕方でできる。蜜蝋80ドラクメー、テルミントスの樹脂〔Dsc.I-91〕の樹脂40ドラクメー、カルバネー〔Dsc.III-97〕20ドラクメー、オムパキオン〔未熟なブドウの実の搾り汁、Dsc.V-6〕40ドラクメー、この根の刻まれ篩にかけられたもの80ドラクメー。乾燥したものらを湿ったものらに調合して用いよ。

epil

 短い論文によって、あなたに伝授されたあらゆる病状のあらゆる療治をあなたは得た。

[そこで]あなたに残されているのは、前記のものらを準備し、わたしからのロゴスを守り、[その結果]無学な誰にもこの書き付けを伝授しないことである。

なぜなら、多衆の手に渡れば、この書は、[全般的な]医術の知識の、究理を愛する驚嘆すべき処方を台無しにするからである。

というのは、人間どもは、医術の異なった選択をもはや修練することもなく、もちろん、古い[医師たちの論文に従うことを渇望する]こともなく、[これほど多くの]これほどの人々の労苦が蔑ろにされるからであるが、その所以は、[述べられているように、手許にある論文から、身体的なあらゆる病状が療治可能という気安さの]多さである。

しかし、おまえに勧告する — この書き付けを秘密裡に持つよう、次いで、最も多く、かつ、最も美しく、論文をあらゆる選択の基礎に置くよう、それは、威厳ある知識に対する究理愛をますます増大させるためである。

ところで、上記の用途<に>用いられる植物は、アイギュプトス産、アラビア産、シュリア産、アシア産、さらにまたイタリア産のものらである。というのは、これらのクリマは、自余のものらの中で最も熱いかららしい。

というのは、地上の〔植物は〕何ひとつ、気息の抜け道が2倍に増えることができない。だから、[クリマの]寒冷地帯では、草木の中の通気孔は塞がって、しかも†それら〔通気孔?〕はその濃度の[せいで]充分な抜け道を有することができないので、植物は効能の点で劣ったものとなる、ところが上述のクリマでは、有り余るほどの多孔性のせいで、宮の大気を自分たちの方へと引き寄せ、その結果、強烈な効能を有することになる。

しかし、おまえの魂は驚くほど不完全であると思われるので、この知識の働きを現わせないのだとわたしは思う。

2008.11.08. 訳了。

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