昼夜(アダムの黙示録)
[解説] 「エスドラ」(本編では「エスドラム(Esdram)」になっている)は、エズラ(Ezra)のギリシア語化した名前。 エズラは前5世紀末の預言者。バビロン捕囚から帰還したユダヤ人宗教団体の有力な指導者のひとりである。 [底本] TLG 1157 APOCALYPSIS ESDRAE (2 B.C./A.D. 2) 1 1 1157 001 Apocalypsis Esdrae, ed. C. Tischendorf, Apocalypses apocryphae. Leipzig: Mendelssohn, 1866: 24-33. (Cod: 2,677: Apocalyp., Pseudepigr.) 『エスドラの黙示録(Apocalypsis Esdrae)』 24"1t" エスドラの黙示録(APOCALYPSIS ESDRAE) 24"2t" 聖なる預言者にして神に歓愛されたるエスドラムの言葉と黙示。 300と2歳になって、月の20日に、わたしはわたしの家にいた、そして至高者に向かって叫んで言った。 「主よ、栄光を与えたまえ、あなたの神秘を見られるように」。 すると、夜になって、天使長ミカエールが御使いとしてやって来て、わたしに言う。 「今から70週間、預言者エスドラムの任を解け」。 そこで、わたしに云われたとおりに断食した。すると、大将軍ラパエールがやって来て、わたしにポプラの木でできた杖をくれた。そこで、60週間の断食を2度した。すると、わたしは見た、神の神秘と、その天使たちを、そこで彼ら〔天使たち〕に向かってわたしは云った。 「キリスト者たちの種族について神を訴追(dikasasthai)したい。人は生まれなかったのが、あるいは、この世界に登場しなかったのが美しいのです」。 すると、わたしは天につかみあげられ、そしてわたしは見た、第一の天に天使たちの大軍団を、さらに〔彼らは〕裁きの場にわたしを連れて行った。すると、声がわたしに言うのを聞いた。 「われわれを憐れんでください、神に選ばれた方、エスドラムよ」。 そのときわたしは言い始めた。 「ああ、わざわいなるかな、罪人たちは、天使たちにかわって義人を見るのが、まさに自分たちが火のゲヘナに入るときだとは」。さらに(わたし)エスドラムは云った。「あなたの両手の業(erga)を憐れんでください、慈悲深き憐れみ深き方よ。罪人たちの魂に代わってわたしを裁いてください。魂ひとつに懲罰をあたえるのが有益です、世界全体を滅びさせてはなりません」。 すると神が云った。 「わしは義人たちを楽園で休息させよう、そして〔そういうふうに〕憐れみ深くしてきた」。 そこで(わたし)エスドラムは云った。 「主よ、義人たちに恩恵を施すのはなぜですか? それは、日雇い人がその間、奉仕しつくせば…〔欠損〕…ように、義人も同様、その報酬を天上で受け取るからでしょう。とはいえ、罪人たちを憐れんでください。憐れみ深き方だということをわたしたちは知っているのですから」。 すると神が云った。 「彼らを憐れむすべをもたぬ」。 そこで(わたし)エスドラムは、彼らはあなたの怒りを担いきれませんと云った。すると神が、こういう者たちも同じことだと云った。つまり、神は云った。 「わしはおまえを、パウロスやイオーアンネースのように扱いたい。おまえはわしに、掠奪されることなく堕落することなき財宝を、すなわち、処女性という宝、人間どもの城壁を、与えてくれた」。 そこで(わたし)エスドラムは云った。 「人は生まれなかったのが美しく、生を受けないのが美しいのです。言葉なきものら(aloga)〔=動物〕の方が。人間に比すればより美しいのです、〔動物は〕懲罰を受けませんから。しかるに、あなたはわたしたちを捕らえ、裁きに引き渡した。ああ、わざわいなるかな、未来永劫の罪人たちは、彼らの裁きに終わりなく、焔の消えることがないとは」。 こういったことをわたしがあの方に語っているとき、ミカエールとガブリエールとすべての使徒たちがやって来て、云った。 「ご機嫌よう、神の信任を受けている人よ」。 そこで(わたし)エスドラムは云った。 「立って、さあ、わたしといっしょに、主よ、裁きの場に」。 すると神が云った。 「見よ、おまえに、わしとおまえとの、わしの契約を与える、そうすれば、おまえたちは受け容れられよう」。 そこで(わたし)エスドラムは云った。 「あなたの耳に向かってわたしたちは訴えます」。 すると神が云った。 「おまえたちの父アブラアムに尋ねるがよい、父親を訴追するのがどんな息子かを、そして、さあ、わしたちといっしょに裁くがよい」。 そこで(わたし)エスドラムが云った。 「主にちかって、キリスト者たちの種族のためにあなたを訴追して止めません。あなたの昔の憐れみはどこにいったのですか、主よ。あなたの寛大さ(makrothymia)はどこにいったのですか」。 すると神が云った。 