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偽ルゥキアーノス作品集成

愛国者、あるいは、教えを受ける者

FilovpatriV h] DidaskovmenoV
(Philopatris)






[解説]

 『愛国者』の貧弱なギリシア語――統語論上の欠陥、対話の混乱、散文形式と韻文形式との混在――は、この作品がルゥキアーノスのものではなく、模作であることを宣告する。じっさい、ビュザンツ期の作品で、最初は1813年にC. B. Haseによってはっきりされたが、この対話篇の研究に対する最も重要な貢献は、S. Reinachの『La question du Philopatris』Revue Archéologique 1902である。

 この対話篇は、Nicephorus Phocas〔在位963-969〕の治世に書かれた。彼は、961年、クレタをサラセン人から奪回し、963年にはビュザンティオンの王座を強奪した。964-6年には、シケリア、メソポタミア、シリアでサラセンを、967年にはブルガリア人を制覇した。969年にはアンティオケとアレッポを占領し、その年の12月に暗殺されていなければ、さらなる征服を幻想したはずである。この対話篇は多分969年の春か、より少ない可能性としては、965年に書かれたが、その目的は不確かである。

 Phocasの戦争は高くつき、軍事的成功を無視し、ビュザンツ人には不人気であったのは、重税と、貨幣の価値を低下させたゆえである。彼が古くからの友たちや修道士たちの好意を失ったのは、悪名高い未亡人Theophanoとの結婚のせいであり、新しい修道院に費やされるすさまじい金や、存命者に与えられる遺産のせいであり、新しい司教に皇帝の承認を強要したせいである。あまりの不人気さのせいで、967年には暴動で殺されかかった。

 この対話篇の初めは、同時代の古典文学研究者たち(古典文学に対する熱狂者)に対する陽気な攻撃らしい。後半はもっと真面目で、あらゆる愛国者たちに、自分の故国の敵に対する皇帝の大征討を援助するよう訴えている。運命の預言者とは、おそらく修道士のことである。しかしそれが誰であろうと、彼らは迷信や偉大な戦士王に対する非愛国的な反対に耽っている点で批判されている。副題は、対話篇の後半で愛国者を自称するクリティアスに関連する。それ以前には彼は三位一体を学ぶ必要があるけれども。著者はおそらくソフィストである。クリティアスの最後の話の中に出てくる財産への暗示が、皇帝からの適切な報酬に導くことをこの作者は希望する。

(M. D. Macleod)






"t".1
愛国者、あるいは、教えを受ける者


1.1
トリエポーン
1.1
 これは、どうしたことだ、おお、クリティアス、すっかり変わりはて、眉根を八の字に寄せ、内に思いをひそめながら、行きつ戻りつしているとは。詩にある、うまい儲けを企む男〔Il. IV. 339〕に似て、「御身の両の頬も蒼ざめたままに」〔Cf. Il. III. 35〕。まさか、三つの頭をもった猟犬〔ケルベロス〕とか、冥府からやって来たヘカテーを目撃したとか、あるいはまた、神々のいずれかの方に、摂理によって出くわしたわけではあるまい。君がそういう目に遭うはずはまだないからだ。ぼくが思うに、この当の世界がデウカリオーンの時代のように、大洪水に見舞われると君が聞いたとしてもね。君に言っているのだ、おお、美しきクリティアス、聞いていないのか〔Cf. Il. X. 160 etc.〕、ぼくがこんなに近くからあれこれ大声出しているのに。ぼくたちに腹を立てているのか、それとも、つんぼになったのか、あるいはまた、張り手をくらわせるのを待っているのか。
1.13
クリティアス
 おお、トリエポーン、大層な問題な言葉を聞いたところなのだ。あちこち脇道に入り組んだのを。そして、その戯言をなお数え上げながら、耳をふさいでいたのだ。同じことをなお聞いて、気が狂って失神し、かつてニオベーもそうなったように詩人たちの物語にならぬようにと。いや、君がぼくに声をかけてくれなければ、目がくらんで崖から真っ逆さまに落ちているところだった、そして、おお、君よ、アムブラキア人クレオムブロトスの投身〔Cf. Callimachus, Epigram 25〕がぼくのために物語られるところだったよ。

