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ヘルメス文書/占星術の作品

草木の諸徳について

De virtutibus herbarum(2/5)


[底本]
TLG 1004.002
De virtutibus herbarum (e cod. Matrit. Bibl. Nat. 4631 [olim 110])
Astrol., Epist., Med.

H.-V. Friedrich, Thessalos von Tralles [Beitr′ge zur klassischen Philologie 28. Meisenheim am Glan: Hain, 1968]: 45, 47, 49, 51, 53, 55, 58, 61, 64, 68, 73, 78, 83, 88, 93, 98, 103.


草木の諸徳について(De virtutibus herbarum(2/5)

TLG 1004 002 1
prol
1t

†ハルポクラティオーンが、アウグストス帝に、ご機嫌うるわくありますよう。

1
 多くの人たちが、生涯、セバストス〔=アウグストス〕帝よ、多くの意想外な事柄を伝授しようと手がけたにもかかわらず、誰ひとりとして約束を果たすことができなかった所以は、運命<から>彼らの悟性に負わされた暗闇のせいですが、永遠の過去以来の人間のうち、ひとりわたしのみは、意想外なこと<しかも少数の人たちに知られたことを>実践してきたように思われます。

というのは、死すべき自然本性の基準を超えた諸問題を手がけ、少なくともこれに、多大な吟味と危険をおかして、しかるべき決着をわたしがつけたからです。

<すなわち>アシアのクリマの文法知識を修練し、その地のあらゆるより善き人たちの何らかの知識を享受するまでになろうとわたしは決心した。

そうして、おびただしい銀子をもって、あこがれのアレクサンドレイアに航行し、究理家(filolovgoV)たちのうち最高の完徳に達した人たちの†付き人となり、愛労と理解力のおかげで、万人に称讃される者となりました。

さらに、地方語の医者たちの学校にも継続的に通いました。というのは、その知識をわたしはことのほか恋していたからです。

しかし、わたしにとって医術もすでに順当に進み、家へ帰る時機が来たので、<必要な資を>を得るため、わたしは蔵書を渉猟した。そして、ネケプソーのある書物を見つけ — 身体全体とあらゆる病状に対する、獣帯との関係で、鉱石と植物による24の療治を内容としていた — 、約束の予想外な事柄にわたしは仰天しました。ただし、王の愚かさは欠いていたが、見栄があったようです。

というのは、彼によって驚嘆された「太陽のトローチ」(trocivskoV hJliakovV)〔魔術的療法〕を備えながら、病状のあらゆる療治におけるその他の効能は得損なっていたからです。

そのため、迷妄は死よりも残酷であると受けとめて、わたしは苦痛のうちにすごしました。というのも、軽率にも、わたしはすっかり信じ切って、それらの作用について手紙に書き、両親にも、試みをしたうえで帰ると約束したのでした。

ところが、わたしはアレクサンドレイアにとどまることができませんでした、というのも、同業者たちのせいで、美しい事柄は個人的に妬まれるからです。
10
そこで、家に帰る熱意を二度と持たず、約束したことよりも小さなことを見つけつつ、アイギュプトスを巡って、魂の激情に駆りたてられつつ、軽率な約束の何ほどかでも仕遂げることを、あるいは、それが得られなければ、残る生涯を死にゆだねてもよいと願っていました。
11
ところで、わたしの魂は、神々と交わることをいつも†預言していましたので、常時、天に両手をさしのべて、神々に祈願することにしていました、夢の幻を通してか、神的な霊気を通してか、上機嫌な者として、アレクサンドレイアや祖国に意気揚々と帰着できるような、そういうものを何かわたしに恵みたまえ、と。
12
 さて、ゼウスの都市 — <わたしが言うのは>アイギュプトスの最も古い、多くの神殿を擁している都市のことだが — にたどり着いて、そこで時をすごしていた。というのは、<そこには>究理家の祭司長(ajrciiereuvV)もいて、しかも彼らは多彩な学知に飾られた<長老たち>でもあったからです。
13
そして時が過ぎ、彼らに対するわたしの親愛の情はますます増したので、マギの働きによって救われることがあるかどうか、と問いただした。しかし、たいていの者たちは、わたしの軽率さに似つかわしい約束を申し出ているにすぎないとわたしは判断しました。
14
しかし、あるひとりは、性格の尊大<でない>点や年齢の程度で信じることができた人物がいて、わたしは親愛の情を振り捨てることができなかった。するとこの人が、皿占いの働きを目撃したことがあると約束しました。
15
そこで、その都市の最もさびしい場所をわたしといっしょに散歩するよう彼に頼みましたが、わたしが必要としたことは何も現れませんでした。
16
そこで、わたしたちは、最も深い静かさに包まれたある〔聖なる〕森へと出かけ、突如、その祭司長の前に身を投げ出し、泣きながら、その足にすがりつきました。
17
すると、彼は光景の思いがけなさにびっくりして、何のためにそんなことをするのかと尋ねたので、わたしの魂は彼の随意であるとわたしは謂いました。なぜなら、わたしは神と交わる必然性を持っている。その欲求を得損なうぐらいなら、人生を放棄する方がましだ、と。
18
すると、彼はわたしを地面から立たせて、やさしい言葉をかけて、喜んでそれをしようと約束し、3日間<わたしに>潔斎するよう(aJgneuvein)命じたのでした。
19
祭司長の約束に、わたしの魂は歓喜にあふれ、彼の右〔手〕に挨拶し、感謝したのでした。わたしの涙は滂沱のごとくあふれるままに。というのは、思いがけない、苦痛よりも大いなる歓喜が、自然と涙を呼んだからです。
20
さて、〔聖なる〕森から帰ると、わたしたちは潔斎に入ったが、わたしにとって、その日々は、期待のあまり、1年ほどもかかったような気がしました。
21
こうして3日が経った夜明けごろ、わたしは行って、祭司長に<うやうやしく>挨拶しました。

