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back.gifシビュラの託宣・序

原始キリスト教世界

シビュラの託宣

第1巻(1/2)



1."T1"
シビュラの託宣
1."T2"
第1巻から

1.1
物言う人間どもの最初の誕生から始めて
終末まで、ことごとく預言しよう。
過去にいかほどのことが起こり、現在どれほどが起こり、未来いかほどのことが 人間どもの不敬虔のせいで世界(kovsmoV)に起こるかを。

初めに、世界がいかに精確に生じたか、わたしが言うよう神がお命じになる。
汝、抜け目なき者、死すべき者よ、思慮深く
聞き知るがよい、わが訓戒をゆるがせにせぬよう、
全世界を創造したもうた至高の王のことを。
〔至高の王が〕「成れ」と云うと、成った。すなわち大地を基礎に据え、
1.10
タルタロス[001]を投げかけ、甘い光をご自身で与えたもうた。
天を高くし、きらめく海を広げ、
そして天球を、火のように輝く星辰でたっぷりと冠し、
そして大地を植物で飾りたまい、海には河川が
注ぎこみ、大気に混ぜたもうたのは、息吹と
1.15
露けき雲。それから、他の種族も置き、
大洋に魚類、大空に鳥類を与えたまい、
さらにまた森には、毛むくじゃらの獣や、
<地に>這う大蛇、また、現在目にされるかぎりのあらゆるもの、
これらをご自身がロゴスで作りたまい、万物が
1.20
すみやかに、かつ、精確に生じた。というのは、この方は自生者であって、
天から見おろされているからである。その下に世界が出来上がった。
それからまさにその時、もう一度、息を吹きこまれた制作物、
ご自身の似像を複製して、新しい男、
美しく神的なものを形づくられ、まさしくこれに、不死の
楽園で暮らすようお命じになった。美しき諸作品が彼によって世話されるためである。
さらに、楽園の生い茂った園にいるのが自分ひとりなので、
話し相手を渇望し、自分が持っているような
姿をした者を授けるよう祈った。そこで神ご自身が彼の
脇腹から骨を取り出し、素晴らしきエウアをつくりたもうた。
1.30
まさにこれを正妻として、この楽園でいっしょに住むよう
授けられた。彼はこれを見て、とつぜん気性に
大いなる驚きを覚え、よろこんだ、あたかも
対応する模像を目にするかのように。しかし知恵ある物語、
おのずから流れる物語に変えられた。というのは、万事は神の配剤であるから。
というのは、放縦によって理性を覆うこともなく、羞恥を
持つこともなく、悪しき心からは遠く離れていたし、
獣のように、剥き出しの四肢で歩きまわっていた。

そしてその後、彼らには神が誡めを宣し、
樹に触れぬよう示した。しかし彼らをとても恐ろしい
1.40
狡猾な蛇が、死の運命に帰って、
善と悪の知をえるようたぶらかした。
じっさい女が最初の背信者となり、彼にも味わわせる〔ため〕、
与え、無邪気なこの男を、過ちをおかすよう説き伏せて。
すると彼は女の言葉に説き伏せられて、不死なる創造者のことを
忘れはて、はっきりした誡めも気にしなかった。
そのため、善の代わりに悪を受けたのは、彼らが実行したとおりである。
まさしくその時、甘い無花果の葉を綴って、
衣類をこしらえ、お互いにまとい、
残すところなく包みこんだ。自分たちに羞恥心が起こったからである。
1.50
しかし、不死なるかたは彼らに遺恨をいだき、不死なるものらの地から
追い出された。すなわち以下のことが成就されたのである —
死すべき地にとどまるよう、それは、不死なる大いなる神の言葉を
聞きながら、守らなかったからである。
こうして、彼らはいきなり、禾穀を実らす畑に出て行きつつ、
涙と嘆息に濡れそぼった。次いで彼らに
不死なる神みずからが、もっとやさしく云った。
「増えよ、満ちよ、技を凝らして
大地を耕せ。汗しつつ、1コルの糧食を得よ」。
こう謂われた。しかしたぶらかしの責任ある這うものの方は、
1.60
腸と脇腹を大地に押しつけて、
辛くも逃れるようになさった。そしてお互いの真ん中に、
恐ろしい敵意を送りつけられた。そうして、助かるために一方は
頭を、他方はかがとを守る。人間どもと、悪だくみする有毒なものらとの間には、
まこと死が近いからである。

