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原始キリスト教世界

語録集(Apophthegmata) 13

砂漠の師父の言葉(主題別)
(19/21)





(t.)

奇跡を起こす老師たちについて

(1.)
 師父ビサリオーンの弟子、師父ドゥラースが言った、— あるとき、われわれが海岸を歩いているとき、わしは喉が渇いたので、師父ビサリオーンに云った。「師父よ、たいそう喉が渇きました」。すると老師は祈りをあげたのちに、わしに言う。「海から飲め」。すると水が甘くなったので;、わしは飲んだ。さて、わしが後で喉が渇くことがないように、器に汲んだ。すると老師が見ていて、わしに言う。「なぜ汲むのか」。これに言う。「どうかわたしをお赦しください。後でけっして喉が渇くことがないようにです」。すると老師が云った。「はここにおられ、またあらゆるところに在ます」。〔ビサリオーン1〕

(2.)
 別のとき、彼に必要があったので、彼は祈りをあげ、歩いてクリュソロアースの川を渡った。向こう岸に着いた。わたしは驚嘆し、こう言って彼の前に跪いた。「あなたが水中を進む時、水の中を歩いたとき、あなたの足はどう感じましたか」。すると老師が云った。「かかとまでは水を感じた。あとはしっかりしていた」。〔ビサリオーン2〕

(3.)
 また別のとき、われわれがある老師のもとへと向かっていると、太陽が沈もうとしていた。すると、老師は祈って云った。「あなたにお願いいたします、主よ、あなたの僕のところに着くまで、太陽をして立ち止まらせたまえ」。すると、その通りになった。〔ビサリオーン3〕

(4.)
 あるとき、ダイモーンに恵かれた者がスケーティスにやって来たので、教会で彼のために祈りが挙げられたが、ダイモーンは出て行かなかった。頑迷だったからである。そこで聖職者たちが言う。「このダイモーンをどうしたものだろうか。師父ビサリオーン以外には、何びともこれを追い出すことはできない。けれども、彼に頼んだとしても、教会にも来てくれないだろう。だからこうしよう。見よ、彼は朝早く、誰より先に教会に来る。受難者をその場所に眠らせておこう。そうして、彼が入ってきたら、祈りを始め、彼に云おう。『この兄弟も起こしてください、師父よ』と」。さて、彼らはその通りにしようとし、老師が朝早く来ると、彼らは祈り始め、彼に言う。「この兄弟も起こしてください」。すると老師がこれに云った。「起きよ、外に出よ」。すると、ダイモーンはすぐに彼から出て行き、その刻以来、癒されたのだった。〔ビサリオーン5〕

(5.)
 老師たちは、師父アガトーンについて、アイギュプトスにいる師父エーリアースに、「彼は美しい師父です」と言うを常とした。すると、エーリアースは彼らに言う。「彼の世代にあっては美しい人じゃ」。そこで、これに彼らが言う。「昔の人々に比べるとどうなのですか」。すると答えて言う。「彼の世代にあっては美しい人じゃとわしは云うた。だが、昔の人たちに比べていえば、わしがスケーティスで見たことのある人は、まさにナウイの子イエースゥスのように〔ヨシュア1:123〕、太陽を天に止めることができた」。これを聞いて、彼らは仰天し、を栄化した。〔エーリアース2〕

(6.)
 ある女が、自分の胸に、いわゆる癌の苦患をわずらい、師父ロンギノスのことを聞き及び、彼を訪ねるすべを探していた。ところで、この人物はアレクサンドレイアから9セーメイアのところに坐していた。さて、女が探し求めているとき、浄福なるあの人は、たまたま海辺で薪木を拾い集めていた。そして彼を見つけると、これに言う。「師父よ、のしもベ、師父ロンギノスはどこにいるのでしょうか?」。本人だと知らなかったのである。相手が謂う。「あの詐欺師に何を望んでいるのだ。やつのところに行ってはならない。詐欺師だからじゃ。ところで、そなたが抱えている問題は何か」。そこで女は病状を示した。相手は患部に十字の印をしてから、こう云って彼女を帰した。「帰るがよい、そうすればがそなたを癒してくださる。ロンギノスがそなたを益することは何もできないのだから」。女がその言葉を信じて立ち去ると、病気はすぐに癒された。その後、この事を数名の者に話し、かの老師の特徴を云ったので、師父ロンギノス本人であることを知ったのである。〔ロンギノス3〕

