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back.gifエスドラの黙示録 第4書

原始キリスト教世界

セドラクの黙示録




[解説]
 The Apocalypse of Sedrach , also known as the Word of Sedrach , is an ancient apocryphal text. The name of the titular figure, Sedrach may simply be the Greek form of Shadrach , the name of one of the three individuals put into the fiery furnace in the Book of Daniel . It may however simply be a corruption of Esdras , the Greek form of Ezra , particularly since the text has much similarity with other apocryphal texts attributed to Ezra, such as the Apocalypse of Ezra .

 Like much other apocalyptic literature , the text narrates how Sedrach was given a vision of heaven, first describing someone being sent by God take him there. In the Apocalypse of Sedrach, it is Jesus himself who comes to take Sedrach, but while the text seems superficially Christian, it appears to be a corruption of an earlier Jewish text, with Jesus simply having been substituted in place of the name of an archangel.

 Unlike other apocalyptic texts, however, the Apocalypse of Sedrach heavily discusses ethical issues, particularly repentance, and God being merciful. In a marked contrast to the bitter attitude often expressed in the genre , God is depicted as patient, keen to help people make the right choices, and keen to allow them repentance at every opportunity, and free will is seen as something kindly given, not a vicious trick.
     (By Wikipedia)





[底本]
TLG 2243
APOCALYPSIS SEDRACH
(Incertum)
1 1
2243 001
Apocalypsis Sedrach, ed. M.R. James, Apocrypha anecdota [Texts
and Studies 2.3. Cambridge: Cambridge University Press, 1893 (repr.
Nendeln, Liechtenstein: Kraus, 1967)]: 130-137.
5
(Cod: 2,391: Apocalyp., Apocryph.)





セドラクの黙示録

"t"

聖にして浄福なるセドラクの言葉、愛(agape)について、また、悔い改め(metanoia)と正統派キリスト者たちについて、また、わたしたちの主イエースウス・クリストスの第2の臨在について。主人よ、祝福したまえ。

第1章
 愛する者たちよ、偽りのない愛(agape)よりほかに、わたしたちの尊ぶものは何もない。なぜなら、毎日毎日、夜も1刻も、わたしたちは多くのことに躓くからである。だからこそ、愛を所有するようにしよう、愛こそは大多数の罪を隠してくれるからである。いったい、何の益があろうか、わが子たちよ、わたしたちがあらゆるものを手に入れたとしても、救ってくれる愛を持っていないとしたら?……
 おお、浄福な愛よ、ありとあらゆる善きものらの後援者(choregos)よ。浄福な人間とは、真実な信仰と偽りなき愛を所有する人のことである、それは主人が云ったとおり、『愛より大いなるものは何もない、ひとはおのれの友たちよりも魂を上に置くからである』。

第2章
 彼はまた、眼には見えぬが声を自分の聴覚に受け取った。
 「かくのごとくに、セドラクよ、おまえは神と交わり、彼〔神〕に要求することを望み欲する、質問したいと望む当のことを自分に〔彼=神が〕啓示してくれるようにと」。
 そこでセドラクが云った。
 「何ですか、わが主よ」。
 すると声が彼に云った。
 「わしはおまえのところに使いを遣った、おまえをこういうふうに天までのぼらせるために」。
 そこで彼が云った。
 「神の口によって口で〔直接〕話したかったのです。わたしは充分な者ではありません、主よ、諸天にまで登ってゆくのには」。
 するとご自分の翼をのばして、彼をつかみ、諸天の中に、焔そのものの中に引き上げられ、第3天に彼を立たせた、そこには神格の炎があった。

第3章
 すると主が彼に言われる。
 「美しくやってきた、わが愛するセドラクよ。おまえをこしらえた者たる神に対し、いかなる訴え(dike)を有するのか、『神の口に対して話したい』と云ったな?」。
 相手にセドラクが言う。
 「はい、息子はその父親に対してわたしを訴え(dike)として有するのです。わが主よ、何ゆえ大地を作られたのですか?」。
 主が彼に言う。
 「人間ゆえに」。
 セドラクが言う。
 「いったい何ゆえに海を作られたのですか? 何ゆえに地上にすべての善を種播かれたのですか?」。
 主が言われる。
 「人間ゆえに」。
 セドラクが彼に言う。
 「そういうものらを作られたのなら、何ゆえ彼を滅ぼすのですか?」。
 すると主が云われた。
 「人間はわしの業(ergon)にしてわが両手のこしらえもの、だからわしは見つけた仕方でこれを教育する」。