まさしくその時、万能者ご自身が命じられたとおり、
種族が満ち満ち、他のものは他のものに加えて増え、
民は無限となった。すると彼らはさまざまに
屋敷を飾り立て、あるいはまた都市や市壁も、
具合も手際もよくこしらえた。そして彼らに、長命の日を
1.70
心待たれるものとして、彼らの生に認めた。というのは、彼らが死ぬのは、
災いにさいなまれてではなく、眠りに征服されてのごとくだからである。
物言う〔人間ども〕は栄え、大いなる気象の持ち主だった、彼らを
救い主、不死なる王、神は愛したもうた。しかるに、まさしく彼ら自身が
罪を犯した。無知慮に投げ倒されて。というのは、彼らは恥知らずにも
父たちや母たちを嘲笑て侮辱し、
知己を認めず、兄弟たちに対する策謀者となったのである。
それからまた穢れた者たちで、人々の血に満たされ、
戦争を引き起こした。そしてついに、彼らのうえに最後の
迷妄(a[th)がやって来た、
天上から投じられて。これは生命から
1.80
恐るべき者たちを追い出した。しかし、今度はハーデースが受け入れた。
ハーデースと呼ばれるのは、最初にアダムがやって来たからである。
死を味わって、大地が彼を匿ったからである。
だからこそ、土から生まれた者たちはみな、
ハーデースの館にゆくと呼ばれるのである。
しかしながら、この者たちがみなハーデースの〔館〕に行くとしても、
名誉を得たのは、[じつに]第1世代だからにほかならない。

だが、この者たちを〔ハーデースが〕迎え入れたので、今度は、第2の、
みまかった最も義しい人間たちとは別な、
多彩な種族を造りたもうた。この者たちが心がけた
1.90
慕わしい所業とは、美しい熱心さ、際立った羞恥心、
利口な才覚であった。じっさい彼らは、さまざまな術知を
修練した。不器用な工夫を凝らして発明して。
そして、或る者は鋤で大地を耕すすべを発明し、
他の者は建造することを、また他の者は航海することを心掛け、
他の者は天体観察することや、鳥類による夢判断を、
薬草術は他の者が、しかし魔術はさらに他の者が。
各人各様に、それぞれ心がけることを術知化し、
進取の気象に富んだグレーゴロスたちは、この添え名に
与りつつ、心胆に不眠の理性を持ち、
1.100
飽きることなき姿をしていた。大いなる形は強かった。
にもかかわらず、やはり恐ろしい奈落に下ったのは、
不壊の鎖に見張られながら、償いをするためである。
ゲヘナで、疲れを知らぬ燃えさかる猛火で。

彼らの後でまたもや、頑なな心の
第3の種族が現れた。増上慢の恐ろしい
人間どもの。彼らは自分たち同士で多くの悪事に奮闘する。
そしてこの合戦と殺戮と戦闘は、
身の程知らぬ心をもった彼らをずっと滅ぼし続ける。

その後、この者たちに遅れてやって来たのは、
1.110
非常に好戦的な別の種族、血に飢えた思慮の足りぬ、
第4世代の男たちである。彼らはおびただしい血を流す、
神を恐れることもなく、人間どもに
恥じることもなく。じっさい彼らにふりかかったのは、
気違いじみた忿怒と、痛ましい涜神であった。
そして彼らを、戦争と殺戮と戦闘が
暗黒の中へ送りこんだ。嘆かわしい連中を、
涜神的な者どもを。また残りの者たちは、憤激をもって
天なる神ご自身が、自分の世界から移しかえられた。
大地の底の大いなるタルタロスに閉じこめて。