(7.)
 また別のとき、ある女が不治の病苦にかかり、別の女に手を引かれて彼の修屋の外から、北窓に、坐している彼にすがった。しかし彼は彼女を叱った、いわく。「下がれ、女よ」。しかし彼女は願いつづけた、ものもいわず。畏れていたからである。すると彼は意味を知って、確信して、立ち上がって、彼女にたいして窓を閉め、云った。「下がれ、そなたは何の悪いところも持たぬ」。するとその瞬間、癒やされたのであった。〔Cf.承前〕

(8.)
 また別のとき、幾人かの者がダイモーンに愚かれた者を彼のところに連れてきた。しかし相手は彼らに謂う。「わしがそなたたちにできることは何もない。むしろ師父ゼーノーンのところへ行くがよい」。そこで、師父ゼーノーンが、ダイモーンを追い出すために、攻め始めた。すると、ダイモーンが叫ぴはじめた。「おまえは、師父ゼーノーンよ、いま考えていよう、おまえのせいで俺が出て行くのだと。見よ、師父ロンギノスがあっちで祈っていて、俺に手向かっている。あいつの祈りを恐れて、俺は出て行くのだ、俺がおまえに応えるはずはないのだから」。〔ロンギノス4〕

(9.)
 また別のとき、或る者が彼を訪ねてやって来た。そうして彼の頭巾付き外套を取って、或る受難者のところに赴いた。扉に近づくや、その受難者が入れと叫んだ、いわく。「どうしてロンギノスをここに連れて来た、おれを追い出すためか?」。するとその瞬間、彼からダイモーンが出て行った。

(10.)
 アイギュプトス人である師父マカリオスについて言い伝えられている、— スケーティスから上ってきて、しかも大きな籠をかついでいたので、疲れ果てて坐りこんだ。そしてこう言って祈った。「よ、あなたはわたしに力がないことをご存じです」。すると、ただちに、川のほとりにいる自分に気づいた。〔エジプトのマカリオス14〕

(11.)
 小児麻痺の息子を持つ人がアイギュプトスにいた。そこでこれを師父マカリオスの修屋に連れて來た。269.10 そして、泣いているこれを扉の前に放って、遠く離れていた。すると老師が覗いて、これ子どもを見て、これに言う。「誰がそなたをここに運んだのか?」。すると言う。「ぼくの父さんがここに投げ出して、行ってしまいました」。これに老師が言う。「立って、彼をつかまえよ」。するとすぐに健康になって、立ち上がって、自分の父親につかまえた。じつにこうして、自分たちの家に戻っていったのである。〔エジプトのマカリオス15〕

(12.)
 師父シソエースが言うを常とした。「わしがマカリオスとともにスケーティスにいたとき、彼といっしょに7名で収穫に登って行った。すると、見よ、一人の寡婦がわれわれの後ろで泣きながら〔落穏を拾って〕いたが、彼女は泣くのをやめなかった。そこで、老師が地所の主人に声をかけ、これに云った。『この女はどうしたのか、絶えず泣いているのは?』。これに言う。『彼女の夫が人から物を預かったまま、急死し、どこにそれを置いたか云わなかったのです。それで、預け主が彼女と彼女の子供たちを奴隷にしようとしているのです』。これに老師が言う。『真昼の休息の間に、われわれのところに来るように彼女に云うがよい』。こうして女が来ると、これに老師が云った。『なぜ、そんなにずっと泣いているのか』。すると云った。『わたしの夫が、ある人から預かり物をしたまま死に、死ぬときに、それをどこに置いたか云わなかったのです』。すると老師が彼女に云った。『こちらへ〔来て〕、彼をどこに埋葬したか、わしに示すがよい』。そして、兄弟たちを引き連れて、彼女とともに出かけた。そしてその場所に着くと、老師が彼女に云った。『そなたの家にひっこんでいるがよい』。そして彼らが祈っている途中、老師はこう言って死者に声をかけた。『何某よ、他人の預かり物をどこに置いたのか』。すると相手が答えて云った。『わたしの家の中、寝台の足元に隠してあります』。そこでこれに老師が言う。『復活の日まで、再び眠るがよい』。兄弟たちはこれを見て、恐ろしさも彼の足元に倒れ伏した。すると彼らに老師が云った。『わしの力でこのことが起こったのではない。わたしは何者でもないからだ。いや、寡婦と孤児のために、がこのことを行われたのだ。これこそが偉大なことである、は罪のない魂を欲するということが。そして、求めることは何でも、得られるのだ』。そして、行くと、預かり物がどこにあるかを寡婦に告げた。彼女はそれを取って、その預け主に返し、自分の子供たちを自由にした。そこで、この話を聞いたすべての人は、を栄化したのである」。〔マカリオス7〕

