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back.gifシビュラの託宣・第3巻(2/4)

原始キリスト教世界

シビュラの託宣

第3巻(3/4)



さて命を産み出すフリュギアにもたちまち終極がおとずれる。
それは、渇くことのない根によっていつまでも続く波が
地に脹れ上がり、レアの血に汚れた族が
夜の間に根こそぎ見えなくなる時、そしてこのことが
地を震わす地震の神の町の中、人の中に起きる時である。
いつの日か人々はこの町を事にちなんでドリュライオス、
古い、暗い、涙の多いフリュギアの、と呼ぶだろう。
その日は確かに来るだろう。そしてあだ名で地を震わすと言われる者が
地のくぼみを壊し、城壁を打ち倒すだろう。
3.410
善いことのしるしではなく悪いことの始まりが生ずるだろう。
そして同族の血が、あらゆる民族の(参加する)戦いにも通じた王たち、
すなわち(土着の、計略にすぐれた)アイネイアスの子らを支えるだろう。
しかし、その後おまえは恋人たちのことで捕虜となるのだ。
イリオンよ、わたしはおまえを憐れむ。なぜならエリニュスが、
アジアとヨーロッパの広大な波面をあとにして、スパルタに
はなはだ美しく、永遠に名をとどめるほどのすぐれた芽生えを育てるからである。
そして特に涙と苦しみと叩きとをおまえに持ち来たり、
課すであろう。(おまえの)うわさはやがて来る世代においても古びることがない。

さて、ある偽りを書く老人がやって来るだろう。
3.420
彼はまた自分の故国を偽っている。彼の限の光は沈むだろう。
彼はすぐれた心と思いのままに韻律を付したことばとを持っているだろう。
そのことばは二つの名と結びつけられている。彼はキオスと
みずからを呼び、イリオンに関することを正確にではなく、
巧みに描くだろう。というのは彼がわたしのことばも韻律もしのぐであろうからである。
すなわちまず彼はわたしの書いた物を手で開き、
それからはなはだしく戦士たちを飾りたてるだろう、
プリアモスの子ヘクトールやベレウスの子アキレウスや
その他軍の業に心を繋ぐ者らを。
しかも彼は神々さえこうした人間どものかたわらに立たせるだろう、
3.430
あらゆる仕方で頭の空な人間たちを偽り描くことによって。
そしてイリオンで死ぬことはむしろ彼らにとって広汎な名声となるだろう。
しかし彼みずからが酬いの業を受け取るだろう。

そしてリュキアにはロクロスの族が多くの悪を生み出すだろう。

狭い海峡を(くじで)得たカルケドンよ、
アイトロスの子が来ておまえをも略奪するであろう。

キュジコスよ、海がおまえの重い財貨をかき裂くだろう。ビザンティウムよ、おまえもいつの日かアレスを、(その盾を見るだろう)。
おまえはとりわけ叩きと量り知れない血とを受け取るだろう。

またクラゴス、リユキアの聾え立つ山よ。
3.440
岩岩が裂けて、割れ目が山の頂から水を泡立たせ、
ついにはパタラの託宣と兆しとを止めるだろう。

キュジコス、酒にまつわるプロポンティスの住民よ。リュンダコスのうねだった波がおまえの周囲に押し寄せるだろう。

また汝、ロドスよ、おまえは長い間奴隷の髄をまぬがれるだろう。
3.445
太陽の娘よ、おまえはのちに多大の富を得るだろう。
また海においては他の者たちよりもすぐれた力を得るだろう。
しかしその後、美しさも富もそのままに愛人たちの
虜となるだろう。そして恐ろしい軛を首にかけられるのだ。

さてまたリュディアの地震がペルシアの繁栄を荒廃させ、
3.450
ヨーロッパとアジアの(知っている)もっとも恐ろしい痛みを成し遂げるであろう。
シドン人の滅びの王とその他(海を渡る着たち)の雄叫びが
サモス人に対する滅びの中の滅びを(意味するだろう)。
滅びゆく人々の、〈平地から〉〔流れる〕〈血が〉どくどくと海の中へと流れ出るであろう。
他方妻たちは着飾った娘らとともに
異常な、惨めな荒びごとを叫ぶだろう。
或る者は〈親のゆえに〉、また或る者は滅びゆく子のゆえに。

これがキプロスの徴である。地震が峡谷を打ち崩し、
ハデスが多くの魂をいっしょに受け取るだろう。

さてエペソの隣人であるトラレスは、地震によって、
3.460
巧みな造りの城壁と頑迷な心の民とを損失するだろう。
あるいは地が熱湯を噴き出し、あるいほ押えられていた地が、
(自分の中へと)飲むであろう。そして硫黄の臭いが(するであろう)。

サモスもその時には(異国の)王のための邸宅を建てるであろう。

イタリアよ、おまえの所に見知らぬ国のアレスはやって来ない。
しかし同じ血族が、多くの嘆きを受け、弱くはなく、
悪名高く、恥知らずなおまえを斌するだろう。
そしておまえは熱い灰の中に倒れ伏し、
自分の心で先を見ることのない身を滅ぼすのだ。
おまえは善き者の母ではなく、獣の乳母となるだろう。

