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back.gif砂漠の師父の言葉(序・Α)

原始キリスト教世界

語録集(Apophthegmata)1

砂漠の師父の言葉(Β)
(2/24)



137."17t"
字母Βの初め。

137."18t"
大バシレイオスについて

137.19
 老師たちのひとりが言った、— 聖バシレイオスは、共住修道院を訪れ、ふさわしい教話をしたのち、修道院長に言う。「ここに、従順な兄弟をあなたはもっていますか?」。相手が彼に言う。「皆があなたの下僕であり、救われることに真剣です、ご主人さま」。再びこれに言う、「真に従順なひとをあなたはもっているのですか」。すると相手は一人の兄弟を彼のために連れてきた。そこで聖バシレイオスはこれを食事の給仕係に用いた。食べ終わって手洗いをこれに許した。そうしてこれに聖バシレイオスが言う。「こちらへ、わしもそなたに手洗いをさせよう」。すると相手は彼が水を注ぐに任せていた。そこでこれに言う、— わしが至聖所[013]に入るときに、そなたを助祭にするので、近くに来なさい。このことが起こってからも、これを司祭にもした。その従順さのゆえに、主教館へ伴っていった。〔主題別14-15〕


137."36t"
師父ビサリオーンについて

137.37
1 師父ビサリオーンの弟子、師父ドゥラースが言った、— あるとき、われわれが海岸を歩いているとき、わしは喉が渇いたので、師父ビサリオーンに云った。「師父よ、たいそう喉が渇きました」。すると老師は祈りをあげたのちに、わしに言う。「海から飲め」。すると水が甘くなったので;、わしは飲んだ。さて、わしが後で喉が渇くことがないように、器に汲んだ。すると老師が見ていて、わしに言う。「なぜ汲むのか」。これに言う。「どうかわたしをお赦しください。後でけっして喉が渇くことがないようにです」。すると老師が云った。「はここにおられ、またあらゆるところに在ます」。〔主題別19-1〕

2 別のとき、彼に必要があったので、彼は祈りをあげ、歩いてクリュソロアースの川を渡った。向こう岸に着いた。わたしは驚嘆し、彼の前に跪いた、いわく。「あなたが水中を進む時、水の中を歩いたとき、あなたの足はどう感じましたか」。すると老師が云った。「かかとまでは水を感じた。あとはしっかりしていた」。〔主題別19-2〕

3 また別のとき、われわれがある老師のもとへと向かっていると、太陽が沈もうとしていた。すると、老師は祈って云った。「あなたにお願いいたします、主よ、あなたの僕のところに着くまで、太陽をして立ち止まらせたまえ」。すると、その通りになった。〔主題別19-3〕

4 また別のとき、わたしが彼の修屋にやって来ると、祈って立っているのを見た、彼の両手は天に差し伸ばされていた。彼はそのようにしたまま、二週間を過ごした。そしてその後、わたしに声をかけ、わたしに云った。「わしについて来い」。そしてわれわれは出て行き、砂漠を進んだ。しかし喉が渇いたので、わたしは云った。「師父よ、喉が渇きました」。すると、老師はわたしの革袋を取り、石を投げて届くくらいの距離に行った。そして祈りを挙げ、それを水で満たしてわたしに持って来てくれた。こうして巡り歩いて、ある洞窟にたどり着いた。中に入ると、一人の兄弟が坐って縄を編んでいたが、われわれには顔も向けず、挨拶もせず、わたしたちと言葉を交わそうともしなかった。すると老師がわたしに言う。「ここから立ち去ろう。恐らく、この老師はわれわれと話すことに満足を覚えないのだ」。そして、リュコへの道をとり、師父イオーアンネースのもとへ辿り着いた。彼に挨拶をして祈った。それから、〔師父ビサリオーンが〕見た示幻について話すために坐った。そして師父ビサリオーンが云った、— 殿を破壊せよとの勅令が出る、と。そして、その通りになり、殿は破壊された。
 さて、わたしたちが帰る途中、再びかの兄弟を見た洞窟のそばに来た。すると、老師がわたしに言う。「彼のところに入ろう、が、彼にわれわれと話す気を起こさせたかもしれない」。そして中に入ると、彼が命終しているのを見つけた。すると老師がわたしに言う。「こちらへ、兄弟よ、彼の身体を葬ろう。なぜなら、このためにはわたしたちをここに遣わしたのだから」。そこでわれわれが彼を埋葬するため包んでいるとき、実は女性であることを見出した。すると、老師は驚嘆して、云った。「見よ、女たちもまたどのようにしてサターンを組み伏せるかを、そしてわれわれが、都市都市で恥しらずな振る舞いをしているかを」。そして、御自分を愛する人々を守るを称えながら、そこを立ち去ったのであった。〔主題別20-1〕

