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back.gif砂漠の師父の言葉(Ε)

原始キリスト教世界

語録集(Apophthegmata)1

砂漠の師父の言葉(Ζ)
(6/24)



176."22t"
字母Ζの初め。
176."23t"
師父ゼーノーンについて

176.24
1 浄福なるシルゥアーノスの弟子、師父ゼーノーンが云った。「有名な場所に住んではならず、高名な人とともに坐してもならず、自分の修屋を建てるときには、決して礎石を置いてもならない」。

2 師父ゼーノーンについて言い伝えられている、— もともと、何であれ誰かからものをもらうことを彼は拒んだ。そのため、持ってきた人たちは悲しみつつ帰って行った、彼が受け取らなかったからだ。また他の人たちも、この偉大な老師からもらおうと思ってやってきたが、彼らに与えるべきものを持たなかったので、彼らもまた悲しみつつ引き返していった。老師は言う。「何としたものか、物を持ってきた者たちは悲しみ、もらおうとする者たちも〔悲しむ〕とは。これはむしる災難じゃ。またもらおうとする人も悲しんでしまう。持ってきた者がいたら受け取り、求める者がいたらその者に与えよう」。こうして彼は安らぎを得、皆をも満足させたのであった。

3 アイギュプトス人の兄弟が、師父ゼーノーンをシュリアに訪ね、自身の諸想念を老師に打ち明ける。すると相手は驚いて云った。「アイギュプトス人たちは、持てる諸徳は隠し、持たざる諸々の欠点は、絶えず咎める。それにひきかえシュリア人とヘッラース人たちは、持たざる諸徳は持っていると言い、持てる諸欠点は、隠す」。

4 兄弟たちが彼のもとへやって来た、そして尋ねた、いわく。「ヨプ記に書かれている『天もあの方の前には天さえも浄くない』〔ヨブ15:15〕とはどういう意味ですか」。そこで老師が答えて彼らに云った。「兄弟たちは自分たちの罪を棚に上げて、諸天について尋ねる。しかし、この言葉の解釈はこうである。ひとりのみが浄いから、それゆえに『天も浄くはない』と云ったのじゃ」。〔主題別10-27〕

5 師父ゼーノーンについて言い伝えられている、— 彼はスケーティスに住持していたが、ある夜、沼地に行こうとして自分の修屋を出た。ところが迷って、三日三晩をさまよって過ごした。そして疲れ果てて倒れ、死んだようになった。すると、見よ、少年が彼の前に立った、パンと水の壺とを持っていた。そして彼に言った。「起きて、喰べなさい」〔列王記上19:7〕。そこで彼は起き上がり、礼拝した、幻だと思ったからである。すると相手が彼に云った。「あなたの行いは美しい」。そこで再び、二度、三度と礼拝した。すると彼に言う。「あなたの行いは美しい」。そこで老師は起き上がって、喰った。するとその後で〔少年が〕彼に言う。「あなたは歩き回れば回るほど、あなたの修屋から遠ざかったのだ。しかし、起き上がってわたしについて来なさい」。すると、すぐに自分の修屋を見つけた。そこで老師は彼に云った。「入って、わたしたちのために祈ってください」。しかし、老師が入ると、あの〔少年〕は見えなくなった。〔主題別18-8〕

6 別のとき、同じ師父ゼーノーンはパレスティナを巡り、疲れたので、喰うため胡瓜畑のそばに座った、すると、想念が彼に言う。「おまえ自身のために胡瓜を取って喰え。それが何だというのだ」。そこで彼は想念に答えて云った。「盗人は罰を受ける。それでは、そのことで自分自身を吟味せよ、罰に堪えられるかどうか」。そこで立ち上がって、五日間、炎熱の中に立ち、自分自身を焼かれうえで、云った。「わたしは罰に耐えられない」。そこで、想念に言う。「できないのであれば、盗んで食べるな」。〔主題別4-17〕

177.29
7 師父ゼーノーンが云った。「立ち上がり、自分の両手をに伸ばすたびに、が自分の祈りを速やかに聞き入れてくださることを望む者は、すべての人と自らの魂のために祈る前に、自分の敵たちのために心から祈る。そうすれば、この正しいわざのために、その人が何をに願い求めても、彼に耳をかしてくださる」。