「夜と昼を作ったように、義人と罪人をわしはつくった、そしてふさわしかったのは、義人が治めることなのだ」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「初めに造られた者であるアダムを最初に作ったのは誰ですか?」。 すると神が云った。 「わしの両手は純粋無垢だ(achrantai)、そして、生命の木の牧場を守護するよう、あれを楽園の中に置いた。しかるに、その後、聞き分けがなくなって、それに違背してしまった」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「天使によって警護されたのはではないのですか?……いや、あなたが彼にエウアを贈り物としなければ、ヘビが彼女を欺くことはけっしてなかったでしょう。それなのに、あなたは望みの者を救い、望みの者を破滅させるだけなのです」。さらに(わたし)預言者は云った。「わが主よ、第2の裁きに入りましょう」。 すると神が云った。 「火を、ソドマとゴモッラに投げつける」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、あなたは当然のようにわたしたちの上にもたらします」。 すると神が云った。 「おまえたちの諸々の罪は、わしの仁慈(chrestotes)を圧倒しよる」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「聖書を思い出してください、わが父、ヒエルウサレームを計測し、これをまた立て直した方よ。憐れんでください、主人よ、罪人たちを。あなたの拵えもの(plasis)を憐れんでください。あなたの業(erga)のために嘆いてください」。 このとき、神は自分の作り物(poiemata)を思い出し、預言者に向かって言う。 「彼らを憐れむにはどうしたらよいのか? あれらはわしに酢と胆汁を飲ませおった、そしていまだかつて改心したことはない」。 そこで(わたし)預言者が云った。 「あなたのケルウブたちを顕現させてください、そうしたらいっしょに裁きに入りましょう、わたしに裁きの日を示してください、どんなふうなのか」。 すると神が云った。 「おまえは思い違いをしている、エスドラムよ。というのは、裁きの日は次のごとくである、その日に雨は地に降らぬ。その日の法廷は、憐れみ深いからだ」。〔???〕 そこで(わたし)預言者は云った。 「あなたを訴追しつづけて止めません、終末の日を見ないかぎりは」。 すると神が云った。 「星々と海の砂を数えつくせ。そうして、それを数えつくせたら、わしとでも争訟できよう」。 「そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、ご承知のとおり、わたしは人間の肉を身にまとっているのです、いったい、どうしたら天の星々と海の砂を数えることができましょうや」。 すると神が云った。 「わしの選んだ預言者よ、あの大いなる日と、この世界を裁くためにとらえる顕現とを、人は誰ひとり知ることはない。〔しかし相手が〕おまえだから、わが預言者よ、おまえに〔裁きの〕日を云った、しかし刻限はおまえに云わなかった」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、その年もわたしに云ってください」。 すると神が云った。 「この世界の義が、過分にあると見れば、彼らに寛大となろう。さもなければ、わしの手を伸ばし、ひとの住まいするこの地の四つの果てをひっつかみ、イオーサパトの腹の中にすべてを寄せ集め、人間どもの種族を抹殺しよう、そのとき世界はもはや存在しない」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「いったいどうすればあなたの右手が受けられるのですか?」。 すると神が云った。 「わしはわしの天使たちによって受け容れられよう」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、そんなことを考えておられるのなら、何ゆえ人間をこしらえられたのですか? あなたはわれらの父アブラアムに向かって云われた。『汝の種子を増やしに増やせ、天の星々のように、海の岸辺にある砂のように』。あなたの公約はいったいどこにいったのですか?」。 すると神が云った。 「最初に、四つ足どもと人間どもとの墜落に向けて地震を起こそう。そうして、兄弟が兄弟を死に引き渡し、生子が両親に逆らい、妻がおのれの夫を見捨てるのをおまえたちが見るとき、また、敵が敵に対して反逆して戦争状態に陥ったとき、そのときおまえたちは終末が近いことを悟るであろう。そのときこそ、兄弟も兄弟を憐れまず、夫も妻を〔憐れま〕ず、生子は両親を、友たちは友たちを、奴隷は主(あるじ)を〔憐れまない〕。