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back.gifシビュラの託宣・第3巻(4/4)

原始キリスト教世界

シビュラの託宣

第4巻



4."T1"
第4巻

4.1
聞け、驕り高ぶれるアジアとヨーロッパの民よ、
大いなるかたの蜜の声響かせる口を通して、
われわれのことから始めて、わたしが預言せんとするかぎりのまったき真実を。
わたしは虚偽を託宣するフォイボスの〔預言者〕ではない。その者を、愚かな人間どもは
神と云い、預言者と詐称したのだ。
いや、わたしは大いなる神の予言者である。人々の手はこのかたを造形したことはかつてない、
物言わぬ石の偶像ではないからだ。
また彼は神殿に引いてこられた石を住み家となさることもない。
それはひどい唖者にして歯もなく、はかなき者どもの苦痛多き屈辱である。
4.10
いや、地から見ることのできるかたではなく、死ぬべき者の眼で
量られるかたでもない。死ぬべき者の手で作られたのではないからである。
彼は万物を照覧なさるが、ご自身は誰からも見られることがない。
暗い夜も、昼も、太陽も、
星も、月も、魚の住む海も、
地も、河も、尽きることなき泉の口も、
命を得た被造物も、畑の実り —
樹木、ぶどう、オリーブ — を産する雨も、みな彼のものである。
このかたがわたしの心の中に笞を当てられた。
それは人間たちにとって今あること、またその後ふたたびあること、
4.20
すなわち第一代から第十代にまで至ることを、
わたしが残らず数えあげるためである。なぜなら彼はすべてのことを成就することによって
悟得させたもうからである。そこで民よ、お前はシビュラからすべてのことを聞け、
真理の声を注ぎ出す聖なる口から。

人間のうちであの祝福された者たちが地にあるだろう。
げに、大いなる神をほめたたえつつ、愛するかぎりの者らは、
飲み喰いする前に、敬虔に聴き従う者たちである。
彼らはいかなる神殿や祭壇を見てもこれを拒否する。
物言わぬ石でできた無価値な像をもまた。
4."28a"
また石像も、木像も、手製の奉納像をも。
4.29
それらは生命あるものらの血や
4.30
四足獣の犠牲に穢れているからである。しかし、彼らはただひとりの神の栄光を見つめる。
彼らは傲慢不遜な殺人をしでかすこともなく、盗品を
売って儲けることもなく、これこそはもっとも酷いことであるが、
他人のしとねの上で醜い欲情を抱くこともなく、
[憎悪さるべき、嫌悪さるべき男の暴慢を求めることもない]からである。

他の人々は彼らの敬虔な生き方と習慣を
けっして模倣することがない。無恥を渇望しているからである。
むしろ、彼らはかの人々を冗談と笑いで嘲り、
幼稚な者どもは、無思慮によって、嘘の上塗りをするであろう、
自分たちのしでかす傲慢不遜な悪しき所業をあの人々に帰して。
4.40
じっさい、声を分けて語る者らの種族は信頼しがたい。しかしながら、
世界と死ぬべき者たちとの審きが、つまり、神ご自身が
不敬虔な者らと敬虔な者らとを同時に審かれる審きが、まさにおとずれる時、
その時には、不敬虔な者らを、暗闇のもとで、火の中に送り込まれるだろう。
[その時には、彼らは悟るであろう、自分たちがどんな不敬虔を働いたかを]。
しかし、敬虔な者らは禾穀を稔らす田畑にとどまる。
命と同時に恵みを神が彼らに与えられるからである。
しかし、これらすべては第十代の時に極みに達する。
しかし今は、第一代から起こること、これを語ろう。

最初にアッシリア人がすべての死ぬべき者たちを支配し、
4.50
世界の六代の間、支配の覇権を握り通す。
それは、天にいます神が怒りを発せられたために、
都市もろとも人間どももみな
圧倒する洪水の海が地を覆った時からである。

彼らをメーディア人が打倒して、王座に立って誇るであろうが、
彼らにはただ二代だけが〔続く〕。彼らに次のような所業が起こるためである。
暗い夜が真昼の刻限に起こるだろう[018]
4.57
そして星と月の円が天からなくなり、
地は大地震の揉みあいの中で震い、
多くの都市と人間の業とを覆滅させるであろう。
4.60
またその時、海の底から島々が頭をもたげるであろう。

