エノクの黙示録
[解説]
『アダムの黙示録(Apocalypsis Adam)』ないし『アダムの遺訓(Testamentum Adam)』の標題で伝えられているが、標題と内容は一致しない。題名としては、J.A.ロビンソンの"Nychthemeron"〔昼夜〕が正確といえる。テュアナのアポッロニオスの作と考えられている。
テュアナ〔カッパドキア〕のアポロニオス( -98頃)は、新ピュタゴラス派の哲学者、神秘主義的な宗教家。反キリスト教的な著作者たちによって、福音書のイエス伝と類似した伝記がつくられた。フィロストラトス(Flavios Philostratos 170頃-)の『テュアナのアポロニオス伝』はその代表的なものであり、後世のキリスト教の反対者たちはそれによってキリストの福音書の独自性を軽視した。(『キリスト教大事典』)
[底本]
TLG 1153
APOCALYPSIS ADAM
vel Testamentum Adam
(A.D. 1?)
1 1
1153 001
Nychthemeron (fort. auctore Apollonio Tyanensi), ed. J.A.
Robinson, Texts and Studies 2.3. Cambridge: Cambridge University Press,
1893 (repr. Nendeln, Liechtenstein: Kraus, 1967): 139-144.
5
(Cod: 487: Apocalyp., Apocryph.)
『昼夜(Nychth-emeron)』(テュアナのアポッローニオスの作と伝えられる)
『アダムの黙示録(Apocalypsis Adam)』
[1]
"t"
学者アポッローニオスの〔作〕。
昼間の12〔刻限〕の名称。
"1a"
第1刻限と呼ばれるのは、祈るの(proseuchesthai)が善い刻限。
"1c"
Cedren. 昼間の第一刻限に、最初の祈りが天上でかなえられる。
"2a"
第2刻限と呼ばれるのは、天使たちの祈り(euchai)と讃美(hymnoi)の行われる刻限。
"2c"
第二刻限に、天使たちの祈り(euche)。
"3a"
第3刻限と呼ばれるのは、有翼のものらが神に感謝する刻限。まさにこの刻限に、あらゆる元素(stoicheion)が仕上げられる。
"3c"
第三刻限に、羽のあるものらの祈り(euche)。
"4a"
第4刻限、神に作られたすべてのものが感謝する刻限、この刻限に、(判読しがたいヘブライ語)つまりあらゆる有毒動物までが感化される。
"4c"
第四刻限に、家畜たちの祈り(euche)。
"5a"
第5刻限と呼ばれるのは、あらゆる動物が神をたたえる刻限。この刻限に、あらゆる…〔欠損〕…が成就する。
"5c"
第五刻限に、獣たちの祈り(euche)。
"6a"
第6刻限と呼ばれるのは、ケルウブたちが人間たちのために神に懇願する刻限。
"6c"
第六刻限に、天使たちの加護(parastasis)と、あらゆる被造物(ktisis)の区別。
"7a"
第7刻限、天使たちの部隊と援軍が神をたたえる刻限。
"7c"
第七刻限に、神のもとへの天使たちの入場と、天使たちの退場。
"8a"
第8刻限と呼ばれる。
"8c"
第八刻限に、天使たちの讃美(ainesis)と供犠。
"9a"
第9刻限と呼ばれるのは、人間たちの祈りがある刻限、何ものも達成されない刻限。
"9c"
第九刻限に、人間の願い(deesis)と神仕え(latreia)。
"10a"
第10刻限、〔人々が〕水をたたえ、神の霊(pneuma)が降りてきてその上を漂い、それを聖別する刻限。そういうふうでないなら、邪悪な精霊たちが人間どもを害するであろうから。この刻限に、人間が(清水)を汲み、聖なるオリーブ油といっしょに混ぜれば、あらゆる(病苦)が癒される。そして悪霊に憑かれた者たちを清浄にし、精霊たちを退散させる。
"10c"
第十刻限に、水の監督と、天上・地上の願い(deeseis)。
"11a"
第11刻限、神に選ばれた者たちが悦ぶ刻限。
"11c"
第十一刻限に、万物の賛嘆(anthomologesis)と歓喜(agalliasis)。
"12a"
第12刻限、人間どもの祈りが神に嘉せられる刻限。
"12c"
第十二刻限に、嘉納に対する人間どもの執成の祈り(enteuxis)。
[2]
"t"
夜間の〔12〕刻限の名称。
"1a"
第1刻限、精霊たちが神をたたえ、不正することもなく、懲らしめることもない刻限。
"2a"
第2刻限、魚たちが神を讃美し、深いところにある火をも〔讃美する〕刻限。この刻限には、造られたものら(apotelesmata)はドラコーンたちや…〔欠損〕…や火を教えこまれなければならない。
"3a"
第3刻限、ヘビたちやイヌたちや火がたたえる刻限。
"4a"
第4刻限、精霊たちが墓場を通りすぎる刻限、そこに通りがかった者は害され、精霊たちの幻影によって恐怖と戦慄にとらわれるであろう。この刻限には、<造られたものら(apotelesmata)は教えこまれ>なければならない……いかなる魔術的な行為の……。
"5a"
第5刻限、上方の水が天上の神をたたえる刻限。
"6a"
第6刻限、平静にし休息すべきとき、恐怖をいだくからである。
"7a"
第7刻限、ありとあらゆる生き物が休息する刻限。誰か清浄な人が(清水)を汲んできて、これを祭司がそそぎ、オリーブ油と混ぜ、これを聖別して、油塗れば、不眠の病弱者をたちどころにその病から快癒させるであろう。
"8a"
第8刻限、多種多様な植物についても元素(stoicheion)をわれわれが成就する(成就すべき?)刻限。〔???〕
"9a"
第9刻限、何ものも成就しない刻限。
〔"10"
欠番〕
"11a"
第11刻限、天上の諸門が開き、人は昏睡していてよく聞き従うものとなるであろう刻限。この刻限には、反響をともなって翼に乗って飛ぶのが天使たちであり、ケルウブたちであり、セラプたちである。そして、天上・地上に喜び(chara)がある。さらに太陽もまたエデムからさし昇る。
"12a"
第12刻限、火の諸部隊(tagmata)が休息する刻限。
2004.03.03. 訳了。
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