3.470
しかしイタリアから滅ぼす者が現われる時、
その時、ラオデキアよ、
リュコスの神々しい水流に沿った美しいカリア人の町よ、おまえはまっさかさまに倒れ、
傲慢な父祖を思って嘆いたのち沈黙するのだ。

トラキアのクロビュゾス人がハイモス山の至る所に登るだろう。

カンパニア人は実り多き飢饉のために(歯を)カタカタと鳴らすだろう。
多くの年月父祖を思って嘆いたのちに。

キュルノスとサルディニアは冬の強い嵐と、
聖なる神の打擲とによって海の底へと、
海の子らもろともに波の下に沈むだろう。
3.480
ハデスがめとる処女らはわざわいだ。
海底のかしずく、葬りも受けなかった若者たちも、
海に漂う幼な児も重い財宝弛わざわいだ。

ムーサたちの祝福された地が突然王の族を
産み出すだろう。しかし本当は、永くは
カルケドンも続くまい。そしてガラチア人は深い嘆きの涙を流すだろう。
またテネドスにも悪しき終わり、しかももっとも重大な終わりがおとずれるだろう。
そして銅で知られるシキュオンは、コリントよ、唸り声を立て、
すべての者に加えておまえのことをも誇るだろう。しかし(予言者の)笛もまた同じように鳴り響くだろう。
3.488
  *   *
3.488
   *

さて、わたしの気性が霊感を受けた歌をやめた時、
3.490
ふたたび大いなる神からわたしの胸のうちにことばが
臨み、わたしが全地について予言するようにと命じた。

わざわいなるかな、フェニキアの男たちと女たちとの民、
また海沿いのすべての町。あなたがたのうちのだれも
普遍の光を浴びつつ、太陽の光へと至ることがない。
それだけでなく、もう命の日数も部族もなくなる。
不義の舌と無礼と汚れとの生活の酬いとして。
すべての者は、汚れたロを開いてそのような生活を過し、
また恐ろしい、偽りと不義のことばをならべたて、
大いなる王、神にさからって立ち、
3.500
偽って憎むべき口を開いたからである。このゆえに神は彼らを、
全地に手痛く打ち伏せ、
彼らに苦い定めを遣わす。
神は町々を地底から焼き、多くの基を〔焦がされる〕。

おお汝、痛み多きクレタよ、おまえの所に
打擲が及び、永遠の恐れがはなはだしく劫掠する。
全地はふたたびおまえが煙るのを見る。
また永遠に火はおまえを去ることなく燃やし続けるだろう。

おお汝、トラキアよ、おまえが奴隷の軛に至るとは。
ガラチア人らがダルダノスの子らと一つになって
3.510
手痛くギリシアを荒す時、悪しきことがおまえに至るだろう。
おまえは他の地(の国)に〔 〕を与えるが、何も得ることはない。

おお汝、ゴグとマゴグよ、そしてマルソス人とアゴス人のすべての町のおのおのよ、
運命がどれほど悪しきことをおまえにもたらすことか。
そしてリュキア人とムシア人とフリュギア人の子らにも〔ひどいことを〕(運命がもたらす)。
多くの民が倒れる。パンフリア人とリニアィア人と
マウロス人とエチオピア人と異国のことばを語る着たち、
カバドキアとアラビアの民らが。いったいなぜ、わたしはおのおののことを運命に従って
歌うのか。地に住む限りのすべての民に、
至高者が恐るべき打擲を遣わされるからである。

3.520

多くの異国の民がギリシアに来ると、
選り抜きの男たちの首を数多く撃ち落とす。
人間の数多くの肥えた羊や、
馬やらばや大声に鳴く牛の群れを彼らは八つ裂きにする。
よい作りの家は無残にも火で焼き尽くす。
彼らは多くの者たち、子供、帯深き女たちを奴隷としてむりやり異郷の土地へ引いて行く。
肌柔らかな女たちは奥室から出され、か弱い足で前へと転んで行く。
異国の言語を話す敵の軛のもとに、女たちが
あらゆるはなはだしい倣慢なふるまいを受けるのを人々は見る。しかも彼らには 戦いを少しでも助ける者はなく、命の救い手もいない。
3.530
彼らは自分たちの持ち物とあらゆる富とを
散が略奪するのを見る。膝の間には震えが来る。
一〇〇人の兵が逃げると、ひとりの兵が彼らをことごとく滅す。
五人の兵が重装備の(部隊)を動かす。人々は敵に面して
恐ろしい鬨の声のゆえにうろたえ惑い、
敵に歓喜をもたらす。しかしギリシア人には悲嘆である。

実に全ギリシアに奴隷の軛がある。
すべての人間を戦いと疫病が襲う。
神は上なる大きな天を銅にし、
3.540
全地には干ばつをもたらされ、大地は鉄にされる。
その後すべての人間は不毛と荒廃を激しく嘆く。
そして、天と地を据えたかたが地に大きな火の柱を下す。
するとまたすべての人間にとっての第三の定めがやってくる。