1.22
トリエポーン
2.1
 ヘーラクレース! クリティアスを驚倒させたとは、何と驚くべきことを目にし、耳にすることか。だって、どんな吃驚仰天の詩人たちや、哲学者たちの驚異譚も、君の精神を驚倒させたことはなく、君にとって万事は戯れ言だったんだから。
2.5
クリティアス
 ちょっとやめて、これ以上煩わせないでくれ、おお、トリエポーン。ぼくから無視されたり蔑ろにされることはないのだから。
2.8
トリエポーン
 わかっているよ、君が思い巡らせているのは、些細なことでも軽蔑されやすいことでもなく、あまりに曰く言いがたいことだってことは。顔色、牡牛のような目つき、行きつ戻りつの不確かな足取りが、君をそれと見えやすくしている。さあ、恐ろしいことから息を吹きかしたまえ、戯言を吐き出したまえ、「何か悪しき目に遭わないように」〔Cf. Od. XVII. 596 etc.〕。
2.14
クリティアス
 君は、おお、トリエポーン、ぼくから何ペレトロンもさがっていたまえ、息が君を引っさらい、空中にあると多衆に見え、そして、昔イカロスもそうであったように、墜落した所にトリエポーン海という名を与えるというようなことのないように。というのは、今日ぼくが三倍いまいましいあのソフィストたちから聞いたことは、ぼくの胃袋を膨張させたのだから。
2.21
トリエポーン
 ぼくは、君が望む距離だけさがっているよ、君は恐ろしいことから息を吹き返したまえ。
2.23
クリティアス
 ぴゅーぴゅーぴゅーぴゅー、何たる戯言。ひゅーひゅーひゅーひゅー、何たる恐るべき企み。あい、あい、あい、あい、何たるむなしい希望。

2.26
トリエポーン
3.1
 おやおや、何たる豪風、雲を吹き散らすとは。というのは、西風が勢い猛に吹きつけ、〔船を〕波の上に押し進める時、今しがた北風をプロポンティス海に動かせた、そのおかげで、貨物船は縮帆索によって黒海を往来するだろう、風が吹いて波浪が横揺れするとき。どれほどの膨張が内奥に孕まれていることか。どれほどの激動と騒乱が君の胃の腑を悩ませることか。君はあまりに多くのことを聞いたがために、自分が多耳であることを明らかにした結果、異能者であり、爪によってさえ聞くことができるのだ。
3.10
クリティアス
 それほど意想外なことではないよ、おお、トリエポーン、爪によってさえ聞くことは。というのも、脛が子宮になる〔ディオニューソスの誕生〕、頭が孕む〔アテーナーの誕生〕、男の自然が女のそれに化ける〔例えばテイレシアース〕、女から鳥が変身するの〔例えばハルキュオネー、ピロメーラー、プロクネー〕をすでに見てきたのだから。総じて人生はじつに摩訶不思議なものだ、もし詩人たちを信じるならばだが。いや、先ず「君にこの地でお会いしたからには」〔Cf. Od. XIII. 228〕、プラタノスが太陽〔の光〕をさえぎり、夜啼き鶯や燕がよき響きを降りそそぐところへゆこう〔Cf. Pl. Phaedr. 230B〕、耳を喜ばせる小鳥たちの音曲と、やさしくほとばしる水が魂にまじないをかけるところに。

3.21
トリエポーン
4.1
 行こう、おお、クリティアス。しかしぼくは怖い。もしや、〔君の〕聞いたのが呪文で、君の驚くべき驚倒が、ぼくを擂り粉木とか扉とか、他の無生物にこしらえるのではないかと。
4.4
クリティアス
 天空にましますゼウスにかけて、そんなことが君に起こることはないよ。
4.6
トリエポーン
 またまた君はぼくを恐れさせる。ゼウスに誓うんだから。誓いに背いたとて、御身に何を報復できようぞ〔出典不詳〕。君のゼウスに君も無知ではないことをぼくは知っているのだから。
4.10
クリティアス
 君の言っているのはどういうことなんだ。ゼウスはタルタロスに送りこむことができるのではないか。それとも君は知らないのか、神々すべてを神さびた閾から抛り出し〔Cf. Il. I, 591; XV, 22-24〕、先ごろは、雷霆とどろかす敵手サルモーネウスを雷霆で撃ち、今もなお、好色きわまりなき者らを〔雷霆で撃ち〕、ホメーロスと同様、詩人たちから、「ティーターンの勝利者」「ギガース殺し」として讃歌を受けていることを〔Cf. Od. XI, 305 seq.〕。
4.17
トリエポーン
 君は、おお、クリティアス、ゼウスのことで見過ごしていることがある。君の気が向くなら、聞きたまえ、彼は好色ゆえに〔レーダーを口説くために〕白鳥になり、〔アンティオペーを口説くために〕サテュロスになり、いや、〔エウローペーを口説くために〕牡牛にさえなったのではないか。そしてもしも、あの売女をすぐに肩にのせて海に逃れたのでなかったら、たちまち百姓に出会って鋤をつけられ、君のいう雷霆投げゼウスも、雷霆を投げつけることさえなく、牛追い棒で突きまくられていたことだろう。さらにまた、アイティオープス人――見た目も黒い黒人たち――とともに宴楽に耽り、12日間〔Cf. Il. I, 423-425〕去ることもなく、豊かな髭をたくわえながら、彼らのところでほろ酔い気分で坐っていたことも、恥じるに値することではないか。さらに鷲〔ガニュメーデースの誘拐〕やイーダのことや、全身これ孕むことも、言うも恥ずかしい。