8 言い伝えられているところでは、ある村に、その名を「断食者」と呼ばれるほどしばしば断食する者がいた。彼のことを聞いて、師父ゼーノーンは彼を呼びにやった。すると彼は喜んでやって来た。そして彼らは祈りをして坐った。すると老師は黙って働き始めた。しかし断食者は彼との話し方がわからず、懈怠に悩まされ始めた。そこで老師に言う。「わたしのために祈ってください、師父よ、わたしは帰ろうと思います」。これに老師が言う。「どうしてかね?」。相手が答えて云った。「わたしの心が燃え立つようになり、どうしたのかわからないのです。というのは、村にいたとき、わたしは夕方まで断食をしましたが、こんなことはついぞありませんでした」。これに老師が言う。「村では、そなたの耳で養われていた。しかし今は行って、第九時に食事をしなされ。そうして何をするにせよ、隠れて為せ」。そうしてし始めると、第九時までも苦しみつづけた。そこで彼の知己たちは言う。「断食者がダイモーンに憑かれた」。そこで彼は行って、老師にすべてを打ち明けた。相手は彼に云った。「それこそがに適った道である」。


177."54t"
師父ザカリアースについて

177.55
1 師父マカリオスが師父ザカリアースに云った。「わたしに云ってください、修道者の仕事とは何ですか」。これに彼が言う、「あなたがわたしに尋ねるのですか、師父よ」。すると師父マカリオスが云った。「わたしはあなたを信頼している。我が子ザカリアースよ。あなたに尋ねるようわたしを衝きうごかす者がいるのだから」。これにザカリアースが言う。「わたしの考えでは、師父よ、万事にわたって自分自身を抑える者、これこそが修道者です」。〔主題別1-6〕

180.8
2 あるとき、師父モーセースが水を汲みに来ると、師父ザカリアースが井戸のそばで祈り、の霊が彼の上に坐っているのを見た。〔主題別12-7〕

3 あるとき、師父モーセースが師父ザカリアースに云った。「どうかわしに、何を為すべきか云ってくだされ」。だが、聞くと、彼の足許の地面に身を投げ出した、いわく。「あなたがわたしに尋ねるのですか、師父よ」。これに老師が言う。「わしを信じよ、わが子ザカリアースよ。聖なる霊がそなたの上に降るのを見たが、それ以来、そなたに尋ねるよう強いられているのじゃ」。そのとき、ザカリアースは自分の頭から自分の頭巾を取って、足元に置き、これを踏みつけて云った。「このように踏み潰さなければ、人は修道者ではあり得ません」。〔主題別15-19〕

4 かつて師父ザカリアースがスケーティスに坐っていたとき、幻視が彼に出来した。そこで立ち上がって、自分の師父カリオーンにそれを告げた。すると老師は、実践者であったが、それを正確にはつかめなかった。そこで立ち上がって、彼を殴りつけた、ダイモーンに憑かれたと言って。しかし想念は続いた。そこで、夜中、発って、師父ポイメーンのとこころに行き、これに事実と、彼の中でどれほど燃えているかを打ち明けた。すると老師はに由来するのを見て、彼に言う。「恐るべき老師のもとに行き、何かそなたに云うことあらば、行え」。そこで老師のもとに行き、彼に何かを訊くよりも早く、老師は先取りして、彼にすべてを、つまり幻視はに由来することを彼に云った。「いざ、行け、そなたの父に従え」。〔主題別15-18〕

5 師父ポイメーンが云った、— 師父モーウセースは、命終せんとする師父ザカリアースに尋ねた。「何が見えるか?」。するとこれに言う。「黙っていたほうが善いのではありませんか、師父よ」。するとこれに言う。「しかり、わが子よ、黙っていなさい」。そうして彼の死の刻、坐していた師父イシドーロスが、天を仰いで云った。「喜べ、わが子ザカリアースよ、諸天の王国の諸門が、そなたのために開かれた」。〔主題別15-20〕

2015.12.24.

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