なぜなら、人間どもの反対者(antikeimenos)がみずから奈落(tartaroi)〔複数〕から登ってきて、人間どもに数多の害を加えるからだ。おまえを何としようぞ、エスドラムよ、それでもわしと争訟するつもりか?」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、あなたを訴追することをけっして止めません」。 すると神が云った。 「地の花を数えつくせ。それを数えつくすことができるなら、わしとでも争訟できよう」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、数えつくすことはできません、人間の肉を身にまとっているのです。いや、それでもあなたを訴追することを止めません。主人よ、わたしは見たいのです、奈落のもっと下の部分をも」。 すると神が云った。 「降りて行け、そして見るがよい」。 そうして、わたしにミカエールとガブリエールと他の34人の天使たちを与え、85階段をわたしは降りていった、さらに500階段を、下方へとわたしを〔天使たちが〕連れて降り、そうしてわたしは見た、火の王座と、その上に老人が座しているのを、そして彼の裁きは無慈悲であった。そこで天使たちに向かってわたしは云った。 「これは誰ですか? そして彼の罪は何ですか?」。 すると彼らがわたしに云った。 「あれはヘーロデース、しばらくのあいだ王であったが、2歳からそれ以下の嬰児を殺戮するよう命じた」。 そこでわたしは云った。 「ああ、わざわいなるかな、彼の魂は」。 かくて再び30段わたしを連れ降り、そこでわたしは見た、火のゆらめきと、その中に罪人たちの大群を、そして彼らの声を聞いたが、しかし格好は見えなかった。さらに数多の階段をもっと下にわたしを連れ降ったが、その階段の数は計り知れなかった。そしてそこでわたしは老いた人間たちを見た、灼熱の回転軸が彼らの耳の中で回転していた。そこでわたしは云った。 「この者たちは何者ですか、そして彼らの罪は何ですか?」。 すると〔天使たちが〕わたしに云った。これは、盗み聞きした者たちです」。 そして、またもやもう500階段わたしを連れ降った、そしてそこでわたしは見た、休みなき蛆と、罪人たちを焼く火を。さらに、破滅の底にわたしを連れ降り、そしてそこでわたしは見た、底なし深淵の12の災厄を。さらに、わたしを南中の方へ連れて行った、そこでわたしは見た、人がまぶたを吊り下げられているのを、天使たちも彼を鞭打った。そこでわたしは尋ねた。 「これは何者ですか、そして彼の罪は何ですか?」。 すると大将軍ミカエールがわたしに云った。 「これは母子相姦者です。わずかな欲を実行したばかりに、こいつは吊り下げられるよう命じられたのです」。 さらにわたしを北の方へ連れて行った、そしてそこでわたしは見た、鉄製の閂で押さえられている人間を。そこで尋ねた。 「これは何者ですか?」。 すると〔ミカエールが?〕わたしに云った。 「これは次のように言った者です。『われは神の息子にして、石をパンとなし、水を葡萄酒となせり』と」。 そこで(わたし)預言者がは言った。 「主よ、どんな格好をしているのかわたしに知らしめてください、わたしも人間どもの種族に述べ伝えてやります、あれを信じることのないように」。 するとわたしに云った。 「あれの顔の相は、あたかも野人のごとし。彼の右の眼は夜明けに昇る星のごとく、またもうひとつの〔眼〕は不動。彼の口は1ペーキュス。彼の歯は幅が広い。彼の指は鎌のごとく。彼の足跡は2スピタメー。そして彼の額に『アンティクリストス』の文字あり。天に届くまでに背が高く、冥府に達するまでに低い。あるときは小僕(paidion)、あるときは年寄りとなる」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、いったいどうしてあなたは見放し、人間どもの種族を惑わせるのですか?」。 すると神が云った。 「聞け、わが預言者よ。彼は小僕ともなり、年寄りともなる、そしてやつのことをわしに歓愛された息子だと信ずる者は誰ひとりいない。そうすれば、その後でラッパの音がして、諸々の墓が開き、不朽の死人たちが甦るであろう。そのとき、反対者(antikeimenos)は恐怖の恐喝を聞いて、外の影に身を隠すだろう。そのとき、天と地と海が滅びる。そのとき、天を80ペーキュス、大地を800ペーキュス、燃えあがらせよう」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「天も何か罪を犯したのですか?」 すると神が云った。 「……悪であるから」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、大地も何か罪を犯したのですか?」。 すると神が云った。 