第4章
 彼にセドラクが言う。
 「懲罰と火があなたの教育。それらは過酷です、わが主よ。人間には生まれないのが美しかったのです。どうして性急に作られたのですか、わが主よ。何ゆえあなたの生粋の両手を労して、人間をこしらえられたのですか、これを憐れむおつもりがないとすれば」。
 彼に神が言われる。
 「わしは最初のこしらえもの(protoplastos)であるアダムを作り、これを楽園の中に、生命の植物の真ん中に置いた、そしてこれに云った。『どの木の実から取って喰ってもよい、ただ、生命の木だけは守れ。なぜなら、これから取って喰えば、死ぬ身となるから』。ところが、彼はわしの言いつけに聞き従わず、悪魔に欺かれて、その木から取って喰った」。

第5章
 彼にセドラクが言う。
 「アダムが欺かれたのは、わが主人よ、あなたの意向(thelema)によってです。あなたはあなたの天使たちにアダムを礼拝するようお命じになった、しかるに、天使たちの第一位の者は、あなたの下命(prostagma)に聞き従わず、彼〔アダム〕を礼拝しなかった、それであなたは彼〔天使たちの第一位の者〕を追い出された、だからこそ、あなたの下命を踏み外し、あなたの両手のこしらえものには近づかなかったのです。もしも人間を愛しておられるなら、不正の細工人(technites)たる悪魔を、何ゆえに殺されなかったのですか? 誰が眼に見えぬ霊に敵対できるでしょうか? ですから、彼は煙のように人間たちの心の中に入りこみ、これにあらゆる罪を教えるのです。彼は不死の神たるあなたに敵対します、それなのに、憐れむべき人間が彼に対していったい何ができるでしょうか? いや、憐れんでください、主人よ、そして諸々の懲罰をやめてください。さもなければ、わたし自身をも罪人たちのひとりとしてください。罪人たちを憐れまれないのなら、あなたの憐れみはどこにありますか、あなたの寛大さはどこに、主よ?」。

第6章
 神が彼に言う。
 「おまえは知れ、わしが彼に命じたことは、いずれもみな和解しやすきことであった。彼を知慮ある者、天と地の相続人として作った、万事を彼に服従させた、だから、あらゆる動物は彼と彼の面前から逃げる。しかるに、彼はわたのものを受け取りながら、他人のごとき姦夫・罪人となった。どんな父親なのかわしに云ってくれ、自分の息子に〔財産を〕分与し、〔息子は〕その財産を受け取りながら、父親を置き去りにして立ち去り、他人となって、他人の奴隷となり、父親は息子が自分を見捨てたのを見て、おのが心臓を燻(いぶ)され、父親は去って自分の財産を取り、これ〔息子〕を自分の栄光から追い払う、自分の父親を置き去りにしたのだから、〔それはどんな父親なのか〕? どうなのか、驚嘆すべき妬み深き神たるわしは、万物を彼に与えた、しかるに彼はそれを取りながら、姦夫・罪人となったというのは?」。

第7章
 彼にセドラクが言う。
 「あなたが、主人よ、人間をこしらえられたのです。あなたはご存知です、われわれがどれほどの望み、どれほどの知識(gnosis)を持っているかを、しかるに人間を懲罰の口実にしておられる。いや、彼を追放なさった。わたしひとりでは、天の領域(ta epourania)〔?〕を充たすことはできないでしょう? だとすれば、人間をこそ救ってください、主よ。あなたの意向(thelema)にそむいて罪を犯したのは、主よ、憐れむべき人間なのです」。
 「何という言葉をわしに投げつけたのか、セドラクよ? わしはアダムと彼の妻と太陽をこしらえ、そうして云った。『汝らお互いを見よ、いかに光のごときものたるかを』。アダムの妻はといえば、その美しさは月よりも光あるものであり、彼女の生命を〔アダムは〕喜んだ」。
 セドラクが言う。
 「いったい、美しいことにどんな益があるのでしょうか、地に消え失せるとしたら? どういう意味で云われたのですか、主よ、『悪に対して悪をもって仕返しはせぬ』とは? どういう意味なのですか、主人よ? あなたの神性(theotes)の言葉(logos)はけっして虚言しません、〔とすれば〕いったい何ゆえに人間を引き渡すのですか? それとも、悪に対して悪を望んでおられるのではないのですか? わたしは知っています、四つ足動物の中で半ロバは、言葉なき〔荷駄獣〕としてはみだらですが、他の〔部分〕はそうではない。だから、はみをつけた〔半ロバ〕のその部分は、われわれが望む場合は切り取ります。ところで、あなたは天使たちを持っておられる。彼らを守護するために遣わしてください、そうして人間が罪の方へ動くときには、彼の足を1本つかんでください、そうすれば、〔人間は〕望みのところに進むことはけっしてないでしょう」。