まことにギリシアよ、おまえはなぜ死ぬべき人間にすぎない指導者たちに従ったのか?
彼らは死の終極をのがれることのできない着ではないか?
なんのためにおまえは、空しい献げ物を死んだ偶像のもとに運び、
供えるのか?だれがおまえの心の中に迷いを置いて、
大いなる神の顔を捨て、これらのことをなさせるのか?
3.550
万物の父なるかたの名を恐れよ、決して忘れてはならない。
ギリシア人の倣岸な王たちが治めた時から、一〇〇〇年がたち、さらに五〇〇年がたつ。
彼らは最初に人々の間に悪をもたらした。
すなわち、朽ちて死ぬべき多くの神々の偶像をである。
そのために、おまえたちは空しいことを考えるように教えられた。
しかし、大いなる神の憤激がおまえたちに臨む時、
その時こそおまえたちは大いなる神の顔を知る。
すべての人の魂はいたく嘆いて、
みずからの手を広い天に向かって差し伸べ、
助け主である、大いなる王を呼び始め、
だれか来ぬかと、大いなる憤激からの救い主を求め始める。

しかし、来て、このことを学びおまえの心にとめるがよい。
三年のめぐる間、どれほどの悩みがやって来るかを。
ギリシアは牛と大声で鳴く雄牛の中から犠牲を献げた。
大いなる神の神殿に向かって全繙祭を供えて。
(ギリシアは)いやなひびきの戦争と恐怖、
また疫病から逃げ出し、ふたたび奴隷の軛からのがれるだろう。
定められた日がこのように終わるときまで、この時まで、不敬虔な者らのやからがある。
3.570
なぜならあなたがたは、すべてのことが起こるまでは決して神に犠牲を献げないから。
ただひとりの神が意図されることは必ず成る。
すべてが成し遂げられるために、強い必然の力が加えられる。

敬虔な人々の聖なるやからもまた生じる。
彼らは至高者の意志と考えとにつながっている者たち、
彼らは大いなる神の神殿を深くうやまう。
灌祭と香りとまた聖なる犠牲、
すなわち肥えた雄牛、全き羊、初子の羊の献げ物によって、また肥えた羊の群れを
大きな祭壇の上に聖い仕方で全烙祭として献げることによって。
彼らはその義のゆえに至高者の律法にあずかり、
栄え或る者として町々と肥えた野に住む。
彼らは不死なるかたによって高くされた予言者たちであり、
すべての人間に大きな喜びをもたらす。
なぜなら大いなる神は、ただ彼らの胸にのみ恵み深い思いはかりと、
信仰とすぐれた思いとを与えられたからである。
これらの者は空しい欺きごとによって、人間の
金や銅の作品、また銀のわざ、象牙のわざ、
木や石の、赤く土を塗った死んだ神像、また画像を、
3.590
これらは人々が空しい望みにょってうやまうものだが — うやまわない。
かえって彼らは天に向かって聖い手を差し伸べ、
3.592
いつも床から早く起きて水で身を聖め、
ひたすら不死なる永遠の支配者を、
そして次に両親をうやまう。彼らはすべての人よりはるかにまさって
床を聖く守ることを肝に銘じている。
また彼らは少年と汚らわしく交わったりしない。
フェニキア人やエジプト人またラテン人、
広いギリシアや他のペルシア人、ガラチア人、全アジアの多くの民々が、
3.600
不死なる神の(与えられた)聖い掟を破ったようには。
これらの者たちに対し、不死なるかたはすべての者らの中に
迷いと飢饉と苦しみと呻きと
戦争と疫病とそして涙多き痛みを置く。
なぜなら、彼らはすべての人間の不死なる父を
聖い思いで尊ぶことを欲せず、かえって偶像を重んじ、
手で作ったものを畏れたからである。しかし、
エジプトの若い王、すなわち、マケドニアの偉大な男たちが行なった
ギリシアの支配から数えて七代目の王[015]が自分の国土を治める時、
人々みずからがこれらの偶像を恥のゆえに隠そうとして、岩の裂け目の中に投げ捨てるのである。アジアから大いなる王[016]が出る。彼は繹猛な鷲である。
彼は全地を歩兵と騎兵で覆い、
すべてのものを疲億させ、すべてのものを悪で満たす。
彼はエジプトの国を投げうつ。そしてすべての財宝を
奪って、広い海面へと運び出す。
そしてその時こそ、人々は多くのものを養う大地の上に白い膝を折り、
大いなる神、不死なる主に祈るであろう。
またすべての、手で作られた業は火の炎にょって倒れる。
そしてその時こそ、神は人々に大きな喜びを与えられるだろう。
3.620
というのは大地と果樹と羊の無数の群れが、空一人々のために本当の実りを与えるからである。
それはぶどう酒と甘い蜜と白い乳と穀物の実りであり、
人間にとってすべてのもののなかで最良のものである。

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