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back.gifギリシア語のエノクの黙示録「解説」


原始キリスト教世界

ギリシア語エノクの黙示録(1/4)






[底本]
TLG 1463
LIBER ENOCH
vel I Enoch
(2/1 B.C.)
1 1
1463 001
Apocalypsis Enochi, ed. M. Black, Apocalypsis Henochi Graece
[Pseudepigrapha veteris testamenti Graece 3. Leiden: Brill, 1970]:
19-44.
5
(Cod: 8,642: Apocalyp., Pseudepigr.)





"t".1.1
ギリシア語エノクの黙示録
Apocalypsis henochi Graece


第1章
1.1.1
 ヘノークの祝福の「言葉(LOGOS)」、これは、選び抜かれた義人たち — 敵たちのすべてを取り除くのが必然の日に立ち合うであろう人々、そして義人として救われるであろう人々 — を彼が祝福したものである。
1.2.1
 ヘノークはおのれの譬話(parabole)を採りあげて云った。(〔エノークとは〕義人にして、幻(horasis)が神から彼に開示された人物、聖なるものと天の幻視(horasis)を得た人物である)。
 〔福音書の様式史的研究では、繰り返し規則的に生じうる事態を内容とする比喩を「譬え(Gleichnis)」、逆に1回的な出来事を内容とするものを「譬話(Parabel)」と読んで区別する。〕
 「〔神は〕わたしに示してくださった、そして、聖言する聖なる人たちからわたしは聞き、彼らからすべてのことを聞いたので、わたしは目撃して知った。そこで、今考えられる種族についてではなく、はるか遠い〔未来の種族〕についてわたしは語る。
1.3.1
 また、わたしが今言おうとするのは選び抜かれた人たちについて、彼らについてもわたしの譬話を採りあげた。さて、わたしの聖なる方、大いなる方が、その住まいから出てこられるであろう、
1.4.1
 つまり、永遠の神が地上に、セイナ〔シナイ〕山に足をつけられ、自分の陣営(parembole)から現れ、諸天の中の天から、自分の強力な軍勢の中に現れられるであろう。
1.5.1
 すると、すべての寝ずの番人たちは怖れ、信じるであろう、『そして、大地のすべての端々に隠されているものらを歌うだろう。そして大地のすべての端々は揺すぶられるだろう』、そして、彼らを、大地の果てまで戦慄と大いなる恐怖がとらえるであろう。
1.6.1
 そして、高き山々は揺すぶられ、倒壊し、解体するだろう、そして高き山々は崩れて平坦な丘になり、火の前に、炎によって蜜蝋のように溶けるであろう。
1.7.1
 そして大地は、割れ目によって裂け目が走り、地上にあるものすべてが破滅し、万物に対して審判が行われるであろう。
1.8.1
 そして、ただ義人たちとだけ和平を結び、この選びぬかれた人たちには保護と和平があるだろう、つまり彼らには憐れみがあり、すべての者たちが神のものとなり、彼らには愛顧(eudokia)を与え、全員を祝福し、わたしたちのためにすべてを取りもどしてくださり、救助し、彼らには光を表し、彼らのために和平をつくってくださるであろう。
1.9.1
 彼の1万人と、彼の聖なる者たちといっしょに進軍なさるのは、万人に対する審判をなすため、そうして、不敬な者たちすべてを破滅させ、あらゆる肉を、彼らの不敬の所業 — 彼らが不敬を犯したすべての所業、彼らが口にした耳障りな言葉 — すべてに関して吟味されるであろう。不敬な罪人たちが彼に対して『そしったことすべてに関しても』。

第2章
2.1.1
 天におけるすべての業をあなたがたはよく考えよ、それらの道をいかに変えないかを、また、天における諸々の発光体(phoster)も、そのすべてがいかにして昇りまた沈むかを、おのおのは配置された時(kairos)に配置され、それらの祝祭のときに現れ、そしておのが順序を踏み外すことがない。
2.2.1
 あなたがたは大地を見よ、そして、始めから終わりまで、そこにおいておこなわれる業について思いをいたせ、いかにして朽ち、地上にあるものらのうち何ひとつ変わるものはなく、神の業のすべてがいかにしてわたしたちに現れるかを。
2.3.1
 夏と冬を見よ*****
 樹木のすべてを学びつくし、見よ*****