第8章
 彼に神が言う。
 「彼の足をつかんだら、彼は言うのだ、『この世界であなたはわたしに恩恵を施さない』と。むしろわしが彼を誰かの意向のままに任せたのは、彼を愛したがゆえにだ。だからわたしの義しい天使たちを、夜も昼も、彼を守るために遣わしたのだ」。
 セドラクが言う。
 「知っています、主人よ、あなたの所有物のうち、あなたは最初に人間を愛された、四つ足どもの中では羊を、樹木の中ではオリーブ樹を、木の実の中では葡萄の巻蔓を、羽のあるものの中では蜜蜂の巣を、河川の中ではイオルダネース河を、諸都市の中ではイエルウサレームを。そしてこれらはすべて、人間も愛するところのものです、主人よ」。
 神がセドラクに言う。
 「おまえにひとつの言葉を尋ねよう、セドラクよ。わしに云ってくれるなら、美しくもおまえをわしの共闘者としよう、おまえをこしらえたものをおまえが何かで試したにしても」。
 セドラクが言う。
 「云ってください」。
 主なる神が言う。
 「わしが万物を作った〔日〕よりこのかた、どれほどの人間どもが生まれたか、いったいどれほどが死んだか、いったいどれほどが死ぬつもりか、いったいどれほどの毛髪を持つか? わしに云ってくれ、セドラクよ、天と地が樹立された〔時〕よりこのかた、どれほどの樹木がこの世界に生えたか、いったいどれほどが倒れ、いったいどれほどが倒れることになるのか、いったいどれほどが生えるつもりであり、いったいどれほどの葉を有しているのか? わしに云ってくれ、セドラクよ、わしが海を作った〔時〕よりこのかた、どれほどの波が起こったか、いったいどれほどが〔海を〕渡り、いったいどれほどがこれから起こることになるのか、いったいどれほどの風たちが海の岸から吹くのか? わしに云ってくれ、セドラクよ、世々の昔、世界の創造よりこのかた、空が湿ったとき、どれほどの滴りが世界に落ち、いったいどれほどがこれから滴り落ちることになるのか?」。
 するとセドラクが云った。
 「あなただけです、それらすべてを覚知しておられるのは、主よ。あなただけがそれらすべての知識をもっておられます。ただわたしがあなたにお願いするのは、人間を懲罰から自由にしてくださいということだけです、さもなければ〔???〕、わたしはわたしたちの種族から離れません」。

第9章
 そこで神はおのがひとり子に云われた。
 「下って行って、わしの愛するセドラクの魂を取ってこい、そしてそれを楽園の中に安置せよ」。
 ひとり子はセドラクに言う。
 「わたしたちの父が、胎児の時から、そなたの母親の胎の中に、そなたの聖なる幕屋の中に預けた預けものをわたしに渡しなさい」。
 セドラクが言う。
 「わたしの魂をあなたに渡しません」。
 神が彼に言う。
 「わたしが遣わされ、こうやってやって来ているのに、そなたがわたしに抗弁するとは、いったい何ゆえか? わたしはわたしの父から、そなたの魂を強引には取らぬよう、言いつけられた。そうであるからには、そなたの魂の最も慕わしいのをわたしに渡しなさい」。

第10章
 そこでセドラクは神に云った。
 「いったい、どこからわたしの魂を取るおつもりですか、いったいどの部分〔器官〕から?」。
 すると彼に神が言う。
 「そなたは知らぬのか、そなたの霊たちと、そなたの心臓の真ん中に〔魂は〕備えられていて、そなたの部分〔器官〕全体に散らされていることを。食道や咽頭や口を通して〔魂は〕運び出されるであろう。そして、どんな刹那でも、支配権が散らされれば、出て行くことになり、爪先から、またどんな部分〔器官〕からでもともに命がなくなる、だから、身体から離れ、心臓から引きずり出される大きな必然性があるのだ」。
 セドラクはそれらすべてのことを聞いて、死のことに思いいたって、ひどく度を失い、セドラクは神に云った。
 「わたしに与えてください、主よ、少しの癒しを、わたしが泣くために、多くの涙には権能があり、あなたのこしらえられたこの卑しい身体には多くの癒しがあると聞きましたから」。