1.120
さらにまた、その後、はるかに劣悪な別な人間どもの
種族を造りたもうた。その後これらの者どもに善きものを
不死なる神はお造りにならなかった。彼らが数多の悪事をなしたからである。
というのは、彼らははるかに暴慢な者たちであったのだ。あの
不埒にも悪口を注ぎかけた歪んだギガースたちよりも。

ただし、万人のなかにでただひとりノアだけは、最も義しく真実で、
最も信仰深く、美しい所業に心を砕いていた。
そこで彼には、神ご自身が天上からこう声をかけたもうた。
「ノアよ、おまえの身体に力をふるって、民たちみなに
悔い改めを告げよ、皆が救われるように。
1.130
それでも、恥知らずな気性をもって気にしないなら、
全種族を滅ぼしつくそう、水の大いなる氾濫によって。
おまえには、すみやかに、渇くことのない根によって脹らんだ
壊れない木造の家を調えるよう、わしは命ずる。
そこで胸に利発な理性と術知、
胸先に尺度を入れてやろう。万事はわしの気に留めるところ、
だからおまえと、おまえといっしょに住んでいる者は救われよう。
[わしは有りて有る者、おまえはおまえの心胆において思惟せよ。
わしは天を着こみ、海をまとい、
大地はわしの足台、身体のまわりに大気が
1.140
あふれ、星辰の全合唱舞踏隊がわしのまわりを旋回する。
わし〔の名前〕は9文字を有す。音節は4つ [002]。われを思惟せよ。
最初の3音節はそれぞれ2文字を有し、
残り〔の音節〕は残り〔の3文字〕を〔有し〕、子音は5つ。
さらに、総数は、800の2倍に、
13と7とがともに3倍〔800×2+3×(13+7)=1660〕である。知れ、わしが何者か、
おまえはわしのもとなる知恵に暗き者ならず。」]

こう謂われた。これを聞くからに、彼を無数の戦慄がとらえた。
まさにその時、おのおののことを思案工夫して
民に懇願したが、次のような言葉ではじめた。
1.150
「不信心な者どもよ、大いなる激情に倒されて、
おまえたちがしたことが、神に気づかれぬことはない。すべてを知っておられるからだ、
不死なる救い主、綜覧者は。彼はわたしにお命じになった、
おまえたちに告げるようにと。おまえたちが心を忘れはてないように。
素面であれ、諸々の悪を切り捨てよ、無理強いに、
闘い合ってはならない、血に飢えた心をもって、
人の血汐で多くの大地を灌漑して。
畏れよ、はかなき者たちよ、巨大にして恐れを知らず、
天にます創造主、不滅の神を。彼は天球に住みたもう。
そこでこのかたにおまえたちはみな懇願せよ — このかたは親切なかたである —
1.160
このかたに、諸都市の生活のために、全世界の
四足動物や鳥類のために、万物に慈悲深くあられますよう〔懇願せよ〕。
なぜなら、時が来るのだ、全世界、数限りない人々が
1.163
水で亡ぼされ、おまえたちが恐ろしい歌を声高く叫びあげる時が。
そのとき、突如、大気はおまえたちにとって不安定になり、
大いなる神の憤激が天からおまえたちの上にやってこよう。
そのとき、確かになろう、人間どもに送りつけられたということは。
1.166
......................................................................
不死なる救い主は〔送りつけられるであろう〕、あなたがたが神を宥め、
今から悔い改めをもつのでないかぎりは、そして、もはや何も
難しいことや悪しきことを、各人が各人に対して不法には
1.170
行わず、神法に遵った生活を守る者となるのでないかぎりは」。