 さて、清浄な家と、(ejpiskeyiV)のための自余のことは、彼によって処置されていました。しかしわたしの方は、祭司長は知らなかったのですが、魂の千慮どおり、言われたことを記すために、必要があろうと、紙と墨を携えていました。
22
そして、祭司長がわたしに、誰かの死者の魂とか、神とか、どちらと交わりたいのかと問いただしたので、わたしは謂いました、「アスクレーピオスに。ひとりわたしのみが、唯一彼と交わることを許してくれるなら、最高の恩恵です」。
23
しかし、喜んでというわけではありませんでした(このことは、眼の色からありありとうかがえました)、しかし、約束を〔違えることはできません〕。そこで、わたしをその家に閉じこめて、神が坐するはずの座の向かいにすわるよう命じたうえで、秘密の辞によって神を呼び出すと、出て行って、扉を閉めました。
24
こうして、わたしは座っていましたが、光景の予想外さに、身体と魂は意気阻喪していました(眼に見える印象も、まわりの世界の美しさも、人間の言葉で報告することはできないでしょうから)。すると、右〔手〕をのばして、彼〔アスクレーピオス?〕は言い始めました。
25
「おお、浄福なるテッサロスよ、神々からの名誉を得て、時代が進み、おまえの成功が知られたとき、人間どもはおまえを神のごとく尊敬するであろう。そういうわけで、おまえが望む事柄について<恐れることなく>尋ねるがよい。わたしは喜んですべてを伝授するつもりだから」。
26
だが、[わたしは聞くのも]やっとのことでした。 — [というのは]神の姿を目の当たりにして、仰天してしまい、心〔理性(nou:V)〕を満たされてしまったからです。 — にもかかわらず、とにかく聴きとりはしましたが、そのおかげで、ネケプソーの諸々の力能を得損ないました。これに対して神が云いました。
27
「ネケプソー王は、最も知慮深く、あらゆる徳に飾られた人物であって、神的な声からは、おまえが学ぶことを求める事柄には何ひとつ到達しなかった。だが、善き自然本性を用いて、鉱石や植物の共感性を発見したのだが、植物を採取すべき時機や場所を知らなかったのである。
28
すなわち、あらゆる季節は星辰の流出によって増大し減少する。また、神的なあの霊気は、極微であるので、あらゆる有性を貫流し、とりわけ、世界の初めに、星辰の流出がおこったその場所に〔貫流している〕。この1点から、以下のことを信じる気にさせよう。