「反対者(antikeimenos)がわしの恐怖の恐喝を聞いたとき、〔反対者が地中に〕身を隠すだろうから、だからこそ大地を、これと同時に人間どもの種族の叛乱を、熔解させよう」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「憐れんでください、主人よ、キリスト者たちの種族を」。 このときわたしは見た、女が吊り下げられているのを、しかも、4匹の獣が彼女の乳房を吸っているのを。すると天使たちがわたしに云った。 「この女は、乳を与えることを惜しんだ、いやそればかりか、幼児たちを河の中に投げこんだ」。 さらにわたしは見た、恐るべき暗黒と、星なき、月さえなき夜を。そこには若者とか昔人とかもおらず、兄弟も兄弟といっしょにおらず、母は生子とともにおらず、妻は夫とともにいない。そこでわたしは叫び声をあげて云った。 「おお、主人よ主よ、罪人たちを憐れんでください」。 そしてわたしがそう言っているとき、雲がやってきて、わたしをひっさらって、再び天界にわたしを連れもどした。そしてそこにわたしは数多の裁きを見、鋭く叫んで、云った。 「人間はその母の胎から出てこないことが美しいのです」。 すると懲罰を受けている者たちが号泣して言った。 「出てきてよりわれらかくのごとし、神の聖者よ、わたしたちは少しばかりの安らぎを見出しました」。〔???〕 そこで(わたし)預言者は云った。 「浄福なるかな、おのが罪を泣く者たちは」。 すると神が云った。 「聞け、エスドラム、歓愛されたる者よ。農夫が穀物の種を大地に播くように、そのように人間もおのが種子を女という畑にまく。ひと月目は全一(synolon)、二月目にはふくらむ。三月目には毛むくじゃら、四月目には鉤状になり、五月目には乳状になり、六月目には備えられたものとなって魂を得、七月目に準備が整い、九月目に女の通路の鍵穴が開き、健康な〔嬰児〕がこの地上に産まれる」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、人は産まれないのが美しいのです。ああ、人の種族がわざわいなのは、あなたが裁きにゆだねる、そのときなのです」。さらにその主人に向かってわたしは云った。「主よ、人をこしらえ、裁きに引き渡されるのは、何ゆえですか?」。 すると神が高らかに布告する口調で云った。 「わしの契約を無視する者どもを憐れむことはせぬ」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、あなたの善性(agathotes)はどこにあるのですか?」。 すると神が云った。 「わしは人間にすべてのことを備えてやった、しかしその人間はわしの言いつけを守らない〔現在形〕」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、わたしに諸々の裁きと楽園とを闡明してください」。 すると天使たちがわたしを日の出の方角へ連れて行き、そしてわたしは命の木を見た。さらに、そこでわたしは見た、エノークとヘーリアとモーウセーとペトロスとパウロスとドゥカとマッテアと義人たちのすべてと父祖たちを。さらにそこでわたしは見た、大気の懲罰と風たちの息吹と水晶の蔵々と永遠の裁き〔複数〕を。さらにそこでわたしは見た、頭をぶら下げられた人間を。すると彼ら〔天使たち〕がわたしに云った。 「この者は境界石を移動させた」。 さらにそこでわたしは大いなる裁判(kriteria)を見た。そこでわたしは主人に向かって云った。 「おお、主人よ主よ、いったいぜんたい、人間に生まれて罪を犯さなかった者がいましょうや?」。 すると、彼ら〔天使たち〕はわたしを下方へ、奈落へと連れ降った、そしてわたしは見た、ありとあらゆる罪人たちが、あまりにむごい悲嘆に嘆き号泣しているのを。わたしも、人間どもの種族がかくのごとく懲罰を受けているのを見て、叫び声をあげた。そのとき神がわたしに言う。 「エスドラムよ、完徳に達した天使たちの名を知っているか?」。 「ミカエール。ガブリエール。ウウリエール。ラパエール。ガブウテローン。アケール。アルプウギトノス。ベブウロス。ゼブウレオーン」。 そのとき声がわたしに届いた。 「さあ、命終せよ、エスドラム、わしの歓愛する者よ。預かり物〔魂〕を渡せ」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「いったい、おまたちはわたしの魂をどこから取り出すことができるというのか?」。 すると天使たちが云った。 「口を通してわれわれはそれを追い出すことができる」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「口は口に、わたしは神の〔口に〕語りかけてきた、だからそこからは出てこない」。 すると天使たちが云った。 「あなたの鼻の孔を通してわれわれはそれを取り出せる」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「わたしの鼻は、神の栄光を嗅ぎわけてきた」。 