(13.)
 師父ミレーシオスがあるところを通りがかり、ある修道者が殺人をなしたかどで、ある人に捕えられているのを見た。老師が近づいて、兄弟に尋ねた。そして誣告だと聞き知って、これを捕らえているものたち言う。「殺された人はどこにいるのか?」。すると彼に示した。そこで殺された者に近づき、皆には祈るよう云った。当人はといえば、に向かって両手を差し伸べると、死者が立ち上がった。そこで、皆の前でこれに云った。「そなたを殺したのは誰なのか、われわれに云ってくれ」。相手が云った、— 教会に入って司祭に銭を渡した。すると相手が立ち上がって、わたしを殺戮した。そして背負っていって、師父の修道院に投げ入れたのです。さあ、あなたがたに呼びかけます、あの銭を取り返して、わたしの子供たちに与えてください」。そこで、老師は相手に云った。「行け、そして眠れ、主が来られて、そなたを目覚めさせるまで」。〔ミレーシオス1〕

(14.)
 あるとき、大勢の老師たちが師父ポイメーンを訪ねた。すると、見よ、師父ポイメーンの親族の一人が子どもを連れて来ていたが、その子の顔は仕業によって、後ろを向いていた。その父親は大勢の師父を見ると、子どもを連れ、泣きながら修道院の外に坐った。そこにたまたま一人の老師が出て来た。彼を見ると云った。「なぜ泣くのか、人よ」。相手が云った。「わたしは師父ポイメーンの親戚の者です。どうか見てください、この子にこんな試練が降りかかったのです。わたしたちはこの子を長老のもとに連れていこうと思いましたが、恐ろしいのです。というのは、彼はわたしたちに会うことを拒むからです。そして、今ではここにわたしがいると知るや、人を遣ってわたしを追い出そうとさえします。しかし、わたしはあなたがたがおられるのを見て、思い切ってやって来ました。師父よ、お願いですからわたしを憐れんで、子を中へ入れ、この子のために祈ってください」。
 老師は子どもを連れて中に入ったが、思案した上で、その子をすぐには師父ポイメーンのところに連れて行かず、一番若い兄弟から始めて、こう言った。「この子に十字のしるしをしなさい」。そして順番に全員にしるしをさせ、最後に師父ポイメーンのところに連れて行った。しかし、彼はこれを近づけようとしなかった。そこで、皆が、彼に願った、いわく。「あなたも皆のようにしてください、師父よ」。するとため息をつき、立ち上がり、祈った、いわく。「よ、敵なる悪魔に支配されないように、あなたの被造物を癒してください」。そして、これにしるしをして、すぐに癒し、健やかになったのを、その父親に返したのであった〔ルカ9:42〕。〔ポイメーン7〕

(15.)
 師父たちのひとりが師父パウロスについて語り伝えている、— 彼はアイギュプトス低地の出身であったが、住んだのはテーバイ〔テーベ〕であった、と。— この人物は蠍どもや蛇どもを手でつかみ、これを2つに裂いた、と。兄弟たちが彼の前に跪いた、いわく。「どうかわたしたちに云ってください、この賜物を得るために、どんなわざをなされたのか」。相手が謂った。「どうかわしを赦してもらいたい、師父たちよ。人が浄らかさを所有したならば、万物が彼に服するであろう、掟を踏み外す前に、楽園にいたアダムに対するように」。〔パウロス〕