しかし大いなるエウフラテースが血で溢れる時、
その時こそ、メーディア人とペルシア人との間に、戦争のぞっとする
叫喚が上がる。そしてペルシア人の槍によってメーディア人が
倒れ、大いなるティグリスの水の上に逃れるだろう。
それからペルシア人の覇権[019]は全世界で最大となるが、
彼らの帝国の栄華は一代〔だけ〕備えられているのである。

起こらねばよいが、と人が願う限りの悪しきことが起こるだろう。
戦いの叫喚、殺人、分裂騒ぎ、亡命、
城楼の崩壊、都市の滅亡が。
4.70
それは、驕れるギリシアが[020]、広いへレスボントス目ざして
フリュギアとアジアに痛ましい破滅をもたらそうとして、航海する時である。

さらに、畦溝もさわに、小麦をもたらすエジプトに、
飢饉と凶作とが二〇年の間さまようだろう。それは、麦の穂を育てるナイルが、
どこか他の場所で、大地の下に黒い水を秘匿する時である。

アジアからは、大いなる王[021]が槍を携えて、やってくる。
数え切れぬほどの船とともに。彼は〔海の〕底の湿った通り道を
徒歩で歩き、嶺高き山を切り分けて航海する。
怯懦なアジアは、彼を戦争からの逃亡者として迎え入れるだろう。

4.80
みじめなシチリアをことごとく焼きつくすだろう、
エトナの炎が噴き出される時、巨大な火の奔流が。
またクロトーンの大きな都市が深い流れの中に落ちるだろう。

ギリシアに争いが起こる。人々は互いに猛り狂い、
多くの都市を投げ倒し、多くの人々を、
戦って滅ぼす。だが、その争いはともに互角である。

しかし、声を分けて語る者らの種族が第十代に至ると、
その時[022]、ペルシア人たちに奴隷の軛と恐怖が生じる。

それから、マケドニア人たちが王笏によって誇った後、
テーベにも悪しき捕囚が背後からやってくる。
4.90
そしてカリア人たちがツロに住み、ツロの人々は滅びる。
それから砂が全サモスを海辺の下に隠し、
またデーロスはもはや際立ったものではなくなり、デーロスのすべての〔財宝〕は見映えなきものとなるだろう。
またバビローン[023]は見るに大いなるものであるが、闘うに弱小であり、
無益なる望みの上に城壁をめぐらせて立っているだろう。
マケドニア人たちはパクトリアに住むであろう。そしてパクトリアと
スゥサからの逃亡者たちは、みなギリシアの地に逃げこむだろう。

やがて生まれてくる者どもには、銀の渦巻く、
海辺を洗うビュラモスが聖なる島に到る時がおとずれる。
そしてパリスよ、おまえもキュジコスも倒れる。大地が
4.100
地震のために激しく揺れ、諸々の都市がたちまちに倒れる時に。
ロードス人たちにも、最後の、しかし最大の悪がやってくるだろう。

覇権はもはやマケードニアのものではない[024]。かえって西から
イタリアの大いなる戦争が花咲き、全世界がその下に
奴隷の軛を負って、イタリア人に仕える。
惨めなコリントよ、おまえもいつかみずからの囚われを見るだろう。
カルタゴよ、おまえの城塔も地に膝をつくだろう。

強情なラオデキアよ、おまえをいつか地震が投げ倒して
散らすだろう。しかし再び都市が建てられ、立つであろう。
おお、リュキアの美しいミュラよ、揺れ動く大地は決しておまえを
4.110
立たせておきはしない。まっさかさまに大地に倒れ、
寄留者のように、他の地にのがれたいと願うだろう。 それはパタラの*不敬虔の上に、ある日、 雷霆と地震とともに、海の黒い水が騒乱をまき散らす*時である。

アルメニアよ、おまえのもとにも奴隷の責め苦がとどまる。

エルサレムにもイタリアから戦争の悪しき嵐が到り、
神の大いなる神殿を掠奪する。
それは人々が無思慮なことに聴き従い、敬虔を
棄て、神殿の前で憎むべき殺人を行なう時にそうなる。
そのころ、イタリア出の大いなる王[025]が、奴隷のように、
4.120
姿を見られることなく聞かれることもなく、エウフラテスの渡しを越えて逃げて行く。
すなわち、憎むべき母殺しの罪と
その他多くのことが、悪しき手に説き伏せられれて敢行される時に。
多くの者がローマの王座のまわりで平野を血で汚すだろう、
彼の者が、パルティアの地を越えてのがれたあとに。
シリアにはローマの勇士がやって来る。彼は火で
エルサレムの神殿を焼き払い[026]、さらにまた多くのユダヤ人を
殺し、幅広い通り道のある大いなる地を滅ぼすだろう。