すると天使たちは云った。 「あなたの両眼を通してわたしたちはそれを取り出すことができる」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「わたしの両眼は神の背を見た」。 すると天使たちが云った。 「あなたの頭頂を通してわたしたちはそれを取り出すことができる」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「わたしはモーセーといっしょに、山の中まで歩きまわったことがある、だからそこからは出てこない」。〔???〕 すると天使たちが云った。 「あなたの爪先からわたしたちはそれを追い出すことができる」。 そこで(わたし)預言者が云った。 「わたしの両脚も祭壇を歩きまわったことがある」。 ついに天使たちは為すところなく立ち返って、言った。 「主よ、わたしたちは彼の魂を引き取りことができません」。 そのとき、そのひとり子に向かって〔神が〕言う。 「降りてくるのだ、わしの愛する息子よ、天使たちの数多の軍団を率いて、わしの愛するエスドラムの魂を捕らえるために」。 かくして、主は天使たちの数多の軍団を受け取り、預言者に言う。 「わたしがそなたに預けた預かり物をわたしに渡しなさい。花冠はそなたに備えられている」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「主よ、わたしの魂をわたしから取りあげなさったら、人間たちの種族のために訴える者があなたに残りましょうや?」。 すると神が云った。 「死すべき身として大地からうまれた者が、わたしの〔業〕を訴えてはならぬ」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「訴追することをけっして止めませぬ」。 すると神が云った。 「預かり物をしばらく渡しなさい。花冠はそなたに備えられている。さあ、命終しなさい、それ〔花冠?〕を得るために」。 そのとき、(わたし)預言者は落涙して言い始めた。 「おお、主人よ、あなたを訴追したために、地上に転落することになろうとも、何の益がありましょうや? あわれ、あわれ、蛆虫たちによって食い尽くされようとは。わがために泣け、すべての聖人たち義人たちよ、数多のことを訴追したために、死に引き渡されたわたしのことをおもって。わがために泣け、すべての聖人たち義人たちよ、冥府の鉢(tryblion)の中に入ってゆくわたしのことをおもって」。 すると自分〔エスドラム〕に神が云った。 「聞きなさい、エスドラム、わが愛する者よ。わたしは、不死の身でありながら、十字架を受け容れた、酢と胆汁を味わった、墓穴に安置された、そしてわたしに選ばれた者たちを甦らせた、アダムを冥府から召した、それは人間たちの種族……だからそなたは死を恐れてはならぬ。なぜなら、わたしに由来するもの、すなわち魂は、天に還る。しかし大地に由来するもの、すなわち身体は、それが採ってこられた大地に還るからだ」。 そこで(わたし)預言者は云った。 「あわれ、あわれ。わたしはどうしたいいのですか? 何を為したら? わかりません」。このとき、(わたし)浄福のエスドラムはさらに言い始めた。「永遠なる神よ、あらゆる被造物(ktisis)の造物主(demiourgos)よ、天をスピタメー単位で、大地を掌で計る者よ、ケルウブたちを御する者よ、火の戦車に乗せて預言者ヘーリアス〔エリヤ〕を天界へと引き上げた方よ、あらゆる肉〔体あるもの〕に食べ物を与えた方 あなたの軍勢の前では、万物がふるえおののき、恐れはばかる 、わたしの数々の訴えに耳を傾けてください、そうして、すべての者たちにお与えください、この書を書き写す者たち、これを所持する者たち、わたしの名を記憶する者たち、わたしの墓を築きあげる者たち、この者たちにお与えください、天からの祝福(eulogia)を。そうして自分のすべてを祝福してください、イオーセープのすべてを〔祝福なさった〕ように。そうして、自分より昔の人たちの不法行為を、自分の裁きの日に思い出さないでください。しかし、この書を信じない者たちはみな、ソドマとゴモッラのごとく燃えつきよう」。 すると彼に声が届いて言った。 「エスドラム、わが愛する者よ、そなたの願いはすべて、一人ひとりそれぞれにかなえよう」。 そこで、多くの名誉をそなえ持った自分の貴い魂をすぐさま引き渡した、 第8の月の18日である。そして〔人々は〕、もろもろの薫香と讃美歌とをもって自分を葬り、自分の貴く聖なる身体は、魂たちや身体たちの力によって、敬慕のあまりこれに駆け寄る人たちの間を漂いつづけている。栄光(doxa)、力(kratos)、名誉(time)と礼拝は、父と子と聖霊にふさわしい、今も、常に、永遠の永遠に、アメーン。 2004.03.06 訳了。 |