(16.)
 (sequitur textus latinus)〔N 409、主題別12-12〕

(17.)
 あるとき、在俗信徒が自分の息子を連れて、師父アントーニオスの山にいる師父シソエースを訪ねようとした。しかし道中で彼の息子は死んでしまった。だが、彼は動揺することなく、信頼をもって老師のもとにこれ〔息子〕を運び、老師から祝福を受けるために、悔い改めて息子とともに身を投げ出した。そして父親は立ち上がり、長老の足元に息子を置いて、外に出て行った。老師はといえば、〔子どもが〕自分に悔い改めているものと思い、これに言う。「立て、外に出よ」。が死んでいると知らなかったからである。すると、たちどころに立ち上がって出ていった。そうして、彼の父親が彼を見て、吃驚した。そうして入っていって老師の前にひれ伏して、ことの次第を彼に告げた。すると老師は聞いて、悲しんだ。というのは、このようなことが起こるのを望んでいなかったからである。そこで彼の弟子は、老師が命終するまでは、誰にも云わないよう、彼にいいつけた。〔シソエース18〕

(18.)
 あるとき、師父シソエースの弟子アプラアームが、ダイモーンに試みられた。すると老師はそして、長老は彼が躓いたのを見て、立ち上がって、こう言って両手を天に伸ばした。「よ、あなたが望むと望まざるとにかかわらず、わたしはあなたを放しません、彼を癒してくださらないかぎりは」。すると、すぐに癒された。〔シソエース12〕

(19.)
 あるとき、大勢の老師たちが師父ポイメーンを訪ねた。すると、見よ、師父ポイメーンの親族の一人が子どもを連れて来ていたが、その子の顔は仕業によって、後ろを向いていた。その父親は大勢の師父を見ると、子どもを連れ、泣きながら修道院の外に坐った。そこにたまたま一人の老師が出て来た。彼を見ると云った。「なぜ泣くのか、人よ」。321.10 相手が云った。「わたしは師父ポイメーンの親戚の者です。どうか見てください、この子にこんな試練が降りかかったのです。わたしたちはこの子を長老のもとに連れていこうと思いましたが、恐ろしいのです。というのは、彼はわたしたちに会うことを拒むからです。そして、今ではここにわたしがいると知るや、人を遣ってわたしを追い出そうとさえします。しかし、わたしはあなたがたがおられるのを見て、思い切ってやって来ました。師父よ、お願いですからわたしを憐れんで、子を中へ入れ、この子のために祈ってください」。
 老師は子どもを連れて中に入ったが、思案した上で、その子をすぐには師父ポイメーンのところに連れて行かず、一番若い兄弟から始めて、こう言った。「この子に十字のしるしをしなさい」。そして順番に全員にしるしをさせ、最後に師父ポイメーンのところに連れて行った。しかし、彼はこれを近づけようとしなかった。そこで、皆が、彼に願った、いわく。「あなたも皆のようにしてください、師父よ」。するとため息をつき、立ち上がり、祈った、いわく。「よ、敵なる悪魔に支配されないように、あなたの被造物を癒してください」。そして、これにしるしをして、すぐに癒し、健やかになったのを、その父親に返したのであった〔ルカ9:42〕。〔Anony333〕

(20.)
 あるとき、師父クサンティアースはスケーティスからテレヌゥティスへと上って行った。彼が休んでいるところへ、修行の苦労を癒すため、彼のために葡萄酒を少し持って来てくれた。また、聞いたある人たちが、ダイモーンに憑かれた者を彼のところに連れて来た。するとダイモーンは、「こんな酒飲みのところにわしを連れて来た」と老師を罵り始めた。しかし老師の方は、これを追い出すつもりはなかった。が、叱るために言った。「わしはキリストを信じている、この杯を飲み干さないうちに、おまえは出て行くとな」。そして、老師が飲み始めると、ダイモーンは叫んだ、いわく。「おまえがわしを焼き尽くす、わしを焼き尽くす」。そして、欽み終わる前に、クリストスの恩寵によって、出て行った。〔クサンティアース2〕

(21.)
 老師たちの或る者が、自分の弟子を水汲みに遣わした。しかし井戸は彼らの修屋から遠かった。しかも彼は汲み上げる綱を忘れ、井戸まで来てから、持って来ていないのを知り、祈りを上げて、発声した、いわく。「水槽よ、水槽よ、わたしの師父が云われた。『この陶器に水を満たせ』と」。するとたちまち水が上に上ってきた、そこで兄弟が満たすと、水は再びその場所へと下がっていった。〔Anony27〕

2016.05.02.

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