29
 例えば、ドクニンジン〔Dsc.IV-79〕と言われる植物がある。これは、火星の流出から生出したと思われている。しかし、世界の初めに、〔火星が〕光線(ajktivV)を巨蟹宮に放って手に入れたものである。<じっさい彼はドクニンジンをイタリアの部分に放った。>というのは、イタリアのクリマ(klivma)は、あの巨蟹宮だからである。
30
さて、この植物は、神的流出よりも多くを引き寄せたので、四足動物によってであれ、人間によってであれ、食されると、たちどころに死をもたらすのである。
31
また植物の呼吸についても、あるものらは、荒野では、自分のそばに傾き、吸入することで眠るが、呼吸によって自己の作用力を達成するものである。
32
同様にクレーテーも、左からの星の相(ajktinoboliva)を<……>。
33
そういう次第で、このドクニンジンという植物をば、人々はあらゆる野菜の中でより美味なるものとして食するのである。
34
このように、神々の流出は、所により、時によって、害したり益したりすることができるのである。
35
[さて]明らかに、あらゆる星辰の王は太陽である。これこそは、白羊宮に現れると昂揚し、この宮で最大の力能のようなものを得る。
36
だから、諸々の植物はこのとき最高の力能をもつのであるが、それは太陽によってのみならず、この宮が、病状を植えつけるあらゆる〔神々=天体〕と交流するものとして神的であるからでもある。
37
というのは、前に云ったとおり、〔白羊宮は〕太陽の昂揚(u{ywma)であるが、土星の失墜(tapeivnwma)、火星の宿(oi\koV)、木星の三合(trivgwnon)だからである。先に述べられた宮は、これだけの力能を有するのである。
38
そういう次第で、太陽がこの{宮に}あるとき、これから述べられるはずの植物を採取して汁液化せよ。煮てはならない。なぜなら、熱によって性質が変化するからである。そうして、その汁液をすぐに擂りつぶし、その汁液を皿ないしは鉢の中に投入し、蜂蜜と混ぜよ。
39
さて、そうしたうえで、ガラスの容器に入れ、[……]日間安置せよ……{生の汁液を望むなら、煮出しせよ}。そしてその後、それぞれの効能に応じて調製せよ。

1t
<白羊宮の植物、サルビア>
 白羊宮、第1の宮。サルビアについて。

1
 パメノート月22日あるいは〔マケドニア暦〕デュストロス月18日から、ローマではアプリッリス月のカレンズ15日[の前の日]から、第1の植物サルビアが〔採集される?〕。

 これが最多の効能を有するのは、吐血に対して、また、肺癆患者や消耗性疾患者や脾臓患者に対して、ヒステリー症状に対してである。

 さて、血のこみ上げに対しては、3キュアトスの汁液に、アッティカ産蜂蜜1ウンキアを加え、空腹時に服用させると、血の吐瀉が治る。

 肺癆患者に対しては、次のように丸薬が調製される。コリュコス産サフラン〔Dsc.I-25〕5ドラクメー、ショウガ〔Dsc.II-190〕4ドラクメー、穀物の穂9ドラクメー、サルビアの種子で火にかけ篩にかけられたもの14ドラクメー、コショウ〔Dsc.II-189〕2ドラクメー。汁液に調合して、半ドラクメーの丸薬をつくり、早朝や就寝前の空腹時に与えよ。飲みくだしたうえで、清浄な水2キュアトスをさらに飲ませよ。

 また、脾臓患者そのものにも、次のようにして丸薬ができる。カッパリス〔フウチョウソウ科の植物、Dsc.II-204〕の根で刻んで篩にかけられたもの12ドラクメー、黒セイヨウキヅタ〔Dsc.II-210〕の果実9ドラクメー、白ギンバイカの果実4ドラクメー、ショウガ〔Dsc.II-190〕6ドラクメー。搗き砕いて、液汁に調合し、1ドラクメーずつの丸薬をつくり、早朝1粒、就寝前に1個与えよ。

 また、ヒステリーの[諸症状]、例えば、硬化症や帯下や慢性的な痛みには、外用薬が[次のようにして]調製される。テュッレーニア産蜜蝋14ドラクメー、鹿の髄8ドラクメー、乾燥したバラの刻んだもの4ドラクメー、この植物の汁液4キュアトス。溶解したものらを乾燥したものらや汁液のなかに加え、四分の一に煮詰まるまで煮て、それから錫製の容器に保存せよ。子宮に塗りつけて使用する。症状があまりにひどいときは、この植物を根とともに煮て、坐浴に用いよ。

 また、根からも、腎臓患者や座骨神経痛患者に最もよく効く軟化薬が次のようにしてできる。蜜蝋8ドラクメー、アムモーンニコン〔セリ科オオウイキョウ属の植物、Dsc.III-98〕16ドラクメー、カルバネー〔同上、Dsc.III-97〕9ドラクメー、ケドリア〔シダー(レバノンスギ)の露滴、Dsc.I-105〕18ドラクメー、牡牛の硬脂32ドラクメー。乾燥したものらを湿ったものらに調合して用いよ。また、先に述べた外用薬も、こういった諸症状に有益である。