第11章
 そうして、彼は号泣し悲嘆して言いはじめた。
 「おお、頭よ、驚異的な天の飾りよ。おお、天と地の陽光を発するものよ。知れわたりたるものよ、おまえの毛髪はタイマンに由来し、おまえの両眼はボロスに由来し、おまえの両耳は雷鳴からでき、おまえの舌はラッパからでき、おまえの脳も小さな被造物、頭は身体総ての動因。美しき信者にして最美なものよ、あらゆるものから愛されるもの、今こそ地に落ち、知なきもの(agnotos)となる。おお、両手よ、節度ある、美しく教えられた、勤労するもの、それによって道具が育てられる〔両手よ〕。おお、両手よ、万物を狙いすまし、家産を積み立てるものらよ、汝らは装いたり。おお、指たちよ、美粧したるものらよ、金や銀で装われたものらよ。げに大いなる被造物は、指たちに率いられる。3つの関節は腕を広げ、美しきものらを積み重ねる。今こそ、おまえたちはこの世界の寄留者となる。おお、両脚よ、美しく歩き、おのずから走るものよ、あまりの速さに不動のものらよ。おお、調和した両膝よ、おまえなくしては道具は動かぬことよ。両脚は、夜も昼も、太陽と月をともに走らせる、万物を積み重ねるものよ、食べ物をも飲み物をも、そして道具をも育てあげるものよ。おお、両脚よ、最速にして、美しく走るものよ、大地の上を動きまわるもの、あらゆる善で家産を整えるものよ。おお、両脚よ、身体総てを運ぶもの、神殿に参内するもの、悔い改めをなし、聖人たちに呼びかけるものらよ、おまえたちは今こそ不動のものとなれ。おお、頭よ、両手よ、両脚よ、今まではおまえたちを救ってきた。おお、魂よ、おまえをみすぼらしく惨めな身体の中に投げいれたのは、はたして何ものか? 今こそ〔魂は〕それ〔身体〕から離れ、ここに参上するよう主がおまえを呼んでおられる、そして惨めな身体は裁きへとくだってゆく。おお、美粧した身体よ、星のたてがみの毛髪よ、天の飾りして装われた頭よ。おお、薫りかぐわしい顔よ、光り輝く両眼よ、ラッパの響きした声よ、契りやすき〔ことを云う〕舌よ、美粧した顎よ、星のごとき毛髪よ、天衝く頭よ、装いこらした身体よ、光り輝き、甘味をもたらし、全知の〔身体〕よ、今こそ大地に落ち、地によっておまえの美しさは消えゆくものとなる」。

第12章
 クリストスが彼に言う。
 「やめよ、セドラク。いつまで涙を流し、歎息しているのか? 楽園はそなたのために開いている、そなたは死んでも生きるであろう」。
 セドラクが彼に言う。
 「もう一度だけあなたに話したい、主よ、わたしが死ぬまでに、わたしはいつまで生きられるのですか? わたしの哀訴に耳をふさがないでください」。
 主が彼に言う。
 「言うがよい、おお、セドラクよ」。
 セドラクが言う。
 「80歳ないし90歳、あるいは100歳まで人間が生きるとして、彼らにおいては諸々の罪の中で生きるにしても、ひとたび回心し、人間が悔い改めて生きるなら、どれだけの日数なら、あなたは彼の罪を許してくれるのですか?」。
 神が彼に言う。
 「100年ないし80年間生きても、回心して3年間悔い改め、義の果実をつくり、死が訪れるなら、わたしは彼の罪をすべて記憶していることはない」。

第13章
 セドラクが彼に言う。
 「3年は多い、わが主よ、彼の死は訪れず、おのが悔い改めを充たすことはできないでしょう。憐れみたまえ、主よ、あなたの似像を、そして慈悲をたれてください、3年は多いということに」。
 神が彼に言う。
 「人間が100歳の後も生き〔???〕、おのが死を思い返し、人間たちの前で告白するなら、そのときはわたしは彼を見つけ、しばらくの後、彼のすべての罪を許そう」。
 再びセドラクが言う。
 「主よ、あなたの慈悲を、あなたのこしらえもののために、もう一度懇願いたします。時は長く、彼の死は訪れず、〔死は〕間もなく自分をさらいゆこうとしています」。
 救主が彼に言う。
 「そなたにひとつの言葉を述べよう、セドラクよ、わが愛するものよ、わたしになおも哀願するのなら。罪人が40日間悔い改めるなら、彼が犯した彼の罪はすべてあたしは記憶しないでおこう」。