第3-5章
"3-5".1.1
 いかにして、草色なす葉が、それによって樹木を覆い、すべての果実が名誉と栄光を受けるにいたるのか。思いをいたし、彼の業のすべについて知れ、そして悟れ、神は生き、かくのごとくにそれをなしたもうたことを、そして永遠の永遠に生きたもうことを。
"3-5".2.1
 また、彼の業 — 諸々の永遠の間、年々歳々、彼がなしたかぎりのすべて、彼の業を成就するすべて — すべてがかくのごとくに行われ、それらの業を変えることはなく、あたかも万事が命令どおりのごとくに行われ。
"3-5".3.1
 あなたがたは見よ、いかにして海や河川が等しく成就し、彼の言葉によって自分たちの業を変えないか。
"3-5".4.1
 しかるに、あなたがたはとどまることをせず、彼の言いつけにしたがって行為さえせず、逆らい、大きな言葉、耳障りな言葉、彼の偉大さに反して、あなたがたの不浄な言葉を口にして悪口する。あなたがたの虚言によって悪口するゆえ、頑迷な者どもよ、あなたがたには平安がない。
"3-5".5.1
 そういうわけで、あなたがたの〔人生の〕日々を、あなたがたは呪い、あなたがたの人生の歳月は破滅し、あなたがたの破滅の歳月は、永遠の呪いのうちにいや増し、あなたがたに憐れみと平和はないであろう。
"3-5".6.1
 そのとき、あなたがたの名前は、義人たちすべてによって永遠の呪いに投げこまれ、あなたがたにおいて呪われた者たちはみな呪われ、あなたがたのうちの罪人たちと不敬な者たちはみないっしょにされ、罪なき者たちはみなが喜ぶであろう、そして、この者たちには、罪人からの解放があり、憐れみ、平安、寛容もすべてあり、この者たちには救い、善き光があり、この者たちこそが大地を受け継ぐであろうが、あなたがた罪人たちにみなには、救いはなく、あなたがた全員には解体が、呪いがあるだろう。
"3-5".7.1
 また、選びぬかれた者たちには光と喜びと平安があり、彼らこそが大地を受け継ぐであろうが、あなたがた不敬な者たちには呪いがあろう。
"3-5".8.1
 そのとき、選びぬかれた者たちには光と喜びが与えられ、彼らこそが大地を受け継ぐであろう。そのとき、選ばれた者たちに全員に知恵が与えられ、彼らは全員が生き、真実に対してはもちろん、尊大さに対しても、もはや決して罪を犯すことなく、光を受ける人間のうちに光があり、知識ある人間に悟りがあり、決して打撃を受けることがないであろう
"3-5".9.1
 まして彼らの人生の日々すべての間罪を犯すことなく、激情の怒りのせいで死ぬことなく、彼らの数を人生の日々で充たすであろう、そして彼らの生は平安のうちに生長し、彼らの喜びの歳月は、歓喜雀躍のうちにいや増し、永遠の平安が彼らの人生の日々すべての中にあるであろう。

第6章
6.1.1
 そうして、人間どもの息子らがいや増す時になって、その日々に、うるわしくも美しい娘たちが生まれた。
6.2.1
 そこで、天の息子たちである天使たちはこれを見て、彼女たちに欲情し、お互いに言い交わした。『さあ、人間どもから自分たちの妻を選ぼう、そして自分たちの生子をもうけよう』。
6.3.1
 すると、セミアザスが彼らに向かって云った、彼は彼らの支配者(archon)であった。
 『この行為を為すことをあなたがたが拒み、わたしひとりが大きな罪の責めを負うのではないかと怖ろしい』。
6.4.1
 そこでみなが彼に答えた。
 『みんなで誓いを立て、みんなで呪いをかけてお互いに誓い合おう、この目論見(gnome)を達成し、このことを実行する時までは、この目論見を撤回しない、と』。
6.5.1
 そのとき、全員がいっしょに誓い、その場所でお互いに呪いをかけて誓い合った……
6.7.1
 そして以下が、彼ら支配者(archon)たちの名前にほかならない。セミアザス、これは彼らの支配者(archon)であった。アラタク、キムブラ、サムマネー、ダネイエール、アレアロース、セミエール、イオーメイエール、コーカリエール、エゼキエール、バトリエール、サティエール、アトリエール、タミエール、バラキエール、アナントゥナ、トーニエール、ラミエール、アセアル、ラケイエール、トゥウリエール。
6.8.1
 このうち10人は、彼らの首長(archai)である。