2t
&lt:金牛宮の植物、ペリステレオーン・オルトス>

 金牛宮は、第二の宮。ペリステレオーンについて。パルムゥティ月23日あるいは〔マケドニア暦の〕クサンティコス月18日から、ローマではマイオス〔Maius〕月のカレンズ14日前から〔採取される〕第二の植物が、ペリステレオーンである。

 これの薬効も信じられないほどである。というのは、絶望的な眼の病状を、薬の調整方法によって、3日の内に治すであろうから。

 さて、眼病や腫れ物や気腫やあらゆる涙目に対しては、次のような眼薬を用いよ。サフラン14ドラクメー、デンプン〔Dsc.II-123〕12ドラクメー、グラウキオン〔Dsc.III-100〕6ドラクメー、3個の卵の白身、トラガカンテー〔マメ科ゲンゲ属の植物、Dsc.III-23〕2ドラクメー。搗き砕いて、液汁に調合し、眼薬を作って用いよ。

 また、流出に対しては、根もろとも植物全体を煮詰め、外用水薬として[用いよ]。たちどころに治るからである。

 白内障からくる盲目や白内障や見込みのない症状に対しては、次のような一種の水薬が調製される。オポパナクス〔セリ科の植物の露滴、Dsc.III-55〕2ドラクメー、血石(livqoV aiJmativthV)4ドラクメー、サフラン4ドラクメー、リュキア産デンプン〔Dsc.II-123〕2ドラクメー、グラウキオン〔Dsc.III-100〕6ドラクメー、トラガカンテー〔マメ科ゲンゲ属の植物、Dsc.III-23〕2ドラクメー、アッティカ産蜂蜜4ドラクメー、白コショウ2ドラクメー、バルサモン〔Dsc.I-18〕の露滴2ドラクメー、ペリステレオーンの根で刻まれ篩にかけられたもの6ドラクメー、ヤギの胆汁3ドラクメー、汁液2キュアトス。乾燥したものらを湿ったものらに調合して[用いよ]。この効能は、見込みのない症状を3日の内に治し、(pteruvgia)、(sukwvsiV)、(calavzia)やこれらに似たものらなら、1日の内に〔治る〕。

 言うことができるのは、神的な効能の称讃ではなく、おのおのの効能の〔称讃〕である。というのは、思考がその作用を示すはずだからである。

3t
<双児宮の植物、ペリステレオーン・ヒュプティオス>

 双児宮は、第3の宮。パコーンス月25日、これは〔マケドニア暦〕アルテミシオス月20日から、ローマではイウゥニオス〔junius〕月のカレンズ13日の前の日から〔採集〕。第3の植物はペリステレオーン・ヒュプティオスである。

 これの汁液は同じようにして調合される。次いで、悪性腫瘍や結節や、「イチジクの実」と言われる〔腫瘍〕に対して最も効能のある薬が調製される。調製法は次のとおり。サフラン12ドラクメー、乾燥したバラ8ドラクメー、ポントスのメリロートス〔マメ科シャジクソウ属の植物、Dsc.III-48〕14ドラクメー、二つに裂けた明礬〔Dsc.V-123〕8ドラクメー。搗き砕いて等しく混ぜ、この植物の汁液4クセステースを注ぎ込み、新しい土器で、蜂蜜の濃さになるまで煮よ、そして用いよ。身体にできたあらゆる〔腫れ物〕をも治療する。

4t
<巨蟹宮の植物、シュムピュトン>

 パウニ月25日 — これは〔マケドニア暦〕ダイシオス月19日である — から、ローマではイウゥリオス〔julius〕月のカレンズ13日の前の日から〔採集され〕、第4の植物はシュムピュトンである。

 これの汁液と根は、多大な効能を有する。
先ず根からは軟膏が調製され、これは裂傷や神経の断裂を結合する。蜜蝋60ドラクメー、鹿の髄12ドラクメー、マンナ〔(mavnna libavnou)、Dsc.I-108〕22ドラクメー、[根で刻まれ篩にかけられたもの32ドラクメー、]アッティカ産蜂蜜26ドラクメー、バラ油24ドラクメー。乾燥したものらを湿ったものらに調合して用いよ。

 胴体の裂傷に対しては、例えば、動脈の…〔欠損〕…

2008.11.11. 訳了。

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