第14章
 そこでセドラクが天使長ミカエールに向かって言う。
 「わたしに耳をかしてください、権能ある戦友よ、そしてわたしを援助し、使者の務めをしてください、神がこの世界を憐れんでくださるように」。
 そこで〔二人は〕御前に身を投げ出し、神に懇願して云った。
 「主よ、いったいどうすべきかをわたしたちに教えてください、人間が救われるのは、どんな悔い改めによって、あるいは、どんな辛労によってなのか」。
 神が言う。
 「悔い改めによって、懇願(paraklesis)によって、勤行(leitourgia)によって、あふれる涙によって、熱き歎息によって、だ。そなたは知らぬのか、わたしの預言者ダウエイドは涙によって〔救われたということを〕、またそのほかのものたちも、一瞬のうちに救われたということを。そなたは知っているか? そなたは知っている、セドラクよ、律法を持たぬ族民がおり、しかも律法のことを行っているということを。洗礼を受けぬ者らがおり、それでもわたしの神的な霊が彼らの中に入りこみ、わたしの洗礼へと回心するなら、やはり彼らを、わたしの義人たちともども、アブラアムの胸のなかにわたしは受け容れるということを。さらに、わたしの洗礼を受ける者たちがいるが、しかし彼らは完全な絶望におちいった者となり、改悛する気がない。それでもわたしは彼らを待ちつづけている、多大な慈悲と多大な憐れみと富をもって、彼らが悔い改めるのを、しかるに、彼らはわたしの神性が憎むところのことをなし、質問する知者が『われわれはけっして罪人を裁くことをしない』と言うのを聞こうとしなかった。そなたはまったくわかっていない、『悔い改めた者たちはけっして懲罰を見ない』と書かれていることを。さらに彼らは使徒たちのいうことを、福音書にあるわたしの言葉も聞こうとしなかった、そしてわたしの天使たちを悲しませるのだ、実際、集会(synaxis)においても、わたしに対する勤行(leitourgia)においても、彼らはわたしの天使に近づかず、わたしの聖なる教会の中に立つこともなく、恐怖と戦慄の中に立って、礼拝もせずに、法螺吹きとなるのである、わたしが受け容れないこと、わたしの天使たちも〔受け容れない〕ことを」。

Cloister_Apoc_23r.jpg

第15章
 セドラクが神に向かって言う。
 「主よ、あなたひとりが罪なきものにして、おおいに慈悲深い方なのです、罪人たちを憐れみ、同情する方、いや、あなたの神性が云いました、『わたしがやってきたのは、義しい者たちを懲らしめるためではなく、罪人たちを悔い改めにいたらすためだ』と」。
 すると主がセドラクに云われた。
 「そなたは知らぬのか、セドラクよ、盗賊が、一瞬にして悔い改めて救われたということを。そなたは知らぬのか、わたしの使徒にして福音伝道者が一瞬にして救われたということを。<.....reccatores autem non saluantur〔しかし、罪人たちが救われることはない〕>、彼らの心臓は石のように不健全だからだ。この者たちは不敬な道を進み、アンティクリストスとともに滅ばされる者たちだ」。
 セドラクが言う。
 「わが主よ、あなたは云われたはずです、『わたしの神的な霊は、律法を持たずして律法のことを行っている族民の中にまで入りこむ』と。さらには、盗賊も使徒も福音伝道者も自余の者たちも、亡くなったらやはりあなたの王国に至るのです、わが主よ。そのように、終末の時代にあなたに罪を犯した者たちも赦してください、主よ。人生は辛労多く、悔い改めの機会は少ないのですから」。

第16章
 主がセドラクに言われる。
 「わたしは人間を3つの順序に作った。若いときは、彼は若いのだからと、その躓きをわたしは見逃してやった。さらに大人のときには、彼の精神(dianoia)を守ってやった。さらに老いたときには、やはり悔い改められるよう彼を守ってやろう」。
 セドラクが言う。
 「主よ、あなたはそれらすべてを心得ておられるし、知悉してもおられる。罪人たちにただ同情してください」。
 主が彼に言われる。
 「セドラクよ、わが愛する者よ、下界の40日間のうち20日間まで〔???〕、同情することを約束しよう。そして、そなたの名前を記憶する者がいたら、彼は懲罰所を見ることはなく、義しい者たちとともに、ある場所で息をつき、休息に与るであろう。また、誰かこの驚嘆すべき書を書き記す者がいたら、彼の罪が数えられることはない、永遠の永遠にいたるまで」。
 そこでセドラクが言う。
 「主よ、あなたの奴隷に光をもたらす者が誰かいたら、彼をもすべての悪から救ってください、主よ」。さらに神の奴隷セドラクはつづけて言う、「今こそわたしの魂をお受け取りください、主人よ」。
 そこで神は彼を受け取り、彼を楽園の中に置いた、聖なる者たちすべてといっしょに。栄光と力は、永遠の永遠に至るまでこの方のもの。アメーン。

2004.03.19. 訳了。




[画像出典]
 
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