4.31
クリティアス
5.1
 でも、少なくともアポッローンにかけては誓うのではないか、最善の預言者であり医師でもある彼には、おお、善き人よ。
5.2
トリエポーン
 君が言うのは偽預言者、かつてはクロイソスを破滅させ〔Cf. Hdt. I, 53〕、彼の後ではサラミス人たちやその他無数の者たちを〔Cf. Hdt. 7.141〕、二通りに解釈できる託宣を万人に述べて〔破滅させたやつ〕だね。

5.5
クリティアス
6.1
 ではポセイドーンを何と? 三叉の鉾を手に揮い、戦争の際にはとても甲高いものすごい声で、九千人あるいは一万人の戦士ならかくやととも思われるほどの〔声〕で喚き〔Cf. Il. XIV, 148-149〕、いや、大地を揺るがせるとも、おお、トリエポーン、呼び名される〔神〕は?
6.5
トリエポーン
 君が言うのは姦通男のこと。やつはその昔サルモーネウスの娘テューローを堕落させ〔Cf. Od. XI, 241-245〕、なおも姦通をつづけ、そういった連中の救助者にして民衆指導者だね。というのは、アレースが縛めによって緊縛され、アプロディーテーもろともほどけることなき縛めに閉じこめられたのを、神々はみな姦通を恥じて沈黙していたのに、馬体ポセイドーンは涙を流して泣きわめいた〔Cf. Od. VIII, 266-366〕。教師を恐れる赤ん坊のように、あるいは、乙女をだます老婆のように。そして、ヘーパイストスに、アレースを解放するよう頼みこみ、かの両脚びっこの精霊的なものは、年長の神〔ポセイドーン〕を憐れみ、アレースを解放した。かくして姦通者たちを救ったのだから、〔ポセイドーン〕もまた姦通者なのだ。

6.18.
クリティアス
7.1
 では、ヘルメースを何と?
7.1
 ぼくに〔言うな〕。好色このうえないゼウスの悪奴隷、姦通事にかけて色気違いのことを。

7.3
クリティアス
8.1
 アレースとアプロディーテーは、先ほど君から告発されたから、君が認めないことはわかっている。そこで、この者たちは放置しよう。でもまだアテーナを挙げよう。処女であり、武装し、恐れ入らせる女神。ゴルゴーンの頭さえ胸につけ、ギガース殺しの女神だ。彼女について何か言うべきことを君は持たないのだから。
8.7
トリエポーン
 この女についても君に述べよう。ぼくに答えてくれるなら。
8.8
何でも望みのことを言いたまえ。
8.9
トリエポーン
8.10
 云ってくれ、おお、クリティアス、ゴルゴーンの有用性とは何か、また、これを女神が胸にまとうのはなぜなのか。
8.11
クリティアス
 とても恐ろしい見物、恐ろしいことどもの魔除けとしてだ。いや、さらに敵対者たちを恐れ入らせ、〔女神が〕望む場合には、形勢逆転の〔Cf. Il. VII, 26 etc.〕勝利をもたらすのだ。
8.14
トリエポーン
 だからこそ、燦めく眼の女神(Glaukow:piV)は征服されざるものなのではないか。
8.15
クリティアス
 たしかに。
8.16
トリエポーン
 いったい何故なのか、救うことのできるものたちにではなく、救われるものたちに、牡牛とか山羊とかの〔Cf. Il. I, 40-41〕太腿を〔生贄として〕焼き、その結果、われわれを、アテーナをそうするように、征服されざるものに仕上げる所以は。
8.20
クリティアス
 いや、彼女〔ゴルゴーン〕は、神々と違って、遠くから助ける力はなく、人がそれをまとっている場合だけなのだ。

8.22
トリエポーン
9.1
 すると、それ〔ゴルゴーン〕とは何なんだ。というのは、ぼくは君から知りたいんだ。君がそういったことを発見し、大成功をおさめたのだから。というのは、ぼくは彼女のことを、その名前以外は、あらゆる点で無知なのだから。
9.4
クリティアス
 彼女は、眉目よく愛らしい乙女であった。しかしペルセウス――高貴な勇者にして、魔法で勇名を馳せた――が策略によってこの女の首を切って以来、呪文でこれをおとなしくさせ、神々はこれを魔除けとして保持することになった。
9.9
トリエポーン
9.10
 こんな美しいことが、今までぼくに気づかれなかったよ、神々が人間どもを必要とするとは。しかし、生きている彼女の有用性とは何かね。売春宿で懇ろにやっていたのか、それとも、ひそかに通じないながら、乙女だと自称していたのか。
9.13
 アテーナイの知られない〔神〕〔Cf. Act.Ap. 17.23〕に誓って、首を切られるまで、処女でありつづけた。
9.15
トリエポーン
 いったい、ひとが処女の首を刎ねたら、多衆にとって同じ恐怖が起こるのか。というのは、ぼくは知っているのだ、無数の乙女が四肢切断された、
潮の取りまく島――これをひとクレーテーと<も>呼ぶ――にて」〔Cf. Od. I, 50.; Il. V, 306〕