しかし人々は彼に耳を傾けたものの、めいめいが鼻に皺を寄た、
うつけと呼び、気の狂ったやつと〔呼んで〕。
そこでまたもう一度、ノアは歌を大声で叫んだ。
「おお、大いに惨めな者ども、心邪な者ども、定めなき者ども、
廉恥を置き去りにして、破廉恥を渇望する者ども、
政情不安定につけこんで過ちをおかす僭主どもや暴君ども、
不信心な嘘つき、何ら真実のない悪漢ども、
寝台盗み〔姦通者〕どもと、呪いを浴びせる冗舌家たち、
至高の神の怒りを恐れぬ者ども、
1.180
第5世代に至るまでに償いをするよう見張られている。
おまえたちが、非常な者どもよ、てんでばらばらに泣くことはなく、むしろ笑うことであろう。
すさまじく皮肉な笑いをうかべることであろう、この、
わたしが言うように、神の恐ろしい新来の洪水が到来したときに。
[レアーの穢れた種族が地をゆく時、
〔樹の〕根の渇きを知らぬものらによってうねる
根も枝も目に見えぬ浪が夜の間に生じ、
そして諸々の都市を、人もろとも、大地を揺すり大地を支えるもの〔ポセイドーン〕が、
大地の奧処に追い散らし、市壁を崩壊させるだろう。]
そしてその時、全世界は、数限りない人間どももろとも、
1.190
死滅しよう。だがわたしは、どれほど悼むことか、どれほど泣くことか、
木造の家の中で、どれほどの涙を浪に混ぜ合わすことであろう。
なぜなら、神の命によるこの洪水が襲来すれば、
大地は漂い、山々は漂い、霊気もまた漂うであろう、
あらゆるものが水となり、水によってあらゆるものが亡びよう。
しっかりしているのは、風と、第2の世であろう。
おお、フリュギアよ、おまえは最初に水の表面から浮かびあがるであろう。
しかしまた、おまえは最初に、人間どもの別の世代を養うであろう、
もう一度始まる〔世代〕を。そしてそれが万人の乳母となるだろう」。

だが、彼が無法な種族に無駄にしゃべったとき、
1.200
至高者が幻に現れ、再び声高らかに発声した。
「すでに時機は近づいた、ノアよ、それぞれのこと —
いつの日にか、おまえに請け合い、引き受けたかぎりのことを告げる時機が、
これまでの種族が実行したかぎりの無数の悪事をみなもろともに、
不従順な民のゆえに、際限なき世界で生贄にする時機が。
さあ、ただちに乗りこめ、息子たちあるいは連れ合い、
そして新婦とともに。そして命じよ、告げることをわしが勧めるものら —
四足動物の諸々の部類と這うものらと鳥類に。
これらのものの胸には、これからわしが
その生命を成就させようと思うものらに、すすんで行こうとする念を起こさせよう」。

1.210
このように謂われた。しかし乗りこんだ彼は、声高らかに発声した。
その時にはまた、妻と息子たちあるいはまた新婦も
木造の家に乗り組んだ。しかしそれから、
その他のおのおののものも乗りこんだ、神が*生贄とすること*を望んだかぎりのものらが。
だが、蓋の横木が継ぎ目としてつくられ、
磨きあげられた側壁にはすかいに嵌めこまれると、
まさにその時、天上の神の御心が実現された。
群雲を投げられた、火と燃え輝く円盤〔太陽〕を隠された、
星辰ともども月を、天の花冠を、
あらゆるものを覆い隠し、激しく雷を鳴らされた、はかなき者らに恐ろしい
1.220
稲妻を伴う旋風を送りつけながら。ありとある暴風もともども
目覚め、水の血管がみな壊れた、
天から、大きく口を開いて、滝となって下る〔水〕の、
また大地の深奥の、疲れを知らぬ底無しの深淵の
無量の水も現れ、大地は隠された、
際限なき〔大地〕がことごとく。しかし神々しき家は、
ひとりでに雨水に浮かんだ。勢い猛なおびただしい浪に
打ちつけられながら、風の吹きつけに泳がされながら
身の毛のよだつほどに翻弄された。舳先は、迸り湧きたつ水の
無数の泡を分け〔て進んだ〕。

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