またその時こそ、地震がサラミスとパボスとを滅ばす、
すなわち、大波うなるキプロスを、黒い水が洗う時。

4.130
しかし、イタリアの大地女神の断崖から
炬火が放たれ[027]、久方の天に達し、
多くの都市を焼き、人々を滅ぼし、
大量のくすぶる灰が大空をこがし、
また火の粉が紅土のように天から降る時、
その時に、人々は天上にいます神の怒りを知る。
彼らは敬虔な人々の、罪なきやからを滅ぼすからである。
またその時、引き起こされた争いと戦争と
ローマの逃亡者とは西に到る。彼は長い槍を執り、
無数の者たちとともにユウフラテースを渡る。

4.140
みじめなアンチィオケよ、人々はもうおまえを都市とは呼ばなくなるだろう。
おまえが自分の無思慮によって槍の下に倒れる時に。
またその時、疫病とぞっとする戦いの叫喚がキュルロスを滅ばすだろう。

ああ、ああ、あわれなキプロスよ。おまえを海の広い波が
覆う。おまえは冬の嵐によって投げ上げられる。

それからアジアに莫大な富がかえって来る。それはかつてローマ
自身が奪って、財宝に満ちた家に
置いたものである。ローマはその二倍とそれ以上を
アジアにもどす。そのとき戦争の飽きがくる。

マイアンドロスの水のほとりなるカリア人たちの諸都市、
4.150
城塔に守られたはなはだしく美しい者たちを、激しい疫病が
滅ぼすだろう。マイアンドロスが黒い水を秘匿する時に。

しかし、敬虔な信仰が人間どもから消え失せ、
この世で義が秘匿されて、
……変節着たちは……神法にもとる敢行によって
生活し、暴慢、つまり極悪非道な悪しき所業をしでかし、
誰ひとり敬虔な者たちの話をせず、かえって幼稚な者どもとなって、
ひどい無思慮ゆえにみずからをことごとく滅ぼし、
暴慢を喜び、手を血に染める時、
その時こそ知るべきである。神はもはや柔和なかたではなくて、
4.160
憤怒によって歯がみし、人間どものすべての末を
大いなる火によって滅ぼし尽くすかたであることを。

ああ、声を分けて語る者らよ、改めるのだ、はかなき者らよ、これらのことを。
大いなる神をさまざまの怒りへと駆り立ててはならぬ。かえって、
剣と殺戮の呻きと暴慢とを改めて、
涸れることなき河の中で全身を洗い、
もろ手を空に向かってさしのべ、かつての業の
赦しを求め、ほめことばにより、苦い
不敬虔の赦しを請え。神は悔い改めを赦し、
滅ぼすことをなさらないだろう。また再び怒りを止めてくださるであろう、もしあなたがた皆が、
4.170
いとも尊い敬虔を心のうちに重んじるならば。
しかし、心邪な者たちよ、おまえたちがもしわたしに聴き従わず、かえって不敬虔を
愛しているなら、悪いしらせによってこれらすべてのことを受け取るだろう。
火が全世界をおおい、大いなる徴があるだろう、
太陽が昇る時に、剣とラッパにより。
全世界はどよめきととどろく響きを聞くだろう。
彼は全地を焼き、人々のすべての種族と
すべての都市と河を、海とともに滅ばされるだろう。
また彼は万物を焼き尽くし、くすぶる塵が残るだろう。

しかし、すでに万物が灰燼に帰した時、
4.180
神は筆舌に尽くせぬ火をも、それに火をしつけた時と同じように、眠らせられる。
神はみずから人々の骨と灰に、もとのごとく
形を与え、かつてあったように、再びはかなき者らを立たせられる。
まさしくその時に審きがある。これによって神みずからが判決を下される、
もういちど世界を審いて。そして、不敬虔によって過ちをおかした者たち、
これらはまたもや地下に隠すであろう。塚と、
陰湿なタルタロスの世界と、ゲヘナのステュクスの奥底が。
しかし、敬虔に生きる者たちは、ふたたび地上に生きる。
4.189
神が霊〔気息〕と生命と恵みとを、彼ら
4.190
敬虔な者たちに与えたからである。その時すべての者は自分自身を見るだろう。
また太陽のうれしく、喜ばしい光を見るだろう。
おお、浄福の極みよ、その時までいる人は。
4.188
不滅の至福もまた、大いなる不死なる神のものである。

2010.06.18.

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