そしてこのことを知っていたなら、おお、美しきクリティアス、どれほどの数のゴルゴーンをクレーテーから君に連れてきたことであろうか。そして君を征服されざる将軍にぼくは任命する。一方、詩人たちや弁論家たちは、数多くのゴルゴーンを見つけ出したとして、ぼくをペルセウスより大いに評価したことだろう。

10.1
いや、クレーテー人たちのことでもっと思い出したことがある。彼らは君のゼウスの墓と、その母が過ごした茂みをぼくに見せたことがある。その茂みはその茂みは常緑でありつづけたからね。
10.4
クリティアス
 いや、君は呪文や秘儀(o[rgia)がわかっていない。
10.5
トリエポーン
 もしこれらのことが、おお、クリティアス、呪文によって起こるのなら、すぐさま死者の中からでも生き返らせ、このうえなく甘き光の中に連れてきたことであろう。いや、くだらぬ戯れ言であり、詩人たちの広めた御伽話であるから、これをも放置したまえ。

10.10
クリティアス
11.1
 ゼウスの妻にして妹のヘーラは承認するのではないか。
11.2
トリエポーン
 交情のために好色このうえない女のこと〔Cf. Il. XIV, 346-53〕は黙りたまえ、そして、手足を伸ばす女は見過ごしにしたまえ。

11.4
クリティアス
 いったい、誰にかけて誓えばいいのか。
12.1
トリエポーン
 高みにしろしめす神――大いなる、不死なる、天にまします、父からの息子、父から進み出た霊、三からなる一にして、一からなる三――

これをゼウスと思うがよい、これを神と考えよ。〔E. Fr.941〕

12.5
クリティアス
 ぼくに算数を教えている、そして誓いは算術になる。というのも、君はゲラサ人ニコマコスのように計算するのだから。一が三で、三が一とは、何を言っているのかぼくはわからないのだから。ピュタゴラスのテトタクティス〔1+2+3+4=10〕、あるいは第8〔ピュタゴラス派では正義を表す〕とか第30〔ピュタゴラス派は1月=30日を聖なるものと考えた〕とかを謂っているのではあるまいね。
12.10
トリエポーン
 くだらぬこと、沈黙に値することは沈黙せよ。蚤の跳ねる距離を測るというようなこと〔Cf. Ar. Nu. 145〕はここにはない。というのは、君に教えよう、全体(to; pa:n)とは何か、万物に先立つ者とは誰か、全体の構成物(suvsthma)とは何かを。というのも、先ごろ、ぼくも君と同じ情態にあったが、ぼくにガリライア人〕が出会ったとき、額の禿げあがった、鼻の長いその人物は、第3天まで昇って〔パウロのこと。2Ep.Col. 12.2; Ar. Nu. 225〕、最美な事柄を学びつくし、水によってぼくたちを生まれかわらせ、浄福な人たちの足跡を歩ませ、不敬な地からぼくたちを身請けしてくれたのだ。君をも、ぼくのいうことを聞くなら、真の人間としてあげよう。

12.21
クリティアス
13.1
 言ってくれ、おお、博識このうえないトリエポーン。ぼくは恐怖に満たされているから。
13.2
トリエポーン
 喜劇作者アリストパネースの『鳥』という作品を君はいつか読んだことがあるね。
13.4
クリティアス
 たしかに。
13.5
トリエポーン
 そこにこういうことが刻まれている。

初めにあったのは、カオスと夜と黒いエレボスと広いタルタロス。
ゲーもアーエールもウーラノスもなかった。〔Av. 693-694〕

13.9
クリティアス
13.10
 その言やよし。次に何があった?
13.10
トリエポーン
 不朽にして、見えざる〔1Ep.Ti. 1.17〕、思惟されえざる光――闇を晴らす光があって、その無秩序を追い払った。彼の口に出したたった一言で、舌の重い人〔モーゼ〕が書き記すように〔Exodus 4.10; Genesis 1.6〕、大地を水の上に据え〔Psalms 24.2〕、天を拡げ〔Cf. Isaiah 44.24〕、不惑の星辰――これを君は神々として崇拝している――を形づくり、さらに大地を花々で美装し、人間を非有から有へと持ちこんだ。そして〔神は〕天に在る。義なる者らと不義なる者らを〔Cf. Ev.Matt. 5.45〕見つめつつ、その仕業を書物に書き記しつつ〔Cf. Revelation 20.12〕。しかし、御自身がお定めになった日に〔Cf. Acts 17.31〕、万人にお報いになるであろう。