141.10
5 あるとき、ダイモーンに恵かれた者がスケーティスにやって来たので、教会で彼のために祈りが挙げられたが、ダイモーンは出て行かなかった。頑迷だったからである。そこで聖職者たちが言う。「このダイモーンをどうしたものだろうか。師父ビサリオーン以外には、何びともこれを追い出すことはできない。けれども、彼に頼んだとしても、教会にも来てくれないだろう。だからこうしよう。見よ、彼は朝早く、誰より先に教会に来る。受難者をその場所に眠らせておこう。そうして、彼が入ってきたら、祈りを始め、彼に云おう。『この兄弟も起こしてください、師父よ』と」。さて、彼らはその通りにしようとし、老師が朝早く来ると、彼らは祈り始め、彼に言う。「この兄弟も起こしてください」。すると老師がこれに云った。「起きよ、外に出よ」。すると、ダイモーンはすぐに彼から出て行き、その刻以来、癒されたのだった。〔主題別19-4〕

6 師父ビサリオーンが云った、— わしは40日の問[014]、昼も夜も茨の中にとどまり、立ったまま、眠らずに過ごした」。〔主題別7-4〕

7 ある兄弟が罪を犯して、司祭によって教会から破門された。すると、師父バサリオーンが立ち上がり、彼といっしょに出て行った、「わしもまた罪人である」と言いながら。〔主題別9-2〕

8 同じ師父ビサリオーンが云った、— わしは40年間、横になったことはなく、坐ったままか、立ったままで眠った」。

9 同じ人が云った。「そなたがたまたま平安のうちにあって、闘いがないときは、ますますへりくだるがよい、無縁の喜びが押し入って来るために自惚れて、闘いに引き渡されることの決してないためである。というのは、われわれの弱さのせいでわれわれが滅びないよう、われわれが引き渡されるのをはしばしばお許しにならないからである」。

10 兄弟たちと共住生活を送っている兄弟が、師父ビサリオーンに尋ねた。「わたしは何を為すべきでしょうか」。これに老師が言う。「沈黙せよ、そして自分自身を高く評価してはならない」。

141.46
11 師父ビサリオーンが死に臨んで言った、— 修道者というものは、ケルゥビムやセラピム[015]のように、全身が眼でなければならない」。〔主題別11-15〕

