title.gifBarbaroi!
back.gifモーセの昇天(ギリシア語断片)


原始キリスト教世界

エゼキエルのアポクリュフォン





[解説]



[底本]
TLG 1161
APOCRYPHON EZECHIEL
Hagiogr., Pseudepigr.
A.D. 1-2

TLG 1161. 001
Fragmenta
Pseudepigr.

A.-M. Denis, Fragmenta pseudepigraphorum quae supersunt Graeca [Pseudepigrapha Veteris Testamenti Graece 3. Leiden: Brill, 1970]: 121-123, 125-127.




エゼキエルのアポクリュフォン、断片集

現行のテキスト
(frag a)
 《すなわち、死者たちは立ち上がり、墓の中にいる者たちは蘇るであろう》〔イザヤ26章9〕と、この預言者は謂う。さらにまた、復活について預言者イエゼキエールによって自分の黙示の中で述べられた事をも黙過しないために、それをもここで例証しておこう。なぜなら、魂と身体とが共有する義について、彼は謎めかして説明してこう言っているからである。—ある王が自分の王国に全員を兵役に就く者として有していたが、平民はたった2人しか持っていなかった、ひとりは足萎え、ひとりは盲人で、<その>おのおのはひとりで坐し、ひとりで住んでいた。ところで、王は自分の息子の婚礼を挙行せんとして、自分の王国内の全員を呼んだが、二人の平民つまり足萎えと盲人の方は無視した。彼らの方は心中憤慨し、王に策謀することを思い立った。ところで、王は庭園を持っていた、そこで遠くから盲人が足萎えに話しかけて曰く。《われわれのパンの欠片は、祝祭に招待された群衆と比べていかほどか? それでは、さあ、われわれにしでかしたとおりに、彼に仕返ししよう》。しかし相手が尋ねた、《どんな仕方で?》。相手が云った、《彼の庭園に出かけて、あの庭園にあるものらを消滅させよう》。しかし相手が云った、《いったいどうして出来ようか、足萎えで尾を振ることも出来ないのに?》。すると盲人の方が謂った、《当のわしはどこに行くのか見えないが何かを実行することは出来るな。さあ工夫しよう》。〔足萎えは〕近くの乾草を摘んで縄を綯い、盲人を狙って投げて云った、《掴め、そして縄をたどってこっちへ、わしの方へ》。促されたことを為すやいなや、〔足萎えが〕すぐに言う、《さあ、わしの足になって、わしを運んでくれ、そうすればわしがあんたの眼になろう、上からあんたを右左に案内して。》こうして彼らは庭園に下っていった。それから不正したにせよ不正しなかったにせよ、やはり庭園に足跡が露顕した。そこで、婚礼から解散した宴客たちは、庭園に下っていって、庭園の足跡を見つけて仰天し、これを王に報告して曰く、《御身の王国の全員が将兵であって、平民はひとりもおりません。されば、庭園にある平民の足跡はどこからきたのでしょうか?》。相手は驚いた、[しかし]このアポクリュフォンの譬喩が明らかに言っていることは、人間には謎でも、神は無知ではない、ということである。そこでこの物語は言う、〔王は〕足萎えと盲人を呼び寄せ、盲人に尋ねた、《そちは庭園に下っていったのではないか?》。すると相手が謂った、《ああ情けなや、主よ。ご存知のとおりわれらは不能、どこに行くのかわたしは見え<ない>ことをご存知です。》次いで足萎えのところに出向いてこれに尋ねた、《そなたはわしの庭園に下っていったな?》すると相手が答えて云った、《おお、主よ、わが魂〔=生命〕を不可能な脚で辛くあたろうとお望みです。》ついに裁きはなかった。それでは、義しい裁判官はどうするか? 

2019.01.16. 訳了。

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