第7章
7.1.1
 こうして彼らは自分たちに妻を得た。彼らのめいめいは、自分たちに妻を選び出し、彼女たちのもとに通い、彼女たちによって身をけがしはじめた。そして、彼女たちに諸々の施薬、諸々の呪文、諸々の〔薬用のための〕根の採集を教え、彼女たちに野菜を明らかにした。
7.2.1
 やがて女たちは胎に孕み、身の丈3000ペーキュスある大きな巨人(gigantes)たちを産んだ。
7.3.1
 この者たちは人間どもの労苦をむさぼり食い。そのため、人間どもは彼らを扶養することができなくなったので、
7.4.1
巨人たちは彼らに対して大胆にふるまい、人間どもをむさぼり食った。
7.5.1
 こうして、彼らは羽根あるものらに対して、獣に対して、這うものらに対して、魚どもに対して罪を犯しはじめ、お互いの肉までむさぼり食いはじめ、血を飲んだ。
7.6.1
 そのとき、大地はその無法を訴えた。

第8章
8.1.1
 アザエールが人間どもに教えたのは、軍刀(machaira)と武器(hopla)と小楯と鎧の作り方、これが天使たちの教え(didagma)であり、彼らに教示したのは、金属とその製法、腕輪と諸々の装身具とシャドーカラーとまぶたを美しくする化粧品と選びぬかれたありとあらゆる宝石と諸々の染料であった。
8.2.1
 こうして多くの不敬が生じ、
8.2.2
そうして彼らは姦淫し、惑い出て、自分たちのあらゆる道において堕落した。8.3.1
 セミアザスは諸々の呪文と諸々の〔薬用のための〕根の採集を教えた。アルマロースは諸々の呪文の解き方を。バラキエールは天文学を。コーキエールは占いを。サティエールは星辰研究を。セリエールは月の運行を〔教えた〕。
8.4.1
 ところが、人間どもの破滅するとき、その叫び声が天まで登った。

第9章
9.1.1
 そのとき覗きこんだのが、ミカエールとウウリエールとラパエールとガブリエール、この者たちは天上から、おびただしい血が地上に流れているのを眼にした。
9.2.1
 そこでお互いに云い交わした、地上で助けを求める者たちの叫び声が天の門までとどく。
9.3.1
 人間どもの魂たちが訴えて言っている、『わたしたちの審判を至高者の前に持ち出してください』と。
9.4.1
 そこで彼らは主に云った。
 『あなたは諸々の主の中の主、神々の中の神、永遠〔複数〕の王。あなたの栄光の王座は永遠の全種族におよび、あなたの名前も聖にして偉大。あらゆる永遠〔複数〕に至るまで祝福される。
9.5.1
 なぜなら、あなたは万物をお作りになり、あらゆる権力(exousia)を持ち、あなたの御前に万物は明らかにして、隠れることがないから。
9.6.1
 そしてあなたはアザエールが何を為したか、万事を眼にしておられる、彼は地上に諸々の不正を教え、永遠の秘義、天にあって彼ら〔???〕の行う事柄を明らかにし、人間どもはこれを知りました、
9.7.1
 そしてセミアザス、これにあなたは、彼とともに或る者たちを支配する権限(exousia)を与えられました。
9.8.1
 かくして彼らは大地の人間どもの娘たちのもとに通い、これと交わり、身をけがし、あらゆる罪をこれに明らかにしました。
9.9.1
 かくして女たちは巨人族(titan)を生みました、これによって大地総てが血と不正に充たされました。
9.10.1
 ところが今や、見よ、命終者たちの魂たちが叫び、その訴えは天の門にまでとどき、彼らの呻吟が登りきて、地上で行われている無法の前からまぬがれ出ることができません。
9.11.1
 そしてあなたは、それが起こる前からすべてをご存知です、あなたはそれを眼にしておられる、彼らを放任しておられる、これについて彼らをどうすべきか、わたしたちに言われない』。

