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原始キリスト教世界

語録集(Apophthegmata)3

沙漠の師父の言葉(Anony2)
Apophthegmata patrum
無名氏による編集2
(collectio anonyma 2)



[底本]

TLG 2742
APOPHTHEGMATA
Apophthegmata patrum
(Varia)

3 1
2742 003
Apophthegmata patrum (collectio anonyma) (e codd. Coislin. 126, 127 +
Paris. gr. 1596, 2474), ed. F. Nau, "Le chapitre Peri; tw:n ajnacwrhtw:n aJgivwn et les sources de la vie de Saint Paul de Thebes,"
5
Révue de l'Orient Chrétien 10 (1905) 409-414.
(Cod: 1,563: Eccl., Gnom.)


409."1t"
聖なる師父たちの言葉 なお格別に
"2t"
クリストスにしたがう道を教えこんでくれたところの〔言葉〕
"3t"
聖なる隠修者たちについて

 隠修者の一人が、ライトー〔紅海のほとり、シナイ山の近く、今のTor〕にある兄弟たちに物語った。そこは、ナツメヤシの幹70本があるところ。ここは、モーゥセースがエジプトの地から脱出し、その民とともに屯営したところである。そうして、〔隠修者の一人が〕言ったのは、以下のごとくである。

 かつて、わしはもっと奥の荒野に出離しようと思い立ったことがある。そう云っていると、わしよりも奥で過ごしている者を見つけた。しかも、彼は主人であるクリストスに隷従していた。そこで、4昼夜旅をして、洞穴を見つけた。そこで近づいて、中をうかがった。そうして、いっしょに坐っている人間を目にした。そこで、修道者たちの習慣どおり、彼が出てきてわたしに挨拶するものと思って扉を叩いた。が、彼は動かなかった。というのは、休息していたからである。しかしわしは何も気にしなかった。入っていって、彼をその肩で掴んだ。すると簡単に崩れ、塵になった。なおもよく見ると、下着(kolovbion)がぶらさがっているのを目にした。そこでこれをも掴んだとたん、ばらばらになって、何もなくなった。そこで困惑して、そこから出て行き、荒野を渡っていったところ、またも別の洞穴と人の足跡を見つけた。上機嫌になって、その洞穴に近づいた。しかし再び叩いたが、誰一人わたしに応えなかったので、入っていったが、誰も見つからなかった。そこで洞窟の外に立って、わたし自身に言った。「(410)の僕が来るに違いない。しかしどこにいるのか」。やがて日が暮れると、大型レイヨウと、の裸の僕が来るのをわたしは目にした。その毛髪によって、身体の不格好な肢体は覆われていた。で、わたしに近づいて来るや、わたしを霊だと思ったらしい。礼拝するために立ち止まった。というのは、後に彼が言ったところでは、霊たちによってさんざん試みられていたからである。そこでわたしはそれと気づいて、彼に言った、「わたしは人間だ、の僕よ。わたしの足跡を見よ、わたしに触って、わたしが肉と血であることを知れ。だから、アメーンをもってわたしをよく見よ」と彼は呼びかけられた。そうしてわしを洞穴の中に迎え入れ、尋ねた、「どうしてここにやって来られたのか」と。そこでわしは言った、「の僕たちを探し求めるためにこの荒野にやって来ました。しかしわたしの欲望は強くされませんでした」。わしも彼に質問して言った、「されば、あなた自身もどうしてここにやって来たのですか。そうしてどれほどの期間を過ごし、どうやって食糧を得ているのですか。またどうして裸で、着物を必要としないのですか」。

