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back.gif第5弁論・解説


Lysias弁論集



第5弁論

カリアスのために 神殿荒らしのための弁明






[1]
 もしも身命以外のものを賭して、おお、裁判官諸君、カリアスが訴追されたのなら、私は他の人たちから言われたことでも満足したであろう。ところが実際は、依頼と要請を受けているのに、そして私にとっても、生きている間は父にとっても、愛友であり、多くの取り引きもわたしたち相互の間にあったのに、可能な限り、カリアスを援助して正義を得させないというのは、恥ずべきことと私に思われる。

[2]
 そこで私は信じているが、彼がこの国に居留するようになったのは、はるか昔に何かよいことをあなたがたから得ようとしてであり、その後このような罪状でこれほどの危険に陥ったのである。ところが策謀する者たちときたら、何ら不正していない者たちの生命をも、多くの諸悪の責任者たちに劣らず、危険にさらすのである。

[3]
 そこで、あなたがたに必要なのは、奴隷奉公人たちの言説を信ずべきもの、この人たちのは信用に足らぬものと看做さないことである。次のことに思いを致すからである、――つまり、カリアスに対してはいまだかつて誰一人、私人も公人も提訴したことがなく、この国家に居住して多くの善事をあなたがたにもたらしたが、何一つ罪をつくらずこの年齢に達したのに、この連中ときたら、生涯にわたって大きな過ちを犯し、多くの悪事を経験してきたのに、あたかも何かよいことの原因になったかのように自由目当てに今言説を為しているのである。

[4]
 だが私は驚かない。彼らは知っているのである。――虚言を暴かれても、今ある以上に大きなものを蒙ることはないであろうが、あなたがたを欺けば、目下の害悪から解放されるだろうということを。実際のところ、こういう連中は告発者としても証人としても信ずべき者と見なしてはならない。みずからが大きな利得をするために他者に関して言説を為すような者たちを。むしろ公事に賛助して自分たちの身を危険にさらす限りの者たちをこそはるかに信ずべきである。そこで大事だと私に思われるのは、この争いをこの人たちの私事としてでなく、国家にいる人たち全員の共通事と考えることである。

[5]
 なぜなら奴隷奉公人たちはこの人たちの所有に帰するだけでなく、その他すべての人たちの所有にも帰するのであり、(彼らが)これらの人たちの運命に注目して、自分の主人たちにどんな善行を為せば自由になれるかとはもはや考察しようとはせず、彼らに関してどんな嘘を密告すれば……
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