13.20
クリティアス
14.1
 で、モイラたちによって万人に紡がれたこと、それをもまた刻みこむのか。
14.2
トリエポーン
 どんなこと?
14.3

クリティアス
 運命(eiJmarmevnh)の〔仕業〕だよ。
14.4
トリエポーン
 言ってくれ、おお、美しきクリティアス、モイラたちについて。ぼくの方は、喜んで弟子入りして君から聞くつもりだ。
14.6
クリティアス
 名高い詩人ホメーロスは云ってないか。

人の世の何者もモイラを逃れおおせる者はいないとわしは謂う〔Il. VI, 488〕

 さらに大いなるヘーラクレースについては、

14.10
とてものこと、あの剛勇のヘーラクレースとて 死の定業は免れなかった、
クロノスの御子、ゼウスのみことの 最愛の子であったというのに、
定まる定業と、ヘーレーの 酷い怒りに押しひしがれて。〔Il. XVIII, 117-119〕

いや、全人生も、そこにおける推移も、定業に定められている、と。

それから先は定命と
重苦しい運勢の紡ぎ女らが、生まれてきた折、麻糸紡いで
よこした分を、残らずその身に受けられようがな、母御が彼をお産みの際に。〔Od. VII, 196-198〕

そして異邦の地での滞留も彼女〔運命〕から起こるという。

またアイオロスの島についての話で彼が、一度は快く一行を
14.20
迎え入れかつ送り出したが、まだ決して懐かしい故国に帰れる定めにはなかった〔Od. XXIII, 314-315〕

かくて万事はモイラたちによって起こるとこの詩人は証言していたのであった。ゼウスはその息子〔サルペードーン〕を、

おぞましい嘆きの死から救おう〔Il. XVI, 442〕

とはせず、むしろ、

ただ血みどろの雨のしずくを 地の上へと、愛児をいとおしむ
念のしるしに注ぎたもうた、その子はいましパトロクロスが土塊饒かな
トロイエーに、討ち果たすものと定まっていた。〔Il. XVI, 459-461〕

だから、おお、トリエポーン、これがモイラたちについて何ら付言しようとしてはならぬ所以だ。もしかして、教師とともに空中に引き上げられて、口にすべからざることを打ち明けようとも。

14.31
トリエポーン
15.1
 その同じ詩人が、おお、美しきクリティアス、運命に二重の、両義的な異名で呼ぶのは、いったいどうしてなのか。例えば、何かしかじかのことを為す者には、かくかくの終わりに遭遇するが、かくかくのことを為す者には、別の終わりに出くわすと。例えば、アキッレウスについては、

15.6
二筋に別れた運命が 最期の際へ我が身を運んでゆこうか。
もしこのまま踏み止まって、トロイエー人の都を的に 戦おうなら、
帰郷の秋は失せる代わり、不滅の誉れをかちえるであろう、
もしまた故郷へ戻って、懐かしい祖国の土を踏むときには、
15.10
すぐれた名誉は失せる代わりに、わたしの寿命は長く
あろうし、早急には最期の際に至りはすまいと。〔Il. IX, 411-416〕

いや、エウケーノールについても、

身のおぞましい運命を弁えながら、船に乗って出かけていった、
というのは屡々彼に対い、優れたポリュエイドス老人が、
おまえは苦しい病に罹って、自分の家で身を果たすか、
またはアカイア軍の船の間で、トロイエー人の手にかかろうと。〔Il. XIII, 665-668〕

16.1
こういったことがホメーロスに書かれているのではないか。それとも、それ〔運命〕は両義的で、いつも絶壁の縁にある欺瞞なのか。そこでお望みなら、ゼウスの話をも君のために付け加えよう。〔ゼウスは〕アイギストスに云ったのではないか〔Cf. Il. I, 37 ff.〕、〔アイギストスが〕姦通と、アガメムノーンに対する策謀をやめるなら、長生きするよう運命づけられているが、そういったことの実行に手をそめるなら、死を待ちつづけることはない、と。これはぼくもしばしば預言したことだが、君が隣人を殺したら、正義から死をたまわるが、それをしさえしなければ、美しく生きるだろう、

早急には死の際には至りはすまい。〔Il. IX, 416〕

詩人たちの〔いう〕ことがいかに手の施しようのない、両義に解釈できる、不確実なことであるか君は見るのではないか。だから、すべて放置しよう。善人たちの天上の書物に、君をも記載するだろうから。

16.15
クリティアス
17.1
 廻りめぐって万事をうまくもとどおりにしました、おお、トリエポーン。しかしわたしに次のことを云ってくれたまえ、スキュティア人たちの行いをも天に刻みこむのだろうか。
17.3