第10章
10.1.1
 そのとき、至高者がこのことについて云われた、偉大な「聖なる方」が話された、云われた、そしてラメクの息子〔ノア〕のもとにイストラエールを派遣なさった
10.2.1
 『わしの名で彼に云え、「身を隠せ」と、そして彼に来たるべき終末を明らかにせよ、全地は滅びる、全地に大洪水が起こることになり、そこにあるものはすべて滅びるであろう、と。
10.3.1
 そして彼に明らかにせよ、脱出するよう、そしてその種子(sperma)を永遠の全世代にとどめるようにと』。
10.4.1
 またラパエールにも云われた、
 『アザエールの両手両足を縛れ、そしてこれを闇の中に投げこめ、そしてダドゥウエルにある荒野を開き、そこにこれを投げこめ、
10.5.1
 そうして、険阻な鋭い石を彼の上に置き、彼を闇で包め。そしてそこに永遠に住まわせ、彼の視界をふさいで、光を眼にさせるな。
10.6.1
 そうして大いなる審判の日に、〔アザエールは〕燃えさかる火の中に引きずりこまれよう。
10.7.1
 かくして、天使たちが台無しにした大地は癒されるであろう、そうして大地の癒しを明らかにせよ、この打撃が癒されるように、人間どもの息子たちすべてが破滅するのではないように、寝ずの番人たちが言いつけ、人間どもの息子たちに教えたすべての秘義のせいで。
10.8.1
 かくして、全地は荒野と化すであろう、アザエールの教えの業のせいで。そしてすべての罪を彼のせいにせよ』。
10.9.1
 またガブリエールにも主は云われた。
 『行け、私生児たちに向けて、不義の子たち、姦淫の息子たちに向けて、そうして、寝ずの番人たちの息子たちを人間界から破滅させよ。彼らを破滅の戦争状態に送りこめ。日々の長さは彼らのものではなく〔=寿命は長くはなく〕
10.10.1
 また彼らの父親たちにはどんな代願〔執り成しの願い(erotesis)〕もない、永生を求めることを希望し、彼らのめいめいが500歳を求めていること、これらのことについてさえ』。
10.11.1
 また、ミカエールに云われた。
 「行け、そして、セミアザスに、彼とともに女たちと交わった残りの者たちに、明らかにせよ、彼女たちによって、その不浄さによって身をけがしたことを。
10.12.1
 そして、彼らの息子たちが殺戮し合い、愛する者たちの破滅を見たとき、彼らに明らかにせよ、70世代の間、彼らの審判と最後の日まで、永遠の永遠の裁きが成就するまで、大地の丘の下に〔置かれる〕ことを。
10.13.1
 そのとき、火の混沌の中に、責め苦の中に、永遠の幽閉の牢獄の中に連れゆかれるであろう。
10.14.1
そうして彼は焼きつくされ抹殺されるであろう、今から、種族の終わりまで、彼らといっしょにひとつところに縛られるであろう。
10.15.1
 不義の子らの霊たちすべてと、寝ずの番人たちの息子たちを破滅させよ、人間どもに不正したゆえに。
10.16.1
 また、大地から不正のすべてを破滅させよ、また邪悪の業すべてをも拭い去れ、正義と真理の植物を永遠に出現せしめよ。喜びをもって生ぜせしめよ。
10.17.1
 今こそ、義人はすべて庇護され、1000人の子をもうけるまで生きる者となるであろう、そうして彼らの若者の魂たちはすべて、安息日もまた平安に充たされるであろう。
10.18.1
 そのとき、全地は正義によって耕され、そこに樹木が生え、祝福に充たされるであろう。
10.19.1
 そして大地の樹木はすべて歓喜雀躍するであろう。生えるであろう、そうして葡萄樹を植える者たちが現れるであろう、彼らが植える葡萄樹は、〔彼らはこれから〕1000プロクウスの酒をつくり、またおのおのの単位で〔1000倍の〕種子をつくり、〔オリーブ樹は〕10バトスのオリーブ油をつくるであろう。
10.20.1
 そして、そなたも大地を浄化せよ、あらゆる不浄から、あらゆる不正から、あらゆる罪と不敬から、そうして地上に生じるすべての不浄を拭い去れ。
10.21.1
 かくして民人たちはみな奉仕するであろう、全員がわたしを祝福し、礼拝しながら。
10.22.1
 そして全地は浄化されるであろう、あらゆる汚れと怒りと鞭から、そうして永遠の全世代にわたって、もはやわしは彼らに送ることをしない。

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