 すると彼が謂った、—
 「わしはテーベの共住修道院にいた。麻布織りを仕事としていた。しかし想念がわしに忍びこんでこう言う、「出て行け、自分ひとり座せ、そうして、静寂を守り、客遇し、おまえの仕事の融通からもっと多くの報酬を手に入れられるようにせよ」と。そこでこの想念にわしは同意した。そうしてまさに仕事をやめにした。というのは、修道院に住んでいたからじゃ。命令をくだす者たちをわしは持っていた。で、集められたものらをすべて焼いて、物乞いたちや外人たちに分配することを競っていた。しかし、われわれの敵である悪魔は、わたしに起こるはずの方向転換をいついつまでも妬んでいた。に労苦を捧げる急いでいたときに?、処女に留まっていたひとりの女が、わしに姿を命ずるのをわしは知った?。しかも、わしが実行し与えたのに?、またもや他のことをわしに命じるよう彼女をそそのかした?。それ以降、馴染みと過剰な気安さが生じた。ついにつまらぬことを許しさえした?。そうして笑いと、いっしょに摂る食事が陣痛に苦しみつつ無法(ajnomiva)を産んだ。そこで、わしは彼女と6ヵ月間、躓きの内にとどまったものの、今日か、明日かと思量しておった。多年の後では、死にすり替えられて、永遠の懲らしめを受けるだろう。なぜなら、人間の女を堕落させる者は、永遠の懲らしめにすり替えられるのじゃから。(411.)クリストスの花嫁を堕落させるとは、どれほどの罰に値することか。じつにそういうふうにして、ひそかにこの荒野に駈けこんだのじゃ、すべてをその女に任せて。そうして、ここにやって来て、この洞穴とこの泉を見つけた。そうしてこのナツメヤシが、ナツメヤシの12本の小枝をわしにもたらしてくれる。毎月1本の小枝をもたらしてくれ、これが30日間わしを満たしてくれる。その後は別の〔小枝を〕熟させるのじゃ。長い間に、わしの髪の毛は伸び、わしの外衣はぼろぼろになったが、この〔毛髪〕によって身体の部分をわしは包んでいるのじゃ」。
 さらにわたしが、初めのころ、ここが嫌だったかどうか彼に質問したところ、彼は謂った、
 「初めの頃、ひどくしごいた。その結果、肝臓から〔心から?〕地面に横たわるほどじゃった。すると、わしは立ったまま集会(suvnaxiV)を仕遂げるができなくなり、地面に横たわったまま至高者に向かって叫んだほどじゃ。それで、わしは洞穴の中にいて大いなる失意と労苦に陥った。その結果、以降は出かけることができなくなった。人が入って来て、わしの隣に立ち、わしにこう言うのを目にした、「何を患っているのか」。するとわしはたちどころに少し元気になったので、云った、「肝臓を患っています」。するとわしに云った、「どこを患っているのか」。そこで彼に示すと、自分の手の指を真っ直ぐに結んで?、剣のように患部を切り裂いた。そうして肝臓を引っぱり出した。わたしにその傷を示した。そうして手で殺いで、そのかさぶたを薮の中に投げ入れた。そうして再び肝臓を納め、手でその箇所を拭ったうえで、わたしに云った、「見よ、おまえは健康になった。主人たるクリストスにふさわしいように仕えよ」。以来、わたしは健康となった。そうして、それからはここで爽快にしごいている」。
 そこでわたしは彼をあれこれ励ました結果、先の洞穴でわたしをしごき、ダイモーンたちの突進に耐えられないと云った。わたしもその点で裁かれ、祈ることでわたしを解放するよう励ました。そうして祈って、解放した。そうして以上のことをわたしが物語ったのは、あなたがたにとって益となるためである。

 さらに他の長老が言った、この人は、オクシュリュンコスの監督として認められた(412.)人物であるが、この人物に、別のある人が物語ったというのである。この〔別のある〕人こそ、それを実行したことのある当の人物であった。