トリエポーン
 すべてをね、異邦人の中でも〔Cf. Acts 14.27 ff.〕、いやしくも有為の士ならば。
17.4
クリティアス
 天に数多くの筆者を君は謂っている、あらゆる〔行い〕を記載するように。
17.6
トリエポーン
 口をつつしむがよい、右利きの神について馬鹿なことを云ってはならぬ〔Ar. Nub. 833-834〕。むしろ、ぼくから口頭の教えを受けて聴従したまえ、いやしくも、永遠に生きるべきならば。もし、天を天幕のように披いて〔Cf. Psalms 104.2〕、大地を水上に据え、星辰を形づくり、人間を非有から取り出したのなら、万人の行いを記載することに何の意想外な点があろう。というのも、君が屋敷をこしらえ、そこに下女や下男を集めたのに、彼らのとるにたりぬ行いが君に気づかれないなんてことはけっしてないだろう。まして万物を創造した神となれば、それだけますます、各人の行いとか思いすべてを追跡することはたやすいのではないか。なぜなら、君の神々は、正気の人たちにとってはコッタボス遊びとなったのだから。

17.18
クリティアス
18.1
 まったく君の言やよし、ぼくをニオベーの逆の状態にしたよ。というのは、墓標から人間として立ち現れたのだから。おかげで、この神を君のために〔誓いの神として〕付け加えよう、ぼくから何か悪いことを蒙らないよう。
18.4
トリエポーン
 「心の底から本当に愛するなら」〔Ar. Nub. 86〕ぼくの中に別のものを作りこんで、「心の中に覆い隠していることと口に云うこととが別々に」〔Il. IX, 313〕するな。むしろ、さあ、耳にしたというその驚くべきことを歌いたまえ、ぼくも真っ青になり、完全に変わるように、そしてニオベーのように口がきけなくなるのではなくて、夜啼き鶯のように鳥になって、君の驚くべき驚倒を、花咲く牧草地のように悲劇の歌で飾ることにしよう。
18.11
クリティアス
 父の血を引く息子にかけて、そんなことは起こらないだろう。
18.12
トリエポーン
 霊から言葉の力を受けて〔Cf. Acts 1.8; Ep.Rom. 1.4〕言いたまえ。わたしの方は坐っていよう、

アイアコスの裔〔アキッレウス〕が歌いやむを待ちもうけつつ〔Il. IX. 191〕

18.15
クリティアス
19.1
 とにかく生活必需品を購入しようと、大通りに出かけたところ、そこで、おびただしい数の大衆が、聞く〔耳〕に唇をくっつけて、耳にささやきかわしているのを目にした。ぼくは全体を見渡して、手を眉のまわりにまげて、眼光鋭く凝視した。もしや、誰か友でも見当たらぬかと。すると政治家クラトーンを目にした。幼なじみの友で、呑み友だちだ。
19.8
トリエポーン
 識っている。彼はperaequator(ejxiswthvV)〔税の公平な配分官〕だと君が云っていたから。
19.10
次いで何が?

19.10
クリティアス
20.1
 そこで、多衆を肘で押しのけて、前にたどりつき、「おはよう」と云うために、彼の方に進んだ。ところが一人の小人、その名はカリケノスなる者、鼻を鳴らすのが特徴の老いぼれが、胸深く咳をして、汚らしく痰を切ったが、その痰は死よりもどす黒かった。「こやつは、わしがいま云ったように、peraequatorどもの延滞金を帳消しにして、債主に負債と、家賃と税金のすべてを払い、策を調べることもなく、都市行政長官(eijrhvnarcoV)さえ受け入れるつもりだ」。なおも厳しくしゃべりつづけた。しかし、彼を取り巻く人々は、その言葉を喜び、聞いた事柄の新しさに夢中になった。

21.1
 別のひとり、その名はクレウオカルモス、よれよれの上着(tribwvnion)を引っかけ、裸足、無帽の男が、歯噛みしながらみなに向かって云った。「ひどい身なりをしたやつ――山地からやって来て、髪を刈りこんだやつ――がわしに示した。その名は劇場に神聖文字で刻みこまれている、こいつは大通りを黄金であふれさせるだろう、と」。
 そこでぼくが、アリストアンドロス風とアルテミドーロス風に謂った。「こういった夢想は、あなたがたにとって美しい結果にはならず、あなたの負債は、支払いに比例して増えることだろう。他方、この人は、1オボロスだって失いことはなるまい、数多の黄金にあふれているのだから。そしてわたしには、あなたがたが「白切崖(LeukavV)に」「そして夢の輩のところへ」〔Od. XXIV, 11-12〕くだっていって、夜の一瞬の間にこれほどの夢を見ているように思われる」。