12 師父ビサリオーンの弟子たちは、彼の生涯が以下のごとくであったと語を常とした、すなわち、空の鳥たちとか魚たちとか陸棲の生き物たちのひとつであるかのように、煩いも心配事もなく、自分の生の時すべてを過ごしていた。なぜなら、彼には家族の心配もなく、彼の魂が、土地を欲しがったり、賛沢にふけったり、家を建てたり、書物を持ち歩いたりすることもなかったからである。かえって彼は、すべてのときにわたり、体の情念から解放されていることを、身をもって示していた。彼は来たるべきことの希望に守られ、信仰に固く{寸られ、あちらこちらに引かれてゆく捕虜のように耐え忍んだ。寒さと裸とにあって忍び、太陽の炎に焼かれ、つねに野外にいたのである。彼は迷子のように砂漠の涯に入り、海のように広大な無人の砂漠の中に、連れられるままになることを喜んでいた。
 そして、同じ生活を送る修道者たちと一緒に住む、より居心地のよい穏やかな場所に来るようなことになると、海から投げ出された難破船のように、戸の外に座って嘆き、岬いた。まもなく、兄弟たちの一人が外に出て、彼が世間の乞食のように座って物乞いしているのを見つけ、憐れみの情に打たれ、近づいて言った。「人よ、なぜ泣いているのですか。何か必要ならば、取れるだけお取りなさい。わたしたちと食卓をともにするために、入って慰めを得てください。」しかし彼は、自分の家の財産 を見つける前に、屋根の下に留まることはできない、と言った。「わたしは事実、海賊の手に落ち、難船し、名誉から不名誉の状態になったo」この言葉に悲しんで、兄弟は戻って一切れのパンを取り、彼に与え、「父よ、これをお取りなさい。他のものはあなたが言うように、が返してくださるでしょう。あなたの言う家も身分も富も。」すると、長老はいっそう泣きながら歯がみし、大きな声で言うのだった。「わたしは失っていて、いま探している持ち物を、再び見つけることができるかどうか分から・ない。日ごとに絶えず死に瀕していて、それを従容と受け容れている。とほうもない災害にあって、何のくつろぎもない。わたしはつねにさまよいながら、道を全うしなければならないのだ」。


144."37t"
師父ベニアミンについて

144.38
1 師父ベンヤミンが言った、— われわれが夏〔収穫〕を終えてスケーティスに下向してくると、アレクサンドレイアからわれわれに、石膏で塗りこめられたオリーヴ油1クセストスの容器に加えて、収穫の実りがもたらされた。そして、再び夏の収穫がやってくると、残っている油があれば、兄弟たちが教会に持っていった。わたしもわたしの容器を開けないまま、針で穴を開けて、わずかの油を出しただけであった。そして、わたしの心は大したことをしたと思っていた。しかし、兄弟たちがもとのままの石膏で蓋をしたままの容器を持ってきたとき、自分のは穴を開けられていたので、姦淫したかのように恥ずかしかった。

2 ケッリアの司祭、師父ベニアミンが云った、— われわれはスケーティスにある老師を訪ね、これにわずかのオリーヴ油を差し上げようとした。すると、われわれに言う。「見よ、3年前にそなたたちがわしに持ってきた小さな容器がどこかにある。そなたたちがそれを置いたまま残っていよう」。聞いてわれわれは老師の行住坐臥に驚嘆した。〔主題別4-12〕

3 同じ人が云った、— われわれが別の老師を訪ねた、するとわれわれに喰うよう引きとめた。さらにわれわれにハツカダイコン種子の油まで出してくれた。そこでわれわれは彼に言う。「師父よ、もう少し上等の油をわたしたちに出してください」。相手は聞いて、自らに十字の印を切った、いわく。「これ以外の油があるのかどうか、わしは知らない」。

4 師父ベニアミンは、死に臨んで自分の息子たちに申し渡した。「次のことを行え、そうすれば救いを得よう。どんなときも喜べ、絶えず祈れ、すべてにおいて感謝せよ」〔1テサロニケ5:16-17〕。

145.10
5 同じ人が申し渡した。「王道を歩め、何ミリアかを計れ、軽視するな」。〔主題別7-5〕


145."12t"
師父ビアロスについて

145.13
 ある人が、師父ビアロスに尋ねた、いわく。「救われるためには何を為すべきでしょうか?」。するとこれに言う。「行け、そなたの腹を小さくし、そなたの手仕事を少なくし、そなたの修屋にあって心が乱されるな。そうすれば救われよう」。

2015.12.29.

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