 「わしにはよいと思われたのじゃ」と〔その当の人物が〕謂う、「オーアサス?よりもっと奥の荒野に行き、そこにはマジコイ人の種族がいたが、クリストスに隷従する人をわしが見つけられるかどうか見るのがよいと。そればかりか、わずかの固い乾しパン(paxamavtia)を取り、また約4日分の水で旅をつづけた。しかし4日が過ぎた。食べ物が尽きた。どうしたらよいか困った。しかし勇み立って、捨て身になった。そうしてさらに4日間、食べ物のないまま旅をした。しかし食べ物のないことと旅の疲れで、もはや身体の張りを保てなかった。気を失ったばかりか、地面に倒れた。すると何かがやって来た。自分の指でわしの唇に触れた。ちょうど医者のように、肢体に眼を走らせた。するとすぐにわしは元気になった。その結果、わしは旅をしたこともなければ飢えたこともなかったように思った。されば、この力がわたしに入りこむのを見たかのように。立ち上がって、荒野を渡っていった。で、さらに4日がすぎたとき、再びわしは意気阻喪した。そうしてわしの両手を天に差しのべた。すると見よ、先ほどの人がわたしに力を与えた。そうして再び指でわたしの唇を塗布し、わたしを強固にした。さらに17日間、わたしは遍歴し、その後、小屋とナツメヤシと水を見つけた。また人も立っていた。その頭の毛は彼の着物になっていた。すべて灰白色であった。見た目も恐ろしかった。しかしわしを見ると、礼拝のために立った。そうしてアメーンをし終わった。わしが人間だと知り、わしの手を掴んで、こう言って尋ねた、『どうしてここにやって来たのか、世俗のことはすべてまだ続いているのかどうか、迫害はまだ支配しているのかどうか』。そこでわしは云った、『主であるクリストスに真理とともに隷従しているあなたがたのために、わたしはこの荒野をめぐっているのです。迫害の件は、あの方の力によって止みました。で、あなた自身も、どうしてここにおられるのか(413.)わたしに謂ってください』。すると彼は慨嘆して泣いた。言いはじめた、『わしはたまさか監督であったが、迫害が起こり、数多くの罰がわしにもたらされた、そうして拷問に堪えられず、ついに犠牲とした〔棄教した?〕が、正気に返るや、わしの無法を悟り、この荒野で死ぬことに身をゆだねた。そうしてここで過ごして49年になる、告白しつつ、を勧請し、わしの罪がわしのために許してくださるよう云いつつ、そうして命は、主がこのナツメヤシからわしに授けてくださっている。だが、赦しの慰めは、48年に至るもわしは得ておらぬ。が、今年、慰められた』。で、彼がこれを言ったところ、突然立ち上がって駈け出し、長い間礼拝のために外に立っていた。そして礼拝し終わると、わたしのところにやって来た。しかし、彼の顔を観て、わたしは放心と臆病の状態に陥った。火のようになっていたからである。するとわしに云った、『恐れるな。しゅがそなたを、わしの身体の世話と埋葬のために遣わされたからだ』。で、そう言い終わると、すぐに両手と両足を伸ばして生の終わりを迎えた。そこでわたしはわたしの箱を解いた。半分は自分に残した。そうして半分で包んだ。彼の聖なる身体を。地に隠した。そして彼を埋葬するや、すぐにナツメヤシが取り上げられた。小屋も倒壊した。そこでわたしは、わたしにナツメヤシをくださるよう云って、に懇願してさんざんに泣いた。そうすれば、この場所でわたしの余生を過ごしますと。だがそれは生じなかった。のご意志でないのだと自分に言いきかせた。そうして祈り、再び人の住まいする世界に出発し、見よ、わたしの唇に塗油した人間がやって来た。そうしてわたしに見られながらわたしを元気づけた。そうして兄弟たちにもとに急ぎ、彼らに物語ったのである。そうして、自分に失望することなく、忍耐をもってを見出すよう、励ましているのである」。

 ある偉大な長老たち二人が、スケーティスの荒野を(414.)旅した。すると、大地から誰か呟いているのを耳にした。洞穴の入口を探し出した。そこで入っていった。一人の聖なる処女の老女が横たわっているのを見つけ、これに言う、「いつここに来られたのか、老女よ。いったいあなたの奉仕者は誰ですか」。というのは、彼らは洞穴に何も見かけなかったからである、横たわって病んでいる彼女一人以外は。すると彼女が云った、「わたしは38年間、この洞穴の中で、草に満足し、クリストスに隷従してきました。そうして人間に会ったことがありません、今日以外は。なぜなら、あなたがたをがお遣わしになったのです、あなたがたがわたしの遺骸を埋葬するために」。そうしてこれを云うと、彼女は永眠した。そこで長老たちはを誉めたたえた。そうして彼女の死体を埋葬し、立ち去ったのである。〔主題別20-12〕

 彼らはある隠修者について物語った。—
 〔その隠修者は〕大鍋だけを持って荒野に出て行った。そうして3日間巡り歩いて、岩に登り、その下方に青物と、〔その草を〕獣のように食んでいる人間を見た。そこで、ひそかに下りていって、これを捉まえた。しかしそれは裸の老人であった。そうして、人間どもの臭いを我慢できず、軽視していた。相手をすり抜け逃げることができた。しかしくだんの兄弟は、その後を走って追いかけながら叫んだ、「のためにあなたを追いかけているのです。わたしを待ってください」。すると相手は振り返って彼に云った、「わしものためにおまえから逃げているのだ」。そこで彼は大鍋を投げ捨て、彼の後を追い掛けた、すると相手が自分の外衣を投げ捨てたと見るや、彼を待ち受け、そうして近づくと彼に云った、「あなたは世俗の質料をあなたから投げ捨てた。わたしもあなたをそばに留まろう」。そこで〔隠修者は〕彼にこう言って懇願した、「師父よ、どうすれば救われるかお言葉をわたしにください」。すると相手は彼に云った、「人間どもを避けよ、そうして沈黙せよ、そうすればそなたは救われよう」。〔主題別20-13〕

2015.02.07. 訳了。

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