22.1
 すると彼らはみな、笑いで息が詰まるほどに大笑いして、ぼくの無学に有罪判決をくだした。そこでぼくはクラトーンに向かっていった。「万事を悪くぼくが嗅ぎ出したのではないか、喜劇風にちょっと云えばね、そしてテルミッソス人アリスタンドロスやエペソス人アルテミドーロスに倣えば夢を追跡したのではないか」〔Cf. Ar. Ran. 902〕。
 するとやつがいった。「黙れ、おお、クリティアス。おまえがおとなしくするなら、最美なことと、今起こっていることの手ほどきをおまえにしてやろう。なぜなら、これは夢ではなく、真実であり、メソリ月〔エジプトの暦月、今の8月〕には出来するのだから」。
 これをクラトーンから聞いて、やつらの思想の軽佻浮薄さに有罪判決を下し、ぼくは赤面し、仏頂面しながら立ち去った。クラトーンにさんざん悪態つきながら。しかし一人が鋭いティターンめいた眼で睨みながら、ぼくの外套をつかんで、引き裂きはじめた。古ぼけたあのダイモーン〔=カリケノス〕から、対論するよう説得され、そそのかされたやつだ。

23.1
 このことでわれわれの間で議論が長引いて、やつはぼくをいまいましくも説き伏せたのだ。魔法使いめいた人間どものところへ行き、まさに諺どおり、忌まわしき日にぶつかるようにと。というのは、彼の謂うには、彼らから万事を手ほどきされたというのだ。そこでぼくたちは鉄の門と銅の敷居を〔Il. VIII, 15〕通り過ぎていった。おびただしい数の階段をぐるぐるめぐって、黄金張りの館に登り着いた。それはホメーロスがメレラオスの〔館〕と謂っているよう。そこで、かの若き島民〔テレマコスCf. Od. IV, 71-75〕が〔眼にした〕すべてをぼくは見渡した。ぼくが目にしたのは、へレーンではなく、頭を垂れた顔の青ざめた人たちである。「人々見るからに喜びをなし」〔Il. XXIV, 320-321, Od. XV, 164-165〕、向こうの方からやって来た。というのは、何か悲しい報せを持って来たのかどうかと〔口々に〕謂っていた。というのは、この連中が現れるのは、最悪の事態を祈るため、劇場の悲歌作者のように、悲しいことを喜ぶためであり、頭を寄せ合って、ささやきかわしていた。しかしその後で、ぼくに尋ねた。

いったいあなたはどういう方で、どこからおいでか、また郷国やご両親は?〔Od. I, 170〕

というのは、姿恰好からして、有為の士であられようから。
 ぼくは謂った。有為の士などほとんどいません、どこを見渡しても。ぼくの名はクリティアス、ぼくの郷国はあなたがたと同じ。

24.1
 すると、空中を歩くような連中が問いただした。郷国の様子や世界の様子はどうですか。
 ぼくは謂った。万人は喜んでいるし、これからも喜ぶことだろう。
 彼らは眉を上げ、首を振った、「そうではない。郷国は難産だ」。
 ぼくは彼らに同意して謂った。あなたがたは空中にあって、高みから万事を眼光鋭く見下ろし、これらのことも考えてきた。しかし、天空のことはどうなのか。太陽は食となり、月が垂直に昇るのではないのか。アレース〔火星〕が矩象になると、ゼウス〔木星〕とクロノス〔土星〕は〔直径の両端のように〕太陽の正反対になるのではないか。アプロディーテー〔金星〕がヘルメース〔水星〕と同道して、ヘルマプロディトスたちを出産すれば、これをあなたがたは喜びますね。彼ら〔ヘルマプロディトスたち〕が猛烈な雨を降らせればね。多くの雪を大地に降り積もらせ、雹や錆病を見舞うなら、疫病や飢饉や干魃で襲うなら。雷霆投げる容器が空になり、雷霆もたらす受器が補充されるなら。

25.1
 彼らは、万事を矯正する者たちのように、自分たちの好きなことをしゃべりつづけた。自分たちが事態を変えられ、諸々の無秩序と混乱が都市を占領し、軍勢は敵対勢力に敗北すると。これにぼくは呆れかえって、樫の木に火がついたように〔Ar. Ra. 859〕興奮し、金切り声で叫んだ。「おお、ダイモーン的な者たちよ、あまりに大きなことを言うなかれ、獅子の胆もつ者たち、投げ槍、突き槍、白毛を立てた兜を息吹く男たちに対して歯を研きつつ」〔Ar. Ra. 815, 1016, 1041〕。いや、これらのことはあなたがたの頭上に下ることであろう、あなたがたの祖国を疲弊させるのだから。というのは、あなたがたは空中を歩いていて、これらのことに耳を貸さず、刻苦精励した算術を達成してこなかった。もしも諸々の占いや魔法があなたがたをたぶらかしたら、無学の罪は二重だ。なぜなら、これらのことは老女たちの発明品であり、玩具なのだから。というのは、こういったことを求めるのは、たいてい女たちの思いつきなのだから。

