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Lysias弁論集



第15弁論

アルキビアデスに対して 兵役忌避罪によって






[1]
 私としては、おお裁判官諸君、義しい票決を下すようあなたがたにも要請し、将軍たちにもお願いする。他の公職においても、国家にとって大いに救重な存在となってきたのであるから、兵役忌避の公訴に関しても、原告・被告双方に公平であるように、そして、自分たちの望む者を助けるために熱中するあまり、あなたがたが正義に反して票決するようなことのないようにと。

[2]
 次のことに思いを致して、――もしも、あなたがたの資格審査の際に、テスモテタイが登壇して、あなたがたに対して有罪票決するよう要求したなら、あなたがたは大いに憤慨するであろうということに。それは、次のことを恐るべきことだと考えるからである、――もしも、争訟の場を設定し、票決を採る任にある者たちが、一方の者たちには有罪票決しないよう、他方の者たちには有罪票決するよう呼びかけるならば。

[3]
 さらに、次のこと以上に恥ずべき習慣なり、恐るべき事態なりが、国家にとって何かあるであろうか、――執政官が、女子相続人たちの私訴の際に、何でも自分たちの望むことが実行されるよう裁判官たちに敢えて懇願し嘆願し、また、ポレマルコスや「十一人」が、自分たちによって提訴された私訴の際に、ちょうど今と同様に要求するとしたら。

[4]
 それゆえ、あなたがた自身のためにも同じ見解を持つべきである。次のことに思いを致して、――あなたがたが兵役忌避に関して私的に助けるのと、これらの、みずからが票決を採る任にある者たちが要求するのとは、何ら異ならないということに。

[5]
 では、あなたがたは考察すべきである、おお裁判官諸君、指揮官たちの誰一人、それまで、軍陣において、アルキビアデスのために心積もりしていなかったという証拠が、充分であったかどうかを。というのは、彼らは、いやしくも真実を言っているなら、パムピロスを召喚すべきであった、――〔アルキビアデスの〕馬を取り上げて、国家から騎兵を一人奪ったとがで。また、部族騎兵指揮官を処罰すべきであった、――アルキビアデスを部族から追い出して、その戦列を無力と為したかどで。さらに、歩兵指揮官には彼を重装歩兵の兵籍名簿から削除しておくよう命じるべきであった。

[6]
 ところが実際は、以上のことを何も彼らはしておらず、軍陣内において彼が皆から、弓馬兵たちによってさえも、侮辱されながら騎乗していたのを、彼らは見過ごしていたのであるが、あなたがたは不正者たちに償いをさせなければならない段になると、ご親切にも、自分たちによって彼は配置されたのだと証言しているのである。しかしながら、恐るべきことである、おお裁判官諸君、将軍たち自身は民衆によって挙手選出されても、法習どおりに資格審査を受けるまでは、私たちを指揮することは敢えてしないのに、アルキビアデスの方は、国家の法習に反して彼らによって敢えて配置されるようにした、ということは。

[7]
 さらに、恐るべきことだと私に思われるのは、おお裁判官諸君、資格審査を受けた騎兵たちの中からは、誰でも自分たちの望む者を重装歩兵の中に選抜することは、彼らの意のままにならないのに、資格未審査である重装歩兵の中からは、誰でも望む者を騎兵にすることが、彼らの意のままであるということは。

[8]
 そこで、もし、おお裁判官諸君、彼らに決定権があるにもかかわらず、他の人たちが多く望んでいるのに、誰にも騎兵となることを許さなかったとしたら、あなたがたが彼らに懇ろにするのは義しくないであろう。だが、決定権がないにもかかわらず、配置に同意しようとするなら、次のことに思いを致すべきである、――あなたがたが誓約したのは、義しい判決を下すようにということであって、何でもこの人たちが命じるとおりに票決するようにということではなかった、したがって、要求者たちの誰をも、あなたがた自身と誓約以上には重んじてはならない、ということに。

[9]
 さらにまた、おお裁判官諸君、刑罰が重く法が厳格にすみると思われる方がいるなら、次のことを思い起こすべきである、――あなたがたがここに来ているのは、本件に関して立法せんとしてではなく、現行の法習にしたがって票決せんがためであり、また、不正者たちを哀れまんとしてでもなく、むしろこれらの者たちに大いに怒りを発して、国家全体を助けんがためである、ということを。それは、あなたがたが次のことをよくご存知だからである、――過去の咎によって少数の者たちに報復することで、将来危険に身をさらすことになる人々の中に、より規律正しい人たちを多くつくることになろうということを。

[10]
 そこで、しなければならないことは、おお裁判官諸君、この男が国家をなおざりにして、自分の救済を求めているように、そのように、あなたがたはこの男をなおざりにして、国家にとって最善の票決を為すことである。とりわけ、あなたがたは誓約を立ててアルキビアデスに関して票決しようとしているのだから、――あなたがたを騙せれば、嘲笑しつつ国家を離れるところの。というのも、投票の際にこっそりと善く蒙ったからといって、彼はあなたがたに感謝などしないであろうから。友たちのうちはっきりと自分に善くしてくれた人々に対して、悪くするような男なのだから。

[11]
 だから、あなたがたは、おお裁判官諸君、この人たちの要求は軽視して、義しい票決を下すべきである。さて、すでに証明され終わったのは、重装歩兵に選抜されながら、戦列を離脱し、法習が命じているのに資格未審査のまま騎兵となった、そして、法習が成文化して、将軍も騎兵指揮官も他の何びとをも、法習よりも上位の決定者とは明示していない事柄、これに関して私人でありながら彼は自分に勝手気侭を許してきた、ということである。

[12]
 そこで、私としては、友であるアルケストラティデスをも助け、私自身の敵であるアルキビアデスにも報復するために、義しい票決を為すよう要求する。そこで、あなたがたの方も同じ考えを持って票を投ずべきである。あなたがたが敵国人たちを相手に危地に身を投じようと思う時と同じ考えを持って。
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