25.16
トリエポーン
26.1
 で、これに対して彼らは何と謂ったのか、おお、美しきクリティアス、判断力も思考力も刈り取られた連中は。
26.2
クリティアス
 これらのことをみんな駆け抜けて、巧妙に仕組まれた思いつきの中に避難した。というのは、彼らは言ったのだ、太陽十個分、食なしで辛抱し、徹夜の讃歌で不眠でいるなら、こういったことを夢見られると。
26.6
トリエポーン
 君は何と、連中に対して述べたのか。彼らの謂ったのは重大でややこしいことなんだから。
26.8
クリティアス
 大丈夫、ぬかりはない。というのは、最美な言い返しをしたんだから。というのは、町衆の繰り言は、とぼくは謂った、あなたがたが夢見るときに、ああいったことは導入されるだろうと。
 すると彼らは歯をむきだしてにやにやしながら、「彼らがやってくるのは、寝椅子の外だ」。
 そこでぼくは謂った。それが真実なら、おお、空中の人たちよ、あなたがたが将来のことを追跡するのは決して安全ではなく、自分たちに説き伏せられて、現に存在しない事柄や、将来も存在しないであろうことをおしゃべりするだろう。いや、こういったことを、夢を信じてどうしておしゃべりするのか、また最美なことを嫌いながら、邪な連中をこそ喜び、いやなことに何ひとつ益されることがないのに。だから、これらこんな妙な幻想や、邪悪な提案や、預言にはおさらばせよ。そうすれば、神が祖国に呪いをかけたり、まがいの言葉を浴びせることはよもやあるまい。

27.1
 ところが連中はみな、ぼくに対して心をひとつに合わせて〔Il. XV, 710 etc.〕さんざんに非難を浴びせた。そしてお望みなら、あなたに次のことも付け加えよう。彼らはぼくを物言わぬ墓標にさえ扱った。君の親切な話が、石と化した〔ぼく〕を解放し、人間へと立ちもどらせてくれるまでね。
27.5
トリエポーン
 沈黙したまえ、おお、クリティアス、戯言を度を超えて引きのばしてはいけない。というのは、ぼくの胃袋がどんなに膨らんで妊娠でもしたかのようなのは、ごらんのとおりだ。というのは、君の言葉に、まるで狂犬によってのようにぼくは咬まれたからだ。そして忘れ薬を服用しておとなしくならぬかぎり〔Od. IV, 220-221〕、記憶そのものはわたしの中に住みついて、大きな害悪を働くだろう。だから、これらの〔言葉は〕放置せよ。祈りを父から始めて、終わりに多名をもつ歌〔頌栄歌(doxology)〕をつけて。

28.1
 しかし、これはどうしたことか。あれはクレオラオスではないか。大股に歩みを運び〔Cf. Od. XI, 539〕、
急いで戻り、帰って来たのは〔A. Ch. 3; Ar. Ra. 1153 seq.〕。彼に大声で声をかけようではないか。
28.4
クリティアス
 たしかに。
28.5
トリエポーン
 クレオラオス!

馳せ競べでは、追い越されようやもしれぬ〔Od. VIII, 230〕
来たりて挨拶されよ、もしや報せをお持ちなら。〔出典不詳〕
28.8
クレオラオス
 いずれの御方にもご挨拶、おお、美しきご両人。
28.9
トリエポーン
28.10
 お急ぎは、何故? たいそう息せきっておいでだから。何か新しいことでも起こったのでは?
28.11
クレオラオス
ペルシア人らの
古来音に聞こえし眉勢は墜ちたり、
世評高き町スーサも。
さらにまたアラビアの全地も落ちん、
統治せる者の堅固このうえなき手に力によって。

28.16
クリティアス
29.1
 これは〔彼らが云っていた〕あのことだ、つまり、神的なものはいつも善人たちを気にしないのではなく、よりすぐれた事態へと競い合いを増大させる、と。しかしぼくたちは、おお、トリエポーン、最美なことどもを見出してきたのだ。というのは、生を終える際に、わが子たちに何を遺したらいいのか、心穏やかでないからだ。というのは、君はぼくの貧しさを、ぼくが君の財を〔知っているのと〕同じように知っている。皇帝の日々が〔続くかぎり〕、わが子たちにはこれで充分だ。なぜなら、富がわれわれを見捨てるわけではなく、民族性がわれわれを脅かすわけではないから。
29.8
トリエポーン
 ぼくも、おお、クリティアス、同じものらをわが子たちに遺すことにして、彼らは目にする――バビュローンが滅び、アイギュプトスが隷属し、ペルシア人たちの生子らが「奴隷の日々」〔E. Hec. 56, Andr. 99〕を過ごし、スキュティア人たちの襲来が阻止されるばかり、撃破さえされるのを。しかしぼくたちはアテーナイの知られざる〔神〕を見出したのだから、跪いて礼拝もして、両手を天に差しのべて、この〔神〕に感謝の祈りを捧げよう。このような力に従順な者として資格が認められたが、残りの連中がおしゃべりをしていることは放置しよう。彼らのためには、諺にあるとおり、「ヒッポクレイデースは気にしない」〔Hrd. 6.126-31〕と云うことで満足して。

2010.12.10. 訳了。

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